0-story

18禁 BL小説です。主に拷問・凌辱等ハード系。 こういう小説に興味の無い方、嫌悪感がある方はご遠慮ください。サイトマップより一気読み出来ます
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華燭の城 - あとがき-

第2作目となる 【華燭(かしょく)の城】

約7ヶ月でしたが、読んで頂きありがとうございました




ツイッターの方では たまに呟きましたが
今回の舞台設定が、近代と近世の狭間
日本で言うなら馬と車が行き交う明治辺りのイメージで書きました

と、いうのも 前回 【刻印】 で深月の使う最新のタブレットや
銃火器にとてもとても苦労したから・・ 
(当時の私はまだガラケー。笑)
馬と剣の方が描き易いという安易な発想からでした


半面、宗教感や奴隷制度(本編でこの言葉は使っていませんが)
騎士道や人物の名前・・・
どの時代、どの設定でも やはり物書きは大変だと思い知らされました

特に宗教・・・召魔滅神の紋の形に関しては・・・
逆十字は悪魔信仰のシンボルではありません
これは全くのフィクションですのでご了承下さい





元々、華燭の城は 短編のつもりだったのですが
筆力の無さから、また198話という分量になってしまいました
刻印の続きを待っていて下さった方には、失望させてしまったかもしれません



次作は 刻印の続きを別事件で描きたいと思っていますが
描きたいシーンが2つ3つ・・・ それをどう繋いで1つのストーリーにするか・・・ 
日々格闘しております m(__)m


その前に短編スピンオフで、次作の足がかり的な物でも・・・とか・・・
色々と迷走中です
もう暫くお待ちください



華燭の城 サイトマップ から全話読んで頂けます

半年以上のご愛読 ありがとうございました   -- 凛 --









PS. 一つ質問を頂きましたのでここでその解説?を・・・。
何故、致死量の毒を飲んだラウが生きていたのか・・・
それはラウの言葉にヒントがあります
「この一瓶でちょうど致死量になるように計算されています」と。
という事は・・・
逆に言えば、少しでも減ってしまうと致死量には至らないという事
誰か勝手に、この瓶から薬を抜いて持って帰った人が居ましたよね
以上です!

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華燭の城 - 198 (最終回)

二頭の馬が森の中を疾走していた





先を行くレヴォルトは、既に目指す場所を知っているかの様に
手綱を取らずとも湖まで走り抜ける勢いだ


シュリの乗馬術と相まって、
どんどんとオーバストの乗る馬を引き離していく


だがシュリはそんな事に構いもせず
何かに突き動かされる様に、あの湖畔を目指していた







神国の者が見たという男

何の根拠もない

湖畔に怪しい男が一人居たという・・・ ただそれだけの事だ








だが・・・・








オーバストを置き去りにし、先に湖畔に着いたシュリが馬を降りると
レヴォルトもじっと大人しく、滝の方へ頭を向ける


そのレヴォルトも見つめる先・・・
薄い木漏れ日がきらきらと注ぐ湖畔に、
神国の者が目撃したというらしい一人の男が座っていた


蒼い木々に囲まれ幾重にも重なり合った連段の滝を
水飛沫に目を細めながら ただ静かに見つめる男の後ろ姿



対岸から森を抜け疾ってくる風に 湖面が輝き
背中まである長く美しい黒髪がその風にサラサラと揺れる









シュリは思わず駆け出していた

見間違う事など、あるはずがない





濡れた草を踏む音に ピクリと僅かに身を震わせ
ゆっくりと振り返った男の顔に
優しい微笑みが浮かんだ













確証などなかった


だが、あの日 ここで約束したのだから・・・


いつか二人でこの景色を見ようと・・・・












華燭の城  -完-
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華燭の城 - 197

「オーバスト、続きをしよう」

「はい、シュリ様」

再び机に戻ったオーバストが、次の書類を取り上げる




ガルシア亡き後
シュリは側近達の前で、その私兵集団の解体を宣言した

そして その者達に
出て行くも残るも、身の処し方は自由・・・・ とだけ告げ
自分の体の傷の事は、口止めさえしなかった


罪を暴けば、色々と黒い過去が出るだろう者も居る

オーバストは自らを筆頭に、厳しい処分をと望み
ジルは何の誓約も無しに、
あの傷を知る者達を解き放つのは・・・・ と難色を示した


私兵時代の罪は償わせるべきだという官吏の声もあったが
シュリは全てに首を振り、
あれは命令によるもので、彼ら個人の意思ではない、
それを白日の下に晒す気もないと説得し、咎める事もしなかった



