0-story

18禁 BL小説です。主に拷問・凌辱等ハード系。 こういう小説に興味の無い方、嫌悪感がある方はご遠慮ください。サイトマップより一気読み出来ます
カテゴリー   [ 華燭の城 ]  

華燭の城 - 50

その時だった

----- ヒュンッッッ!!!



先より 一段高い、鋭い風斬り音に
幼い”あの日” を思い出していたラウの身体は ビクンと跳ねた



「・・・ッンアッッッ!!!!」


響いたシュリの短い叫び声に現実へと引き戻される
と同時に、ガランと一度 滑車が音を立てた


たった一度で、 まるで鋭利な刃物で切ったかのように
シュリの肩口から胸元へ・・・ シャツが裂け白い肌が口を開けていた
ツ・・・と血が滲む





「ああ、この感触・・・・ やはりいい・・・
 これが一番 手に馴染む・・・・」

ガルシアは満足そうに言うと、長い鞭の先で
床の石をピシリと鳴らす





そしてまた、高く振り上げた・・・・・・




「・・・ンンンっ!!!

  ・・・・・・・ッッアアッ!!!」




ギシギシと滑車と鎖が揺れる度、シャツは裂け散り
シュリの白い肌に赤い模様が刻まれていく

ガルシアはその姿を眺めながら、シュリの周りをゆっくりと歩き
何度も鞭を振り下ろした




その動きは驚く程 正確だった
宣言通り 顔や手といった、衣服を身に着けても
外から見える場所には 一度も当る事はない

その分、胸や腹、背中、腿など
隠れる部位には重なる様に幾筋もの線が引かれていく

何度も打たれた場所は 既に皮膚が裂け、血が流れていた





「ンッ・・・!! グゥ・・・・・・ ァァァッ・・・・・・・・」


歯を食いしばり、柔らかな髪を乱したシュリが
まるで蛇に絡まれ弄ばれる様に その身体を仰け反らせる



噛み締めた唇端から一筋の血が流れ
裂かれた身体の血と一緒になって脚を伝い床へと落ちて行った







燭台の蝋燭がその身を削るのと同じくして
ガルシアの行為は、痛みであまり声をあげなくなったシュリに
苛立つように激しくなった




「どうした! もっと叫べ! 大声で泣き喚け!
 この部屋では いくら叫んでも、その声は外には漏れぬ
 ここに至るまでの多くの扉が 音も声も、完全に遮断するのだ
 誰にも知られる事は無い、安心して叫ぶがいい!
 さぁ、もっとだ!
 ・・・・・お前は神だろう?! 
 神がワシの前にかしづくのだ!
 さあ、泣き声を聞かせろ!
 もっとだ!もっと!!」



いつまでも終わる事のないその責めに、声だけでなく
力さえ失ったシュリの体は
グッタリと、ただ鞭に踊らされる人形の様になった


それでもガルシアは手を止めようとはせず
何かに憑りつかれた様に鞭を振るい続けた


既にシュリの呻く声さえ 聞き取れない程に小さくなっている
意識があるのかさえ定かではなかった




「陛下!!  もう・・・ それ以上は!」

後ろに居たラウが、見兼ねて叫んだ



「うるさいっ!!! お前は黙って見ていろ!」

ガルシアが振り返るのと同時に
その手の中の鞭が ラウの顔面を捉えていた





「・・ンッッ!」

カラン!と音を立て杖が転がり、ラウが片膝を付く

衝撃で 結んでいた長い黒髪が解け、ハラハラと顔にかかり
その頬には真っ直ぐに 赤い裂け目が筋を引き血が零れる



「ラ・・・ ラウ・・・! ガルシア!やめろ!!」

そのラウの呻きに
力なくダランと吊り下げられたままのシュリが声を上げた




鞭打たれたラウの姿を見た訳ではなく
それは本当に、ラウの声に反射的に反応し、上げた声だった




「ほう・・・ まだ声が出るではないか
 口は使えると見える」



「おい、シュリを下ろせ」






華燭の城 - 51 に続く
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華燭の城 - 51

「・・・ しか・・ し・・・・」

ラウは何かを言いかけたが、そのまま よろりと立ち上がり
シュリの側まで足を引き攣った



ゆっくりと滑車に手を掛け、引き上げた時とは逆に回すと
シュリの身体が徐々に下がってくる
そしてシュリが両膝を付いた頃、ガルシアはラウの手を止めさせた






ガルシアは自分の下半身の着衣を緩めながら シュリに近付き
両腕をまだ天井から吊るされたままで
膝立ちのシュリの顎をグイと持ち上げる



「おい、誰が寝てよいと言った・・・?
 ワシを満足させるのだ、起きろ」

そう言うと 意識も朦朧とするシュリの口に
取り出した自らのモノを押し込んだ






「・・ンッ!!・・グッ・・・・・・・!!!!」


苦しさにシュリが意識を取り戻す
自分の口に 男の猛ったモノが入っていた
驚き、目を見開いた・・・



「ンンンッ・・・・・・・ンっっーーーーー!!」

必死に顔を振り、逃れようとした
が、ガルシアの大きな両手が頭を押さえ込んでいた





「ンッ・・・・・・ンッッッンン・・・・・・・・・・!」

それでも 口からそのモノを引き抜こうと暴れ、首を振り、
ガシャガシャと鎖を鳴らした

その度に破れた皮膚は傷口を開き 床に鮮血を滴らせる




「クソッ・・・!!!  
 ・・・ 大人しくしろ!! 歯を立てるな!!!」

ガルシアがシュリの髪を掴み、更にその喉奥へ圧し込もうと
顔を引き上げる




その時だった




「痛ッ!!!!!!!!」

ガルシアが叫び、
その大きな体が シュリの前から数歩、後退った






「この下手くそがっ!!! 歯を立ておって!!」

ガルシアが思い切りシュリの肩口に 握っていた鞭を振り下ろす




「・・・ンァッ!!!」
シュリの悲鳴が響いた


2度・3度・・・と打ち据えてもガルシアの怒りは収まらなかった

鞭を床に投げ捨てると、緩めていた着衣のベルトのホルダーから
護身用のナイフを引き抜いた



「陛下っ!何を・・!」
ラウが咄嗟に叫ぶ

「うるさいっ!」

ガルシアはそれを一喝すると、左手でシュリの顎を鷲掴む
両腕を吊るされたまま、肩で息をするシュリの顔をグイと上げさせ
薄く開いたシュリの目を睨み付けた


そのまま右手に持ったナイフをシュリの胸にグッと圧し付ける
鋭い刃先は それだけでシュリの皮膚を裂き、胸に喰い込んだ



「・・ンッ!!!」

痛みでシュリの瞳が大きく開かれる




だがガルシアは、力を緩める事もなく
そのままの圧力で それを斜め上に勢いよく引き抜いた





「・・・ングッァっっっ・・!!」

鞭で裂かれた皮膚の上に 更に深い傷が口を開け
鮮血が真っ直ぐに湧き上がる




「このワシに歯を立てた罰だ!」

翻したナイフを再びシュリの体に圧し当てる

「ンッッ・・・!」 シュリが呻く





「陛下!!! お止め下さい!!
 今のシュリ様では・・・・!
 今、どれほどの痛みを与えても、
 陛下にご満足頂くのは無理です!!!
 もう・・・ お止め下さい!!」


怒りで叫ぶガルシアの横に ラウがすがるように跪き
その腕を押さえていた






華燭の城 - 52 に続く
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華燭の城 - 52

ラウの視線の先に うな垂れたまま肩で激しく息をし
身体中から血を流すシュリが居た

床には 暴れ、飛び散った血が 
まるで絵画の様に暗い部屋に色を添えている




「クソッ・・! この役立たずめがっ!」

ガルシアはラウに腕を押さえられ
自身の体の火照りの行き場を無くし 怒りの声をあげた




「よーし! いいだろう!
 シュリ! 今は勘弁してやる!
 だが、代わりをラウムにさせる!
 今夜はお前がワシを満足させろ!ラウム!」


ラウは一瞬ガルシアを見上げたが クッと唇を噛んで目を伏せた


そして片足で跪いたまま、右手を左胸に当てる最礼を示し
「・・・・わかりました」
そのまま小さく頭を下げた





「シュリ! お前が言う事を聞かぬ役立たずだからだ!
 ラウムはお前の身代わりだ! よく見ておけ!」


その声に シュリが薄っすらと目を開けた
ガルシアが シュリに見せつける様にラウの頭をグイと掴む




「・・・・・・ ラウ・・・・ 何を・・・・・  
 ・・・・やめ・・・ ろ・・・・・!」



ぼんやりと霞む視界 
そこに ガルシアの前に押さえ付けられる様に跪く
ラウの姿が見えていた






自分の目の前で、ラウは目を伏せたまま、
あの細い指にガルシアのモノをとっている

そして口を開け、舌を差し出し・・・・・ それを舐め始めていた




自分の・・・ 身代わり・・・・


シュリは小さく首を振った




「やめろ・・・  やめろっ!!!」




ラウはゆっくりと舌を這わせた後、丁寧に舐め擦っていく
ガルシアは半眼でその様子を見降ろしながら
薄く笑い唇端を上げた


ガルシアのモノが更に大きく猛り始めると、
ラウはその繊細な指で自らの口奥へと運び入れる

柔らかな粘膜で包み込んだまま頭を前後に動かすと
ガルシアは 呻く様に小さく声を出した





「そうだ、そこだ・・・・
 もっとだ・・・・・・・・・・」

ガルシアの手が自分を掴んだ時と同じ様に ラウの頭を掴み
その手でラウの動きを欲しいままに操っていく




「グンッ・・・・ ンッ・・・・・・・・」


徐々にガルシアの手が激しくラウの頭を動かし
自らも腰を打ち付け始めると
ラウの喉から苦し気な くぐもった声が漏れ始める

解けた黒髪のかかる背中が 小さく震えていた





今、ラウの喉の奥に
ガルシアのモノが突き込まれ、動いているのだ・・・・
自分の身代わりで・・・
こんな・・・・・・
やめろ・・・ ラウ・・・・
かすれ、既に満足に出ない声でシュリは何度も叫んでいた







湿った音が続いていた
ラウの引き攣った呻きが何度も聞こえる
ガルシアの荒い息遣いが響く 長い長い時間だった



やがてガルシアの動きが一気に大きくなり
掴んだラウの頭に腰を打ち付けたかと思うと


「んっ・・・! でる・・・っ・・・」

その声の直後、震えていたラウの背中が ピクンと跳ねた
それでもまだガルシアの手は ラウの頭を離そうとはしなかった

その後も何度かゆっくりと抽挿を繰り返したあと 
小さくコクンと、ラウの喉が2度3度動く




そしてやっとその口から
細い糸を引きながらガルシアのモノが引き抜かれた



ハァ・・ ハァ・・
ラウは片手を床に付き、激しく肩で息をしてから
ゆっくりとガルシアに頭を下げた




「やはり上手いな・・・・ お前は」

ガルシアは フゥと息を吐き
満足がいったようにそのラウの黒髪へ手を置き見下ろした






「そうだ、ラウム・・・・・ お前がシュリを教育しろ
 ワシが満足できるように教え込め
 今のままでは 使い物にならん、いいな!?」



ラウが驚き顔を上げる



「陛下・・・・ それは・・・・・」

「これは命令だ、逆らう事は許さん」




ガルシアはそのまま 茫然とするシュリの側へ行き

「今夜はラウムに救われたな・・・・・」
そう言って顎をグイッと掴み上げ、じっとシュリを睨みつけた






「今日はもういい、終わりだ
 シュリを部屋へ連れて行け」



ガルシアはそれだけ言い捨てると、二人を残し部屋を出た
いつもの部屋でグラスに酒を注ぎ、一気に煽る
その顔には ”使用人に弄ばれる神” を想像しているのか
満足気な嘲笑が浮かんでいた



ラウは床に転がった杖を掴み 右手でグッと口元を拭った

ゆっくりと立ち上がると、滑車を下げ
その場に倒れ込んだシュリの冷え切った身体を
そっと抱き起こす


手枷を外し 石牢を出た時には
既にガルシアの姿はそこにはなかった






華燭の城 - 53 に続く
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華燭の城 - 53

部屋に戻りシュリをベッドに横たえると
「すまない・・」
薄く目を開けたシュリが小さく呟いた


シュリの脳裏には、あの ラウとガルシアの行為が焼き付いていた




「私の身代わりに・・・・・・・ 
 ・・・・あんなおぞましい事を・・・・」

閉じた瞳の端から 後悔と謝罪の涙が零れ落ちる



「シュり様・・・・ あれは・・・・ 
 あれはもうずっと昔・・・・・ 15年も前からの事
 シュリ様のせいではありません
 私の様な者の為に、涙など・・・・・」

「ラウ・・・・」



やはり自分の思った通りだった・・・・
ラウは子供の頃から、ああやってガルシアに・・・・
そして、その脚までも・・・・




シュリは悔しさで何も言えなくなった


何を言っても、どんなに多くの慰めの言葉を連ねても
それはあまりにも軽過ぎる気がした




「シュリ様・・・ 
私の事はお気になさらず・・・と申し上げたはず」

そう言いながらラウは
鞭とナイフで裂かれたシュリの体の消毒と手当を始める





シュリはその痛みに黙ったまま唇を噛んだ





自分にはラウがいる
こうして手当ても・・・・
だが幼かったラウは・・・・
今までどうやってこの痛みを凌いで(しのいで)きたのか・・・
ずっと一人で耐えてきたのか・・・・・

それなのに・・・・・
そのラウに、自分の身代わりをさせた
それを思うと居た堪れなくなった



もうあんな事は2度と・・・







「ラウ・・・」

消毒を続けるラウの手に 自分の手を重ねた



「痛みますか? もう少しです
 辛抱して下さい
 あとは包帯を・・・・」


「・・・・・・教えて欲しい」

その言葉にラウが不思議そうにシュリの顔を見た




「何を・・・・ですか?」

「二度とお前を 私の身代わりになど、させない・・・・・」
ラウの手がピタリと止まった




「シュリ様、私に出来る事は何でも致します
 ですから先程の事は・・・・ もうお忘れに」


「ダメだ
 私がやらなければ お前はまた・・・・・ガルシアに・・・
 頼む教えてくれ
 いや・・ 教えろ、これは皇子としての命令だ」


「・・・・ 命令・・・・・」




その言葉に少し驚いた表情を見せたラウは
そのまま何も言わず、シュリの手当てを続けていたが
暫くすると溜息の様にフッと小さく息を吐いた





「・・・・ 今までにあの様なご経験は?」

「まさか・・・  あるわけがない・・・・・・・」
シュリが目を逸らす



包帯を巻き終え、残った薬を片付けながら
「ですね・・・・」
と、ラウは一瞬 考えるように言葉を切った




「それでは・・・ 失礼します・・・・」

そう言うとラウは シュリのベッドへと上がり
横たえていたシュリの身体をそっと抱き起こした
包帯の巻かれた背中にクッションを挟み座らせる



「傷は痛みませんか?」

正面からラウに見つめられた


少し蒼いラウの頬に一筋、ガルシアの鞭痕が赤を引き
それは ゾクリとするほど美しかった



「大・・・丈夫・・・・・・」 

その声にラウは小さく頷くと
「何も知らなければ 真似さえできません」


シュリの腰まで掛かっていた上掛けをゆっくりと剥いでいった




「ラウ・・・・ なにを・・・・・」

「これから私がすることをよく見て 覚えてください
 恥かしがらず 言う通りに・・・」


その言葉に シュリが引き下げられる上掛けを引き留め、視線を外す




「・・ でも・・・・・・せめて 灯りを・・・・・・・」

「いけません、見ていなければ」



上掛けを全て奪うと ラウは自身の身体をシュリの足元に置く
一糸纏わぬシュリの体
そこに巻かれた包帯が透き通る肌に痛々しい




「脚を開いて」
ラウの静かな声が告げた





華燭の城 - 54 に続く
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華燭の城 - 54

一瞬の空白の後
戸惑いながらもシュリがゆっくりと自らの脚を開く

ラウはその脚間に入り そっとシュリのモノを手に取り顔を寄せた

そしてガルシアに奉仕した時と同じ様に 小さく口を開け
シュリの先端に舌を付ける




「んっ・・」

座らされているシュリには全てが見えていた

自分の脚間に顔を埋め、ましてそれを舐めようとしている男がいる・・・・
恥かしさで直視できず 思わず目を伏せた





「シュリ様、目を開けて・・・見て覚えるのです」

その静かな声にシュリは 仕方なくまた目を開ける


ラウはそのまま、手に取ったシュリの根元から順に舌を這わせ始めた
ゆっくりと、そして丁寧に舐め上げる温かく柔らかい舌が
自身のモノの感覚を研ぎ澄ましていく


先端まで這い上がった舌先が先の穴を探ると
「ぁ・・・・」
シュリは思わず声を上げた



それは何度となく そして丁寧に繰り返された
その度にラウの舌は シュリを翻弄する




「・・ぁ・・・ぁっ・・・・んっ・・・・」

羞恥より優しい快感に支配され
時折 ピクンと跳ねるシュリの反応を見ながら
それと同調するようにラウの舌は這い続けた



シュリの息遣いが早くなるのを見届けると
ラウはその口にシュリを咥え込む



「・・っぁ・・・!」



口内の温かな粘膜が 自身の全てを包み込んでいた

小さな声で喘ぎ、シーツを握り締めるシュリの指に
ラウの空いた右手が添えられる






そのままラウは動き続けた

自分の喉の奥の 一番柔らかな粘膜でシュリのモノを擦り
舌はゆっくりと絡むように動いていた

唇が先端の穴を押し広げ、吸い上げる



シュリのほんのわずかな声の変化も
小さく跳ねる体の動きも、握られる指も・・・・
何一つ見落とす事なく
ラウは一番敏感な部分を探り当て、そこを執拗なまでに責め上げた

思わず引いてしまうシュリの腰を
ラウの左腕が抱き、引き寄せる





「ぁ・・・!  ・・・ラ・・・・・・ウ・・・・ そこ・・・・・
 ・・・・・ぁあ・・・
 ・・・・だめ・・・・・・・・・・・やめ・・・・・」



指と指を絡ませたまま 小さく首を振り懇願するシュリの声を聞きながら
ラウはその動きを早めた



「だめだ・・ ラウ・・・・・・・・・・ 口を離せ・・・・・
 それ以上・・・・・   やめ・・・・ もう・・・・ 

 ・・・・・・・・・っ・・・
 ・・・・・ ぁぁあっ・・!」



絡めたシュリの指に力が入り、天を仰ぐと同時に身体が仰け反り
自身ががピクンと跳ねた





ラウは手を握ったまま 肩で息をするシュリを上目で見ながら
その口内に吐き出された精を コクリと喉の奥へ流し込む

そしてまたゆっくりと 周囲に溢れた粘液を舌で舐め取っていった
 
一連の行為が終わると ようやくラウはシュリを自らの口から解放した



「大丈夫ですか? シュリ様」

いつもと何も変わらない静かな声
その声にまだ整わない息の中で
シュリが目を閉じたまま小さく首を振った




しばらくして息が整い始めると 現実が覆い被さってくる

これを自分が・・・するのだと・・・

自分が同じ事を・・・・

ガルシアに奉仕するのだ・・・・





シュリは ラウと絡めた指を解いた

「・・ ラウ・・ ここへ・・・・」 


「今日はもうこれぐらいに致しましょう
 少し休すまれた方がよろしいかと・・・・
 傷口が開いてしまいます」



だがラウの言葉に シュリは無言で首を振る



「・・・わかりました」

ラウは諦めた様に小さく息を吐くと、
ベッドから降り 自らその衣服を脱いでいった






華燭の城 - 55 に続く
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華燭の城 - 55

ラウは背の高い細身ではあったが
その身体は美しい筋肉で構成されていた


長い黒髪が掛かるその姿に シュリは思わず息を呑む


寄宿生活をしていたシュリは 
同じ学生達とシャワーを共にすることも日常だった
もちろん男同士であり、裸を見たからと言って他意を持った事はない


だが今、暖炉の炎に照らされて立つラウは・・・・


先の 剣の手合せの時にみせた動き・・・・
あれはラウの不自由な脚を補ってもまだ余る程の
この美しい肉体の成せる術だったのだ



そしてその身体にうっすらと残る数多くの傷跡らしきもの・・・・



自分にもある、付けられたばかりの同じ傷
だがシュリは、その自分の傷よりも
ラウの傷の方が痛ましく、悔しく思えた


胸が締め付けられる様な苦しさを覚え、
シュリは引き寄せられるようにゆっくりとベッドから降りた
そしてラウを、無言のまま 正面からしっかりと抱き締めていた


全裸で抱き合うと体の温もりが直に感じられる
何故そんな行動にでたのか、シュリ自身判らなかった
だたただ、親が子を抱く様に、
傷付いた幼子を慰める様に、そうしたかった





「・・・幼い日に・・・・・・ こんなにも・・・・
 どれほど辛かったか・・・・・・」


「もう大丈夫ですから・・・」


「これは・・・・」

左上腕の、他の傷とは明らかに違うもの・・・
それは痣だろうか・・・ 異形の薄赤いモノがあった
それに触れながらシュリが小さく呟く



「ああ・・・ それは生まれ付いてのもの
 傷付けられたわけではありませんし、痛みもありません
 御心配なさらず・・・」


「そうか・・・・ よかった」








一つ一つの傷を労わる(いたわる)様に指でなぞり続けるシュリを
ラウは静かに見下ろしながら その肩に手を置いた


「シュリ様・・・・・」
促され、シュリがラウの足元に跪く・・・




一国の皇太子が 使用人の前に跪くなどあり得ない事だったが
その姿をラウは冷静に、黙ったまま静かに見ていた




ラウに見つめられながら、両膝を付き 
シュリはラウのモノに、わずかに震える手を添えた


そしてラウの行為を思い出し 口を少しだけ開け、舌を出してみる

たった今された事
ラウが自分にしてくれた事・・・・ 同じようにすればいい・・・

判ってはいる
が、どうしても舌で触れる事ができなかった



皇子と使用人・・・ 
いや、そんな身分以前に・・・・ 同じ男のモノ・・・・
同じ男の生殖器官であり排泄器官・・・・ そんなモノを口に・・・・




ラウは躊躇するシュリを暫く見下ろしていたが

「シュリ様・・・・・ 無理されなくてよろしいのですよ」
静かに言った





その言葉にシュリは小さく首を振る


もうラウを身代わりにはできない・・・
絶対にさせない・・・・

意を決したシュリの舌先がラウのモノにわずかに触れた



「んっ」 

ラウの小さな声がした・・・

その声にシュリが顔を上げる
そこには自分を見つめるラウの姿があった



ラウも・・・・ 私のこの行為で・・・
自分と同じ様に感じてくれているのだろうか・・・
そう思うと何故か胸が熱くなった


もう一度 今度は少し長めに舌を這わせた
自分の肩に置かれたラウの指先に わずかに力が入るのが判る




「これで・・・ いい・・・ のか?」
何度かその行為を繰り返したあとシュリが尋ねた


「ええ・・・  次は口に含んで」

「口に・・・」

シュリは一度目を閉じたあと 深呼吸をすると
そのままゆっくり自分の口内へと運び入れた



柔らかな男のモノが 今、自分の口内にある
生々しい感覚にそのまま動けずにいた
どうしていいのか わからなかった・・・

初めての経験に戸惑い動けずにいると 段々と息は苦しくなる


それを察したかのようにラウの手が動いた



「ゆっくりと頭を動かして・・・・・ 歯を立てない様に」

そう言いながらシュリの頭と顎に手を添えると
前後に動きを先導し始めた





「んっ・・・・ っっ・・・」

自分の口から抽挿される男のモノ・・・
思わず体中に力が入り、ラウの脚にしがみついた



「体の力を抜いてください
 それでは動かせません」



そこからはもう何も考えられなかった
ただされるがままに頭を動かした






華燭の城 - 56 に続く
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華燭の城 - 56

最初はゆっくりだったラウの手が徐々に速度を増していくと同時に
そのモノも硬く変化していく




「んっっ・・・んっっっ・・・・・・・!!」

質量を増したそれが 頭を動かされる度
喉の奥に当たり突き上げる



脚にしがみついたまま ラウの手で動かされながら
その苦しさにシュリは思わず首を振った



・・んっ・・・・ 苦し・・・・・・・・
・・・・・やっ・・・ やめ ・・・・・ ラウ・・・・・

だがそれは言葉にならない声だった 





「それではダメです・・・ 歯が当ります・・・・・
 もっと舌を使って・・・・」

喘ぐシュリの頭を持ったまま
ラウは肩で息をするシュリを動かし続ける




シュリの額に大粒の汗が滲んでいく
ただただ早く終われと、それだけを祈っていた



その行為が シュリには永遠に続くように思われたその時
「シュリ様・・・・・  口に出しますよ」
ラウの声がした



「・・・!」

驚いてラウを上目見た
思わず首を振り、口内から抜き出そうとしたが
ラウの手は 否応無しにグイとシュリの頭を抑え込む



「・・・・・・・・んっっっっ!!!!!」

もう一度首を振って拒否の意思を見せたが、既に遅い
もう引く事は出来なかった

同時に口の中で硬くなったラウのモノがビクンと震える・・・




・・・・ンッ・・・!
何かが口の中に吐き出される
しかもそれは一度では無かった
ビクビクと波打ちながら どんどんと放出されていく

その感覚に思わず吐き気を催した





ゴホッゴホッっ・・・・!

ようやくラウの手が緩み 口からそれが抜き取られると
シュリは両手を床に付き、激しく咳き込んだ
 

口端から白濁したモノが垂れ、床にポツポツと滴る


ハァハァ・・・ ハァハァ・・・・・






「・・・・大丈夫ですか?」

上下するシュリの背中をさする様にラウが手を添える

そのまま覗き込む様にして顔を見られそうになり、
シュリは反射的に嫌がり、首を振った



口内にはまだ粘液の嫌な感覚があり、話すことなど出来はしなかった






「初めてですからね・・・・
 でも、本当は一滴も零さず飲むのですよ
 そうしなければ陛下はお許しになりません」

静かな冷たい声だった




その声にシュリは唇を噛んだ
あの時見た光景・・・ それはまさにその通りだった
あの時のラウは・・・
ガルシアの吐き出したモノを全て呑み込んでいたのだから・・・






「・・・・・わかっている・・・・」

言い様のない、訳の分からない敗北感に圧し潰されそうになりながら
やっとそれだけを言い返し、俯いたまま顔を逸らした


その視界に・・・・ベッド横のテーブルに
鞭でボロボロにされた自分の衣服が置かれているのが目に入る
その上には 鈍く光るあの牢の鍵



ガルシアに ここまでさせられるのか・・・・・・
どうしてこんな・・・・・
悔しさと惨めさを握り締めた拳で、グッと口元を拭った










「今日はもう休みましょう
 お疲れになったでしょう
 傷にも障ります」


ラウは自分の衣服を整え
シュリをベッドへと座らせると薬湯を差し出した

無言のままカップを受け取ったシュリは
躊躇なくそれを一気に喉の奥へと流し込んだ

何でもよかった
何かでこの感覚を流してしまいたかった




「大丈夫ですか? 傷は・・・」

「・・・いい・・・  少し・・・ 放っておいてくれ・・・」


カップを返すと、心配するラウの声を無視し
そのまま背を向けて横になった



八つ当たりだと判っている
教えろと言ったのは自分なのだ
そんな事は判っている・・・・

だが、これほどの屈辱・・・
そしてこんな行為1つ満足に出来ない自分・・・
これではラウ一人救えない

酷い無力感に襲われ、自分が情けなかった
薬湯の副作用が その苦しさに拍車を掛ける 




震えの止まらない体で必死に耐え、唇を噛んだ


そんなシュリの背中を静かに見下ろし

「では 今夜は外に控えております
 御用があればお呼びください」

それだけ告げると ラウは背を向けた


ラウ・・・
違う・・・
ラウを拒否した訳ではない・・・・・・
ラウが嫌な訳ではない・・・・・・
ラウ・・・

そう心で呟きながら 苦しさの中でシュリは薬の眠りに落ちて行った






華燭の城 - 57 に続く
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華燭の城 - 57

数時間後、シュリは目を覚ました
まだ薬が効いているのか、傷の痛みはそれほど感じない



わずかな時間でも痛みを感じなくて済む安堵でフッ・・と息を吐き
首を巡らせると、側でラウが ベッドの端にうつぶせていた



ラウ・・・?