中には自らの罪の意識で城を離れた者も居た
勿論、シュリの体を見た事で離れて行った敬虔(けいけん)な信者も居た
が、そのほとんどが このままシュリに仕えたいと申し出た



オーバストもその一人だ
前王シヴァ・・・・ ラウとの約束を守り
このまま側に置いて欲しいと頭を下げたのだ


ガルシア時代の国務をよく知るオーバストは、
シュリにとっても有能な補佐役であり、
今では文字通りの側近として国政を手伝っている



そんな二人の姿にジルも諦めた様に 鉄格子を背にして向き直り
オーバストの隣の椅子へ腰を掛けた









「そういえばシュリ様、先程 馬番が参りまして・・・」

オーバストが書類から顔を上げ、シュリに話し掛けた



「レヴォルトの様子が2、3日程前からおかしいと申しておりました」

「レヴォルトが?」

「はい、いつにも増して落ち着きなく 餌も全く食べずに困っているので
 一度シュリ様に様子を見て欲しいとの事で・・・・」



そう話すオーバストの言葉に、再びジルが声をあげた



「馬番ですと!?
 馬の心配までシュリ様にさせるのですか!
 側近というからには、そなたが行って・・・・」

今度は オーバストに説教を始めようかというジルを
シュリはクスクスと笑いながら遮った



「いいんだ、ジル
 レヴォルトは私の言う事しか聞かないんだ
 そういえば暫く走らせていないし・・・・ 
 ・・・・・そうだ・・・
 オーバスト、午後の私の予定はどうなっている?
 今日は雨も降っていないし、
 あの湖の畔(ほとり)まで走らせてやりたいのだが」



オーバストが少々お待ちを・・・ と返事をし シュリの予定を調べ始めると
ジルが 「湖の畔とは、城裏の・・・・ 森の奥の滝・・・ ですか?」 と尋ねてきた

あの滝の事を、ジルに話した覚えはない




「そうだが・・・・ どうしてジルがそれを・・・・?」

ジルは やはり、と言わんばかりに1つ大きく頷くと、

「先日より神国の地理学者が
 この国の調査の手伝いに各地を回っておるのですが
 それが、森の湖で怪しい者を見たと報告がありまして・・・」


「怪しい?」

オーバストも 眉を顰め顔を上げた

その表情は一瞬で引き締まり、
元の側近長だった頃の顔付きに戻っている






ガルシアが急逝した後
たった一日で王が二人も変るというこの事態は、人々を大いに驚かせた
しかも第10代王は 亡くなったとされていたガルシアの実子だという

これら一連の出来事が他国に与えた影響は大きく
この機に乗じて・・・ と考えた敵対国も少なくはなかった



しかし、ここでラウの思惑は見事に的中する


その後を継いだのは あの神の子シュリなのだ





相手が神の子の治める国となれば、簡単に手が出せるはずもなく
反対に、その恩恵にでも与ろうというのか・・・
和平を結びたいとの申し出が相次いだ


今まで一触即発の状態で対立していた国々から
まるで掌を返した様に
ガルシアと、その子シヴァへ、丁寧極まりない弔意が届いた時には
さすがのオーバストも苦笑いを隠せなかった


そして国内では、王と皇子の死を悲しみと共に静かに受け止めながらも
混乱もなく、速やかに、粛々とシュリの戴冠の儀は行われた




今 この国はゆっくりと落ち着きを取り戻しつつあった





だが、この世の万人が皆同じ・・・ とならないのが常だ
安逸(あんいつ)を、ただ貪っている訳にはいかない
元側近長たるオーバストの表情に緊張が走る



「シュリ様、あの森の向こう・・・・
 山を越えれば、端は西国との国境に繋がっています
 まさか、また西国が・・・・・
 
 ・・・で、ジル殿
 その怪しいヤツは捕らえたのか?」



「いや、それが・・・・・
 身なりは軍人でもなく・・・ かといって農民でもないそうで・・・・
 余りに怪しいので尋問しようと、声を掛けた途端に
 森の奥へ逃げ込んで居なくなったとか・・・・
 
 ですからシュリ様、
 お出かけになるのは 当分控えた方がよろしいかと・・・
 今はまだ この国も何があるか判りません
 万が一にでもーーー・・・・・」


 


ジルがまだ言い終わらぬうちにシュリは立ち上がり、
部屋を飛び出していた



「シュリ様!」 オーバストも立ち上がる

「えっ・・・ あっ・・・・・ああ??
 ・・・シュ・・・・  シュリ様っ!!?」


いきなりの事に驚き、呆然と扉を見つめるジルの横をすり抜け
シュリの後をオーバストも続く





城の厩舎に駆け込んだシュリの気配に、レヴォルトが大きく嘶(いなな)いた







次回最終回
華燭の城 - 198 に続く
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華燭の城 - 196

トントン・・・

自室の扉をノックする音に
執務机で書類に向かっていたシュリが顔をあげる
オーバストが 向かいの椅子から立ち上がり、扉を開きに向った



「シュリ様!
 神国からの知らせが届きましたぞ」


開けられた扉から満面の笑みで入ってきたジルは
まず、抱える様に持っていた大きなケースを大事そうにテーブルに置き、
シュリの側まで来ると 1通の封筒を嬉しそうに手渡した




その手紙を受け取り、読み終えたシュリの顔にも笑みが広がる



「ジーナはもう心配ないと、医師のお墨付きが出たそうだ
 もう暫くはかかるだろうが
 いずれ神儀を始める体力も付くだろうと書いてある」

「よろしかったですな!シュリ様!!!」


そんな二人を見ながらオーバストも嬉しそうに頷いた






「そうそう!
 こちらも完成致しましたので受け取って参りました」


ジルはテーブルに置いたケースを 両手で持ち上げると
腰を折り、下げた頭より高くそれを持ち上げて
恭しく(うやうやしく) シュリに差し出した


机の上で蓋を開いたシュリが取り出したのは、あの奉剣だった


シュリは窓の方へ向かい、それを鞘からスラリと抜き出す
その刃の輝きを窓からの明かりで一度確かめた後
剣身を指でなぞった

そこには、新しく彫られた王の名が並ぶ



第10代王 シヴァ・アシュリー
第11代王 シュリ・バルド=ランフォード








あれから1か月
この国も神国も大きく変わった


神国は ナギの計らいにより
”神の国は恒久に独立を認め 他国は侵略ならず” という帝国命で
二度と戦火に巻き込まれない完全な中立の独立国となった


元々、帝国と神国は何の係わりもなく、同盟国でもない
その帝国が無関係な国の為に、その様な命令を出すことさえ矛盾していたが
他国からは、一切異論は出なかった
反対に、今まで不可侵が認められていなかった事の方が
驚きの対象となった程だ
 

そして、ラウの身分も回復させ、正式な第10代の王と認めさせたのだ
これはガルシアの没後、僅か数分・・・ 数十分間でも
国を想うあの姿は確かに王であったと証言したナギとシュリの強い意向に
帝国閣下が沿う形で実現した




ラウ・・・・・



あの後、懸命の捜索が行われたが、判った事と言えば
湖の伝説は本当だった・・・ という事だけだった

・・・・ 思い出せば今でも涙が溢れてくる
それを留め様と、シュリは静かに目を閉じた











「さて! この国も生まれ変わりますぞ!
 老体も益々頑張りませんと!」

鎮まり返った空気を一変させようと、
ジルが袖口を捲り上げる仕草をしながら大きく声を上げた


「ジル、余り無理はするな
 この国は寒い
 神国と同じつもりで居たのでは、身体に堪える
 居てくれるのは有難いが・・・・」

留めた涙を見られまいと、クスリと笑いながらシュリが振り返った


「シュリ様! 
 私はもう2度と御側を離れませんと、言ったはずですぞ!
 帝国閣下が この国と神国とを、シュリ様とジーナ様・・ 
 文字通り兄弟国として、国交自由と決めて下さったおかげで
 神国の者も、何の制限もなく 自由に行き来できます!
 