見るとシュリの右手が、しっかりとラウのシャツの端を握り締めている


ラウに 「外に居る」 とそう言われた時
無意識のうちに掴んでしまっていたらしい



部屋はまだ温かく、
シュリの額に乗せられた布はまだ冷たいまま・・・・
今しがたまで、起きていたのだろう・・・
ずっと・・・・・




「ラウ、こんな所で寝ては・・・・」

起こしかけて、シュリはその手を止めた




知り合ってもう幾日も経っていたが、
こうしてラウの寝顔を見たのは初めてだった


いつも自分が眠った後も火の番をし、
朝 起きた時には もう朝食の準備ができている
今、こうして痛みを感じずに居られるのも全てラウのおかげ・・・




すぐそばで目を閉じるラウの顔

シュリは横になったまま 手を伸ばし
解けた美しい黒髪が数本かかる顔に 指の甲でそっと触れた

その頬には、ガルシアの鞭で付けられたあの傷がある

もう血は止まっていたが、手当てをした様子もなく
乾いた血が かさぶたの様に盛り上がり固まっている



「・・・・ いつも私の事ばかり心配して・・・・」

シュリが呟くと
「ん・・」  と小さな声をあげてラウの瞳が開いた





「あ・・・・・ ごめん・・・・・ 起こしてしまった・・・・」

「申し訳ありません、私の方こそ居眠りなど・・・・・・
 傷はいかがですか? 
 まだ痛みますか? 
 熱は・・・・」


慌てて体を起こしたラウは、シュリの額の上の布をとると
体温を確認するように手を当てる



「急に体が傷付くと、熱が出ます
 ・・・まだ少しありますね・・・」

布を冷たく濡らし直し、そっと戻すと
心配そうにシュリの顔を見つめた



「まったく・・・」

その行動にシュリが呆れたように微笑んだ




「大丈夫だよ、ラウ・・・・
 私の事よりも 自分の手当てをしないと・・・・ 
 頬の傷、まだ血が付いている」

そう言われ、ラウはやっと自分の傷を思い出した様に
慌てて頬に手を当てた

その様子にシュリがクスリと笑う




「それに・・・・
 眠るなら、ちゃんと横になれ
 今の様に 窮屈に身を屈めたままでは、脚にも良くない
 ・・・ もっと自分の事を大切にしろ」


シュリの言葉にラウは一瞬驚いた表情を見せたが
その顔はすぐに柔らかな微笑に包まれ頭を下げた



「ありがとうございます
 シュリ様も もう少しお休みください
 朝までまだ時間があります
 薬も・・・・ まだ大丈夫でしょう」

上着の内ポケットから懐中時計を取り出し
時間を確認しながらラウがそう告げる



「わかったから、ラウも眠るんだぞ?」

「では、お言葉に甘えて少しだけ休ませて頂きます
 薬が切れて傷が痛み始めたら すぐにお声を掛けてください」




ラウは立ち上がり、軽く頭を下げると
窓際に置かれていた一脚のイスを 暖炉の横に引き寄せた


「・・・そこで?
 火の番をしながら そこで眠るのか?
 そんな所では、ゆっくりと眠れはしない
 ここに居てくれるなら・・・・・ 側にいればいい」

そう言って シュリは自分の隣に視線を向ける




大きな天蓋付きのベッド
シュリ1人が横になっても、まだまだ十分にスペースは空いている



「しかし・・・・・」

「また  ”私の様な者・・・” ・・・と言うのか?
 2度と自分の事をそんな風に言うな 
 ・・・ 横で休め、ラウ
 これも命令だ」

困惑の表情を見せるラウに そうシュリが微笑む




「わかりました、シュリ様・・・・・」

ラウも クスリと笑ながら、上着を脱ぐと
「失礼します・・・・」 そう言って シュリの横にその体を置いた






華燭の城 - 58 に続く
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華燭の城 - 58

翌日 二人は部屋を出た


食があまり進まないシュリを見て
ラウが 「また外へ出てみられますか?」 と声をかけたのだ

何もない城内で シュリの気持ちをほぐすには
それ以外 出来る事はなかった

それに対するシュリの答えは ”また使用人棟に行きたい” だった







使用人達の作業棟・・・

先日行った地下階段へと続く廊下を 二人が並んで歩いていると
正面から1人の少年がこちらに歩いてきていた



その少年は 腕に抱えた茶色の紙袋の中を
嬉しそうにチラチラと覗き込みながら、
まっすぐこちらに進んでくる

シュリ達が前から来る事など、一向に眼中にない様子で・・・・

そして案の定 2人とぶつかる寸前に
「こら、ロジャー」  とラウに呼び止められた





「ちゃんと前を見て歩きなさい」

「あ!ごめんなさい!ラウ!
 今 焼き立てのパンを貰ったか・・・・・」



言いかけ 顔を上げたその瞳にシュリが映る

と、みるみるうちに頬を紅潮させ
まるで 一瞬で春が来たようにキラキラと目を輝かせた





「あ・・・!! あ・・・ あ・・・!
 シュリ様・・・・!? シュリ様ですよね!!
 ・・・・ だよね!  ・・・ラウ!!」



ロジャーと呼ばれた少年は飛び上がらんばかりに
屈託のない笑顔を向けシュリ達を見上げる



「ああ、そうだよロジャー、シュリ様だ」

「やっぱり!!! 
 みんなは この前、シュリ様が来て下さったって喜んでたけど
 僕は学校だったから会えなくて・・・・
 あ・・・! あ・・・ あのっ・・・!  シュリ様っ! 
 よければ僕も握手を!!」


既に真っ赤になった顔で手を差し出した





「ロジャーもここで働いてるのか? 偉いな」

シュリが片膝を付き、少年と視線の高さを合わせて
差し出された手を両手で握ろうとすると


「あ、まって!」

ロジャーは 慌てて一度手を引っ込めると
ゴシゴシと自分のズボンで手を拭い 改めてその手を差し出した




「あ、うん! じゃない・・・ えっと・・ はい!
 今、学校が終って帰ってきたところで・・・・
 これからお昼を食べて・・・
 そのあと下で仕事です!」

少年は手を握られ、更に赤みを増した顔のまま 満面の笑みを見せた





「そうか、じゃあ たくさん食べないとな」

シュリが立ち上がり頭を撫でる


「わぁぁぁ・・・・・」

シュリに頭を撫でられたロジャーは
緊張と恥かしさに完敗し、視線を逃がすようにラウを見上げた




「あ・・ あの・・・ ラウ? 
 これからどこへ行くの? もうお昼だよっ?」

「ん? そうか、もうそんな時間か・・・ 
 シュリ様を・・・・  城内を案内していたんだが・・・
 迂闊(うかつ)だったな・・・・・」





部屋を出た時はまだ午前中だった
シュリの体を思い ゆっくりと歩くうちに
知らぬ間にかなり時間が経っていたらしい

私としたことが・・・・ と
ラウが申し訳なさそうにシュリの方を見遣った




「私なら構わない、あまり食欲もないしな・・・」

シュリが答えると 「だめですよおー!」 返事をしたのロジャーだった




「シュリ様もたくさん食べないと・・・ ですっ!
 ・・・・・・あっ。そうだ!」

少年は何かを思いついた様に
自分が抱えていた紙袋の中に手を突っ込むと
そこからパンを取り出し、パカリと2つに割った



「今 焼き立てを街で貰ってきたんです!
 売り物にならないやつだから 見かけはちょっと悪いけどー
 これ、すごく美味しいんですよ!!」


言われてみれば パンの上に小さなコブの様に飛び出した部分があり
そこが少し焦げている



ロジャーは大小、大きさの違う2つになったパンの
大きい方を、躊躇い(ためらい)もせずシュリに はい! と差し出した

焦げ目は少年の手の中、小さい方に残っている


そして 「いい?」  と、ラウに尋ねる様に視線を渡した




この国で王族・・・
今はガルシアとシュリの食事は、専属の料理人が選ばれている
そこでは材料も調理工程も、全てが厳しい監視の下で行われるのを
下で働く者は皆、当然の様に知っている

それを踏まえての ロジャーの 「いい?」 だった

ラウが優しく微笑み小さく頷く




管理下にあると言っても、余程の緊迫状態・・・ 
例えば外国との戦時下や内戦でもない限りは
本人の意志も ”ある程度は” 自由に尊重される

いつ、どこまで・・・・
それを見極めるのも 世話役としてのラウの務めだったが
この状況で、この年端も行かぬ子が毒などと考える訳もなく
ラウはロジャーが嬉しそうに笑うのを黙って見ていた






華燭の城 - 59 に続く
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華燭の城 - 59

「でも、これはロジャーの昼食だろう?」

「僕は下で つまみ食いもできますからっ!」

そう言ってロジャーは満面の笑みで
困惑するシュリの手を取るとパンを乗せた




「ロジャー・・・ つまみ食いはダメだって何度も言っただろ」

横からのラウの声に、
ロジャーは しまったと言う顔で肩をすくめ ペロリと舌を出す

シュリの手の中では、ほのかな温かさと
甘い香りがふんわりと立った





「じゃあ、私はこっちを頂くよ」

シュリは少年の手に残ったもう片方の、小さい方のパンを取った



「あ、でも・・そっち焦げて・・・・」

言い掛けたがすぐに 「本当にいいんですか?」 と、シュリを見上げる



「ああ、これで十分、ありがとう ロジャー」

シュリが微笑むと 少年は 「はいっ!」 と元気に返事をして
大事そうに手の中のパンを紙袋に仕舞うと 
ペコリと頭を下げ、あの地下室への階段を駆け下りていった








その後ろ姿が階下に消えると
じっと見送っていたシュリの顔から笑みが消えた


「・・・ ラウ・・・
 まさかあの子も・・・・  ガルシアに・・・・」


そう言いかけて、
あまりの想像の残酷さに その先を言う事ができなかった





「ロジャーは大丈夫です」

シュリが何を思ったのか、何を言い掛けたのか・・・・
言い淀んだ言葉の続きを察したラウが
シュリの後ろで、同じく階下を見つめながら応えた



「あの子は町の子です
 陛下は 格や身分、家柄を大変気にされますので、町の子には・・・・」

そう話すラウを 「でもお前は・・・!」 
言いかけ シュリが振り返った



「そうですね・・・
 私の場合は・・・・ この黒髪が余程、珍しかったのでしょう
 珍しい動物を見れば、玩具にしてみたくなるのも人の道理」

自嘲するようにラウが目を伏せる




「・・・動物って、そんな言い方はやめろ・・・!
 ラウはそんな・・・・・」

その言葉に強硬に反論しかけたが、これ以上の言い合いは 
ラウに余計、忘れたい過去を語らせるだけ・・・・
シュリは仕方なく言葉を引いた




「・・・嫌なことを思い出させた、すまない・・・」
 

「いいえ・・・・ お気遣いなく
 それに・・・・ 今、陛下はシュリ様にご執心です・・・・
 ロジャーには 何もされないでしょう」


ラウの言葉にシュリが体の力を抜く


「・・・ならば・・・よかった・・ と言うべきだな・・・
 こんな私でも少しは役に立っているらしい
 あの子は、あんな目に遭わせたくない・・・」




誰も居なくなった階段に再び視線を戻し
ただずっと見つめ続けるシュリの顔を ラウもまた見つめていた







「シュリ様・・・・」

その声にシュリは我に返った

ラウが自分を見つめていた事に気が付き、慌てて視線を逸らした
静かな瞳に見つめられると昨夜の行為を思い出し、鼓動が早くなる




「シュリ様、少しここで待っていてください」

戸惑うシュリに気付くと ラウは何かを思いついた様にそう言い
コツコツと杖をつき、 たった今 少年が消えた地下室へと下りて行った








暫くすると袋を抱えたラウが戻って来る

何を持っているのか と言いたそうなシュリに
「下でハムとサラダ、飲み物も調達してきました
 今日の昼は 外でピクニックに致しましょう
 これなら少しは食欲も出るでしょう?
 何か召し上がらなければ」 そう言って微笑んだ




「ピク・・・・・   って・・・・
 でも、私の食事は決められた料理人が作るのだろう?
 ・・・・いいのか?」

半分冗談の様に言うシュリに


「シュリ様の世話係を 
 陛下から直々に仰せ付かった私が作るのですよ?
 それとも私ではお嫌ですか?」

ラウもまた冗談で応酬する




「いいや、構わない
 ・・・・ ピクニック、か・・・」

子供の様な屈託のない笑みに ラウもフッと表情を緩ませた




シュリは少年から貰ったパンを、ラウの抱える袋の中にそっと入れると
「よし、行こう!
 これは私が持つよ」
そう言ってラウの手から袋を取り上げようとする


「大丈夫です・・・・・・」 

ラウは言いかけたが、すぐにニコリと笑って素直に袋を差し出した






華燭の城 - 60 に続く
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華燭の城 - 60

城の正面の棟・・・ 
公用の館の大きな扉が開くと 少し冷たい風が顔にあたる



「寒くないですか?」
ラウがシュリの傷を心配し声を掛けた



「神国は温暖な国だと聞いた事があります」

「そうだな、私の国はここより暖かい、日によっては暑い日もある
 でも、ここも・・・ 昼間はまだ平気みたいだ」

石畳の庭を歩きながらシュリが答える




「そうですね、この国は 日が落ちると一気に気温が下がりますが
 日中ならまだ凌げる(しのげる)かと・・・・・」

言いかけてラウが急に言葉を止めた





「・・・?  どうした?」

ラウは何も言わずに 杖を支えにして その場に片膝を付くと
地面へ手を伸ばした

その手の先・・・・
石畳の隙間の わずかに残った土の間から
小さな薄蒼の花が顔を覗かせていた



「花・・・・・!」
シュリも嬉しそうに屈み込もうとした時だった



プツ。。



小さな音を立ててその花は ラウの指で手折られていた



思わず 「あっ・・・」 とシュリが声をあげる





「どうして・・・・ どうしてだラウ! 何故 折った!」

いきなり大きな声を出すシュリに
今まさにその花を捨てようとしていたラウは不思議そうに顔を向けた





「どう・・ して・・・・  ですか?」

「そうだ! こんなに寒い場所で、懸命に花をつけたのに!」

唇を噛んで 真っ直ぐな視線で抗議するシュリのその悲しそうな瞳に
ラウは 少し困惑しながら 「申し訳ありません」 と答えた



「ただ・・・ ここでは・・・・
 城内では草も花も木も 
 種が落ちる前に全て根絶やしにしてしまうのが決まり
 陛下のご命令ですので、皆そうしております」


ラウが静かに頭を下げる


「草も花もみんな・・・・・?
 だからここの庭は一本の木さえ無いのか・・・
 どうしてそんな事を・・・・」


何もない、ただ無機質な石が敷き詰められただけの
冷たい広い庭を見ながらシュリが呟いた

そして その冷たい場所へ
今まさに捨てられようとしていた ラウの指先の小さな花

それをすくい取る様に シュリが両手を差し出すと
置かれた感覚さえ感じ取れない程のか弱い花が
そっとその手に乗せられた




「樹木は燃えます
 花も草も同じこと
 戦になり火を放たれれば ひとたまりもありません
 ですから、ここにあるのは燃えない石だけなのです」


「・・・・戦、戦・・・・・・
 ここは・・・ この国は全てが戦の為にあるのか・・・・」


シュリは悔しそうにそう言うと
手の中の小さな花を一度 両手で包み込み、何かを小さく呟くと
自分のシャツの胸ポケットへ挿し入れた




「城の外には 山も川も木も・・・・ 自然はたくさんあります
 街には花も草も広場も公園も・・・・
 無いのは塀の中、城内だけです
 この国の全てがそうだとは・・・・ 思わないで下さい」

少し寂しそうなラウの声だった




シュリは小さく息を吐き 「大きな声を出して悪かった・・・・」と
諦めたように言うと、ゆっくりと歩き始める

それを追うようにラウも後に続いた






「私も街に戻れば花を愛で、木陰で休みます
 なのに・・・ 城内では、これが当たり前だと思っておりました
 いつの間にか、少し感覚が麻痺していたのかもしれません」


確かに、城内に樹木や草花が無いことを不思議に思ったことなど
一度も無かった
特別に見たいと、そう願った事さえも無かった
そういう物は 街に戻ればいくらでも普通にあったからだ


だが、この皇子は違う
ここから出られないのだ・・・・
もし陛下が城外へ出る事を認めなければ、
もう一生 草花や木に触れる事も、見る事もさえも出来ない・・・・

それは大袈裟ではなく、
ガルシアの性格を知っていれば 十分に可能性がある事だった




 
それで木が見たいと・・・・
以前シュリが呟いた言葉をラウは思い出していた





「シュリ様・・・・  城の裏手へ参りましょう」

「裏・・?」

黙ったまま前を歩くシュリにラウが声を掛け 横へ並ぶ



「はい、手は届きませんが・・・ きっと喜んで頂けるかと・・・」






華燭の城 - 61 に続く
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華燭の城 - 61

城のずっと奥・・・・ 
緩やかに丘を上り、長い長い石畳を進んだ先
そこに黒い鉄柵が巡らされた一帯があった

その柵の1箇所が門になっていて、中へと入れる様になっている

ラウはその鍵のかかっていない小さな門を開け
シュリを中へと招き入れた




そのまま城の裏手へ回り込む様に角を折れると
そこは丘の最先端で、目の前に広大な景色が飛び込んでくる



「湖・・・」

シュリの部屋からは城の陰になり全く気が付かなかったが
城の裏には その全貌が一度では掴みきれない程の巨大な湖があった

城が建っている湖のこちら側・・・
手前はやはり今までと同じ石畳だったが
向こう側・・・・ 湖の遙か遠くの対岸には 豊かな森が見えていた

今、シュリ達はその広大な湖を見下ろす丘の上に居た




「森だ・・・・」

久しぶりに見る緑豊かな自然に、シュリが目を輝かせた




「ラウ・・・・・ ここは・・・・」

「ここは男子王族専用の墓地です
 これだけ大きな湖があれば、火を放たれてもここまでは届きません
 ですから対岸の森は そのまま残っています」




遠くの木々が風に揺れている
静かに植物の匂いのするその風が 頬を撫でる

耳を澄ませば 湖面を渡る水音

その水音は遠い神国の湖をシュリの脳裏に思い出させ
遥か対岸の葉を揺らす風音に、さえずる鳥の声さえも聞こえる様な、
そんな錯覚を起こさせた




「なんて良い風だ・・・」

シュリは思わず深呼吸をした





それを数度繰り返し、身体いっぱいに緑風を含んだシュリは
嬉しそうにラウの方へ首を巡らせた


「ありがとう!ラウ!
 こんな景色が見られるとは思ってもいなかった!」

「喜んで頂けましたか?」

「ああ、もちろん!」



喜ぶシュリの姿を見ながら微笑むラウの後ろには
たくさんの白く四角い石の墓標が、石畳の上に直接置かれ並んでいた




「男子だけの墓地って言っていたな? 
 墓まで女性は別なのか?」

ゆっくりとその墓標へ近付くシュリの後をラウが追った



「はい、陛下の命で
 妃様達女性の墓は全て城外の別の場所に移されました」

「亡くなってまで、そんな事を・・・・」





シュリが 足を止めた

どの墓も無造作で、手向けの花らしき物さえ 1つも無い
適当に、形式だけに、仕方なく、地面に石を置いた。
その類の形容がふさわしい閑散とした風景だった




その事にもシュリは違和感を覚えたが
それ以上に異様に思えたのは その墓石、そのものだった

足元の墓石は不揃いで 大小さまざまな大きさがあった
そして一番異質なのは、
どの墓標にも 書かれてあるべき名前が無い事だ
・・・いや、その部分が削り取られた跡があるからだった



「大小あるのは、亡くなった年齢に応じて大きさが違うからです
 小さいのは子供の墓です 
 名が削られたのは・・・ それも、陛下の命です」

無名の墓標をじっと見つめるシュリの様子に ラウが説明をした





「ガルシアが・・・?」


「はい・・・
 死者は汚れに満ちた亡者・・・・
 現世での名を付けたままにしておけば、
 いつまでもこの世に遺恨を残し
 生きている者に災いをもたらすと・・・・
 そう言われ、死者から全ての名前を剥奪したのです」


「そんな・・・・!
 死者は災いをもたらしたりはしない
 それどころか、神に召され我々を守ってくださる存在だ・・・!」




シュリは悔しそうに俯くと、一番小さな墓の前で跪いた
その小さな墓でさえ、名前が無残に削られている



「酷い・・ この子はなんと言う名だったのだろう・・ 
 可哀想に・・・・・」



シュリはわずかに残った BともSとも判らなくなった
読めない文字を指でなぞると、
胸のポケットにあった薄蒼の花を その墓標の前にそっと置いた

そして両膝を地面につけ、手を組み祈りを捧げる





「ラウ・・・
 もしまた城内の花を手折る事があったら・・・
 その時は捨てるためではなく、ここに・・・
 この子等にたむける為に摘んで来て欲しい」

そう言って顔を上げた



その言葉にラウは少し驚いた表情を見せた



「・・・わかりました シュリ様」

シュリのその姿をじっと見つめていたラウも心悲しげだった






華燭の城 - 62 に続く
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華燭の城 - 62

「シュリ様、そろそろ昼食に・・・・ ここはもう・・・・」

墓地から出ようと促すラウに
「いや、昼食はここで食べよう」  シュリが立ち上がる


「ここに亡者など居ない
 皆、神に召された安楽の場だ
 あ・・・ しかし さすがに墓標の前では不謹慎か・・・・」




 
周囲を見回したシュリの目線の先
湖のすぐ側の崖に 大きな岩があった

「あそこにしよう」

先導してシュリが歩き始めると

「シュリ様、ご注意ください
 この先の崖は柵もなく危険です」

ラウが慌てて後を追った






崖傍まで行くと、そこはラウの言った通りの断崖絶壁だった


湖の水は青く澄み、一見するだけならとても美しかったが
その底は果てを知らぬほど、
どこまでも暗い深淵に続いている様に見える


「ここから落ちた者は、その遺体さえ上がりません
 故に(ゆえに) その底を見た者も居らず
 この湖は 底無しと言われているのです」

 





大岩に腰を下ろそうとするシュリを ラウは一度制してから
岩の上に自分の上着を掛け広げた

「どうぞ」 とシュリに座るよう促してから
袋の中から 少年にもらったパンを取り出す

ハムやサラダを器用に挟むと、
ナイフで食べやすく切り分けシュリの前に置き
飲み物も準備していくと、
岩の上が あっと言う間に ランチテーブルになっていく





「ラウは、何をさせても完璧だな」

切り分けられたパンの半分を シュリはラウの前に置いた



「パンはこれだけですので、私は結構ですよ」 

そう言って微笑むラウの顔を シュリがじっと見つめた



「どうかされましたか? 何かお嫌いな物でも?」

「いや、そうじゃない
 ラウは優しいなと思っただけだ」




その言葉にラウは不思議そうな顔をした

「私が優しい・・・・ ですか?」

「ああ、他の食材同様、
 パンを余分に持って来ようと思えば出来たはず
 だがそれをしない」



ラウは ああ・・・・ と言った様子で
少し照れた様な笑みを浮かべる

少年が下りたすぐ後に パンを取りに行けば
やはり小さい方では足らない と言っているようなものだ

それを少年が見れば、やはり大きい方を渡すべきだったと
後悔するかもしれない
だからパンは少年のものだけで、他には持って来なかった・・・




シュリは微笑みながらもう一度 ラウに半分のパンを差し出す

ラウもシュリと目が合うと、クスリと笑って そのパンを受け取った




遅めのランチは少し焦げの味がしたが
緑風に髪を揺らすそのシュリの顔は本当に嬉しそうで
今までで最高の笑顔を ラウは見る事が出来ていた







「ラウ? あのロジャーはいくつだ?
 あんなに小さな子も ここではたくさん働いているか?」

紺青の湖を見ながらシュリが尋ねた




「あの子は10歳のはずです
 今は他の使用人達と一緒に
 城内の使用人専用の別棟に住んでいます
 両親が亡くなり、街で路頭に迷っていたのを 
 官吏の誰かが連れて来たと聞いています」


「10歳でたった1人・・・・」


「はい、ですが・・・・
 街で家も食べ物も無い時に比べれば、城に居る方が幸せです
 ここに居れば暖かい部屋も、食べ物にも困りません
 学校へも通わせてもらえますし
 幼くても 午後、働いた分は、きちんと給金も出ます

 15歳で学校が終わり、独立出来る年になっても城を出ず
 そのままここで働く者がほとんどです
 皆、ここが好きなのです」




シュリは あの地下室でも
楽しそうに働いていた人々の顔を思い出していた

辛い仕事だろうが、その顔は皆、楽しそうで活気に溢れていた
そしてあのロジャーも、明るく元気だった

ラウの言う通り、皆の城での暮らしや待遇は
自分が思う程、悪くはないらしい






「・・・良かった」

シュリが安堵の表情を見せる




「シュリ様・・・・
 陛下はあのような・・・ 
 懸命に咲いた草花を一掃しろと言われ、死者を忌み・・・
 そして神国を攻め、シュリ様にあの様な酷い事を・・・・・・ 
 
 それでも・・・・
 それでも城は・・・ 
 この国の ”王” という存在は
 この城で働く者にとっても、 国民にとっても
 無くてはならないものなのです」



ガルシアを語るラウの声が重くなっていた

ガルシアの所業に納得ができないのは、
ラウが一番 身をもってわかっているはずだ

だが それでも。 と言うラウの気持ち・・・・




シュリが顔を上げた



「わかっている、ラウ・・・・」

ガルシアが 自分やラウに対してどんなにおぞましい行為をしようと・・・
その本質がどんな王であったとしても
今 この大国が、そこに暮らす多くの民が、
戦さもなく平和に豊かに暮らせている事だけは確かだった







シュリは静かに湖面を見つめた

薄い陽に映る湖は何事もなかったかの様に 静かに、ただそこにあった
ガルシアの あの醜行も夢だったと思わせてくれる程に・・・・






華燭の城 - 63 に続く
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華燭の城 - 63

「あれは?」

湖を見ていたシュリが
墓地から少し離れた先に 小屋らしき物を見つけ指さす



「ああ、あれは物置小屋です
 かつて・・・ 先代王の頃は、
 ここを管理する墓守の小屋だったのでしょうが、
 今では 城で不要になった古具などが入れてあります
 
 ・・・・ここの管理と言っても、今はご覧の通りの有様で、
 手入れをする事も無く忘れ去られてしまい、
 もう誰も使いませんので・・・・」


一度言葉を切った後

「シュリ様、行きましょう!」

ラウが突然シュリの手を取り立ち上がった





「えっ・・・ラウ? どこへ・・・・ ラウ・・・?」

ラウは 戸惑うシュリをどこか愉しむ様に
その手を取ったまま 小屋の方へとどんどんと歩いて行く



そして小屋に着くと 扉横に置いてあったイスの横に屈み込み
下を探り始める

ほどなくラウの手には小さなカギが握られていた





「・・・それは? ここの?」

「ええ」 

宝物を見せる子供の様な笑顔で嬉しそうにラウが答え、
慣れた手つきで鍵を開けると ギィと軋んだ音と共に扉が開いた





中にはラウの言った通り かなり古びた道具や箱が積み置かれ
昔はそこが緑豊かな丘だった事を思わせる芝刈りの器具なども
整然と置かれていた


その部屋の一番奥の壁際に
道具達に隠される様にして一段高い場所がある


ラウはそこへ行くと、
大きな木箱をいくつか横へズズズ・・・・ と動かした


その奥に、箱に隠される様にあったのは十字架とマリア像
蝋燭を灯す燭台も両側にあり、それは さながら小さな祭壇だった






「これは・・・・!」

ラウは無言のまま 小さなマリア像の前に
不自由な脚で跪いた(ひざまづいた)



ひとしきり祈りを捧げた後

「陛下はこういう物を嫌われますので・・・ 秘密ですよ?」

そう言って振り返り 悪戯っ子の様に微笑んだ






「・・・・これはお前が?
 ・・・・・・ああ! ラウ! すごい! 
 わかっている!! 他言はしない!」


長く歩いたせいか わずかに汗を滲ませたシュリも
嬉しそうに笑みを浮かべ ラウの横で跪き祈りを捧げる





「・・・・ありがとう!! ・・・ラウ! ここへ連れて来てくれて! 
 本当に、本当にお前はすごい!」

祈り終えたシュリは 思わずラウを抱き締め、頬を寄せた




「いいえ、私はただ・・・・」

ラウが少し照れくさそうに言いかけた時だった





「・・・・?
 ・・・・ シュリ様? 
 熱が上がっていませんか?
 ・・・ 体が熱い・・・ 」


ラウはハッと顔を上げ、懐中時計を取り出した

朝、部屋を出てから 昼もとうに過ぎ、
既に午後から夕刻近くと呼べる程の時を指している

いくら楽しかったとはいえ、こんな失態を・・・・
ラウは自分自身に舌打ちをした





「申し訳ありません・・・ 今日の私はどうかしている・・・
 薬の時間を忘れるなど・・・
 お辛くありませんか・・・?」

「大丈夫だ・・・ そんなに心配しなくても・・・」

抱きついたままでそう言うシュリの額には
大粒の汗が浮かんでいる





「シュリ様、失礼します、お体を・・・」

自分にすがる様な体制のまま動かないシュリの腕を解くと
その体は既に自身が支えられないのか ユラリと揺れた

シュリを支えながら ラウがシャツのボタンを外す

今朝、ラウが巻いた包帯に血が滲み出ていた







「シュリ様、とりあえず部屋へ戻りましょう」

「大丈夫・・・・ もう少しここに・・・・」

「いけません、戻って手当しなければ!」


ラウが杖を掴み、右手でシュリを立たせる・・・・立たせようとした
が、シュリはもう立ち上がる事も出来ず
そのまま辛そうに肩で息をしながら床へ手をついた






華燭の城 - 64 に続く
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華燭の城 - 64

「シュリ様!」

ラウが慌ててその体を支える



「ごめん・・・・ やっぱり・・・」

そう呟くシュリの呼吸はみるみるうちに荒くなり
はだけたシャツから見える出血は
じわじわと浸み出す様に増えていった




薬湯が効いている間は 嘘の様に体は軽く、痛みもなかった
だが、一度切れてしまうと その痛みと苦しみは 
それまでの反動もあってか
何倍にも酷くなり その傷だらけの体を襲っていた





「シュリ様! ・・・・シュリ様っ!!」

呼びかけるラウの声が段々と遠くなっていった










シュリは体に何かの振動を感じていた
息苦しく目を開ける事さえも辛かったが
それでもそれが、ラウが自分を抱えて歩いているのだと
その腕や体から伝わる温もりから感じ取っていた

脚が悪いのに・・・・・・

遠のく意識の中でそう思っていた









「シュリ様・・・・・ シュリ様・・・・」

大粒の汗を浮かべながら 苦しそうに息をするシュリの名を呼んだ
熱で紅潮した頬にそっと指先で触れると、シュリはようやく薄く目を開く




「よかった・・・・  
 ・・・・ 薬湯です・・・・ これを・・・」

ラウは、ベッドに横たわるシュリの首をわずかに持ち上げると

「口を開けて・・・」  指で促す様に唇に触れ、
その薬湯を口に含ませた

だがシュリは、朦朧とする意識の中に注がれる薬に、思わず咳き込み
嫌がる様に首を振る



「もう少し・・・・
 もう少しだけ我慢してください」



肩で荒く息をするシュリの唇端から零れた薬を ラウが指で拭うと
外界からの刺激は全て痛みだと認識しているのか
痛みから来る拒否反応なのか
それとも、自己防衛の無意識の反応なのか
その指を振り払おうと、シュリは体を捩り、暴れ様とする


それでも嫌がる手を押さえ付け、
ラウはシュリの口内へ残りの薬湯を注ぎ込んだ


多少強引ではあったが、コクリとシュリの喉が動くと 
ラウはその体を自分の方へと抱き寄せる
すぐにシュリが苦しみ始める事は判っているからだ




「・・・っ・・・・・・・・!」

直後に襲う激しい副作用



「暫くの辛抱ですシュリ様、すぐに楽になります」

そう言って ラウは両腕で熱いシュリの体を強く抱き締めた








やっと呼吸が出来始め、シュリはゆっくりと目を開けた
ベッドの横で自分を覗き込むラウの顔が 間近にあった



「・・・・ラ・・・・ウ・・・」



「気が付かれましたか?
 申し訳けありません
 お体の事も、薬の時間も考えず
 あんな遠い所まで連れ出してしまい・・・・ 全て私の責任です」

「ラウが・・・ 謝る事じゃない・・・」

頭を下げるラウにシュリが小さく首を振った
 




「・・・ここ・・・・ は・・・・・?」


視界に入ったそこは見慣れない部屋だった

床に血の付いた包帯がまとめて置かれているのは
ラウが手当してくれた物だろう





「私の部屋です
 シュリ様のお部屋まで、
 お連れできれば良かったのですが・・・」

ラウは恨めしそうに自分の脚に視線を落とした



シュリは 自分を抱えて歩いていたラウを思い出していた
不自由な脚で自分を抱えて部屋まで運んでくれたのだ
きっと 人に見られぬ様に、気を使いながら・・・





「ありがとう・・・ラウ・・・」

シュリは胸がいっぱいになり それだけ言うのがやっとだった






華燭の城 - 65 に続く
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華燭の城 - 65

使用人棟と呼ばれる場所の一角にあるラウの部屋


全てが石造りに見えていた城内の棟・・・
だが、意外にも内部は木造だった

いや、元々 木造建築だった物の外側だけを
戦さに備え、上からぐるりと石で囲った。といったところだろうか・・・



木造の、決して充分な広さとは言えないその部屋には
小さな窓が一つに ベッドに机、椅子

あとは衣類を入れておく棚ぐらいしか 家具らしきものはないが
今、自分の寝ているこの部屋の奥にも 
もう一つ部屋が続いているのか・・・
出入口の他に 別の小さな扉が見えていた



床も壁も使われている木が薄いのだろう
廊下を行き交う人の気配も感じられ、わずかに薬品の様な匂いもする





「・・・・これは・・・ 薬の匂い・・・?」

「あ・・・ 申し訳ありません
 ご不快でしょうが、暫くここで御辛抱を・・・・・」


確かに、多くの薬剤が混ざり合い、決して良くはない匂いだ
慣れない者が不快に思っても仕方がないと、ラウが頭を下げる





「それは構わない・・・・ でも、ラウ・・・・ 薬をここで?」

「はい、隣の部屋で調合しています
 危険な薬品も多くありますので、
 あそこにはお近付きにはならない様・・・・・」


ラウが奥にある もう1つの小さな扉に視線を送る





「危険な・・・」


ラウの言う通りだった
そこはどう見ても薬品を扱うのにふさわしいと言える場所ではなかった
簡素な木造の部屋で、小さな窓がたった一つのこの部屋では
十分な換気さえ出来ない程に・・・・



こんな場所でいつもラウは、自分の為に薬湯を作り
そしてここで眠るのだ


薬品の知識があまりないシュリにでも
ここで日々を暮らす事が
どれほど体に悪い事なのかぐらい容易に判る






「ラウ・・・・」

横になっている自分を覗き込む形で見るているラウの顔に
シュリの両手が伸びる

その頬に触れると・・・・ そのまま引き寄せた





「・・・・シュリ・・・・・ 様・・・・?」

横たわったまま 首にしがみつく様にして
シュリがラウを抱き締めていた



「・・・・どうされました?」




そう問われても自分でも判らなかった


ラウと出会ってから、日が経つに連れ大きくなるこの想い


いつも自分を側で支えてくれる ”感謝” 
だが、それでは伝えきれない自分のこの気持ち・・・・



これは何なのか・・・・



無意識の中で、
それが何なのかシュリ自身もハッキリと判らぬまま、
唇が・・・ ラウの唇を求め、触れた







自分でも何故こんな事をしたのか判らない

抱き締めたラウの体がピクンと動いたのがわかったが
今はただ そうして居たかった








「・・・・あまり力を入れられては傷に障ります」

そんなシュリの気持ちを余所に、ラウはそっとシュリの肩を押し戻し
いつもよりも 一層静かな声でそう言った



シュリの顔が見える距離まで離れると、その目をじっと見据え

「眠っておられる間に 薬湯を固形にしてみました
 中に1錠入っています
 これなら持ち歩けますし、今日の様な事があっても・・・ 
 外へ出られる時でも安心かと」


そう言ってシュリの手に
小さく折り畳まれた白い紙を一包乗せ、握らせた

何事もなかったかのように・・・・





「ラウ・・・・・・・」



何か言いかけたが、それは言葉にならない想いだった




「よろしいですか? 一錠で一回分です
 もうお分りでしょうが、副作用がかなり強い物です
 後でお部屋にもお届けしますが、必ず用量は守ってください」




黙ったシュリに一方的に説明をすると

「今日は夜から宴があります
 それまでもう暫くここでお休みください
 私はもう少し、この薬を作っておきますので」

そう言って立ち上がり隣の小部屋へ入って行くと
カチャリと中から鍵の掛かる音がした






華燭の城 - 66 に続く
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華燭の城 - 66

ギリギリまで自分の部屋でシュリを休ませたラウは
落ち着きを取り戻したシュリを連れて部屋に戻り
宴の身支度をした




「陛下のお側にあがられる時は
 必ずこれをお忘れにならないように・・・
 陛下は、シュリ様が言い付け通り、これを持っているかどうかを
 いつお試しになるかわかりません
 もし持っていないと・・・・」



シュリの首にあの石牢の鍵を掛けながら、ラウがシュリを見つめる

それはラウ自身の経験から来るものだった



「わかっている、ラウ・・・・・」

小さく頷くシュリの、包帯が痛々しく巻かれた体に 古い鍵が揺れる

ラウが後ろで広げたシャツに袖を通し
上から宴用に準備された装いを重ねていくと、
そこには全ての傷を隠し包んだ神の子・・・ 美しき皇子がいた




ラウは着替えを手伝い終えると
これを・・・ とオルゴールにも似た小さな木箱を差し出す



蓋を開けると 中には茶色の小瓶と
その横には1錠ずつ 丁寧に畳まれたあの小さな紙包みがいくつも入っていた


瓶の中には親指の先程の大きさの、白い錠剤になった薬が
こちらは 包まれる事なく、そのままの形で数多く入っている




「・・・ありがとう」

シュリはその箱を受け取りベッドサイドのテーブルへ置くと
中から包みの方を1つ取り出し、それを上着のポケットへそっと忍ばせた







夜の宴の間はまだ薬が効いているのか
酷い痛みを覚える事も無く、無事に終えようとしていた

シュリの本質を試そうと寄って来る学者肌の者、
その身体に触れ、御利益を授かろうと手を伸ばす者・・・
日によっては色々な客がいる

立食形式のこの雑踏の中で 今、不用意に触れられては
いくらシュリであっても、薬が効いているとはいえ
その表情は痛みに歪んだ事だろう

だが今夜、幸いだったのは、
いつにも増して研ぎ澄まされた様なシュリの
凛とした美しさに皆、気後れするのか
安易に触れようとする者が居ない事だった

来賓達は シュリの美しさと聡明さに ただただ陶酔し、感嘆し
そしてガルシアを褒め称(たた)えながら、遠くから見つめるだけだ



その客の反応に ガルシアは上機嫌で大広間を出た

その後ろ・・・
シュリが外へ出ると 廊下で待っていたラウが走り寄った




心配そうにシュリの額に手をあて、体温を確かめながら顔を寄せる


「大丈夫でしたか?
 シュリ様、熱は・・・?  痛みはありませんか・・・?」

「ああ、大丈夫、心配するな」



周囲に聞かれぬ様、小声で尋ねるラウに シュリが微笑みながら頷いた




「ほう・・・」

その様子を ガルシアがじっと見ていた





そのまま二人の側に寄り
ラウから奪う様に グイとシュリの体を抱き寄せた


「・・んっ・・」

強く抱き締められ、傷の痛みにわずかに声を漏らしたが
シュリはそのまま、驚きもせず、嫌がりもせず
ただ、じっと人形の様に無表情で されるがままに立っていた

シュリのした事と言えば わずかにその顔を背けた事ぐらいだった





そんなシュリに 表向きには 「ご苦労だった」 と息子を抱き締め
褒め労わる(いたわる)父親を装いながら


「随分と気心がしれた様だな
 少しばかり体を重ねて 情が移ったか? 
 ・・・・長年、ワシが躾けたラウムの体はどうだ?
 なかなか良かっただろう?」

ガルシアは低い淫猥な声で シュリの耳元にそう囁いた

 



その言葉にシュリの顔色が変わった


「ガルシア・・・・ 貴様っ・・・」


目の前のガルシアをグッと睨みつけ、その胸元を掴もうとした





「・・ シュリ様っ・・・」

言葉で 短く止めたのはラウだった





ガルシアの後ろ、少し離れた場所ではあったが
宴から引き揚げようとする客達が 廊下に溢れていた

その者達が、シュリとの別れを惜しむ様に
まだこちらを熱い眼差しで見つめ続けている

それに加え、ガルシアの側近達
多くの使用人も 後片付けに廊下に控えている





「・・・今夜も待っているぞ」

何も言い返せないシュリの耳元でガルシアはそれだけ言うと
身を翻し(ひるがえし)、廊下の奥へと消えていく

それを見ていた来賓達からの

「微笑ましいですなぁ」
「本当の親子の様で」

という感嘆の声が聞えていた






華燭の城 - 67 に続く
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華燭の城 - 67

その夜、シュリはあの部屋でガルシアの腕の中に居た

腕の中と言っても優しく抱かれている訳ではない



冷たい床に 全裸で仰向けに引き倒され
その肢体を開かされたシュリは、両腕を押さえ付けられたまま
自身の後ろにガルシアの激しい責めを受けていた





「んっ! ・・っっ・・・・・・んっァ!! ・・・・・・・!」 



既に深々と挿入され
強引に体内から突き上げる肉塊の痛みに
シュリはただ呻く事しかできなかった


石造りの薄暗い部屋に薪の爆ぜる音と、シュリの呻きが響き
苦しさに喘ぐ声と、燃え上がる暖炉の火に照らされた白い身体が
艶めかしく揺れる

ここに来る前、ラウが巻き直した包帯は
また血に染まろうとしていた






「お前は・・・ んっっ・・! 
 本当に役者だな・・・・・・・
 
 皆、お前の秀逸ぶりに驚き
 その容姿の美しさに
 さすが、神の子よと感嘆する・・・・・

 ・・・・・ んっ・・っ・・・・・っ・・・

 だがそのお前が・・・・・

 ワシの下でこの様な淫靡(いんび)な声を上げているなど
 誰も思いはしないだろう・・・

 ぁぁあ・・・・ 
 いいぞ・・・ シュリ・・・・・
 ・・・ もっとだ・・・・
 ・・・・・・ もっと・・・・・・っ・・・・」




ガルシアが腹を打ち付けながら その快感に声をあげる



「んっ!・・・ぁああっ・・・・
 ・・・  っ・・・・んっ・・・・!!
 ・・・・んぁっ・・・!」





首を振り痛みに耐える満身創痍のシュリの体を
ガルシアは物のように弄んだ


傷だらけの胸の先端を左の指で握り潰し、右手はシュリ自身を握り込む
シュリの脚を自らの肩に抱え上げると
角度を変え、更に奥深くまで自らを圧し込み、抽挿を繰り返す
自分の絶頂が近くなると、その傷だらけの体に容赦なく手を付き
歯を立てた



そして その猛る精をたっぷりとシュリの中に注ぎ込んでから
それはやっと引き抜かれた







ふう・・・ と一度だけ息を吐き
ドッカと真紅のソファーに身を沈めると
仰向けのまま、痛む胸の傷を手で押さえ
まだハァハァと肩で荒い息をするシュリの顔をグイと引き寄た


「んっッ・・・・・・・・・・・・・・・・」

再び小さく呻くシュリを そのまま四つん這いにさせると
自分の、大きく開いた脚の方へと向けさせる



目の前に一度では萎えきらないガルシアの猛ったモノがあった




「お前の身体は段々とワシに馴染んでいくな 
 まさにワシの為にある様な器だ
 
 ・・・で?  あれはもう仕込んだのだろうな? ラウム」



そう言うと シュリの顎を押さえたまま
部屋の入口に立つラウへ湿った視線を向けた




「陛下・・・・ それは・・・・
 ・・・まだ無理かと・・・・」



二人の行為を黙って見ていたラウが
苦しそうに喘ぐシュリを 庇う(かばう)様に答えた





「無理だと? 
 お前達の様子を見ればわかる
 お前・・・・・  もうシュリを抱いたのだろう?」



「申し訳ありません・・・・ 今夜はお許しください」





質問に対して、それは的確な答えでは無かった





上機嫌だったガルシアの顔が ラウの答えで一気に曇った






華燭の城 - 68 に続く
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華燭の城 - 68

「ワシは抱いたのか、と聞いているのだ!
 シュリは お前のモノを咥えたのだろうがっ!」


その声にラウが唇を噛む



「はい・・・  一度・・・・」


「ほう・・・・
 ではお前には出来て ワシには出来ぬと言うのか?
 お前をただ喜ばせる為だけに シュリを与えたのではないのだぞ?
 その意味、お前はわかっているのだろうな?」

冷たい声だった




「・・・ はい・・・」

ラウが頭を下げたまま、小さく答える

それは ”使用人” が ”皇子” を跪かせろという屈辱
”神”を凌辱し、地に堕とせとという命令
幾重にもなるシュリへの冒涜だった




「申し訳ありません・・・・・
 ・・・・・もう暫く時を・・・」



そのラウの苦し気な返答に
ガルシアの冷ややかな目が一層 鋭く細くなる



「ただ許しを乞うだけか?」


その射る様な視線に 深く頭を下げたラウが
ゆっくりと 縛っていた髪を解いた


腰を折ったまま、ガルシアの方へと上げた顔に黒髪がサラリとかかり、
その美しさを更に際立たせ
わずかに上に見る眼は妖艶さを漂わせる




「ほう・・・・ そういう手で来るか」

ガルシアが薄ら嗤(わら)った







「ならば・・・・
 お前が存分に満足させてくれるのだな?ラウム  
 今日は咥えるだけで終わると思うなよ?
 久しぶりにその体、可愛がってやる・・・・ こっちへ来い」



ニヤリと笑いながら顎で指図する



呼ばれたその声に 無言のまま小さく頭を下げたラウが
コツコツと杖を付き側に寄ろうとした時だった



「やめろ・・・ラウ・・・・・・
 もうお前はこんなこと・・・ するんじゃない・・・・・・・
 ・・・・・私が・・・・」


「私でよろしければ」


ガルシアの足元で、
まだ自分の体を支えるのがやっとのシュリが小さく呟く声を
ラウが遮った



「・・・・・・・・ラウ・・・・やめ・・・」

「・・・・何も出来ぬくせに うるさいぞ」


ガルシアの足が 四つん這いのシュリの体を・・・・
出血の続く胸元を下からドスッ!と蹴り上げた


「・・・んッッ・・・!」

その衝撃で一瞬 呼吸が止まる
震える腕が体を支えきれなくなり、
シュリはその場に崩れるように蹲った(うずくまった)


ガルシアは、そんなシュリを冷酷な目で見下ろしながら
床に着いた肩をグイと踏み付ける


「良い恰好だな
 神と言えど所詮はこの程度・・・ ワシの足元でおとなしくしていろ」

そう言うと、再び蹲る(うずくまる)シュリの胸を蹴り上げた



「グッ・・・・!    ・・・・・ゴホッ・・・・・・・・・・・・!」

口内が切れたのか、苦しさに咳き込む唇端からポタリと血が落ちる




揺れる炎の前で ラウが自らシャツを脱ぎ 「陛下・・・」 と声を掛けるまで
憑りつかれた様にガルシアの足は止まる事がなかった

重い音が何度も響く




ラウに呼ばれ、ようやく我に戻ったのか・・・・
顔を上げたガルシアが その姿にニヤリと笑った

ラウは ガルシアの淫猥な視線を正面から受け止め
その意識を自分に向けさせるようにして ガルシアをじっと見つめながら
ゆっくりと全ての衣服を脱いでいく

痛みと苦しさで俯せるシュリには、もう ラウを止める力は残っていなかった





誘う様なラウの身体と視線に自身が抑えきれなくなったガルシアは
テーブルの上の酒瓶を床になぎ落す



ガシャン!!と、グラスや瓶が床に散乱する派手な音で
シュリは顔を上げた


そこには、ラウを乱暴にテーブルに押し倒すガルシアの姿があった




「・・・・・! や・・・・・・・め・・・・」

満足に息を吸う事さえままならず、枯れた喉からは声も出ない
ただ拳を握り締めた



そんなシュリの目の前でガルシアがラウを犯していく

自分の部屋で見たラウの美しい体
それが今、ガルシアの下に組み伏されていた




聞こえるのはラウに命令する声と、
その後に続くガルシアの上ずった息遣い、湿った淫猥な音・・・


ラウは声を上げることさえなく 
ただ玩具の様にガルシアの命に応え
長い手足をガルシアの体躯に伸ばし
言われるがまま、そのしなやかな体を差し出し、弄ばれていた




・・・・・・ラウ・・・・・・・
ラウ・・・・・
やめろ・・・・・
ラウに手を出すな・・・・・・・
ラウは私の・・・・・!!



そこに思い至って、シュリの目から涙が零れ落ちる
愛しい者を目の前で犯される様は 耐えられなかった




やめろ・・・・
やめろ・・・・・・!
やめろっ!

言葉にならない絶叫と共に、胸が圧し潰される様な苦しさがあった
徐々に呼吸が出来なくなり、シュリの意識は闇に沈んでいった














「・・・・・ラウ・・・・・  ラウ・・・・」


うわごとの様なその小さな呼びかけに 
ラウは 「ここに居ますよ」 と手を握り返す

いつもと同じ静かな声と、細い指に安心し、シュリは眠りに堕ちていった






華燭の城 - 69 に続く
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華燭の城 - 69

翌朝 シュリが目を覚ますと、
部屋には既に朝食の準備は出来ていたが
いつもそこにあるラウの姿は見えなかった




「ラウ・・・・・・ 居ないのか・・・・?」

名を呼びながら ゆっくりと起き上がり
鈍く痛む体に手を添えると、傷の手当ても終わっているらしく
包帯も新しく取り替えられている




小さなため息を付き、ふと目に留まった ベッドサイドのテーブル
そこに置いた あの薬を入れた箱の下に、
挟む様に置かれた1通の手紙に気が付き、シュリは手を伸ばした



そこには  『6時間置きに必ず1錠 飲む様に』 とだけ書いてある



・・・・ラウ・・・?


嫌な思いが脳裏を巡った





・・・・・・ラウ・・・!?


自分の血が一気に下がるのが判るほどだった

心臓がドクドクと暴れ出す





昨夜のラウの姿が脳裏に浮かぶ


自分の身代わりに、ガルシアに体を差し出したラウ・・・・・
一言の声を発する事もなく、ただじっと耐えていたラウ・・・・・

あの時、ラウの瞳には何が映っていたのか・・・・

自分を犯すガルシア
そして何も出来ず自分を身代わりにした無力な皇子




そこまで考えてシュリの胸は締め付けられるように苦しくなった



そのラウが 自分とガルシアに嫌気がさし
城を出て行ったとしても不思議ではない

そもそも使用人のラウがそこまでして
自分やガルシアに尽くす義理はないのだから・・・

街には養父の家もあるという

薬師としての腕もあるのだし
今まで逃げ出さなかった事の方が不思議なぐらいだった









ラウが・・・・・   
居ない・・・・

ラウが・・・





そのまま一日が過ぎようとしていた






何度かガルシアの側近らしき男の声で・・・・
・・・・ この部屋に来るのはあのオーバストだろうが・・・
着替えは・・・  昼食は・・・  と声が掛けられたが
その度に必要ないと扉を開けることさえなく追い返した


宴の準備を・・・ と言わない所をみると
今日はガルシアも居ないのだろう




ベッドに座ったままシュリは ずっと自分の手を見つめていた

昨日の夜、確かにラウが握ってくれた手を・・・

ここに居ますよと聞こえた声を・・・




夜になってもラウは姿を見せる事はなかった
暖炉の火もない部屋はひどく冷え
手紙にあった あの薬も飲むことさえしないシュリの体は
痛みに襲われ続けていたが、もうそれさえもどうでもいいと思った




ラウ・・・ 本当に居なくなったのか・・・・
もう私の元へは戻ってきてくれないのか・・・・・




午後から降り始めた雨は激しさを増し嵐になった

冷たい北風が 真っ暗な部屋の窓をガタガタと揺らし
稲光が時折 部屋を明るく照らした直後、ドドンと腹に響く雷鳴が轟く



その音に紛れ、廊下でカタンと音がしたような気がした




「ラウ・・!」


痛む体が反射的に動いていた
ベッドから降り、慌てて扉まで駆け寄り、開く

が、そこには誰もいない



宴も無い嵐の夜
誰も皆、暖かい部屋で束の間の休息を取っているのだろう

人影さえないシンと静まり返る廊下が ただ延々と続くだけだった





・・・ ラウに逢いたい・・・・



そう思うともう我慢できなかった



薄暗い廊下をシュリは1人 歩きはじめた






華燭の城 - 70 に続く
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華燭の城 - 70

使用人棟は確かこの廊下の先を・・・・

広い城内を記憶だけを頼りに歩いていた


だが入り組んだ複雑な造りの城内で、どこまでも続く似たような廊下
そして痛み続ける体
何も羽織らず飛び出してた寒さが シュリの体力を余計に奪っていた





何十分経ったのか・・・・
足が動かなくなり廊下の壁に肩を預け ハァハァ・・と息を整えた
胸の傷が酷く痛み、右手で胸元をグッと握り締めると
あの鍵に指が触れる

「・・・クッ・・・っ・・!」

複雑な形の鍵を思い切り握り込み、
掌に痛みの感覚を集中させてシュリは再び顔を上げた

完全に迷ってしまったのだろうか、それとも昼間との印象の違いなのか
見覚えのある場所は1つも無いような 孤独感に襲われる




どこだ・・・・ ラウ・・・・ 

どこにいる・・・・・!