 それによって神国でも、少しでもシュリ様のお力になりたいと
 既に多くの者が声を上げ、この国の調査を手伝っておる状況!
 そんな中、私1人、戻るなど有り得ません!」

ジルは 有無を言わさぬ勢いで一気に話したてた



「本当に、殿下と閣下には
 どれほどの礼を尽くしても足りない程だ
 ジルもありがとう、くれぐれも無理はしない様に」




これほど多種に渡る帝国令を 異例の速さで発布させる事が出来たのは、
後ろで口添えをしてくれたナギの力、あっての事だ

うんうん、と大きく頷きながら、ようやく落ち着いたのか
ジルはふぅと大きく息を吐き、
改めて執務机の上の大量の書類に目を丸くした





この国の新王に就いたシュリは 城の中だけではなく、
国の隅々まで民の暮らしを調べ、細やかに手を尽くすべく、日々奔走していた

一見豊かではあっても、必ず陰で苦しんでいる者がいる
ロジャーの様に親を亡くし、飢えている子がいるかもしれない
かつての自分の様に、
声を上げられず理不尽に嘆いている者が居るかもしれない

その救済の為の書類が、机に山積みになっていた





「シュリ様!
 これを全部処理なさるおつもりですか!
 少しはお休みになってくださいまし!
 シュリ様が王位に就かれてまだ1ヶ月ですぞ?
 最初からその勢いでは疲れてしまいます
 それに・・・・」


ジルはシュリの部屋を見回し
あの窓にはめられた鉄格子に眉を顰めた



「部屋はたくさんあるのに、
 どうして机を運ばせてまで ここで御公務をなさるのですか?
 私はここは・・・・ 好きにはなれません」

「ジル、その件はもう何度も話し合っただろう」

「それは・・・ そうなのですが・・・」




ここは家具の1つ、寝具の1つまでラウが揃えてくれた部屋だ
思い出は全てこの部屋にある
シュリはここを出るつもりはなかった






華燭の城 - 197 に続く
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華燭の城 - 195

「でも、これはあなたの為ではなく・・・ 
 私自身の身勝手な復讐の為・・・」

ラウの、母の形見の剣とガルシアを抱く左腕に力が入る



「そして・・・・ これが自分で決めた私自身の幕の引き方
 もう、何も思い残す事はありません」


皆の安堵の空気の中で ラウはポツリと呟くと
コートのポケットから小さな瓶を取り出し、片手で蓋を取った



瓶の中で揺れる琥珀色の液体



「・・・・・バカッ!!! やめろっっーー!!!!」





それを見たナギが咄嗟に叫び、
その声に反応したヴィルがラウを見る
手に握られた物の正体に、今までの笑顔が一瞬で引き攣り、
走り出し、飛び掛かろうとした



・・・・・だがそのヴィルの手は届かなかった



ラウは左腕にガルシアの亡骸を抱えたまま、
一気に それを飲み干していた





「ラウ・・・・!何を!!!!」

ナギ達の焦りに只ならぬ物を感じ
思わず一緒に駆け寄るシュリをラウが制した







「来るな・・・・・シュリ・・・・・
 ・・・・これは・・・・・・・ 
 ・・・この1瓶でちょうど致死量になるように・・・・ 計算されています・・・・」


「致死・・・・って・・・・・ まさか・・・・毒・・・・・
 ・・・・・ラウ!!!」


「来ないで、、ください・・・・」 



その声と同時に ゴフッ。とラウの口から血が吐き出される





「もっと早く・・・・ ガルシアを殺っていれば・・・・・・・・
 もっと早く・・・・ これを飲み終えていれば・・・・・・
 ・・・ 私の判断が・・・・ 遅かった為に・・・・
 シュリにはそんな傷まで・・・・
 辛い思いをさせた・・・・・・
 ・・・・・全て私のせいだ・・・・
 あと1日・・・  ・・・・あと1日と・・・・・・ 
 先延ばしにして・・・・
 少しずつしか・・・  これを口に出来なかった自分が・・ 情けない・・・
 ・・・・・でも出来なかった・・・
 あなたと離れたくなかった・・・・
 少しでも長く・・・・・・・
 一緒に居たいと・・・・ 思ってしまった・・・・
 あなたを・・・ シュリを本当に・・・・・・ 愛してしまったから・・・・・
 でも私は・・・・・・・・・   自分がどうしても赦せない・・・・・・・・・」