「あの・・・シュリ様・・・・?」

その時、廊下の奥から声がした



「ああ、やはりシュリ様だ
 どうされました? こんな嵐の夜にこんな所へ・・・・」
 

ランプを持ち上げて、歩み寄ってきたのは、あの地下で会ったダルクだった
シュリは慌てて預けていた体を壁から引き剥がす





ダルクは側まで来ると深々を頭を下げた後、辺りを見回した


「あの・・・・ お一人で・・・?
 ラウはご一緒ではないのですか?」


「・・・ダルク、会えてよかった
 ラウの部屋へ行きたいんだが・・・・
 どうやら迷ってしまったみたいなんだ・・・・
 案内してもらえないか?」



寒さと痛みで震える声を懸命に抑え、平静を装いそう言うと
ダルクは 「お易い御用です!」 と
そのままシュリの足元をランプで照らしながら歩き始めた






「今、仕事が終わって部屋に帰るところだったんです
 まさかシュリ様に逢えるなんて」

ダルクは嬉しそうに、笑顔をみせる



「こんなに遅くまで・・・・?
 ・・・・・ ここでの暮らしは・・・ 辛くはないか?」


「いえいえ、とんでもない!
 ここの暮らしが辛いなどと言ったら罰が当たります
 先々代・・・・ いや・・・先々々代か・・・あーっと何代前だ・・・・」



ダルクは何か言いたげに 
しきりに指を折って数えながらブツブツと考えていたが
それをじっと見つめ、待っているシュリに気が付くと
正確な数字を出すのは諦めたのか顔を上げた



「・・・すみません・・・・
 ・・・・ 実は先代王から、今のガルシア王になられるまでに
 陛下の兄上に当たられる3人の王が居られたのですがね
 皆様、お若くして急逝されたものですから・・・・・
 一時はどうなるのかと思っていたのですよ」


「3人もの兄王が?」

 
「ええ、数年の間に次々と亡くなられまして・・・
 流行り病いとはいえ、本当にこの国は悪魔にでも呪われているのかと・・・
 それが4兄弟の末皇子だったガルシア陛下が即位されてやっと、
 この国も落ち着いたのです
 ・・・・あ、シュリ様、そこ・・・お気をつけ下さい」


ダルクはシュリに足元の段差に気を付ける様に促してから
またゆっくりと先導し始める



「そこからの陛下は本当に素晴らしかった
 それまでは 帝国の一小国に過ぎなかったこの国を、
 あっという間に ここまで大きくされたのは全て陛下のおかげです
 産業も農業も、広大な土地も、それに多くの国民も・・・・!
 これだけ豊かな大国の城で働けることは、
 喜びでこそあれ、辛い事などありません」


「そうか・・・・ 全て陛下のおかげか・・・・・」


以前ラウも同じ様な事を言っていたのをシュリは思い出してした

ただ、その平和の陰で・・・・
侵攻された側の国の者が、本当にその後も、今も・・・ 皆幸せであるかどうか・・・
虐げ(しいたげ)られた者は居ないのだろうか・・・




「そして、今はシュリ様のおかげでもあります!」

フッと俯くシュリを他所に、ダルクが嬉しそうに声を上げる



「私は、何も・・・・」


「いえいえ!
 国は大きく豊かになりましたが、今度は陛下の妃様達・・・
 世継ぎ様も居ないまま、7人もが相次いで亡くなられた時には
 ずっと葬儀続き・・・・ 国中が喪に服し、皆 笑う事を忘れた様でした
 だが神は我々を見捨てはしなかった
 神ご自身が・・・ シュリ様がここへ降り立たれ、来て下さった!
 この城にも国にも、ようやく春がきたのです


 ・・・・ああ、私ばかり勝手な話を・・・・ すみません!
 ここがラウの部屋です!」


長い話が終わる頃、ダルクはある一室の前で立ち止った



ドアノブに手をかけるが、鍵が掛かっているのか
ガチャガチャと音を立てるのみで開かない


「ラウ!おいラウ!? 居ないのか?
 おかしいなぁ・・・・ 鍵なんて掛けて・・・・」

寝てるのか?とダルクが独り言の様に呟き


「おーい、起きろーーー!具合でも悪いのかー?」

ドンドンとドアと叩きながら呼びかけた時


「・・・・どうした?」

背後で・・・・ 廊下の最奥の暗がりの先でラウの声がした



「おお!居たか、ラウ!」

振り返るダルクとシュリの視線の先に
外から戻ったばかりなのか 雨に濡れたラウの姿があった







華燭の城 - 71 に続く
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華燭の城 - 71

「・・・・・・ラウ・・・・・・」

「シュリ様・・・・?」

驚いたラウの言葉が詰まると同時に、杖の音が早くなる





「シュリ様がお前の部屋を探して居られたのでお連れし・・・・」

話し続けるダルクの声は
もうシュリの耳には入らなかった




「・・・ ラウ・・・・・・・・・・・・」

名前を呼びながら、シュリからも歩み寄っていた
が、実際にはもう足は重く、痛み続ける傷のせいで
ほとんど倒れかかっていたのだが・・・



その肩を ラウが素早く正面から抱き止めた



「ダルク、ありがとう、助かった
 今夜はもう遅いから、部屋に戻ってください
 後は私が・・・・ シュリ様をお連れする」


だが ラウに口早に話しかけられても
ダルクはその場から動きもせず、返事もない
グラリと倒れた様に見えたシュリに驚いたのか、冷たい廊下に立ったままだ



ラウの表情が一瞬 曇る・・・・

「さぁ、もう行ってくれ、ダルク」


ラウの低く強い声で、ダルクはようやく我に返った

何か 見てはいけない物を見てしまったのかもしれない・・・ と感じながらも
ダルクはその考えを、見間違いだ。と即座に自身の中で否定した
神の子が、神が・・・ 倒れるはずなどないのだから・・・・
 

「ああ・・・ わかった、ラウ・・・・
 後はお願いするぞ
 おやすみラウ、シュリ様」

そう言って自分を納得させる様に何度か頷き
深く頭を下げると、今 歩いて来た廊下を戻って行った






足音が遠のくと 途端にシュリの体から力が抜けた
全体重がラウの腕に掛かる


ダルクの前で、弱っている姿を見せまいと
懸命に気を張って来たのだろうが、
ラウの顔を見てその緊張の糸がプツリと切れたのだ





「シュリ様!・・・・大丈夫ですか!?
 どうして こんな所までお一人で・・・・・ 早く部屋に・・・・」



鍵を開け、シュリを抱きかかえる様にして自分のベッドまで運んでいく

朝から一日、誰も居なかったのだろう
部屋は冷え切っていた



「今、火を・・・・・」

そう言って立ち上がるラウの手をシュリが掴んでいた




「ラウ・・・・・ どうして・・・・・・
 どうして今日は来なかった・・・・」


一瞬 困った様にラウが目を伏せる
そしてベッドの横に跪くと



「今日は 休暇でしたので・・・・
 ジーナ様の件、養父に直接話をしようと思い、
 早くから街へ出ておりました
 朝のご挨拶もせず申し訳ありません

 昼食前には戻るつもりだったのですが、
 急な嵐で身動きが取れなくなってしまいこんな時間に・・・」

そう言って頭を下げる




ジーナ・・・・・ 休暇・・・・・・



ラウが使用人である以上、休暇があるのも当たり前のこと
その休みにわざわざ 弟の事で出かけてくれたと言う・・・・・





そして何よりも、嫌われた訳ではなく
今、目の前にラウが居る・・・・・
それだけでシュリの胸はいっぱいになった



「そうか・・・・・・・・
 ごめん・・・・・
 ありがとう・・・・」


それだけ言うのが精一杯で 今にも溢れそうな涙を留め様と目を閉じた




「本当に・・・・ 貴方と言う方は・・・・・・・・
 そのご様子だと、薬も飲んでいないのでしょう?」

ラウは立ち上がると 自分の濡れたコートを椅子に掛け
隣の部屋へと入って行った




程なくして戻って来たラウは、
その手に まだ湯気の立つ薬湯の入ったカップを持っていた


「さあ、これを・・・・
 苦いですが、錠剤より湯の方が少しでも暖をとれるはずです
 落ち着かれたら傷の手当てを致しましょう」


シュリの上半身を抱きかかえるように起こし、薬湯を口に含ませると
シュリの肩を抱き締めた






華燭の城 - 72 に続く
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華燭の城 - 72

シュリの呼吸が落ち着き始めた頃には
部屋は温かくなっていた


「ご気分は? 大丈夫ですか?」

ラウはシュリを腕に抱いたまま、心配そうに顔を覗き込む


まだハッキリと声は出ないが、小さく頷いたシュリに微笑み
シャツのボタンを外し、包帯を解くと
その体をゆっくりとベッドに横たえさせた


幸いにも出血はしていない
だが、脈を診るために 傷の無い首筋に手を当てると
まだシュリの体は冷たいままだ




「こんなに冷えて・・・・・」

手を伸ばし、シュリの額にかかる髪にそっと触れる



 
自分を心配そうに見つめるラウの顔が間近にあった



「・・・   ラウ・・・・・」

もしこれが幻ならば消えないで欲しい・・・
シュリはそっとラウの名を呼んだ


「大丈夫・・・
 ちゃんとここに居ますよ、シュリさ・・・・」




・・・ ラウ・・・!



言い終らないうちに シュリは腕を回し ラウにしがみついていた

本当にラウが居る
昨夜と同じ言葉・・・・
今日一日、何度聞きたいと願った事か・・・・
どれほど逢いたかったか・・・・



冷たい腕で強くラウを抱き締め
決して幻ではないその声を、その温もりを感じながら
シュリの唇がラウの唇を塞いだ




「・・・・っ・・」

それは以前の様な 触れただけの物ではなかった

驚いて一瞬目を見開いたラウだったが、
そのままシュリの身体をそっと抱き止める

その腕に安心したようにシュリの唇はラウを求め続けた
その存在を確認するように・・・・・
もう離さないと意志を示すように・・・・





そして長い時のあと やっとシュリは唇を離すと
その小さな、形の良い唇が動いた

「・・・・ラウ・・・・ ・・お前に・・・  私を・・・・・」

最後は声にはならなかったが
 ”抱いて欲しい” と、そう動いていた





「・・・・・」

シュリを黙って見つめていたラウは、そのまま小さく首を振った

「シュリ様・・・・ それは・・・」


言いかけるラウの目を シュリがじっと見つめ返す
それは訴える様に、悲しそうで辛そうな瞳・・・・・
見ているだけで胸が締め付けられ苦しくなる


・・・・・シュリ・・・・・様・・・・


ラウはしがみつくシュリの腕を外し 再びベッドへ横たえると
もう一度その瞳を見つめた
真っ直ぐに・・・・・

胸の苦しさは酷くなった




ラウは そっと唇を寄せ、シュリの冷たい首筋に触れた

シュリの身体が ピクンと震える



首筋から耳元へ・・・
耳元からまた喉へ・・・・
唇を這わせながら、シュリの衣服を脱がしていくと
シュリは ゆっくりと目を閉じた



薬湯のおかげでもう痛みも苦しさもない
それどころか体は熱く反応し そこに這うラウの唇は優しかった


喉から胸元へ下りた唇が小さな突起を捕え、舌先で転がすと
シュリは小さく声を上げた

「ぁ・・・ぁっ・・・」

捩る(よじる)その体には
まだ鞭痕とナイフで切られた割創がはっきりと残る

そこにもラウの唇はゆっくりと這った


それはガルシアの責めなどとはまるで次元の違うものだった
胸から腰まで1つ1つの傷を 唇で手当ての様に労わられると
体は驚くほど熱くなっていく



「ラウ・・・・」

名前を呼ばれ、ラウもベッドへと上がる

シュリのベッドとは違い小さな物だったが
それが余計に体を密着させた


ラウは シュリの脚を開かせ、間に身を置くと
以前、シュリに教えるために見せた行為を繰り返す様に そこへ唇を寄せる
先端の穴を舌先で解す(ほぐす)様になぞった後、そっと口で包み込んだ


「ぁぁっ・・」

足の先まで力が入り シュリは思わず体を仰け反らせ
シーツを両手で握り締める


その姿にラウは戸惑う様に顔を上げた



「シュリ様・・・・」

「・・・・構わない、続けて・・・・・ ラウ・・・・」






華燭の城 - 73 に続く
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華燭の城 - 73

その声にラウの唇が再びシュリのモノを含み
細い指先が後ろに触れる


「んっ・・・」

シュリが小さく体を震わせながらも頷くと
ラウの手がシュリの脚に掛かった


長く白い脚を開かせたまま持ち上げると 後ろが露わになる

そこへラウの唇が寄り
舌先が、緊張でまだ硬いシュリの粘膜を こじ開ける様に動いていく
だがそれは 決して強引ではない



「ぁっ・・・・     ・・・んっ・・・・っっ・・・・・」

手で自身のモノを上下に刺激されながら 後ろを舌で責められる
同じ行為でも、それはガルシアのものとは全く違う感覚だった



「ぁぁ・・・ ラウ・・・・・ ラウ・・・・・・・・・・・・」

ゆっくりと、温かく、促す様な舌先に喘ぎながら
シュリはラウの肩に手をかけた






「ラウ・・・・ 私の中にお前を・・・・」

その声にラウがフッと顔を上げる
そして一瞬の間の後、ゆっくりと大きく息を吐いた




「シュリ様・・・・・ やはりいけません・・・・
 ここまでです・・・
 これ以上は・・・・  最後までは・・・・
 使用人に身を任せ、私の様な者と体を繋ぐなど・・・・」


その声に、シュリの ラウの肩を掴む手がぎゅっと強くなる
じっとラウを見つめる瞳が悲し気に揺れた



「シュリ様は今、弱っておいでなだけなのです
 心も体も・・・
 ですから私などを求められるのです
 もっと冷静に・・・・・」


「違う・・・・! 私は・・・・・・・」



そう言いかけて言葉を飲んだ


神の子として、今まで 不可侵不犯の掟の中で生きてきた自分が
自ら抱いて欲しいなど・・・・
しかも男に・・・・・
本当にどうかしている・・・・・


ラウの言葉を 否定できなかった


それでも、ラウにこの身を委ねたいと思う気持ちは事実だった
離したくないと思った
誰にも渡したくはなかった
ここにラウが居るのだと、この体に刻み込んで欲しいと・・・




「・・・ でも・・・・・ それでも・・・・・  私はお前に・・・・」

それ以上は胸が詰まり、言葉にならなかった 
シュリの頬をツ。と涙が伝う




「シュリ様・・・・・」

その涙を指で拭ったラウの指が シュリの額に掛かる髪を掻き上げた
そっと唇を寄せ肩を抱き締める






「・・・・よろしいのですか? 本当に・・・」

耳元で呟かれたその声に シュリは小さく頷いた



シュリを左腕で抱き締めたまま
ラウの唇がシュリの首筋を這い、右手が下へと延びる
自身に触れられビクンとシュリの身体が反応する




そのまま中指を後ろへ落とされた

先程までラウの舌で解された(ほぐされた)そこは
ラウの細い指をすんなりと飲み込んでいく


「ぁぁ・・・・・・・・・」

片膝を立て 脚を開いたシュリは、ラウにしがみついていた






ラウの指がゆっくりと動き始める

「んっっ・・・・  んっ・・ ぁ・・・ぁっ・・・」


内部を焦らす様に、優しく丁寧に擦られて シュリは思わず声を上げた

早くなる鼓動に胸の傷がトクトクと痛む
それでも体はしっかりと反応し、しなやかな身体を仰け反らせる


シュリの呼吸と ラウの指の動きが重なり、室内に湿った音がし始めると
ラウは シュリの膝を曲げ、抱え込ませるようにして覆い被さった

そして その柔らかな粘膜に自身をあてがう




恥かしさで、自分の腕で顔を覆うシュリの手を取り
ラウはその指に 自分の指を絡め握った



「お顔を見せてください」

覆いかぶさったまま、シュリの顔を見つめそう言うと
そのまま グッ・・ と先端を押し込んだ





華燭の城 - 74 に続く
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華燭の城 - 74

「・・・・んっ! ・・・・・・・んっっっ・・・・・・・・・・!」


ガルシアには犯されている・・・・ 初めてではない
だがそこはまだ狭く、執拗な責めで傷もついている

そこへ新たに押し込まれたモノの痛みでシュリは唇を噛んだ




その声に ラウが動きを止めた

「シュリ様・・・・」

自分を気遣う声を、シュリは遮った


「二人の時は・・・・・ ”様” は無しだ・・・・・・・
 ・・・構わない・・・・・・ラウ・・・・・・・・・ 
 ・・・・・続けて・・・・ もっと・・・・・・」




もう反論はなかった
ラウは 「はい」 とだけ答えると
またシュリの中に自身を送り込み始める



「んっ!・・・・んっ!・・・ぁぁあっ・・・・!」

絡めた指が痛むほど シュリは身を捩り
ラウの手を握り締めた




「シュリ・・・ もっと力を抜いて・・・・ 楽にして・・・・・
 でなければ余計に痛みます」


「ぁっ・・・ぁ・・・んっっっ・・・・」


「息を詰めないで、ゆっくり呼吸をして・・・・・・・」




ラウの静かな声に促されて シュリは必死に深い呼吸を繰り返す

そのシュリの胸の上下に合わせて ラウのモノが緩やかに
そして確実にシュリの中へ挿入され、深部まで届こうとしていた




「そう・・・ お上手ですよ・・・・・ そのまま楽に・・・」

そう言うとラウは 体を繋いだままシュリのモノを手に取った
優しく指で先端をいたわる様に撫でた後、
根元から大きく包み込み、動かし始める




「んぁ・・ぁああ・・・・・ラウ・・・・・・・・・ぁ・・ぁあ・・っ・・・・!」

あの石牢でのどんな責めとも違う 初めての本当の快感に
シュリは甘い声を上げた




「そんなに声を上げないで・・・ 
 外にまで聞こえてしまいます」


「・・・・ ぁああ・・・そんな・・・無理っ・・・・・・・・」


「シュリ、ほらもっと顔を見せて・・・・」


「・・・ぁっ・・ぁっ!  ・・・ラウ・・・・ラウ・・・っ・・・・!
 ・・・・・・だめだ・・・・ 恥ずかし・・・・  んっ・・・!」


「本当に貴方は可愛い過ぎます・・・・」


「んっ・・んぁっ・・・・・ ラウ・・・・」






愛しい者と体を繋ぐ・・・・
それがこれほどに満たされるものなのかと
シュリはこの時 初めて知った


ラウも膨潤した自身のモノで 深く、浅くシュリを突き上げ
そして悠々と内の粘膜を掻き回していく


時が経つに連れ、シュリの呼吸は甘い喘ぎになり
その体内は、まるで生き物の様に、益々 熱く強くラウに吸い付いてくる
普段の穏やかなシュリからは想像も出来ない程だ


これが・・・ シュリの・・・・ 
あのガルシアさえも虜にしたシュリの身体・・・
絡み取られる様なその感覚に、ラウも驚きながらも喜し
その質量は一層 増えていく




「・・・! ・・・ぁ・・・・
 ・・んっぁあっ・・・・・・   ラウ・・・・いい・・」


「・・・シュリ・・・・ っ・・んっ・・・・」


「・・だめだ・・・  ラ・・ウ・・・ 
 ・・・・・・ もう・・・いきそう・・・・っ・・・
 ・・・・・・・・・・・・いか・・・ ・・せて・・・・・・・・・・・」



その切ない懇願の声にラウの動きも早くなった




「・・・・一緒に・・・・
 ・・・・・・シュリっ・・・・・っ・・・・んっ・・・・・・!!」


「・・・・・・っっぁ・・んっ!」




シュリの身体が大きく仰け反り 自身の腹上に白い粘液を吐き出すと同時に
ラウのモノも シュリの中でビクと跳ねた


シュリはそのラウの脈動をハッキリと感じながら肩で息をする

達したばかりのその身体は快感の余韻に酔い
思考は熱にうなされた様に熱く、半ば茫然としていた
それでもシュリは心から嬉しいと思えていた




「・・・ラウ・・・・・・・」

「・・・・ シュリ」

シュリが腕を伸ばし ラウを迎え、
ラウの腕がシュリをしっかりと抱き止めた









シュリを部屋へ送ると自室に戻ったラウは一人で奥の薬品部屋へ籠った

灯りは点けず、所狭しと多くの薬品が並ぶ机の蝋燭1本だけに火を灯すと
椅子に腰掛け、ラウは額に当てた拳を強く握り締めた

どれほどの時間か・・・・・
暫く目を閉じたままじっとしていたが やがて顔を上げると
机の端にあった小さなガラス瓶を取り上げた

琥珀色の液体が、瓶一杯の状態で入っている

それを高さが5センチ程の細く小さなグラスへ
量る事もせず、直接数滴を滴らすと、傍らの水差しの水で薄める


二本の指で持ち上げたそのグラスをゆっくり燻らせ(くゆらせ)ると
琥珀の液体の濃度が濃いのか、
度数の高いアルコールを水で割った時の様な 不思議な雲様の模様が
グラスの中に浮かび上がり、うねり、混ぜ合わされていった


琥珀から透明な液体へと見た目を変えたそれをじっと見つめてから
ラウはグラスに軽く唇を付けると、そのまま一気に天を仰いだ

量はほんのわずか

たった一口にもならない
それでも トンとグラスを机に置くと同時に
ラウの肩が大きく2度上下し、そのまま強く目を閉じた






華燭の城 - 75 に続く
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華燭の城 - 75

その吉報は翌朝もたらされた


ベッドに座ったまま
開け放たれた格子の窓から朝陽を見ていたシュリに
ラウが声を掛けた



「シュリ様・・・・ 実は昨日・・・・・」

だがぼんやりと外を見ているシュリは返事をしない




「・・・・シュリ様? 大丈夫ですか?」

テーブルに朝食の準備を終えたラウが
シュリの側まで来て顔を覗き込んだ




「・・・シュリ様? 痛みますか?」

「・・・・ああ・・・・いや・・ 痛みは大丈夫
 さっき、ラウが来る前に薬を飲んだから・・・
 あの副作用にも少し慣れたけど、やはり体が重いな・・・・
 ・・・・・・・それに・・・・・
 ・・・ 二人の時に ”様” は無しの約束だ」


そう言って微笑んだ
その笑みにラウも頷く



「そうですか
 薬を一人で飲まれるのは良いですが、時間は守ってくださいね
 強い薬ですから、必要以上に飲まない事・・・  
 よろしいですか? シュリ」


「ああ、わかっている
 それで昨日・・・?」


「・・・ああ・・・・ 昨日、養父の所でジーナ様の元へ・・・ 
 神国に派遣する医師団の名簿ができました
 伺ったジーナ様のご容態から 考えられる病気を考えて
 それに詳しい医師を集めました
 今 招集を掛けているので、揃い次第 神国へ出向ける様です」


「それは本当か!?」



シュリの顔がパッと明るくなる



「ええ、幸いにも似たような症例を見た事があると言う医師もおりますので
 その者に聞けば、有効な薬も作れるのではないかと
 養父も申して・・・・」


「・・・・ありがとう!!ラウ!!」



シュリがラウに飛び付く様に抱き着いた
その喜び様にラウも笑顔になる



「いえ、私は何も・・・
 ・・・・安心されたら、シュリは食事ですよ?
 ジーナ様がお元気になられても、貴方が弱ってしまっては困ります」


抱き着くシュリの背中をトントンと優しく叩きながらラウが言うと
「そうだな」 そう言ってシュリは ラウの唇に軽く口付けた






その日のシュリは本当に嬉しそうだった
体の事を考え、部屋から出る事は無かったが
朝食も昼食もラウと二人で摂ると
午後は窓際のソファーに座り、多くの話をした

シュリの幼い頃の話、学校の話、神国の話・・・
ジーナの話はラウも熱心にメモを取りながら聞いていた

格子の窓から見える空は 相変わらずこの国特有の暗さを持っていたが
部屋に笑みが絶える事は無かった








宴の前には、ラウはいつものように支度を手伝い
夕刻からの宴が始まると、広間の廊下に控えてシュリを送り出した

シュリの体に異変があった時はすぐに対処できるよう
内ポケットには薬も忍ばせている



同じように、広間に入る事を許されないガルシアの側近達も
廊下に立たされ控えていた

ガルシアの側近も、名は ”側近” だが実情は私兵
軍と同じく階級という位置付けがあるらしかった

階級が高い者・・・ 
オーバストなどはいつもガルシアの側に付き、一緒に広間にも入るが、
位が下がれば、いくら側近と言えども
簡単にガルシアの横に立つ事は出来ない

相当の月日を経て、功を上げ
ガルシアの確実なる信頼をその手に勝ち取った者だけが立てるのだ




そして その下級の側近達の更に後ろ・・・
ガルシアと共に広間に入って行ったシュリの後ろ姿を
半身を隠すようにして 柱の陰から見ていた一人の男が居た




見た事の無い男だった

ラウはその異質な視線・・・ シュリを見る視線に思わず眉を顰めた
だが、ガルシアの私兵達が何も言わないのだ

異質 と感じるだけで、使用人の自分が何か行動を起こす訳にもいかず
ただその男を視界の端に捉えていた



広間に比べると廊下は暗く、顔ははっきりと判らなかったが
ガルシアよりも 年は若く見える
が、背は低く小男だ
変わらないのはその湿気を含んだような目だった

そして男は スルリと宴の中へ 溶ける様に入って行った






その男は宴が終わる直前に また廊下へと姿を現し
じっと何かを待つ様に、最初に居た時と同じ柱の陰に立っている
  
ラウはその様子が妙に気になっていた






華燭の城 - 76 に続く
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華燭の城 - 76

「そのままの服装でいい、部屋に来い」


宴が終わり、広間から出てきたガルシアは、それだけをシュリに告げ
隠れていたあの男に近付き 一言二言交わすと
一緒に廊下の奥へと消えていった



いつもは 装飾が多く、脱ぎ着し難い重たい服を脱ぎ
着替えてからあの部屋へは行くのだが、今日は着替えず来いと言う


・・・どういう事だ? 


シュリが その答えを求めるようにラウを見たが
ラウもまた 理解出来ず、小さく首を振るだけだった










シュリが言われるまま、宴を終えたままの姿であの部屋へと出向き
ラウが扉をノックしようとすると 中からガルシアの声がしていた


・・・誰か他にいる?


ラウの表情が曇った



あの陰湿な目をした小男の顔が脳裏に浮かんだが
あれほどシュリとの秘密が外に漏れる事を恐れていたガルシアが
この部屋に 第三者を招く等という事は考えられなかった


現に、ラウがこの部屋の存在を知ってから今まで15年間
ここにガルシア以外の人間が居た事は一度もない





「失礼します。
 シュリ様をお連れしました」




一瞬のためらいの後、そう言ってラウが静かに扉を開けると
薄暗い部屋の中央で、一際 目立つ真紅のソファーに
ガルシアと あの男が向かい合わせで座り
楽し気に酒を酌み交わしている所だった


その光景にラウは思わず唇を嚙んだ
心臓の辺りで警鐘が鳴り始める


まさか・・・ とは思ったが、こんな事は初めてだった


シュリも何か感じたのか、
ラウの一歩前に居るその手は、強く握り締められている




ガルシアはチラと視線を上げ二人を見ただけで、また男との談笑に戻り
一仕切り 話しが終わるまで
シュリとラウは扉の前で、立ったまま待たされる事となった



小声で、しかも手で口元を隠したままの小男

何を話しているのかは、部屋が広いせいもあって判りはしないが
時折チラチラとこちらを伺い見る小男の視線から
シュリの話をしているのは確かだった




「では、頼んだぞ」 のガルシアの声に
男は 「勿論です」 とでも答えたのだろうか

満面の笑みで頭を下げる男を前に ガルシアはシュリを手招きで近くへ呼んだ




「今日は客がいる
 存分に楽しませてやってくれ」


「楽しませる・・・・?
 ・・・・・ それはどういうことだ、ガル・・・ 陛下・・・」


二人の少し手前で立ち止まったシュリは
かろうじて呼称を 外交的な物に戻し、蝋燭の灯りに照らされた男の顔を見た





その男は シュリにも覚えがあった
宴の最中 広間の片隅で、一人隠れる様に酒を飲んでいた男だ



「文字通り、客人だ
 楽しませてやればいい・・・ ・・・お前のその体でな」

「・・・・なっ・・・」

「・・・陛下!」



何を言うのだ! と声を上げそうになったシュリを遮ったのは
入り口横に立つラウの声だった



「んん?」

ガルシアはジロリとラウに鋭い視線を送り、言外に 「黙れ」 と示すと
それでも食い下がろうとするラウを完全に無視し、男に向き直った







「さあ、これがあの有名な神の子だ
 お前の希望通り 宴の時のままだ、好きな様に遊んでくれ
 世界中探しても、これ以上の上物はないぞ?
 まぁ、まだ躾 (しつけ) がなっていないのでな
 芸は出来ないが」


「いえいえ、陛下
 躾が足らぬぐらいの方が楽しみ甲斐があるのですよ
 嫌がり暴れるも良し、泣き叫ぶも良し・・・
 これが完全に服従した ただの人形では、そうはいかない」



そう言って男は改めてシュリの全身を舐めるように見つめた






華燭の城 - 77 に続く
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華燭の城 - 77

「ああ、本当にあのシュリ様だ
 間近で見れば一層美しい・・・
  
 正装がよくお似合いで、立っておられるだけでも絵になりますな

 宴の時は それはそれはご立派に立ち振る舞われていたが・・・
 それが・・・ まさかこのような玩具とは・・・・」


嬉しくてたまらないと言う様に 男はクック・・・と喉を鳴らして笑った





「躾が終われば人形か
 確かにそうだな、ワシにも覚えはある」

ガルシアは酒を口に運びながら 扉横のラウを一瞥(いちべつ)した



その視線に気付いた男の目も ラウを見捉える


「あれは・・・ 廊下に居た者でしょうか?
 黒髪とは なんとも珍しい
 しかもあの出で立ち・・・・
 あれもかなり上物ではございませんか、陛下」


「あれか・・・」  



ガルシアは次の酒をグラスに満たしながら続けた



「あれはシュリの世話係
 そしてお前の言う ”人形” だ」

嘲笑う(あざわらう)ように唇を上げた




「ほう・・・ あれも既に陛下の玩具でしたか 
 これはさすが、さすが、お目が高いと言うべきでしょうな
 いや、しかし 既に人形とは惜しいですなぁ・・・
 私も一度 鳴かせてみたかったですよ」



暗い廊下ではよく判らなかった男の顔が、暖炉の灯りで揺れていた

暗く くすみ、酷く黄味を帯びたその土気色の肌に
ギョロリとした大きな眼だけが目立ち
かさついた頬が引き攣る様に嗤うと 途端に陰湿さが度合いを増す





「だがあれは卑しい平民の出だ
 少しばかり鳴かせれば、すぐに人形
 それよりもやはり神の子だ
 気品も強情さも、身体も・・・・ それにアレの感度もな
 全て言う事なしだ」


「おお、それはそれは・・・・
 やはり身分で違いますかな」




新たな酒が注がれたグラスを持ち上げながら 男のじっとりと湿った目が
再びシュリを見つめた



「すぐにでもいろいろと試してみたい所ですが、
 それでは勿体のうございますな
 ここは時間を掛けて楽しませて頂きましょうか・・・・
 では・・・ まずご自分で上から脱いで頂きましょう
 ゆっくりとですよ・・・ シュリ様」


「・・・・・」


「シュリ、例の件、忘れた訳ではあるまいな?
 弟がどうなってもいいのか?・・・・・ さっさとしろ」




グッと男を睨みつけ動かないシュリに ガルシアの声が冷たく響く



やっと医師を集める所まで来たのだ
ここで約束を破棄させる訳にはいかなかった



二人をじっと見据えたまま、唇を噛み締めたシュリの手が
ゆっくりと自分の衣服に掛かる



男は正装と言ったが、これは正確には 準正装だ
本当の正装はこれに左肩の勲章から純白のストールが付き、奉剣を携える
今までで、正装まで着用したのは 初回の宴だけだ

それでも多くの勲章や銀飾りの付いた上着は
バサリと重い音を立て足元に落ちる

ネクタイを外していくその様子を
ガルシアと男は 酒を酌み交わしながら眺めていた


シャツのボタンを外し、それを脱ぐと
痛々しく包帯が巻かれた上半身が現れた




「ほう、これはこれは・・・」

男は嬉しそうに立ちあがった




シュリの前に立つと肩口に巻かれた包帯をチラと除ける
そこに現れた、まだ生々しく裂かれた傷痕を見ると
男の顔は、その目は 一瞬で妖しい光を帯びた



「これは・・・ 鞭・・・
 しかもこの切れ味は・・・希少な黒革ですか?
 で、こちらはナイフ・・・?」

嬉しそうに笑いながら男がガルシアに尋ねた




「ああ、そうだ
 そこまで判るとは さすがだな」


「良いですねえ・・・ 
 皆の前であれほど美しく立派に振る舞う神の子の体が
 これほどに傷だらけとは・・・
 ・・・そそられますなぁ
 それにまだ塞がってもいない」
 



男はすでに興奮した様子で、肩口から胸への傷・・・
ガルシアにナイフで斬られた割創を、掌で撫で回すと
煽る様な不敵な笑みを浮かべ、シュリの顔を見上げた


だがシュリは、その男の不快な行為を
ただじっと、無表情のまま見下ろすだけだった


動かないシュリの冷たい顔に、男は更に薄ら嗤いを浮かべる

傷の両側に 自分の両手の親指を添えると、
シュリの目をじっと見ながら、一気に・・・・
グッ・・ と左右に押し開いた

まだ薄い皮膚が無理矢理こ引きちぎられ、ビリと裂ける


「んっ・・・」

シュリがその痛みに一瞬、目を閉じると
男はその声に反応し、益々歓喜の表情で目を輝かせた
傷口が開き、中の血を見せていた






華燭の城 - 78 に続く
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華燭の城 - 78

「本当にこれを・・・・ 好きにしてもよろしいのですか?」

シュリを見上げていた首をグルリと回し、男が振り返る



「ああ、存分に楽しんでくれ
 その代り 約束は必ず守れよ」

「勿論ですとも
 これだけの上モノで遊ばせて頂けるなら
 我が軍の情報など、いくらでも お安いもの・・・・」


言い終わらぬうちに男は
シュリの体に巻かれた包帯を挘る(むしる)様に解き始めていた

傷だらけの上半身が剥き出しになると 男はニヤニヤと口元を緩める
そして 「これは?」 と、シュリの首にかかる古いカギを摘み上げた




「ああ、部屋が汚れぬ様に奥に石牢があるのだ
 お前も使いたければ行ってみるがいい・・・」


「・・・・なりません!! 陛下っ!!!」



酒が入り上機嫌のガルシアが言い終わる前に
扉横に立ったままだったラウが 我慢しきれず声を上げた



「おい・・・・ ワシに文句があるのか?
 早くカギを開けて部屋の準備をしろ、ラウム
 客人がお待ちかねだ」
 

「陛下! ・・・・それだけはお止めください!」


「うるさいぞ
 ラウム、聞こえんのか?」


「・・・しかし!」


「・・・・・ラウ!止せ!」



食い下がるラウを止めたのはシュリの声だった





昼間 弟の話をしていた時のシュリ・・・・・
その嬉しそうな様子は、今でもラウの目に焼き付いている
何があっても弟を救うのだというシュリの気持ちは
十分過ぎる程判っている


だが・・・・


そう思いながらも ラウは拳を握り締めた
逆らう事は出来なかった
諦めた様にシュリの元へ歩み寄ると、首からカギを外し
悔しそうに目を伏せたまま奥の部屋へと向かった





ラウが石牢の燭台に火を灯し戻って来ると
ガルシアはゆっくりと立ち上がり
体が触れる程の眼前で、ラウの前に立ちはだかった


「お前は入るな
 シュリが弄ばれる様を、お前は見たくもないだろうからな?
 今夜は自分の部屋で待っていろ
 終わったら連絡する
 シュリには 報いを受けさせねばな」


「・・・・ 報い・・・・」

ラウがハッと顔を上げた



「判らぬとでも思うたか?
 身に覚えが無いとは言わせんぞ
 誰がシュリを ”愉しませろ” と言った?
 ワシは跪かせ、口で奉仕する事を覚えさせろと言ったのだ
 その命に背いた罰だ」 



ガルシアが氷の様な目で見ていた

ガルシアは・・・・
シュリが自分に抱かれた事に 気が付いている・・・・

元々、感の鋭いガルシアだ
自分の獲物に、自分の許可なく、横から他の者の手が付いた事を
黙認するはずなどないのだ




黙って視線を落としたラウの手から
ガルシアは奪う様にカギを取り上げた


シュリとすれ違い様、
ラウが小さく 「申し訳ありません・・」 と呟いたが
その声にシュリは一瞬立ち止まっただけで、黙って首を横に振った





「さっさと行け」

ガルシアがシュリの体を部屋へと押し入れ 
そのあとに2人が続くと ガチャリと中からカギが掛けられる音がした










ラウはそのまま部屋を出た
王の命令なのだ
それに鍵を掛けられてしまっては、ここに居ても出来る事はない



また大量の薬が必要になるかもしれない・・・ 

あの陰湿な男の目を思い出し、言い様の無い不安に駆られながら
扉番が無言で開けた黒扉から 表の、絨毯敷きの廊下へと出た








「・・・・ラウム!」

部屋に戻る途中、ラウは名前を呼ばれハッと我に返った


いつから呼ばれていたのか、呼んだ声はもう目の前に来ていた

「何をぼんやりしている!
 陛下はどこだと聞いている」

声の主はガッチリとした体格の男
身長はラウと大差ないが、その体つきのためか ラウより一回り大きく見え
上下共、黒のスーツを着ているあの黒服の側近、オーバストだった





「・・・・・・・陛下は、あの部屋だ」

宴の場にも入り、いつもガルシアの側にいるこの男は
側近の階級としてはトップクラス

この男が ガルシアの最も近くに居る男で
側近の中でも最上官・・・ いわゆる側近長という立場である以上、
あの部屋の存在も、ガルシアの性的嗜好も全てを把握している

実際に神国からシュリを護送してきたのもこの男だ
その事を判った上での ラウの短い返事だった




「ああ・・・」

オーバストの声には 「またあそこか」 という響きがあったが
それ以上余計な事は言いはしなかった


「陛下に、急ぎ話があったのだが・・・・
 あそこと言う事はシュリ様も一緒だな?」

「・・・・・」


それは今、いくら急用でも自分が入室してはマズイのだろう? 
・・・という問いだった

しかしラウは それに対し何も答えなかった




冷然としたまま 自分の質問に答えようともしないラウの態度が
癇(かん)に障ったのか

「・・・ しかし・・・ 
 世話係が主の側を離れて何をしている?」

オーバストは 職務怠慢だろう。 とも言いたげな
挑発的な声で続けた



「・・・・・・今夜は・・・ 他国からの客人が居られる
 自室で待てと、陛下のご命令だ」

その答えにオーバストの表情も変わった

「他国の客人?  ・・・・あの部屋に?」


同じ事を聞き返されただけの質問に
ラウはこれ以上話す気にもなれなかった


この男にシュリを気遣う気持ちなど微塵も伺えない
少しばかりの同情はしているのだろうが・・・・

男の声を無視し、無言で歩き始めたラウに
オーバストはもう何も言わなかった






華燭の城 - 79 に続く
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華燭の城 - 79

石牢に入ると男はグルリと周囲を見渡した


「なんと・・・ これは良い部屋ですなぁ」



クンクンとわざとらしく鼻を動かし、部屋に残る血臭を嗅ぐ仕草をする

そして 木製の台の上に自分が抱えて来た鞄を置きながら
そこにあった木箱の中身を チラと盗み見る事も忘れはしなかった

天井から下がった滑車と鎖もガチャガチャと触り、感触を確かめ
「これはいい」 などと独り呟いてから シュリに向き直った





「さあ、シュリ様 始めましょうか」

そう言うと自分の鞄から何やらゴソゴソと包みを取り出した

それは、クルクルと幾重にも筒状に巻かれた革製の包み・・・

縛ってあった中央の紐を解き、
台の上に転がす様に開いていくと
最初に見えたのは、薄紅色の液体の入った小瓶だった



男はその液体を 台の上、
燭台で灯っている蝋燭の足元に張られた水の中に
ポタポタと流し込んだ

その作業をガルシアが訝しげ(いぶかしげ)に見詰める



「それは何だ?」

男が手を止めた



「これは香料でございます
 私の仕事は 我が国の国防 全てを統括すること
 中でも諜報、そして他国の密者を捕らえ取り調べる事は
 私の仕事の中でも、最重要・・・ 国の為の大事だと思っております
 その時に自白剤を使うのですが・・・・」


「ああ、それは我が国も同じだ。 知っている」


「ええ、その自白剤を作る時に偶然出来たのがこれでございます
 淫なる気にさせてくれる事この上なしで・・・・
 陛下も是非、いかがですかな?」





包みから同じ瓶をもう1本取り出すと、
「どうぞ」 と目配せしながら ガルシアの目の前に コトンと置いた


高さ10センチにも満たない細い瓶
少しくびれた首部分から上部の蓋にかけて 革布が掛けられ
厳重に縛られているところを見ると新品なのだろう




「ほう・・」

興味有り気に ガルシアはそれを手に取り
目の前の炎にかざすと、中身をしげしげと見つめた



「まぁいわゆる 麻薬の一種なのですが・・・」

「・・・麻薬だと?」



ガルシアは思わず 口に手を当てた

この時代も麻薬は既に世界中で横行し
その危険性は以前から大きな問題になっている
それを商売にし、法外の財を得ている者が居るのも事実だ


「そんなものを使って、ワシの体に害はないのか?!」

口を押さえたまま、鋭い眼差しが男を捉える



「大丈夫でございますよ
 麻薬と言っても、これは合法の域の物
 効き目は一過性で、
 数時間で完全に体から抜ける事が実証されております
 私も同じ部屋に居るのですから、どうぞご安心を」


それは正論だった
体を壊す様な危険なモノを 自分自身に使うはずがないのだ




「確かだな?
 それならば・・・ まあ、よかろう」

ガルシアのこの一言で作業は再開された






程なくするとその蝋燭から甘い香りが匂い立つ

それと同時に 意識はより鮮明になり
体だけが脈打つ様に 極めて敏感に反応し始めていた


「なるほど・・・・」

かなり強い甘い匂いにうんざりしながらも
ガルシア自身も その身に起きた変化を感じ取り
その絶大なる効果に満足したのか、自らも上着を脱ぎ捨てた



男もまた同じだった
その香りを存分に鼻から吸い込んだ後
急かすように シュリの残った衣服を剥ぎ取り始めた






全裸になったシュリが二人の前に立っていた
透き通る様な肌に纏っているのは、
上腕や腿に巻かれた わずかに残る包帯と、数えきれない程の傷


「ああ・・・ 痛ましい姿が、なんとも美しい・・・」

男は嬉しそうにシュリの傷だらけの体を引き寄せると
両腕で抱きつく様にして頬擦った

そのまま胸に舌を這わせていく



「んっ・・・・」


ガルシアは男の技量を測るかのように 台横の椅子に腰をかけ、
シュリが顔を背け 目を閉じ嫌がる様子を
じっと黙って見ているだけだ





舌が傷の上までくると 男の左手はシュリの体を抱き寄せたまま
右手で執拗に傷を弄り回した

その度に痛みでシュリの顔が歪む






華燭の城 - 80 に続く
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華燭の城 - 80

指で裂き広げた肩の傷に 男の舌が這い始めていた


初めはゆっくりと大きく・・・・
開いた傷全体の大きさ、深さを確かめる様に動き
何かに得心すると、細めた舌先で傷口の中を弄(まさぐ)った


「・・ッ・・」

シュリが唇を嚙む



ジワジワと滲み出る血と シュリの呻きに
男は嬉しそうに頬を上げ、ガルシアに振り返った


「陛下、この傷はそちらのナイフでしょうか?」


椅子に座ってじっと男を見ていたガルシアの腰元のホルダー
そこから覗く 太いナイフの柄を見ながら男が声を掛ける




「ああ、その通りだ」

ガルシアは腰に手を当て
ホルダーからナイフを引き抜くと 台の上に無造作に置いた



シュリの体を胸から左肩へ、20センチ近く切り裂いたナイフ

ガルシアが常に身に付けているそれは
手に馴染む様、特別に作らせた世界に1つしかない特注品だ

ガルシアの体躯に見合うそれなりの大きさ、重さがあり
護身用と言えども、柄にはダークレッドの宝石が施されている
小さな短剣ともいえる程、刃の切れ味も良く
紛(まご)うことなき逸品といえる





「やはりそうでしたか
 さすが陛下、素晴らしい物をお持ちで」

男は自分の舌だけで感じ取った情報が間違っていなかった事に満足し
何度も頷きながらも、ガルシアのナイフを褒める口上も忘れてはいない




「しかしながら、切れ味の良いナイフは時として拷問には向かぬもの・・・
 切り口が鮮やか・・・ 綺麗であれば、一瞬の痛みは鋭いですが
 傷もすぐに塞がる・・・・・
 長い時間 いたぶるには・・・・ こういった物も・・・・・」



男はシュリを抱いたまま、右手で2つ目の革包みを台に広げた

出てきたのは、薬瓶ではなく、いくつもの金属様の道具だ

大小長短 取り交ぜ、数多くあったが、
男の性格を表す様に、全てが握柄だけが見える状態で
綺麗に一列に並べられ、収納されている 





「それが例の・・・・ お前の自慢の道具か」


「ええ・・・ これはいわゆる・・・ 
 職業上の秘密・・・ と言った所なのですがね
 今日は 素晴らしい玩具を与えて下さったお礼に
 少しご披露致しましょう
 陛下の名品とは比べ物にはなりませんが」


と、謙遜も忘れずに、男はその中から
無造作に2本の金属を抜き出し、ガルシアに差し出した




一本はキリの様に先端の尖った物
一本はメスと見える物


ガルシアはそれらを手に取った



キリは一見、鋭く見えるが それは先端の僅かな部分だけで
直上はザラザラとした研磨機の様な質感を見せる

メスの方は見た目にもハッキリわかる程
先端が欠けた様に不揃いに形成されており、刃も分厚い
よく見るディナーの肉用ナイフを粗くした様な物だ


どちらも鋭い・・・・ とは言い難く、
切る、刺すを目的をするならば、ガルシアの通念の中では
ガラクタと言っていい物だった




「これが、良いのか?」

ガルシアが鼻で嗤う



「ええ、痛みはこちらの方が・・・」

言い終える前にメスを握った男は シュリの開いた傷の中に
その先端を突き立てていた




「・・・ンッッ!!」

一瞬の呻きを上げ、立ったままのシュリがよろめく

男はシュリを逃がさぬ様に抱いた左腕に力を入れると
グイと引き寄せ、その不揃いなメスをズズッ・・・・・ と引き下げた



「・・・ンァっ・・・・・グッ・・・・・・・・・・・・・ッ・・・!!!」


既に開かれ、血を滲ませていた傷口が 更に切り裂かれる
だがその傷口は ”裂く” とは違っていた
体組織は潰れ 削り取られた様に荒れている




「これらの良い所は・・・ このように傷口が不揃いな事・・・
 なかなか塞がらず、いつまでも痛み続けます
 悪点は・・・・ 力加減を間違うと出血が多い事・・・・ですかな」


そう言うと男は違う傷の上・・・
右肩に近い鞭傷の上に、一度目より強くメスを入れた




「・・・・・・・ンッ・・・・・ン゙ッ・・・・・・・・・・・・・・・・!」


呻き、反射的に傷を押さえたシュリは
身体を支える物が何も無い部屋の中央で
倒れまいと必死に堪え(こらえ)ながら、グッと男の顔を睨みつけた

痛みで酷く息が乱れ、激しく胸が上下すると
指の間から鮮血が零れ落ちる

それでもシュリは唇を嚙んでじっと耐え、声を上げはしなかった






「・・・・・・なるほど、これほど強情とは・・・・・」

男は一瞬驚いた様に一度シュリの体を離し
一歩離れた所から そのシュリの姿をジロリと眺めた






「・・・ シュリ様、酒は? お好きで?」

「いや、シュリは神聖なる神の子だからな
 人の世の酒など飲まぬらしい」


男の誰に問うでもない質問に ガルシアが皮肉を込めて答えると


「ほう・・・ そうですか・・・・
 では・・・・これなどは・・・・ 如何でしょうなぁ・・・・・」



男の手が薬瓶の包みを探り
あの薄紅の液体の隣にあった瓶を取り上げた






華燭の城 - 81 に続く
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華燭の城 - 81

男は慣れた手付きで白い手袋をはめ、蓋を開ける

先の薄紅の液体とは違い、それは無臭のようで
蓋を開けても、周囲には何の変化も感じられない
透明な・・・・ 一見、水の様に見えるだけだ


だが男の手付きは慎重だった

台の上のキリを取り、その先端から少し上・・・・
ザラザラと加工された部分に、中の液体をポタ。と滴らせる


すると液体は流れ落ちることもなく、金属にジワリと浸透していき
たった一滴の液体は蝋燭の炎にかざすだけで
一瞬の灯と共にすぐに蒸発し、薄い蒸気を上げた




男は、それをシュリの傷に・・・・
まだ出血が続く右肩の傷の中に
気煙を纏わせたまま 躊躇なく押し当てた

キリの鋭利な先端が
潰され剥き出しになった柔らかな内部組織に突き刺さる





「・・・・ンッ!!!!!! ・・・・ァアああっあああああッッ!!!!」


傷の中を刺された痛み・・・
そこから一瞬にして広がった焼け付くような激痛が
それまで耐えていたシュリに、思わず声を上げさせていた





「ほう・・・・・やるではないか
 その液体は何だ?」

ようやく声を上げたシュリにガルシアは満足そうに頷き
男の持つ瓶に手を伸ばす




「ああっと・・・ お気を付けください
 これは直接触れば、皮膚をも灼く劇薬
 この手袋も灼かれぬ様、特別誂え(あつらえ)なのですよ」


その言葉に ガルシアは思わず手を引いたが
表情は何故か不気味なほどに愉し気だ





「しかし、これほどの精神力とは・・・・ 驚くばかりですな
 気化させ、直接 原液に触れた訳では無いものの
 これを傷に入れて叫び声だけとは、全く感服致します
 拷問に対し、訓練を受けた大男の密者でも
 立って居るどころか、転げ回り泣き叫ぶというのに・・・・
 それを耐えきるなど・・・・ 
 しかも 極限まで神経を研ぎ澄まさせるこの部屋で・・・・」



そう言いながら、男がゆっくりと上を見上げた

狭い石牢の天井には あの蝋燭から立ち上った白い煙が
すでに一杯に立ち込めようとしている




「拷問を生業(なりわい)とするお前でもそう思うか
 確かに、力尽くでねじ伏せるのは良いものだが
 強情とも言えるシュリには なかなか躾(しつけ)も進まぬ」



「・・・・まぁ、それも良いのですよ
 日常的にこういう事ばかりをして居りますと
 簡単に口を割られては楽しみも半減です
 ・・・色々と試せる気丈な玩具をお持ちの陛下が羨ましい」


男は再びシュリを抱き寄せると、耳に舌を滑り込ませる様に顔を近付けた
薄気味悪く、耳の中で囁く様に聞こえるそれに
シュリは嫌がり 激しく首を振って抵抗する





「シュリ様に鳴いて頂くには、
 最上級の責めが必要な様ですから・・・ 
 私の秘蔵を出しましょう」


そう言うと男は、再び台の包みを物色し始めた

ガルシアは酒を煽りながらその様子を眺め
二人は時折、視線を合わせ嗤い合う






「さあ、シュリ様、次はここへ上がって頂きましょうか」

男が丁寧に頭を下げながら どうぞ。と掌を上に誘導したのは
あの台の上だった


自分の鞄と、ガルシアの箱を横へ退けると
いつも多くの燭台がまとめて置かれているその台は
大人一人が横になれる程の大きさは十分にある


まだ消えぬ痛みで 唇を嚙んだまま男を睨み続けるシュリに
ガルシアが無言で、言う通りにしろ と目で指示をした



「・・・・・・・」

シュリが出血の続く傷を押さえたまま 台の横に立つと
男はガルシアの箱の中からロープを取り出す



「これをお借りしますよ?」

そう言うとシュリを台上に仰向けに倒し、腕を頭の上に持ち上げた



「ンッ・・」 

無理矢理に引き上げられた肩の傷が大きく開き
出血がドク・・と増える


だが男はそれに構いもせず、そのまま両腕を1つに縛り台に固定し
脚も左右に開き、台の脚部に縛り付けた




「縛るなら向こうへ吊るした方が早いだろう」

それを見ていたガルシアが
部屋の奥にある滑車付きの鎖を クイと顎で示す




「そうですな
 鞭を使われるのでしたら、全身が打てる様に吊るすのが良いでしょう
 ですが私はこのように小男
 鞭を振るうには 今一つ体力に自信がございません
 ですので・・・・・」


男が金属の包みを更に解くと その先にはズラリと細い針が並んでいた






華燭の城 - 82 に続く
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華燭の城 - 82

「これが、私が日頃から最も愛用している物でございます
 ・・・・私はこれが好みでして」

男は喜悦の表情で、中の針を一本摘まみ上げる



「それがか?
 体も小さいが 使う物も小さいのだな」

神経質に1本ずつ丹念に刺し並べられた5センチ程の針を見ながら
ガルシアが悪気も無く言い放つ



「ええ・・・・
 ですが陛下・・・・
 ”小さきモノ” を侮って(あなどって)はいけません」



その言葉にガルシアが失笑した



「それはお前自身の事か?」

「はい、そう取って頂いても結構でございます」

二人の妖しい笑みが交錯する






「これは小さいがゆえに一ヵ所に与える痛みは局所的、かつ強力
 一本でも体中に電流が流れる程の激しい痛みが走ります
 それでいて、先程の2つと違い 体の奥深くまで・・・・
 そして何本刺したところで、出血も少なく死には至りません
 しかも傷も目立たない
 ・・・・まぁ、ゆっくりとご覧ください」