崩れそうになる体を剣鞘で支え
ラウはガルシアを左手に抱えたまま、ゆっくりと湖へと後退っていく





「止まれ・・・ラウ!!!!
 ・・・・・・・・動くんじゃない!!!」




「シュリ・・・・・・・・・・

 ガルシアは・・・・ 
 父は・・・・  一緒に連れて・・・  逝きます・・・・・・・・
 皆の眠る・・・ この湖に・・・・・  母の剣も一緒に・・・・・

 最後の・・・  我儘を・・・・・・



 シュリ・・・・ どうかこの国を・・・・ 皆を・・・・  頼み・・




 シュリ・・・

 シュリ・・・・・・・・・・  



 愛してる・・・・・・・・・・」




真っ直ぐにシュリを見つめるラウの瞳
その正面の雲の合間に、星が見え始めていた












シュリもまた、蒼白のラウの顔が美しく、優しく、微笑むのを見た





が、それは僅か一瞬




そのまま ゆっくりと後ろへ倒れたラウの姿は
ガルシアを抱いたまま シュリの目の前から掻き消されていた


闇と微かな水音だけを残して・・・










「・・・・ ラウ!!!  ラウーーーーーっ!!!!!」


誰も居なくなった断崖に走り寄り、湖に向かって手を差し出すシュリを
ナギとヴィルが抱き止めた



「ダメだ!! お前まで落ちる!!!シュリ!!!!」

「放せ!!! 行かせろ!!!
 ・・・・・・・・・・・ ラウが・・・・!!!  ラウが・・・・・・・・!」






木々の静かに揺れる音だけが湖面を渡る
その中に、泣き叫び ラウの名を呼び続けるシュリの声だけが響き渡った






華燭の城 - 196 に続く
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華燭の城 - 194

「殿下は・・・ もうご存知だったのですね」 

真っ直ぐに、自分を睨む様に見るナギの強い視線にそう言い
ラウはふと目を反らした


「ああ・・・・ だからもう、何も言うな!」


だがラウは ナギの求めには応じなかった
小さく首を振る



「・・・・私は シュリの事を調べ、羨んだ時から
 心のどこかで激しく妬(ねた)んでいた・・・・

 自分が座るはずだった座を
 シュリに譲らなければならないという現実・・・・
 王座など欲しくはない・・ 表には出ない・・・と頭では思いながらも 
 いつしか私は・・・・
 シュリがこの国の王位に就いた後も、意のままに動かせないかと
 そう考える様になっていた
 表には出られずとも、裏でシュリを操る事ができればと・・・・

 そして私は思いついた・・・・

 シュリが、ガルシアに弄ばれ、傷付けられる事は判っている・・・
 ・・・ 私がそうであった様に・・・
 ならば、必ず薬が必要になる・・・ 
 苦しみや痛みから救う薬・・・ それでシュリを薬浸けにし・・・・
 自分の言う事ならば何でも聞く人形にしようと・・・ 計画を立てた

 ・・・・ 一歩間違えば、命まで脅かすかもしれなかったのに
 それでも 私は自分の欲望を、嫉妬を止められなかった・・・・
 
 恩を売り、罪悪感を擦り込み、苦しむシュリを薬で救うように見せかけながら
 全てを手に入れる・・・

 シュリ・・・・・・ もうこれだけ言えば判ったでしょう?
 私がどれだけ酷い人間か・・・・
 
 だから、いい加減に・・・・
 お前など要らないと・・・・
 ・・・・もう消え失せろと言って下さい!シュリ!」







「・・・ それが・・・ 何・・・・?」






オーバストに支えられていた腕を解き、シュリが真っ直ぐに見ていた





「だから・・・・ 私の事など・・・」

「・・・・知っていた
 あれが麻薬だという事は、もうずっと前から」


そのあまりにも静かな声に、その場に居た全員が息を呑む






「あの西国の男に最初に石牢で責められた日・・・
 私の胸に針を突き立てた後、あの男はひどく驚いた顔をした
 そしてすぐに嬉しそうに笑いながら、私の耳元でこう囁いた
 ”皇子は麻薬を嗜んで(たしなんで)おられるのか?” と・・・・
 ・・・・ 正直驚いた・・・・
 だが思い当たるのは、毎日 お前の渡してくれる薬だけだった」


「そんな・・・・
 だったら何故 大人しく、あんな物を飲んだのですか!!」


「お前が・・・・! 
 ラウが私の命を奪う様な事はしないと判っていたから・・・
 初めて会った日、”何があっても” 味方だと言ったのはお前だ、ラウ
 だから、信じられた」