男は台に縛り付けられたままのシュリの横に立ち
甘く匂いたつ蝋燭を引き寄せる

包みから抜いた1本の針を 直接その炎で炙り始めると
細い針は見る見るうちに温度を上げ灼熱の赤へと色を変えた



そして、その灼けた針を持つ右手を
シュリの目の前に差し出す



「では・・・ 少しばかり失礼いたしますよ?」

「・・・・!!」


抵抗する間もなくその針は ジュッと微かな音を立て
シュリの胸の傷の中に刺され、そのまま内側を灼き抜いていた





「・・・・・ンッッっ!!」

雷に打たれた様なその痛みに、シュリの体がビクンと反応する
が、縛られた体は身動き一つ出来ず、一度 台を小さく動かしただけだ



男の秘蔵だというその道具に、大きな期待感を持って見ていたガルシアは
その光景に眉根を寄せた
顔には明らかな不満の色が浮かび
男に対する失望がハッキリと映っている





「おい、お前の秘蔵とやらはその程度か?
 それならば、先の皮膚をも灼くという薬にしろ、あれの方が良い」


「陛下、その様にお急ぎなさらぬよう・・・
 私は ごゆっくり・・・ と申し上げたはず
 今のは小手調べに過ぎません
 これからでございますよ」



男はそんなガルシアの言葉を、初めから予測していたのだろう
冷たく光るガルシアの眼光にも、全く怯む様子もなく答えてみせる




「この小さき針は我が国が作り出した最高傑作
 この細い針、一本一本の内部に僅かな空洞があり
 そこにも薬が入れられるのですよ
 さて、2本目からが本番です 
 これは・・・・・・ 相当痛みましょうなぁ」


不敵に笑う男の左手には、あの劇薬の瓶がしっかりと握られていた






シュリにもあの薬の痛みは激烈だった

薬品で灼かれる痛み・・・
それはガルシアの、
体の表面を裂く鞭ともナイフとも違う 全く別次元の痛みだった
事実、右肩はまだ激しく灼け付く痛みを放出し続けている




その薬を握り、ニヤリと笑い自分を見下ろす男・・・・

逃れられないのは判っている
逃げてはならない事も・・・・


それでも、あの激痛を甘んじて受け入れる事は
一度その痛みを知ってしまった本能が許さなかった

シュリは男を睨み付け
自分を縛るロープを振り解こうと 渾身の力で手足を動かした




だが構う事無く、次の針は あのキリと同じ様に
熱せられた直後に薬の気煙を纏いながら、腹の傷の中に刺し込まれる




「・・・ンッッッ!!!ァァアアあああああッ・・!!!!」



その衝撃にシュリは 手足を縛られたまま体を硬直させた
全身の筋肉が一瞬で収縮し、グッと力が入ると
余計に身体が針を咥え込む


極小の針だというのに、一点のみに奥深く刺されるからだろうか・・・
身体の深部で守られていた神経を、直接灼かれる様なその痛みは
あの、先端部分が短いキリ以上だった


ハァ・・・ハァ・・・・
・・・・・ハァ・・・・・・ ハァ・・・・・・


息をするのも痛む
針が刺さったままの神経が激痛を放つ





「3本目・・・・
 これは・・・ここに致しましょう・・・」

笑う様な声が、悪魔の囁きの如くシュリの頭に響いていた






華燭の城 - 83 に続く
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華燭の城 - 83

ぐったりとしたまま、荒い呼吸を続けるシュリの意識から
その囁きがまだ消えぬうち
男の手はシュリの胸を撫でる様に這い回っていた

そして胸の小さな突起を 指でクッと摘まみ上げると
そこへ、何のためらいもなく、真横からプツリと針を刺した



「・・・・ンッっ!!!」

痛みに息を詰まらせたシュリが目を見開く
だが、乱れる呼吸が喉を塞ぎ、圧し詰まった様に声は出なかった


刺し込まれた針は 
そのまま突起の反対側の皮膚を内側から突き破って貫通し
ブツリ・・とその灼熱の先端を現す



「・・・ンッァアア”ッ!!」

動かない体をわずかに捩らせて、ようやくシュリの叫びが響いた





「なるほど・・・・
 シュリをここまで追い込むとは・・・・ 期待以上だな」


満足気なガルシアが声を掛けると
男は満面の笑みで顔を上げた



「ありがとうございます
 針はまだまだあります
 次は・・・・ どちらがよろしいでしょうか」



冷静を装い、言葉こそ丁寧だったが
上げた顔は興奮に赤く上気し、
揺れる蝋燭に照らされたそれは、既に”人”という物を超えている様に見える



甘い香りの充満するその部屋で
男は次々と薬針を灼熱に変えると、狂った様にシュリの体を刺し続ける


極小ながらも気煙を纏う最強のその痛みは
シュリに気を失う事さえ許さなかった
首を振ってただ痛みに耐え続けるシュリの唇は切れ、
白い肌に小さな血がプツプツと湧く



男が正気を保っているのかさえ、疑いたくなるその責めを
ガルシアもまた酒を煽りながら、じっと見つめていた






そして男の左手は、徐々にシュリの下半身へと下りて行く

ゆっくりとさすりながら、その目が、”その場所” への責めの許可を請う様に
ガルシアの方へ向けられる




「そこにもか・・・?
 まあ、いいだろう 
 見えない所ならば、お前の好きにしろ
 だが 使い物にならなくするなよ?」


ガルシアが酷笑する



「それはもう、重々承知致しております
 ここに薬を入れれば、面白い効果もございますし・・・
 シュリ様もご自分でご覧になると
 一層、痛みを感じ易く、愉しめますよ」


男は片唇だけを上げ笑うと、シュリの頭の下に自分の包みを挟み
首を起こす様に持ち上げる




二人の会話は 痛みに呻くシュリにも聞こえていた

そして持ち上げられた頭の、その視線の先には
激痛を伴いながら小さく湧き出す血と、
自分の胸を貫通したままの針・・・
そのもっと先には・・・・ 
男の手で撫でられている自分の下半身があった




「・・・・な・・・   何を・・・・・!」

叫び続け、塞がりかけた喉で、それだけを絞り出すと
シュリは全身に力を込め、逃れようと必死に抵抗した

が、もうその身体は自分の意志では動かなかった





「・・・・!  やめろ・・・・  やめ・・・・っ・・!!!」




次の瞬間、灼けた針が自分のモノにプツ。と突き立てられた


「・・・ンッグッ!・・・・・・    ・・・・・・・・っッぁあああああッッ!!」


一瞬歯を食いしばった直後、シュリの絶叫が響き渡った





シュリの体の線に沿って流れ落ちた血は 
台の上で1つの血だまりになった

叫ぶ声も枯れ、意識も朦朧とし、縛られたままの体で
ハァハァと大きく喘ぐそのシュリの姿に 遂に我慢できなくなったのか
男は持っていた針を置き、自らの着衣を脱ぎ捨てる


それはガルシアも同じだった





男はシュリの足のロープだけを外し、台の上に這い上がった

シュリは自由になった足で
反射的に痛みから身を守ろうと体を丸める


だがシュリの頭側に立ったガルシアがそれを許さなかった
見るからに非力そうなこの小男の為に
シュリの両足を上からグイと掴み、引き寄せ膝を割る


「ンッ・・!」

後ろを露わにさせる様にして押さえ込まれたシュリを嬉しそうに眺め
男はガルシアに小さく首を垂れ、目礼をすると
刺された針をゆっくりと 1本ずつシュリの体から抜き取りながら
その代わりに自分の猛ったモノを シュリの体内に突き込んだ






華燭の城 - 84 に続く
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華燭の城 - 84

「・・・ンンンンッ!!」

再び声を上げたシュリに 
男は興奮した様に自分のモノを打ち付ける



だが、男のモノは ガルシア程の質量を持ってはいなかった
それでも破壊的な痛みだけを引き起こす暴力的なガルシアの責めとは違い
男は巧みに角度を変え、位置を変え・・・ シュリの内部を蹂躙していく



「んッァアア・・・!! んっ・・・んっ・・・・・・・・・・んっっ!」


体中を針で刺された痛みはまだ続いている

そこにガルシアの手が伸びた
赤くなった胸の突起を、刺された針ごとギリギリと指で捩じり潰し
シュリのモノを握り激しく扱(しご)き始めると
シュリはその痛みと苦しさに声を上げた



「・・・・・ンッッツァアッ!!!!!!
 ・・・・・ やめっ・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」


「最高・・・・ ですな・・・・・・・
 シュリ様の中は・・・・・ 真に素晴らしい・・・・」


叫ぶシュリを弄びながら、男が嬉しそうに声をあげる




「そうだろう
 シュリ程の器はワシも知らぬ」

ガルシアもシュリの声に満足気に応える



「ええ、ええ・・・・  これが・・・ 
 神というモノなのでしょうな・・・・・・
 おおっと・・・シュリ様・・・・・ 余り興奮なさらぬ様に・・・・
 中に薬が入っておりますから・・・・ 余計に痛みますよ」


そう言いながらも男の責めは、言葉とは反対に、一気に激しくなる







「・・・・・・・・ンッ!!!


 ・・・・・・・・・・ッッグっっっ・・・・!」



直後にシュリの体が大きく跳ねる様に仰け反った
そしてすぐにその瞳は見開かれ、天井の一点を見つめたかと思うと
グッと唇を噛み締め、痛みを振り解くかの様に激しく首を振る





「あぁ・・・ とうとう来ましたな
 だから言ったでしょう・・・・・ 興奮なさらぬ様に、と・・・・
 この薬は生き物と同じ・・・・
 エサを与えれば・・・・ 人の血や汗、体液と混ざり合えば合う程
 反応を起こし、痛みは活性化する・・・・
 だから この小さな針穴でも出血が続く限り痛み続けるのです
 ・・・・せっかく、ご忠告差し上げたのに・・・・」


「ほう・・・・・」

ガルシアが珍しく感心した様に声を上げた



「まぁ、今のままでは ご自身の精を吐き出すことはできませんから
 暫くは痛みと快感と・・・・
 両方をじっくり味わって頂きましょう・・・」
 

一度止まりかけた男の動きがまた激しくなる




「やめっ・・・・・  

 もう・・・ やめっ・・・・・・・・・・・・・・んっっぁっ・・・・!!!」




薬のせいなのか、先端からほんのわずかな体液だけを滲ませながら
シュリは痛みに暴れ続ける


「最高の興だな」

ガルシアは 満足気にシュリを押さえ付けたまま
その苦しみもがく姿を じっと見下ろしている





「はい、陛下・・・・ 
 私もずっとこうして眺めて居たいのですが・・・・・
 シュリ様の御身体は良過ぎますな・・・・・
 ・・・・・・・・そろそろ・・・・・・ こちらも限界・・・

 ・・・・ああっ・・・ 陛下・・・・・
 私はこのままで・・・よろしいのでしょうか・・・・・
 神を・・・・ シュリ様を・・・・
 私如き(ごとき)の精で穢す事になりますが・・・・・・」



「好きにしろと言ったはずだ
 神など、もうとっくにワシの前に跪いておるわ」


シュリの中で果てる許可を乞う男にガルシアは
冷たい笑いを返した





「ああ・・・・っっ・・・・
 ・・・・・有難き・・・ ・・・ 幸せ・・・・・・・・・・
 ・・・感謝・・・・・・いたしま・・・・・ す・・・・
 ・・・・・・・・ではっ・・・・・
 
 ・・・・・・んっ・・・   ・・・・んんんんんぅ!・・・・    ・・・出るっ・・・」



そう呟くと同時に、シュリの中に男のぬるい精が吐き出された



恍惚の表情で体を密着させたまま天を見上げる男とは反対に 
必死に肩で息をしながら、シュリが再び痛みに叫ぶ




男は自身を絞り出す様にして シュリの中に全て注ぎ込むと
ようやく満足がいったのか、ユルユルとそれを抜き出し
ふぅ・・・と 大きく息を吐いた


そして男が台を降りると入れ替わりの様にして
ガルシアもシュリ脚間に立ち、
その傷だらけの身体を自分の方へと引き摺り寄せた

朦朧としながらも、ガルシアの手の感覚はシュリには判る
何度も体に覚え込まされた痛み・・・



「・・・嫌だ・・・・・・・・・・ やめ・・・・・・・・・・・・・・・」



無意識に呟き、それを嫌がり首を振るシュリを見下ろしながら
ガルシアはその脚を軽々と抱え上げ、まだ男の精の零れる場所へ
自身を強引に捻じ込んだ


「・・・・・・ンッッァアアアアッッ!」


圧倒的な破壊物の侵入にシュリが叫ぶ

湿った音をさせながら、根本まで一気に突き込んだガルシアは
激しくシュリの中を突き上げながらも、
台の横で、シュリの体を名残惜しそうに見つめる男に視線を向けた


「おい、前の部屋に酒がある
 どれでも好きに飲むがいい
 面白い興を教えてくれた礼だ」 


ガルシアの言葉に男は深く頭を下げたが

「ありがとうございます
 それは大変有難いのですが・・・・・
 もしよろしければ・・・・ 私はこちらを頂きとうございます」



両腕を縛られ、ガルシアに突き上げられながら 
ギシギシと身体を揺らすシュリの・・・
まだ薬のせいで精を吐き出せずにいるシュリのモノを手に取り
ゆっくりと手で扱(しご)いて見せる


「ンッッーーー・・・!」

触れられるだけでも激痛を放つそこに、シュリが喘ぎ叫ぶ・・・



「それが飲みたいのか?
 お前も相当 可笑しな奴だな
 ・・・・・ならば、もう少し待て」

シュリの身体を犯しながらガルシアが笑う


「お許し頂けるなら、いくらでも待ちましょう」

男は、右手でシュリのモノを扱き(しごき)
左手で胸の先端の針を指で弄りながら頭を下げた




それから程なく、シュリの叫び声と同時にガルシアが呻いた


ガルシアのモノが引き抜かれると、
男はすぐさまシュリのモノを手に取り
慣れた手付きで 先端の穴を解す(ほぐす)様に広げ、刺激を加える



「・・・ンッっ・・・・・・!・・・・・・・・・・ァアアアアアアアアアアっっ!!」



激しい息使いで、ぐったりと台に両腕を縛られたままのシュリの体が
小さく痙攣し激痛に仰け反った

それを合図にしたかの様に
それまで押さえ込まれていた自身の精を吐き出し始める


だがもうシュリ自身には ハッキリとした感覚はない・・・・
激痛で意識を失った身体から、ただ出口を見つけ流れ出しただけのそれを
男が嬉しそうに、素早く咥え込んだ






華燭の城 - 85 に続く
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華燭の城 - 85

シュリを迎えに来いと ラウに連絡が来たのは
一睡も出来ず見ていた東の空が
わずかに橙味を帯び始めた頃だった




不自由な脚を急かす様にして、扉番の開けた長い廊下を行き
部屋の前で声を掛けたが返事はない

人の気配のない部屋に入ると、いつもとは違う微かな匂い・・・・


これは・・・
ラウは思わず顔をしかめた




開け放たれたままの石牢の扉・・・ 
急いでそこへ向かうと、その匂いは徐々に強くなっていった

そしてその石牢・・・
窓もなく、広くもない室内は 白い煙の様な甘い空気が満ちている






「シュリ・・・!」

嫌な予感が頭を過り(よぎり) ラウは思わず名前を呼んだ

口を開けば その嫌味な匂いが口内を満たし
ラウは咄嗟に口元に手を当て 中を見回した





二人の暴人の精の臭いと血の匂い
それとは真逆の 妙に甘い匂いとが不快に混ざり合う部屋で
台横の冷たい石の床に 全裸で横向きに蹲り(うずくまり)
倒れているシュリの姿があった


台の上には無造作に解かれたロープが血に染まり
床にも血だまり・・・・

きっと開放された後、痛みで苦しみ 床へ落ちたのだ





「・・・・・・シュリ!!」

駆け寄ってその体を抱きかかえる



「・・・ンッ・・!」

小さく震えながらもシュリが声を上げた


反応があった・・・・
生きている・・・・
よかった・・・・  

ホッとしながらも とりあえず外へ・・・・ と気持ちが騒いでいた


この匂いの正体に 確信ではないが心当たりはある
日々 薬を扱う者の本能が、ここは危険だと警告を発していた




横に落ちていた石牢の鍵を掴むと
ラウはシュリを抱きかかえ立ち上がり 急いで部屋を出た

その間にも シュリの震えは益々酷くなっている

早く部屋に戻らなければ、人目に付く
---- 夜が明ける










シュリの部屋へと戻ったラウは温かなベッドにシュリを横たえると
手元に灯りを引き寄せる


そこで改めて見たシュリの体は惨たる状態だった

腕と脚には縛られた跡
体前面にある細かい出血
何か細い金属で刺されているのは確かだ

酷いのは両肩の傷だった
ガルシアにナイフで付けられていた割創
やっと塞がりかけていた傷が、どれも無残な傷となってまた口を広げ
ゆっくりと血を吐き出している


だが今は傷よりも痙攣に似た震えの方が深刻だった
呼吸が余りにも早く浅い
このまま放っておけば、体に血液が廻らなくなる・・・




報いを受けさせると言ったガルシア・・・
こんな状態になるまで、いったい何をしたのか・・・・・



ラウは唇を噛み、ベッドの傍らの箱から薬を取り出すと
指で擦る様に潰した
元々が 液体を粉末に、粉末から個体へと固めていただけの薬は
ラウの指の上で簡単に元の粉状になる




「シュリ様・・・・  シュリ・・・・」

小さく呼びかけると
シュリは震えながらもその声に ピクンと反応した



「私が、わかりますか? ・・・口を開けて・・・」

指で唇に触れ、小さく開けさせて、
そこから指ごと咥えさせるようにしてシュリの柔らかな舌に触れた


「んっっ・・」

粉になった薬は苦かったのか
反射的にシュリは嫌がり顔を顰め(しかめ)る



「・・・・飲み込んでください」

そう言って、冷たい頬に指の甲を当てると
シュリはようやく、ゆっくりと薄く目を開けた

そのままじっとラウを見つめ、そして、小さく息を吐き頷いた



ラウが差し出した水差しの、ほんのわずかな水と共に
喉がコクンと動く









次にシュリが目を開けたのは もう夕刻になろうかという頃だった



「シュリ・・・・・ 気が付かれましたか・・・・?」

ベッドの横に椅子を引き
ずっと傷の手当てをしていたラウが声を掛ける



「・・・・・・ラウ・・・
 ・・・ここは・・・ 

 ・・・そうか・・・・・    ・・・終わったのか・・・」



そう問うシュリの言葉に胸が詰まった



「・・・・・・・ええ、・・・・・もう終わりました
 ・・・よく頑張りましたね」




ただじっと されるがまま、
耐えて耐えて ”その行為” の終わりを待つしかないシュリに
ラウはやっとそれだけの言葉を絞り出した




「・・・本当に・・・・・」

自嘲するようにシュリが言い、目を閉じる



「・・・今、水を・・・」 とラウが側を離れると

”いつまでこんな事が、続くのだろうな・・・・・・”
シュリはそう問いかけていた

言葉にはせずに・・・・・
誰に向かってかも わからずに・・・・・






華燭の城 - 86 に続く
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華燭の城 - 86

小男と二人でシュリを凌辱したその日、
ガルシアが目を覚ましたのも 陽が沈む頃だった

ずっと眠り続けていたわけではない



朝早くにオーバストに呼び起こされた
それを廊下に立たせたまま 煩い(うるさい)と一喝し
その時に今日の予定は全て取り止めると伝えた

その後も 昼に午後にと自分を呼ぶ声で起こされたが
半醒半睡を貪っていた




あの薬のせいだ とガルシアは思った

まだ体に纏わりついているのではないかと思う程の
あの甘い甘い匂いを思い出すと胸やけがしそうだった


だが薬自体の効果は褒めるに値する


まだまだ衰えなどというものとは無縁の自分だったが
昨夜は いつも以上の快感が得られたのは確かだ


そして久々に聞いたシュリの悲痛な叫び声、
気を失う程の苦痛に身を捩る姿・・・
それを思い出すと また体が疼きそうになる






棚に置いた小瓶に目をやった


男の置いて行ったあの薬、
あれで匂いの無い物が出来たら どうだろうか
どうせ香料は、あの小男が 自分の好みで添加させた物だろうし
似た物を作らせてみるか・・・・

それに、またあの小男を シュリで遊ばせてやるのもいいかもしれない・・・

あの匂いにはウンザリだが、
今までは 鞭打つ事が主だった自分とは違うあの男の
道具やその使い方・・・・
色々と収穫があった事は確かなのだから・・・

小男の恍惚とし呆けた(ほうけた)顔を思い出しながら
ガルシアは苦笑いをこぼした






取り留めなくそんなことを思い巡らせていると
また自分を呼ぶ声に 今度こそガルシアはハッキリと覚醒した

聞き慣れた オーバストの声だ




「入れ」

それを待っていたかの様に男が扉を開く



「何だ。 何度も何度もうるさいぞ」

起き上がり部屋の中央へ移動し
ソファーへドッサリと身を沈め脚を組んだ




「お休みの所、申し訳ありません」
オーバストは頭を下げ
「取り急ぎ、お伝えしたい事が」 そう続けた


「どうした?」


「はい
 昨夜、帝国の皇帝閣下付きの者より連絡がございまして
 書状の準備が出来たので持っていく との事でございます」


「おお! やっと来たか!
 で!いつだ? いつ届く!」


「それが、近々・・・とだけで、日にちは判らないそうです」


「判らんだと・・・?
 馬にしても車にしても、大凡(おおよそ)の日時ぐらいは掴めるだろう!」




声を上げたガルシアだったが、
皇帝閣下に、日程をハッキリ教えろ、などと 誰も言えるはずがない

「まぁいい、
 届いたらすぐに 宴の席中で受書の式を盛大に執り行い、
 皆の前で書状を読み上げる
 ああ、そうだ・・・・新聞の記者を呼んでおけ 
 記事を書かせ、国内外まで広く知らしめるのだ
 それでワシの地位も揺るぎないものになる
 使者がいつ来ても良い様に、準備だけはしておけ」


「かしこまりました」

オーバストは深々と一礼し、、、そのまま立っていた



「ん?
 もう下がってよい
 それともまだ何かあるのか?」

ガルシアがテーブルの酒に手をのばす



「陛下、真に僭越(せんえつ)ながら・・・・」

「なんだ?」

その手が止まった



「昨夜の事ですが
 シュリ様の件、特にその待遇に関しては
 出来るだけ内密にされた方がよろしいのでは?
 表向きはあくまで この国の救い主であり皇太子
 あの部屋で、部外者と会うというのは・・・・」


「ああ、その事か
 それなら、そんな懸念には及ばぬわ」


ガルシアは自信たっぷりに言い切った
そしてグラスを持ったまま グイと体を乗り出した



「いいか? 昨日のあれは帝国と西境界を接する
 いわば一番近い”敵国”の国防の大将だ」

そう言われて初めてオーバストは、昨夜の客が西国の者だと知った



「あの小男は自国・・・ 西国軍の動きを
 全てこのワシに教えると約束したのだ
 シュリの体一つでな」


「そのような約束・・・
 敵の大将の言う事など、容易く信じられるのですか?」


「お前はまだ考えが足りんな
 国の情報を、敵国に漏らすという事は 明らかな売国、裏切りだ
 しかもそれで得る対価は あの男自身の欲望を満たすだけの物・・・・
 よく考えてみろ、
 異常な・・・・  いや・・・・・  
 あれはもう猟奇的と言うにふさわしい性欲だけの為に
 自国を売ったのだぞ?
 
 その様な事が国にバレれば自身のみならず一族皆が即、処刑
 何があってもそんな自分が不利になるような事を 他へ漏らす訳がない
 
 ・・・・・・な?
 シュリの、神の体はこういう使い方もあるのだ
 お前もよく覚えておけ」




嬉しそうに語るとグラスの酒を飲み干し、
そのまま出ていけと顎で男を追い出した











その頃、1台の車が国境を越えようとしていた






華燭の城 - 87 に続く
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華燭の城 - 87

「おい、起きろ、もうすぐ王都に入るぞ」

「んー? やっと着いたかーー
 長かったなーーーー 疲れたーー」


頭から被っていた上着を除け、大きく伸びをしながら 
その青年は窓の外に目をやった




薄灰の雲が頭上に覆い被さるように立ち込め
風も強いのだろうか・・・
道路脇の街路樹も時に大きく揺れる

青年は思わず  「寒そうだなぁ・・」 と一人呟き
ブルッと身を震わせた





「ナギが車で行くなどと言うからだぞ
 空路で飛べばすぐだったのに」

黒の軍服をキッチリと着こんだ男は
隣に座る青年に呆れたような視線を送る




「車の方が、色々と寄り道も出来ただろ?
 それに、俺一人の為に 公用機なんて大袈裟だ
 降りられる場所があるのかどうかも判らないのに
 飛行機なんて・・・
 あんな御大層な物を持ち出したら、余計 話が面倒になる」


「一人ではないだろー?
 帝国皇太子が他国へ出向くとなれば
 本来なら近衛隊が総動員されるほどの公務だぞ
 それを 護衛も付けず、一人で行くなどと・・・
 そもそもだ!
 親書程度の物は相応の役人に行かせれば良かったんだし・・・」


「だーかーらー」



まだまだこの小言は続くと読んだのか
青年はその言葉を途中で遮った


「だから、お前を連れて来ただろ?
 お前が居れば大丈夫! なっ?? 近衛隊長っ!」


ナギと呼ばれた皇太子は
満面の笑みでニコニコと隣の座席に座る男に笑い返した


「・・・たくっ・・・・ 
 羽を伸ばし過ぎるなよ?
 くれぐれも大人しくして 私の仕事を増やさないでくれよな・・・」



 
隊長と呼ばれた男も、小言を言いながらではあったが
それがいつもの、日常のやり取りであるかの様に
言葉とは反対に笑顔だった







「思っていたより 大きくていい街だな」


車窓に肘を付き、その上に顎を乗せて
先程からぼんやりと外を眺めていたナギが呟いた


もうすぐ日が暮れる時刻
道路の両側に並ぶ店々には ポツポツと灯も入りだし
花屋が店先の花木を片付け始めている


家路へ着く人々が寒そうにコートの襟を立て
石畳をやわらかく灯すオレンジ色の街灯の下を足早に歩いていく


馬と車とが一緒に行き交う真っ直ぐに伸びた路
その遥か遠く、正面の丘に
夕陽を背にした石の城が 街路樹の陰から小さく見え始めていた






「この国は 現国王ガルシアの代になってからここ数十年で
 一気に発展を遂げたようだな
 先代の時はまだ・・・・・」

隣の男・・・
近衛隊長と呼ばれるにふさわしい大柄な体に軍服を着た男が
スラスラと一通りの概要を説明した



「さすが、ヴィルだな
 もうそんなに調べたのか」

「出向く国の事だぞ?
 ナギも少しは覚えて、社交辞令の1つでも言えるようにならないと」

「んーーー
 そういう事はお前に任せた!参謀!」

「近衛隊長だの参謀だの、
 そうやって面倒な事は全て私任せにするんだからなぁ、お前は・・・・・
 わかったよ、はいはい・・・・」


ヴィルは笑いながら肩をすくめてみせる






「でもナギの言ってたやつは・・・ まだ何も・・・だ」

「お前でもか・・・・
 わかった・・・・ もう少し時間が要るな」



視線を窓に戻したナギが呟いた



「シュリ・・・・」






華燭の城 - 88 に続く
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華燭の城 - 88

それから数日、ガルシアは酷く苛立っていた
ただじっと使者を待つという事が ガルシアにとっては苦痛でしかない


だが相手は 帝国
文句の一つも言えはしない


いつ来るかもわからない使者を待ち 宴は毎夜開かれた
そして 今日こそは、という思いが裏切られた時
ガルシアは怒りの矛先を シュリの体へと向けた


あの小男に灼き開かれた傷が塞がらぬまま
新たな鞭傷が毎晩の様に増えていく


朝方にやっと開放され、午後まで食も摂らず、ラウの薬で痛みに耐え
夕方には宴の支度をして、夜まで来賓の相手を立派に神の笑顔でこなす

そしてまたあの部屋でガルシアの怒りと性の捌け口にされる
それがシュリの日課になっていた





この日も、ラウに支えられて部屋に戻ったシュリは
ベッドにその体を横たえると
痛みに耐えながら小さな呼吸を繰り返した

ラウがその横で手当ての準備を始めた時だった


「ラウ・・・・」

小さな声でラウは振り返った


「ラウ・・・・ ちゃんと眠れているか?
 少し顔色が悪いぞ・・・・」

「シュリ・・・ 今、私の事など心配している場合ですか?
 ご自分の事だけを考えてください」

「だめだ、お前が居なければ、私は・・・・」



手を伸ばしかけたがそれさえも辛く、言葉が続かなくなっていた

「さあ、もう黙って
 お話しにならないで下さい・・ 消毒をしますから・・・・・
 それから薬を飲んで、ゆっくり眠るのですよ」






シュリが薬でやっとの眠りに落ちてから、ラウは部屋を出た
シュリが眠っている間にしなければならない事は多くある
休んでいる暇は無かった

薬を作る事も ジーナ皇子の医師団の件も
何一つ欠けても、今のシュリは壊れてしまう

重い足を引きながらラウは自室へと向った

これがラウの日課だった

それに昨夜は神国へ派遣した初めての医師団が帰国したはずだ
もう何か報告が来ているかもしれない

その思いが一層ラウの歩調を早めさせた






それから3時間程経った頃、シュリは目覚め様としていた
十分な睡眠がとれた訳でも無ければ、誰かに起こされた訳でもない
眠っていられなくなっていた


心臓が鼓動を刻む度、傷が鈍痛を繰り返す
この痛みはいつもの事だ
声を上げる訳でもなく、ただじっと耐えればいい

寝がえりもままならない体で唇を噛んで拳を握り締めた
だがそれだけではなかった



酷く苦しかった
深い呼吸が出来ず浅い息を繰り返すうちに、手足が小さく震えだす

数日前から・・・・ 
石牢で、あの小男に責められた時からか・・・
何度もこの震えに襲われる様になっていた
ラウには言っていない
いや、言えなかった

本人は大丈夫だと笑うが、最近 ラウの顔色が悪いのは気が付いている
これ以上 迷惑を掛けたくはなかった



だがこの震えは・・・・
これは放っておくと時間が経つにつれ痙攣の様に酷くなり
呼吸さえままならなくなる

自分では止められないこの苦しさは 
痛みと違い我慢するという事が出来ない

そのことを、シュリは初めてこの症状に襲われた時に学んでいた

自分の体に何が起こっているのか・・・・
あの小男の妖しい笑みを思い出す・・・





「・・・・・ラウ・・」

薄らと目を開けて首を巡らせるが
その目には シンとした部屋で
静かに燃える暖炉の炎がわずかに映るだけで
ラウの姿も気配も感じられない



「・・ンッッッ・・・・っ!」

鈍痛に耐えて震える右腕に力を入れて体を起こした
両肩の傷は今も塞がっていない・・・

無意識に左手は傷をかばう様に体を押さえてはいるが
体中にある無数の傷のいったいどこを押さえているのか
もうわからなかった




やっとの思いで半身を起こすと
右手はベッド脇の箱へと伸び、中の瓶を握り取っていた

水差しもテーブルには置いてあったが
そこまで歩いて行くのは、到底無理だ

ハァハァと肩で息をするシュリの息遣いと
瓶の中の小さな錠剤がカラカラと鳴る音だけが
静かな部屋に響き渡る



シュリは震える手で瓶の蓋を開け
親指の先程の錠剤を1粒、掌に取り出した



箱の隣に置かれた時計は、
まだ前の薬から3時間程しか経っていない時刻を指している

時間は必ず守る様に。
いつもそう言っていたラウの顔が脳裏に浮かぶ・・・



ラウ・・・・・・・

一瞬 躊躇し・・・

薬を握り締めた

・・・ だがシュリは、それを口に運んだ






そのまま力尽きた様に 横向きに倒れ込み
上掛けを握り締めて薬が効くのをじっと待った






華燭の城 - 89 に続く
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華燭の城 - 89

昼前になってラウは自分の仕事を終えると
そっとシュリの部屋の扉を開けた


シュリはまだ薬で眠って居る時間だが、そろそろ暖炉の火が落ちてしまう




起こさない様に暖炉の側へ行き、薪を足すと
パチパチと爆ぜ、炎が揺らぎ始める


2つとして同じ形を成し得ない炎が、次々と色を変え
生まれては消えていく・・・・・

その炎を見ていると、色々な憂惧(ゆうぐ)を ほんの少しの間だけ
忘れる事が出来る気がした






「・・・ラウ・・・ 少しは眠ったか・・・・?」

小さく声を掛けられてラウは振り返った
シュリが横たわったままこちらを見ていた



シュリが起きた事にも気が付かないとは・・・・

自分が思っていた以上にぼんやりとしていたのかもしれない
フッと苦笑いをこぼし、ラウは杖を支えに立ち上がった





ベッドの側まで行くと、傍らの椅子を引き、そこに腰を掛けた

「ええ、眠りましたよ
 シュリは? 眠れましたか?」


シュリの右手を包み込む様に両手で握ると
ラウの顔を見つめていた目が 安心したようにゆっくりと閉じ
コクンと頷いた



ラウも同じように頷くと 「傷を見ますよ」
そう言って握った右手をそっとシュリの体の横に置き
上掛けを腰のあたりまで引き下げる



「シュリ、今日は良い報告があるのですよ」

シャツのボタンを1つずつ外しながら
ラウは返事を待たず、話し続けた




「昨夜遅く、
 ジーナ様の元へ派遣していた医師団が戻って参りました」

「・・・・!」

「・・・動かないでください」


思わず体を起こそうとしたシュリの腕にそっと手を添えて
横になるように促した

シュリは大人しくその手に従い、頭を枕に置くと
顔だけをラウに向ける





「それで・・・・・
 ・・・ジーナは?
 ・・・父王は・・・ 皆は・・・・」


「国王、皇后共にお元気だそうです」
ラウが微笑む





「急な医師団の訪問に 最初は驚かれたそうですが
 今回の医師団が、シュリ様の命で来たと告げると、
 国王もそれは安堵され喜ばれたとか

 こちらにも監視が常についておりますので
 込み入った話は難しいようですが、
 神国の他の者も皆、変わりなく暮らしているから案ずるなと、
 国王よりシュリ様へのご伝言です」




実は今回、医師団が神国へ派遣されるのにあたり
シュリは父王宛に手紙を書いていた

だがそれは、ガルシアの検閲の名の元に一笑に付せられ
目の前で破り捨てられた

その為に、神国にとっては
いきなりの医師団の訪問となっていた





「そうか・・・ 皆無事か・・・・ 
 よかった・・・・
 ・・・・・それで・・・・  
 ジーナの病気は・・・・?」


「はい、
 先日申し上げたあの医師が知っている病に 間違いないとの事です
 珍しい病気だそうですが、幸いにも治せる薬があるとか」


「それは本当なのか!」


「ええ・・・・
 実はその薬草・・・ 私も名前だけは存じておりますが
 かなり稀少な物で、なかなか見つけることも難しいのです」


「見つけられない・・・・ 薬・・・・って・・・」

シュリの顔が不安に曇り、ラウをじっと見つめる



「それが偶然にも・・・・ 
 2年程前に我が国が領土とした国に
 自生しているのが見つかっているらしいのです」


その言葉を聞いたシュリの体からスッと力が抜ける
小さく息を吐き、安心した様に目を閉じるシュリの額に
ラウの指がそっと伸び、柔らかな前髪に触れた




  
「世界でも珍しい物なので、
 本来なら市場にも出ず、貿易で手に入れるのも難しいのですが
 そこはもう我が国の領土
 ジーナ様の病を治す量は充分に手に入るだろうと、養父も申しておりました

 貴重な価値ある薬ゆえに 
 その全てを陛下が管理されていますが・・・・・」






華燭の城 - 90 に続く
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華燭の城 - 90

「ガルシアが全てを・・・・」


ポツリと呟いたシュリだったが
それでも、”既にこの国にある” という事実は変わらない
これから世界中を探し回らなければならない。と言われるよりはいい・・・
これでジーナを救えるのだから・・・・
しかし・・・


「・・・・領土にしたと言うのは・・・・ 
 戦さを仕掛け、力で奪い取った・・・・ という意味だよな・・・・」

「・・・・・ はい」

「そんな貴重な薬草が、偶然にも侵攻した国に・・・・」




皮肉な話だと思った
侵攻など、ただ自国を大きくする為の戦さなど
シュリは あってはならないと思っている
表には出ずとも、その陰に泣く多くの人が絶対に居るのだから・・・
自分の様に・・・


だが、そのおかげでジーナが救われたのも事実だった




「・・・・ガルシアに感謝・・・・・ と言うべき、なのだろうな・・・・」

思わず苦々しい笑みを浮かべたシュリに

「感謝すべきは神にもですよ
 シュリが ジーナ様の事をずっと案じていらしたから
 このような事が、偶然という形であっても起こったのです
 神のご加護があったのですよ」

そうラウが優しい笑みを返す




・・・・神・・・・

かつては、その神を自身に宿し
現世の神の化身として、皆の幸福の為にその身を捧げた自分・・・
だが今は 痛みと凌辱、屈辱を受け続ける毎日
これほどの苦しみの中で、この世に本当に神は居るのかと・・・
そう思った事も、また事実だった






「ジーナ様の薬は もう手配を済ませましたから
 もうすぐ一回目の薬が神国へ届くでしょう
 どれほどで効果が出るかは 個人差もあり、断定できませんが
 早くて数ヶ月、長くても数年・・・・
 その薬を定期的に欠かさず飲んで頂ければ
 必ずお元気になられるだろうと」



「・・・神は・・・ やはり居られたのか・・・・・」



「ええ・・・・
 ただし・・・ どんな薬にも副作用はあります
 幼いジーナ様にも戦って頂く事になります・・・・
 そして、一度 投薬を初めてしまうと途中では止められません
 止めるとその反動で一気に・・・・ 
 ・・・・今以上に容体が悪くなり最悪の事も有り得ると・・・・」



シュリが一瞬顔を曇らせ、眉を顰めてラウを見た
そんなシュリの手に ラウが手を重ねる




「ですから これから数ヶ月以上、
 どんなにお辛くとも それを続ける御覚悟がお有りかと・・・・
 養父が、ジーナ様に尋ねたそうです」


「それで・・・・?
 ジーナは・・・・ ジーナは何と?」


「兄上様が遣わしてくださったのだから
 どんなに辛くても治してみせると、気丈に答えられたそうです」


「・・・・・・・そうか・・・・
 ・・・・よかった・・・・」


「まだ小さいのに、
 本当にお強い方だと養父も驚いておりました」


「・・・ああ、ジーナは・・・・・ 今までずっと・・ 苦しんできたのだ
 ・・・・私以上に強い・・・・
 神儀も立派に・・・・ 継承できるだろう・・・・
 これから・・・・ まだ先も長いが・・・・
 ラウの御父上にも・・・・
 ・・・・よろしくと・・・・」




傷が痛み始めたのか シュリが苦しそうに肩で息をする



「シュリ、大丈夫ですか?」

「・・・ラウ・・・・ 薬を・・・・・」

「・・・そうですね・・・・ 少し話し過ぎました」



ラウがポケットから懐中時計を取り出し、時刻を確かめる
前回から、ゆうに6時間以上は経っていた


薬包を解き、水を側に置いてから
ラウはそっとシュリの頭を抱き起す
小さく開かれた口に 薬と水とを少しづつ含ませて、
ラウはシュリの体を 再びベッドへ横たえた


もう薬にも慣れたのか
シュリは以前の様に副作用で苦しみもがく事もなく
時折、苦痛に顔を歪めるものの
目を閉じたまま、じっと静かにそれが効くのを待っている





・・・・・ シュリ・・・・?
 
これを飲まなければ、耐えられない痛みだという事は
ラウにもわかっている
だが、慣れるのが早すぎでは・・・・
ラウの中に言い知れぬ不安が湧き上がった


シュリの額に浮かぶ汗を拭いながら
「・・・・・用量は必ず、守ってくださいね」
今のラウには そう言う事しか出来なかった






ラウも帝国の使者に対して怒りを覚えていた

一度連絡があったきり その後、音沙汰もないのだ
その事で、ガルシアの怒りは日々増している

主役たるシュリは、宴を休む事が許されない上に
毎夜のあの石牢での責め・・・・

いつまで続くのか・・・

いつ来るのか・・・・

早く来てくれなければ・・・・・

早く・・・・早く・・・・

それだけを思っていた






華燭の城 - 91 に続く
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華燭の城 - 91

そしてその時は唐突にやってきた

いつもと同じ宴の最中、側近の一人がガルシアに走り寄り
何事か耳打ちをすると

「おお、やっと来たか!」

ガルシアの表情が喜へと一変した





他国の外相と談笑していたシュリにもその声は届いた

城内でも ”皇帝閣下から届く祝いの親書” の話は
随分前から、あちらこちらで噂され
ガルシアがそれを待ち望んでいる事は知られている





帝国の使者か・・・・ 
シュリは虚無感の中でそう思った


これでガルシアの行為が
”公然と認められた正当なものである” というお墨付きを得る・・・

ガルシアが神国に砲を向けた事・・・
自分が脅され連れて来られたという事実・・・
そんな事など何も知りもせず、全てが無かった事になり、隠蔽される
そして歪められた真実は、もう二度と表に出る事はないのだろう・・・


そう思うと怒りと悔しさが込み上げて来る

しかし、だからと言って自分には何も出来ない
使者の書など、自分にはもう関係の無い事・・・・



そんなシュリが一番に思ったのは、
今夜は少しは眠れるかもしれない・・・ ただそれだけだった







「・・・使者は何人だ?
 段取り通り上手くやれよ・・・」

気の早い来賓からの早々の祝辞を受けながら、
ガルシアが側近に小さく耳打ちをする





「それが・・・・ 陛下・・・・・」
男は俯き、言い淀んだ


「どうした、さっさとしろ」

「それが、誠に申し上げ難いのですが・・・ 使者は二人だけなのです」

「たった二人だと?」

ガルシアの眼光が鋭くなった




たった一通の書状とはいえ、皇帝閣下直々の王印のある物
王印があるという事は、それ自体が皇帝閣下の御言葉となる
しかもこの大国の王である自分宛の親書なのだ


使者はたぶん・・・ 
相応の身分の役人達が10人程で仰々しく列を成してやってくる
その護衛が居ればもっと多いかもしれない
きっと、到着が遅いのも、それだけの人数を揃える為なのだ・・・

そして、大勢の御付きの者は 控えの間で酒でも出し、
形ばかりでも労をねぎらえば良いとして・・・・
重官は代表として そのまま宴の席に案内し、
大勢の記者や列席者の目の前で すぐに盛大な受書式を行う


玉座に腰を下ろした自分に跪く使者達
その口上を聞き、頷き、たっぷりと時間を掛け
尊大に親書を受け取ってやる

・・・・そう思っていた





それがたった二人・・・?


”軽く見られた” 

咄嗟にガルシアはそう思った



その眼光に怯えた下位の側近は ビクリと視線を震わせ
慌てて次の言葉を繋いだ

「いや、しかしその二人というのが・・・・
 ・・・・・帝国皇太子 ナギ殿下と、その近衛隊長だそうで・・・・」






ガルシアの表情が変わったのは二度目だった

「なんと!!
 帝国皇太子殿下、御自ら!
 私の為に遠方よりお越し下さったのか!」



大きく声を張り上げ、皆に聞こえる様に広間に響いたその声に
会場中が驚きと称賛に沸いた




「皇太子殿下が自らお出ましとは!さすが陛下!!」

「閣下はさぞ陛下にお目を置かれているのでありましょうなぁ!」


その称賛の声を ガルシアは満足の笑みで誇らしげに受け取ると


「では早速、受書の式を執り行う!
 早くお通ししろ!」

そう側近に、そして皆に聞こえる様に告げた









ガルシアは、当初の自分の考えていた予定とは少し違っていたが
いつもの、最上に設えた(しつらえた)玉座を下り
その一段下の左脇に控えていた
これは帝国皇太子相手ならば仕方がない事だ

その横ではシュリが半歩ほど下がった位置で黙って床を見つめている

この日に備え待機させていた記者が広間に入った事を確認して
ようやくガルシアは楽団の指揮者へ目で合図を送った


演奏が一層華やかになる

その音と同時に 重厚な扉がゆっくりと押し開らかれた






華燭の城 -92 に続く
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華燭の城 - 92

中央の絨毯の上をゆっくりと歩みながら 一人の青年が入って来る

年は シュリより少しばかり上に見えるが
身に着けた軽略式用の白い軍服には
帝国の勲章がいくつも並び付き、
それが広間の煌びやかな明かりで見事に輝き揺れていた


年に似合わず堂々とした足取りは、
やはりシュリ同様 生まれ持った王の品格という物だろうか・・・







広間の最上段まで来ると その青年はガルシアの方を向いた


数歩後ろについている大柄な男が近衛隊長らしく
こちらは黒の軍服を着用し、
手には書状が入っていると思しき(おぼしき)筒状の物を持っている




「ガルシア、息災か?
 皇帝閣下より書状を預かって来た」


「遠路遥々、私如き者の為に 殿下自ら足を運んで頂き
 真に光栄に御座います
 有り難く拝領させて頂きます」


ガルシアが恭しく(うやうやしく)口上を述べ、
深く腰を折り、頭を下げ両の手を差し出した

それに続き、シュリも・・・・他の列席者全員が頭を下げる
今、頭を上げているのは
この瞬間を写真に撮ろうと狙っている新聞記者だけだ



音楽も止まった会場内はシンと静まり返り、その時を待つ





だが頭を下げたまま待つガルシアのその手には
いつまで経っても何も載せられない

記者達も おや?と言う表情で構えたカメラを次々に下ろし
場内にもザワ・・ とした空気が流れ始める




「あの・・・殿下? 書状をお渡し下さい・・・・」

とうとう痺れを切らしたガルシアがチラと顔を上げた







そのガルシアにナギは小首を傾げ、フッと微笑んだ


「今、着いたばかりだぞ、急かすな」

そう言うと、そのままクルリと背を向け玉座まで行くと腰を下ろし
ふぅと一つ大きく息を吐いた



「思ったより長旅で、少々疲れたんだ
 それに、そのシュリの人柄を見て来いとも 閣下に言われている
 とりあえず数日、ここにゆっくり滞在させて欲しい
 書状の受け渡しはそれからでもいいだろう?」

そう言うと ナギはシュリを見てニッコリと微笑んだ




「シュリ、こっちへ」

問いかけたにもかかわらず、ガルシアの返事を待たないのは
ガルシア側に拒否権はないからだ




呼ばれたシュリは 「はい」 と小さく返事をし、
呆然とするガルシアの横を抜け ナギの前に歩み出ると 
玉座の下に跪き、右手を左胸に当てる最礼を尽くす


それを見てナギは満足そうに頷いた





「シュリ、顔を上げて・・・ 私に見せてくれ」

「・・・はい」



シュリがゆっくりと顔を上げる
と、ナギの表情はみるみるうちに一変した





「シュリ、やっと会えたな!」 

「・・・・・?」

嬉しさを通り越し、喜々とした笑顔で自分を見詰めてくるナギに
シュリはただ不思議そうにその顔を見るだけだった




「わからないか?
 これでも同じ学校の先輩なんだけどな、私は。
 まぁ仕方ないか・・・・
 あそこは各国の王族や貴族だとか、凄い身分の者ばかりだし、
 私程度の ”たかがイチ帝国の皇太子” なんて珍しくもないから
 シュリが私を知らなくても当たり前だが、
 私は知っていたぞ?

 ”神国のシュリ皇子” は 帝国の皇太子などとはワケが違う
 世界にたった一人なんだ
 学校でも入学して来た時から
 密かな有名人だったんだぞ、お前は」


満面の笑みで一気にそう告げた




それは シュリにとっても初耳だった 

確かに自分の行っていた寄宿学校は、その方面では名の知れた有名校だ

ほとんどと言っていい程の生徒が 何かの称号を持ち
どこかの国の皇太子同士が隣の席・・・・ が当たり前だった

だから自己紹介でも わざわざ自分の国や身分を名乗ったりしない



そういう生徒ばかりだから、
学校側も生徒に関する情報は厳重に管理され最高機密扱いで
一切 何も公表しない事が徹底されている


国に居れば何かと制約が付き纏う事が多い日常で育った者同士だからこそ
その ”ただの生徒” として扱われる事を望み
それを学校も推奨していたのだ


まして、数百を超える生徒の中で
学年の違う上級生に誰が居るのかなど 知る由もなかった




「・・・・そうだったのですか
 お心にかけて頂き光栄です」

シュリが上げた頭をもう一度下げる




その返事にナギは満足そうに何度もうんうん。と頷くと
「では、ガルシア
 そういうことだ、数日よろしく頼む」
ガルシアへ顔を向けた


「・・・・・はっ・・・・・・・
 ・・・・・・仰せの、ままに・・・・」



事の進みに言葉を失っていたガルシアは
乾いた口でそれだけ返事をするのがやっとだった






華燭の城 - 93 に続く
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華燭の城 - 93

「じゃあ、堅苦しいのはここまでな
 皆も宴の続きを楽しんでくれ」


ナギはこういう大広間の構造にも慣れているのか
2階ホールで指示を待っていた楽団の指揮者へ、迷う事無く視線を上げた
指揮者も 「承知致しました」 と言わんばかりに微笑み小さく頷くと、
軽やかにタクトを振り上げる


広間に優雅な管弦の音が響き始めると
書を受け取れず、身を固くしたままのガルシアの内心を
恐る恐るに探っていた来賓達にも、僅かな安堵の空気が流れ
鎮まり返っていた広間に再び人の声が戻って来る




するとナギは玉座を立ち、跪いた(ひざまづいた)ままのシュリの横へ下りると、
その手を取り、立ち上がらせた

そして 「会いたかった・・・!」 
シュリをいきなり抱き締めた



「おぉ・・!」

会場から驚きと喜びと感嘆の声が上がり
受書の瞬間を撮り逃していたカメラマンは
ここぞとばかりに一斉にカメラのフラッシュを焚いた




「・・・ンッ・・」

「ん?どうした?」

「・・・ いえ・・」

強く抱きしめられて思わず傷の痛みに呻いたが
シュリは何事も無かったかの様に、微笑んで見せる




「シュリとは いろいろ話したい事があったんだ!」

瞬き続けるフラッシュにも臆する事もなく、
ナギはその手を取ったまま 屈託なく笑った



「学校、急に辞めただろ? どうしたのかと思って心配していた」

「えっ・・」



思わず そんな・・・と言い掛けて慌てて言葉を呑んだ
それもシュリが初めて聞く事実だった

だが、考えてみれば当たり前の事だ
神儀の為に取った10日間の休みなど とうに終わっている

自分は人質であり この城に、あの石牢に幽閉されているも同じ
再び学校に戻る事など、あり得ないのだ





「教授達に聞いても、わからないと首を振るだけだし・・・
 そしたら、神国を出てここに居るっていうしな・・・・ 正直、驚いた
 3週間後には今年の馬術大会だったんだぞ?
 忘れたのか?」

「いえ・・・」

「まぁ、色々と忙しかったのだろうが
 国が変わっても 学校は寄宿だし、来られない事はないだろう?
 2年生ながら馬術部のエースで
 その成績は 全4学年合わせてもトップクラスのお前が
 急に辞めるなんて・・・・」

「・・・・」

「実を言うと私も お前の馬を駆る姿が大好きで、
 練習しているのをこっそり見に行ってたんだ
 年に一度のお前の晴れ舞台、今年も楽しみにしていたのになぁ」

「・・・はい・・・・ 申し訳ありません・・・・」





シュリの後ろには まだガルシアが立っている
振り向かずとも判るその強烈な威圧感に
シュリは言葉を続ける事ができなかった



そして何よりも
この想定外のナギの登場で、いつも以上に時間が経っている
薬が切れかけていた


ひどく体が熱く、
全身を刺すような痛みが広がっていくのがわかる


ラウにも内緒で 内ポケットには薬の包みが忍ばせてある

いつもは 宴の途中で飲み物と一緒に紛れさせ
誰にも気付かれぬ様に飲んでいたのだが
これだけの注目を浴びていてはそれも出来はしない





「・・・・・どうした? どこか具合でも悪いのか?」

口数も少なく額に汗を滲ませるシュリに気付いたのか
ナギが顔を覗き込む



「いえ・・・ 大丈夫・・・・・」

そう言い掛けた声を 突然ガルシアが後ろから遮った



「はい、殿下
 それが・・・ シュリは先日から風邪気味でして
 今一つ体調がすぐれません
 父親としても心配していた所なのです
 出来れば宴も休ませてやりたいと、思っていたのですが
 殿下からは、お見えになると連絡があったきり・・・
 仕方なく、毎夜 無理矢理に出席させていた訳でして・・・・

 本日は殿下もお着きになられたばかり
 如何でしょうか・・・ 
 今夜はもうお開きという事で、ゆっくりお休みになられては?」


軽く頭を下げながらもチクリと嫌味を言うガルシアに
ナギの後ろに立つヴィルの眉がピクリと動く

が、ガルシアはそんな近衛・・・ 
たかが兵にしか値しない男の表情になど動じることは無い



ガルシアが焦っていたのは
ナギとシュリが知り合いだったという予想もしていなかった事実・・・
とりあえず考える時間が必要だった




「風邪か・・・ 大丈夫か?
 確かにこの国は寒いしな
 気を付けるんだぞ?」


そう言ってナギは優しくシュリの肩に手を置いた






華燭の城 - 94 に続く
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華燭の城 - 94

急遽用意された貴賓室へ向かうナギ達と一緒に
ガルシアとシュリは広間を出た


すぐ前を行くナギの背中・・・・
繊細な金刺繍の飾り房が揺れる背中を
ガルシアが鋭い眼光で睨みつけていた



今夜は最高の夜になるはずだった

自分の栄光と繁栄を揺るぎない物にする書状
だが、今 それを受け取るはずだった自分の手には何も無く
その書状はまだ、手を伸ばせば届きそうな場所・・・・
ナギの隣を歩く近衛の手の中だ



それも腹立たしかったが、それ以上に・・・ この帝国皇太子・・・
自分に臆する事無く、正面からモノを言う

この生意気な皇太子が シュリの知り合いだと・・・・?


何もかもが自分の想定を覆し、
何もかもがうまく行かなかった事にガルシアは
空(カラ)の両手を握り締め 苛立っていた



ナギに聞こえぬ様に 
「後で来い」 それだけをシュリの耳元で呟いた


この苛立ちを抑え、発散出来るのはシュリの体だけだ
そして何よりも、今まで以上に綿密に口裏を合わせ
シュリに釘を刺して置く必要がある





だが、そんな思惑さえも ナギの一言で叶わなくなった

「なぁ、シュリー! 
 やっぱり、少しだけでも話をしないか?
 本当に話したい事が山ほどあるんだ!
 私が今日まで、どれだけお前に逢いたかったか!
 お前の部屋で構わないし、 ・・・ああ・・・ 体が辛ければ
 シュリはベッドで横になって居てもいいぞ!」


ナギが屈託のない笑みで振り返り、そう誘ったのだ






ガルシアが驚きのあまり、一瞬 睨む様にナギを見た


広間から出たシュリを迎えようと側に寄ったラウも
同じく驚きを隠せなかった


宴の中に入れないラウは
話の成り行きが全く理解できていない


宴の途中で、帝国皇太子が
以前から城で噂になっていた”あの親書”を持って入った事は知っている
中では、受書式が行われたはずだ・・・ と思っていた

だが出てきたガルシアの機嫌は、いつにも増して最悪と言っていい程悪く
しかも、帝国の皇太子殿下が余りにも親し気に
シュリに逢いたくてと声を掛ける・・・・ これはいったい・・・



殿下の前で頭を下げたまま、伺い見たシュリの顔・・・ 
その目は、ラウにすがる様に ”無理だ” と助けを求めていた



シュリの体は もう限界だった
が、それ以上に 自分の部屋にナギを招くなど不可能なのだ
あの鉄格子の部屋に・・・・






「殿下・・・・ 申し訳けありません
 本当に今夜は、あまり体調が優れず・・・・
 少し休ませて頂きたく存じます
 お話はまた明日・・・・」


そう言いながら頭を下げるシュリの体がわずかに揺れるのを
ラウが見えぬ様に背中に手を回し、咄嗟に支えた



「私はシュリ様の世話役、ラウムと申します
 どうか今夜はシュリ様の望み通りに・・・・」

ラウももう一度、静かに頭を下げる




「・・・そ、そうだ・・・・
 シュリは少し休んだ方がいい
 毎日、私の右腕となって公務に忙しいのだから
 体調が悪い時はゆっくりと休め」

ガルシアも続く



近衛のヴィルにさえも
「そんなに急がずとも、また明日でいいのでは?
 どうせ暫く滞在なさるのでしょう?
 我々も今日は休ませて頂きましょう」
と添えられては、ナギも引くしかなかった




「そうか・・・ 
 ・・・・残念だけど仕方ないか
 ではまた改めて声を掛けるから、その時にな!」



また声を掛けるだと・・・?
ナギの残した言葉に、ガルシアの表情が益々不機嫌になる

その異変に気が付いたガルシアの側近達が
ナギを取り囲み・・・・ 実際には警護する体(てい)で、だが・・・・
ほぼ強制的に「お部屋はこちらです」と促し、廊下の奥へと消えて行く




その姿が見えなくなる頃には
シュリの体重は徐々にラウの腕に圧し掛かってきていた


だがまだ倒れる訳にはいかない
まだ廊下にはたくさんの客や官吏もいるのだ

必死に耐えようとしているが 自分ではどうにもならない
シュリの体が小刻みに震え始めていた



その様子に 「陛下・・・」 と、ラウがガルシアを小さく呼び止め
今夜の相手は無理だと小さく首を横に振り、目で訴えた

「ふん・・・・
 仕方ない
 その代わりラウム・・・・ 判っているな?」

「・・・・はい」

ラウは シュリを支えたまま静かに頭を下げた

「それから あの殿下の事も、だ」

憎々し気に廊下の先へ・・・ 
既に見えなくなっているナギの姿に視線を送った後、
ガルシアはジロリと二人を一瞥(いちべつ)して そう言うと
自室へと帰って行った







この夜の シュリとナギの宴での一連のやり取り・・・

特に ナギがシュリの事を 自分よりも格上だと認め、宣言し
いきなり抱き締めた事は 記者の手によって瞬く間に城の内外へ
いや、国内外まで、話を多少 大きく膨らませながら、
たちまちに世間に知れ渡る事となった






華燭の城 - 95 に続く
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華燭の城 - 95

抱きかかえられる様にして部屋に戻り
薬と、ラウの手当てで落ち着きを取り戻しはじめたシュリは
戸惑っていた


・・・ナギ殿下・・・・
あのガルシアが絶対に逆らう事が出来ない帝国に
自分の味方となり得る人間がいた


あの殿下に全てを話せば、自分はここから救い出され
元の生活に、神国に戻れるかもしれない

・・・・ もちろん穢された(けがされた)自分では、もう神儀は行えない
そんな資格が無い事ぐらい判っている

それでも、もう一度 皆の元に・・・・ そんなわずかな期待





だが・・・・・

自分は戻る事が出来たとしても
もう、どうしても引き返せない事が1つだけあった

それは弟 ジーナの治療・・・・

もう投薬は始まっている
途中では止められない薬
この国にしかない薬
ガルシアが全てを握っている薬



自分の事が公になり、ガルシアが失墜し全てを失えば
もしかしたら・・・
いつか・・・
いつかは、その薬も 自分の手で自由に使える様になるのかもしれない

だが ”いつか” では遅すぎるのだ

そしてもし失敗したら・・・




ガルシアが自分を裏切ったシュリに
大人しく残りの薬を渡すとは考えられない

むざむざとシュリに渡してしまうぐらいならと、
それがどんなに高価で貴重な物であったとしても
残った薬の全てを廃棄することぐらい、あのガルシアならば不思議ではない
・・・ いや、これはもう仮定ではなく
ガルシアを僅かでも知れば断言できる事だった


ジーナに薬を届ける事が出来なくなったら・・・・
届ける事が遅れたら・・・・

それは確実に弟の死を意味する

自分の為に 弟を殺すのか・・・・・



答えは1つだった



今まで通り、ガルシアとの契約を守り
何があっても最後まで、弟に薬を届け続ける・・・・

それが、あの殿下を騙す事だとしても・・・

自分を見詰める屈託のない明るい笑顔を思い出し
シュリは横たわったまま目を閉じ、グッと拳を握り締めた







シュリからナギの話を聞いたラウも困惑していた
ガルシアの怒りの原因が判ったからだ


シュリをこの城へ迎えるにあたり、
世話役としてこの部屋の準備を進めたのはラウだ

その時に少なからずシュリの周辺は調べていたつもりだった
年齢・家族構成・趣味・嗜好・・・・ その他の事も数多く

それでもナギの・・・ 帝国皇太子の存在がそれほど近くにあったとは
全く知らない事実だった

だが、もし最初からその可能性を考え、手を尽くし調べたとしても
極秘扱いで、決して外に情報を漏らさない学校の情報は
結局の所、判るはずもなかったのだが・・・




これからどうなるのか・・・

暖炉に薪を入れながら
ラウもシュリに聞かれぬ様、小さく息を吐いた





「・・・・ラウ・・・・」

その時、シュリの声がラウを呼んだ



振り返ったラウの前に
何かを覚悟した様にじっと目を閉じ、拳を握るシュリの姿があった


・・・ シュリ・・・・
ラウはその時、全てを理解した








「どうしました?ここに居ますよ
 ・・・痛みますか?」

ベッドの横に跪き、ラウがシュリの手を両手で包み込むと
シュリは静かに首を振る



「もう大丈夫だ・・・ ・・・隣へ・・・・」

その言葉にラウは頷くと
着ていた上着を椅子の背もたれに掛け、ベッドへと上がる
シュリの横に体を置くと 優しく肩を抱き寄せた



「・・・シュリ・・・ 
 本当にそれでよろしいのですね?」

目を閉じたままのシュリの顔を見つめながら ラウが一言だけ尋ねた
それは疑問形だが質問ではなく、確認だった



シュリも ”それ” の意味は判っている

・・・ガルシアとの契約を
弟の為に今まで通り続けるのだな、というラウの確認・・・



「ああ、それでいい」

小さく頷いたまま、シュリがしがみつく様にラウに体を預ける
ラウはもう一度 シュリを強く抱き締めた







その夜、ラウはシュリの寝顔を見た後 そっと部屋を出た






華燭の城 - 96 に続く
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華燭の城 - 96

薄暗い使用人棟の廊下を抜け、自分の部屋へと戻ると
ラウは真っ直ぐに奥の薬品部屋向かい、その扉の鍵を開ける


机の上の蝋燭を灯し、ガラスの小瓶を取り上げた
すでに2割程減った琥珀色の液体
それを確認した後、いつものようにグラスに入れ、水で割り、
一口で、一気に飲み干した
そして再び部屋に鍵をかけ、夜の廊下へと足早に出て行った




使用人棟から執務棟へ大理石の廊下を抜け、
主棟の真紅の絨毯の上を歩き、向かった先はガルシアの居室

その扉の前でラウは立ち止まった

陛下は今夜の事で苛立ち、そして焦っている
このまま怒りを放置すれば、その捌け口に使われるのはシュリなのだ

一刻も早く シュリの意向を伝え、怒りを鎮めなければ
次に何を考え、何を言い出すか・・・・・ それが恐ろしかった






宴から戻ったガルシアはオーバストも追い返し、一人 荒れていた
勿論、やっと届いた書状を素直に渡さないナギに対してだ


「くそっ!小僧めが!
 さっさと渡して帰ればよいものを!!!」


誰も居ない自室で一人、酒を煽りながら怒鳴っていた
怒りのせいか、酒のせいか、体が酷く熱くなっている

このどうしようもない熱を放出しなければ
内側から灼け崩れてしまいそうだった



いつもなら すぐにでもシュリを呼び出し、石牢に吊るし
この有り余る熱を鞭に代えて打ち据えている

だが 「また声を掛ける」 等とナギに言われてしまっては
それさえも儘ならない



あの小僧さえ大人しく帰っていれば、
今夜は最高の夜になるはずだったのだ
あの小僧さえ!

思考の最後には そこに巡り戻って、益々怒りの炎は高くなる





「くそがぁっっ!!」


一人叫び、振り返ったその目に 棚の端に置かれた瓶が映った
それはあの小男が ガルシアに渡した薄紅の甘い匂いの液体


その瞬間、灼熱の針で体中を刺され、
縛られたまま痛みに体を捩り 叫んでいたシュリを思い出した

ゾクリと脳天から背中まで痺れる様な快感が走り
それは自身の下半身へ到達し大きく反応する


シュリの あの痛みに苦しむ叫びが聞きたかった
血を流し、苦痛に耐える美しい顔が見たいと思った

ゾクゾクと体中が喜びに震える程のシュリの体内・・・
柔らかく、熱く狭いそこへ、この猛る自身を無理矢理に捻じ込み
滅茶苦茶に犯したい・・・



ガルシアは思わずそれを手に取り
あの甘美なシュリの苦痛の余韻に浸るかの様に蓋を開けた

途端に強烈な香気が鼻をつく
思わず顔を顰め(しかめ)た

・・・!
くそっ・・・!!!

余計に腹が立った




「陛下・・・」
その時、静かに扉がノックされる

そしてガルシアは、入って来た男の顔を見るなり 怒鳴り声を上げていた


「ラウム!!!
 あの生意気な小僧はどうした!
 何故さっさと書状を渡さん!!
 いったい 何が気に入らぬと言うのだ!!!
 しかもシュリと知り合いだと???
 そんな事はワシは知らん!
 何も聞いてはおらんぞ!!!
 くそっ!!! ワシに皆の前で恥をかかせおって!!」


忙しなく(せわしなく)部屋をウロウロと歩きまわり
邪魔なテーブルを蹴り上げ、脈絡なく怒鳴り
腹に溜まった怒りを 目の前に現れたラウにぶつけまくった



だがそれだけでは まだ収まらない
テーブルの上の酒瓶を片手で握ると
いきなり、力任せにラウへと投げつけた


---- ガシャンッ!!


「・・・・ナギ殿下でしたら、
 お通しした部屋でお休みではないかと」


飛んで来た酒瓶が 顔の横をかすめ、扉にぶつかり
派手な音を立てて割れてもなお、ラウは微動だにしなかった


ラウにしてみれば、この程度の怒りは判っていた事だ
ガルシアのこの状態も想像していた通り

10歳の時からもう17年、この陛下に仕えてきたのだ
わからぬはずがない




ラウは驚きもせず、怯み(ひるみ)もせず、
頭を下げたまま、静かにシュリの意向をガルシアに伝え始めた


秘密は必ず守る、守り続ける
だからジーナ皇子の・・・ 弟の約束も、神国の安全もそのままだと・・・
全て今まで通り、何も変わりはしないのだと・・・





淡々としたその姿を、
始めこそ 怒りで睨むように見つめていたガルシアだったが
そこは世に名の知れた一国の王
話が進むに連れ、徐々にその顔は落ち着きを取り戻していった



そうだ、そうなのだ
シュリが黙ってさえいればいいのだ

あのナギが幾日滞在するのかは知らないが、所詮はただの使い走り

いつかは書状を置いて ここを出ていくしかないのだから・・・・
すごすごと、この城を出て行くナギの姿を思い浮かべた

最後に勝つのは己(おのれ)なのだ・・・・



一つ大きく息を吐き、落ち着きを取り戻したガルシアは
「確かなのだな・・・?
 ならば、それで良い」
それだけを言うと、テーブルの上の 例の小瓶に目を遣った






華燭の城 - 97 に続く
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華燭の城 - 97

この小瓶の存在は、
ガルシアの体を疼かせるに十分な存在感を持っている
現に今も・・・
あれだけ咆哮した後でさえ自身のモノは熱を放ち続けているのだ


「ラウム・・・・ 
 お前の薬の才で、これと同じ物を作ってみろ」

そう言って瓶を指さした



一礼し、それを取り上げたラウは 蓋を開け
直接鼻を近づけるのではなく 
瓶の口から少し上を 掌(てのひら)でゆっくりと扇ぎ、
立ち昇る気を ほんわずかだけ嗅ぎ取った


そして、ガルシアと同じ様に その匂いに顔を顰め(しかめ)た
・・・あの日の石牢の匂いだ





「これは・・・」

「わかるか?西国の者が使う淫なる薬だそうだ」

「それはわかりますが、この匂いは・・・・」

「ああ、酷い匂いだ
 ワシが欲しいのは 中身は同じ効力でも、そんな匂いがせぬ物だ
 できるか?」

「・・・・・・ 時間は掛かるかもしれません
 いろいろと調合も試してみなければ・・・・」

ラウは一瞬だけ考える仕草を見せたが、すぐにそう返事をした





「そうか」

ガルシアは執務机の引き出しの中から ジャラと鍵の束を取り出すと
そこから1つの鍵を抜き取りテーブルの上にコトンと置いた


「薬品庫の鍵だ、自由にやってみろ」

「承知しました」

「言っておくが、
 持ち出した薬・薬草の類いは必ず倉庫番に伝えよ
 それから・・・・・
 出来た薬の人体実験は 一番にシュリにさせるからな
 くれぐれも、要らぬ事を考えるなよ」


一礼し、鍵を上着のポケットに入れるラウを見ながら
ガルシアはそう付け加える事を忘れはしなかった


 




そしてガルシアは ラウをその場に押し倒した


怒りと焦りの元凶は払拭された
残ったのは自身の燃えるような激しい欲
後はそれを満足させれば良いだけの事だった



ガルシアはラウの衣服を剥ぎ取る様に 荒々しく全裸にすると
四つん這いの姿勢から 両腕を背中に回させ後ろ手にして
その背中を押さえつけた

そのまま グイとしなやかな腰を持ち上げる

支える腕を取られたラウは 床に押し付けられた顔と両膝の3点で体を支え
されるがまま、床にうつ伏す



持ち上げた腰を掴み、ラウの露わになった後ろへ
ガルシアは熱く猛り立つ自身を 容赦なく突き込んだ


「・・・ンッ・・!」 

ラウは唇を噛んだまま、静かに目を閉じた







日が明け翌日
シュリはいつもの音で目を覚ました

ラウが朝食の準備をしている音だ

ラウが今日も側にいる、そして弟の治療は進んでいる
・・・もうそれだけで充分だった

ナギが来た事で 城内も数日は落ち着かないだろうが
そのナギが、いつシュリに声を掛けるかわからない状況では
ガルシアも 自分をあの石牢へ呼ぶことが出来ないはずだ


現に昨夜は何も無かった
凌辱を受けなかったのは幾日ぶりだったろうか・・・




「おはよう、ラウ」

「おはよう、シュリ・・・」

ベッドの側に来るとラウはそっとシュリに口づけた



「ご気分はいかがですか?」

そう言ってシュリの額に手を当てるのも、もう日課だった

「ああ、大丈夫」

これも同じ答えを返し もう一度、今度はシュリからラウへ口づける



ラウの首に両腕を回し、抱き付く様にして
互いに深く長く唇を求め合った後、
シュリは額を寄せ ラウの瞳を見つめ微笑んだ



「ラウ?  ・・・どうした? これ・・」

間近のラウの額に、
薄く赤い痣(あざ)の様な傷があるのに気が付き、そっと指で触れる


「ああ・・・・ 何でもありません
 昨日、ちょっとぶつけたのです」

恥ずかしそうに自分の額に手をやり
髪で傷を隠しながら、照れた笑みを浮かべる



「ラウでもそんな事があるのか?
 珍しいな・・・・」

「私も人間ですから」


笑いながらテーブルへ歩いて行くラウの後ろ姿を見ながら
シュリはそっとベッド横のテーブルに置かれた箱から
薬の包みを幾つか握り取りポケットへ忍ばせた




いつ頃からか、別々に朝食を摂るのは効率が悪い と言い出したシュリの発言から
二人は一緒に 同じテーブルで並んで食事を摂る

この日も、二人分のティーカップに紅茶を注ぎ終えてから
ラウが今日の予定を話し始めた



「本日の昼食は ナギ殿下がご一緒にと申されておりますが
 どうなされますか?
 まだお体が無理の様でしたらお断りも出来ます

 もしご一緒されるのなら・・・・
 陛下もご同席を望まれておりますが」



その言葉にシュリはフッと笑った
ナギと二人きりにするのが、そんなに心配なのかと思ったのだ


案外と臆病な・・・・


そんな事を考えながら 「ガルシアも一緒で構わない」
そう返事をした


ガルシアにも、今まで通り 自分に裏切りの意が無い事を
キチンと見せておかなければ・・・ そう思ったからだった






華燭の城 - 98 に続く
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華燭の城 - 98

その昼、ナギがガルシアの側近に案内された広間は
よくある晩餐用の細長いテーブルではなかった


広間の中央、巨大なシャンデリアの下に
10人は優に座れるのではないかという大きな円卓があり
そこに、贅沢にもたった3席だけが準備されている

その1つの席の横には、すでにシュリが立ったまま待っていた

側には世話役と言っていた ラウムと名乗った黒髪の男も一緒だ





ナギが部屋に入るとほぼ同時・・・
いや、わずかに遅れて 広間の奥の扉が開き
ガルシアも数人の側近を連れて入ってくる



ナギはこの芸の細かさに思わず苦笑いをこぼしていた
だがそれを笑って済ませられないのは
ナギの横に立つ近衛のヴィルだった


「円卓とはなんと無礼な・・・
 しかも帝国皇太子より後に入ってくるとは・・・・・
 それに あの王を呼んだ覚えはないぞ」





円卓とは文字通り円形のテーブル
通常の細長いテーブルならば 必ず上座・下座というものが出来る
そのために、必然と身分の上下で座る位置が決まる

だが、円卓にはこれがない
円卓を用いるのは 全ての者が対等 という意思の現れだ



入室も、通常ならば もてなす側が先に入り
ゲスト・来賓を待つのが通常で、客を待たせるなど考えられない事だった

わざわざ円卓の広間を指定し、
わずかでもナギの後から入室する事で、
自らの自尊心と地位を堅持しようとするガルシアの滑稽な行動に
ナギは呆れたのだった





「まぁいいじゃないか、ヴィル
 一緒に食事したいなら歓迎しよう
 ・・・・昨日、俺に玉座に座られたのが余程 気に入らなかったのだろうし」

他の4人・・・ ガルシアにオーバスト、シュリとラウム
その4人と、扉横に控えた数人の側近達にも聞こえない様、
ナギはクスリと笑った





全員が揃ったところで

「ああ、最初に紹介しておく」  ナギが軽く後ろを振り向いた



「これは私の近衛隊長、ヴィルだ
 暫く一緒に世話になるから よろしく頼む」

紹介されたヴィルも頭を下げる


それに応えシュリも目礼を返すが、
その時、ガルシアは既に 聞こえないのか・・・・ そのフリなのか・・・
早々に席に着くとワインに手を伸ばしていた

ヴィルの顔が一段と険しくなる




円卓に着いたナギの後ろには
ガルシアの態度が気に食わないヴィルが不貞腐れた顔で立ち
シュリの後ろにはラウ
ガルシアの後ろにはオーバストという
八方睨みならぬ、三方睨み合いに似た様相で 
昼食会は粛々と始まった









「で、シュリは神国へは帰らないのか?
 神儀はどうするんだ? もう行わないのか?」

その異様な雰囲気に いきなり直球を投げ込んだのはナギだった




フォークでプツリと刺した鹿肉を口に運びながら
ガルシアの視線がシュリを目端で捉える



「私はもうこの国の人間ですから、後は弟に任せております」

その冷たいガルシアの視線を容易く受け流し
シュリが静かな微笑みで答えた




「ちょっと里帰り・・・ ぐらい構わないと思うがな?
 それに弟君って確か・・・・ 具合が良くないと聞いたが?」


弟の体の事まで知っているのか・・・と言わんばかりに
ガルシアの視線が 今度はナギの方へチラと向かうが、
そのまますぐに戻し、黙って食事を続ける



「はい、弟は体調を崩しております
 なので すぐには無理かも知れません・・・
 ですが、陛下が良い薬を探してくれましたので、今、治療を・・・
 この国の医師団を神国へ派遣して頂いている所なのです」


シュリの応えに 「ほう・・」 とナギは以外そうな表情を見せたが
それはほんの一瞬だった


「そうか、では私も弟君の全快を祈るよ」

「ありがとうございます」
 
「弟かー・・・ 私には兄弟がいないので、なんだか羨ましいな
 だが、一度 お前の舞う神儀を見たかったのに残念だ」

「神儀は弟が立派に受け継ぐと思います、その時は是非」

「ああ、そうしよう」





積極的には自分から話さないシュリ
何が気に入らないのか、
鋭い眼つきで黙々と食事を進めるだけのガルシア


見えないテーブルの下では、互いに剣を抜き
切っ先を突き付け合っているのではないかと思う程の
冷酷な空気が満ちた和やかな昼食会を、ナギは面白そうに見ていた






華燭の城 - 99 に続く
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華燭の城 - 99

「ああ、そうだ!
 見たいと言えば シュリ、私がここに居る間に一緒に乗馬をしないか?
 お前の馬を駆る姿を もう一度見たいと思っていたんだ」

「・・・・乗馬・・ ですか?」



ナギのどんな話題にも よどみなく会話を合わせていたシュリだったが
さすがにこれは 自分の一存で返事をする訳にはいかなかった
城から出る事を許されていないのだ

まして食事にまで同席するガルシアが許すかどうか・・・



伺う様にガルシアへ視線を向ける


「・・・良いではないか
 ”公務” で疲れている様だし
 シュリも良い気晴らしになるだろう」


「・・・あ・・・  ・・・ありがとうございます」

驚く程あっさりと許可が出たのには、シュリも驚きを隠せなかった





「だが、まだ体調も優れぬのだろう?
 慣れぬ城外は何かと危険だ
 護衛にワシの側近を何人か連れて行くがいい」

ガルシアの後ろに立つオーバストが
”承知” の意を込めて小さく頭を下げる




「お心遣いありがとうございます
 ではその様に・・・・」

シュリが言い掛けるのを ナギの掌(てのひら)が軽く上がり、
ガルシアの腹の内を制した




「ああ、それなら心配は無用
 護衛はヴィル1人居れば十分だ
 1人でそこらの兵、10人、20人分ぐらいは 優に働く
 それに大勢でぞろぞろと連れ立つのは余計に目立つし
 そういうのはあまり好きじゃないんだ、我ら3人でいい」


「・・・しかしそれでは・・・・・ 殿下・・・・!」

ガルシアが悔しそうに唇を歪める




形勢不利となったガルシアを助太刀する様に

「では殿下、ラウムだけでも同行させて頂けませんか?
 私もまだこの国に不慣れ
 ラウムに道案内をさせましょう」

シュリが申し出た



「道案内かー・・・ 確かにそれは必要かもな
 しかし・・・・
 こう言っては申し訳ないが・・・ 使用人に乗馬が出来るのか?
 それに見た所、脚が悪そうだしな・・・・」

ナギがシュリの後ろ、杖を持って控えるラウに目を向ける



「・・・・ラウ? どうだ?」

シュリも振り返って その脚を気遣った




「上手くはございませんが、私で宜しければお供致します」

その答えにシュリの顔がパッと明るくなった




「陛下もよろしいですか?」

その笑顔を一瞬で元に戻し、
冷静な顔で正面へ向き直ったシュリが ガルシアに尋ねる



「ああ、・・・・ ラウムも一緒ならばいいだろう
 しかし、やはりここはワシの側近を3名
 皆の邪魔にならぬ様、遠巻きにつけさせる・・・ それが条件だ
 ラウム、くれぐれも、、、 シュリの事、頼んだぞ」



ガルシアの ”くれぐれも” が強調されていたのは
暗に秘密は死守しろという意味だろう


ガルシアとしては、自分の居ない所で交わされる二人の会話の全てを
一言も漏らさず聞きたい所だ
だが、今はこの条件で許可を出すしかなかった

側近3人でも居ないよりはマシだ




「承知致しました」

頭を下げるラウに シュリはもう一度振り返り嬉しそうに微笑んだ




「遠巻きに3名か・・・
 邪魔にならないなら、まぁいいか・・・・」

ナギもそれで同意する


 


「しかしーー・・・」

ガルシアが、幾杯目かもわからなくなったワインに手を伸ばす



「今は雨の時期、乗馬りが出来る程に晴れるのは、いつでしょうなぁ・・・
 残念ながら、無理かもしれませんなぁ」

あくまでも独り言を装って、
残念至極と言う口調で、ガルシアがナギの方をチラと見る
あっさりと許可を出した思惑は それもあっての事の様だった

現にここ数日は毎日、雨ばかりだ



「ああ、それなら心配に及ばない
 学校も長期の休みを取ったし
 皇太子と言っても、私はシュリ程 忙しくない
 丁度いい機会だから、ここで暫く羽を伸ばさせてもらうよ
 そのうちに晴れる日もあるだろう」

ナギは事も無げに笑みを浮かべ ガルシアの独り言をサラリとかわした


尽く(ことごとく)翻え(ひるがえ)される自分の意見・・・
ガルシアの表情がハッキリと変わり始めていた





「しかし殿下・・・
 学校が同じと言うなら、既に殿下はシュリの事を御存知でしょうに・・・
 現に昨夜も 親し気なご様子
 それなのに今更、
 シュリの人柄を見てから書を渡すかどうかを決める などとは・・・
 いったいどういう了見なのか・・・ 理解できませんな」


厭味(いやみ)たっぷりなガルシアの言葉に 
そろそろヴィルの我慢が限界に達し様としていた


だが背中で感じるヴィルの怒気を ナギはフッと笑って制した



「だから、ここで羽を伸ばしたいと言っているだろう?
 聞こえなかったか?
 国では立場上、なかなか遊べなくてな
 人柄を見ると言ったのは、あれは方便、皆への体裁だ
 ああ言えばゆっくり遊べる」



クスクスと笑う様なナギの返事に
 
「・・・クッ・・・・・ ならば好きにされるがよい!」

ガルシアは唇を噛み、その後 一度も口を開く事はなかった






華燭の城 - 100 に続く
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プロフィール

凛

Author:凛
BL・MLを日々妄想してる腐女子

しかもかなりハード目が好きな壊れかけ

SM・拷問等の酷い描写が苦手な方は、ご遠慮ください

1作目 『刻印』
2作目 『華燭(かしょく)の城』 
完結しました。
ブログタイトル下のマップより全話読んで頂けます。
『刻印』の簡単な解説はこちら から


まだまだ初心者故、描写の至らない点
設定の矛盾は笑って見てください 

読みやすく・・と思っているので、長編小説ですが、各回短く、短文、1日1回UP予定です


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