「馬鹿な・・・・・!!
 ま・・・・・ まさかあの受書の日・・・・・
 部屋にあった大量の薬を一度に飲んだ時も
 ・・・・ もう知っていたのですか・・・・?
 知っていて、あれを全部?
 ・・・・・・なんて無茶を!!!」


「あの時は飲まなければ、立ってさえ居られなかった・・・
 でも行かなければ、殿下が殺されていたのだから 
 結局、皆を救ったのはお前の薬だ」


「シュリ! あなたという人は・・・!
 自分が死ぬかもしれなかったのですよ!」


「でも生きてる
 この傷を縫合し、命を救ってくれたのも、お前だ」


「・・・っ!」



声を荒げていたラウが 小さくため息を付き
諦めた様に目を伏せた





「ラウこそ・・・ どうして私を騙し通さなかった?
 何故、今ここで全てを話した・・・?
 ガルシアを粛清したことは 誰も咎めないと言ったはずだ
 もし私が王座に就いたとしても、何も言わず黙っていれば・・・
 ”これからも 表に出るつもりはない” と言い通していれば・・・
 薬を飲ませ続ければ・・・ 私を裏で動かす事はできたはず

 いや・・・・それ以前に・・・・ 途中から薬を変えただろう?
 どうしてだ・・・・?」



シュリは ラウの腕の中の、動かないガルシアに目を遣った
あれほど、自分を苦しめたガルシア・・・・
それがもうこの世の者ではない・・・
その感覚が妙に不思議な気がした



「言ったでしょう・・・・
 あなたが優しすぎたのだと・・・・ それが誤算だったと・・・・
 あなたは・・・・墓に花を供えてくれた
 そして祈ってくれた・・・・・
 そんなあなたを私は・・・」
 

「墓・・・・・」


「そこの一番小さな墓・・・
 あなたが薄蒼の花を挿してくれたそれは・・・・ 私の墓です
 生まれてすぐに死んだとされた私の・・・
 誰にも名前を呼ばれたことの無い私の名を指で探り
 そして祈ってくれた・・・・
 あの時、嫉妬に狂っていた私の心が揺らいでしまったのです・・・・
 
 あなたがガルシアに弄ばれるのは仕方ない・・・・
 あなたが薬で人形の様に壊れようと構わない・・・・
 あなたに逢うまでは、そう冷たく割り切れていた心が・・・
 
 逢ってしまったから・・・
 あなたの側に居たいと・・・・・
 あなたが愛しいと・・・ そう思い始めてしまった・・・・
 そして想えば想うほど・・・・
 ガルシアも、自分も・・・・ シュリを苦しめた全てが許せなくなった」



「だったら・・・・!
 もうこんな話は止めよう!ラウ・・・!
 ”私の為に無茶をするな” そう言ったはずだ
 ガルシアはもう居ない・・・ もう終わったんだ!
 跡を継ぐのは 実子であるラウが相応しいと、私は思う
 ラウが次の王になれば、無理矢理に歪められた王家の系図も元に戻る
 そこからまた始めればいい!」



「俺も賛成だ!
 ガルシアの死は綱紀粛正(こうきしゅくせい)によるもの
 そして 次の王はその実子であるシヴァ、お前だラウム
 その事で、後に何か面倒事が起こったとしても、
 俺が親父に掛け合いなんとかする!」



その言葉にラウが強く首を振る


「ならば・・・・・・・・
 どうしても表に出るのが嫌だと言うなら・・・・
 お前の言う通り、私が王位就こう・・・
 そして ラウ・・・ お前が後ろで 私を支えて欲しい」


シュリの言葉にナギも頷いた




「・・・・・ありがとうございます・・・・・」

その声は心なしか震えているようにも聞こえる

ラウはゆっくりと頭を下げると
右手に握っていた剣をそっと鞘に戻した

柄に下がった青い房が、湖からの心地よい風にサラサラとなびき
それを見つめるラウの瞳から 一筋零れた涙が、頬を伝った




その姿に、皆も安堵の表情を見せ肩の力を抜く


ヴィルはその大柄な体躯に似合わず、既にポロポロと大粒の涙を流し
そのクシャクシャの顔で泣き、笑み、頷き、隣の近衛の肩を叩いていた






華燭の城 - 195 に続く
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華燭の城 - 193

「・・・・ ポケット・・・・?」

唐突な話にシュリは戸惑いを隠せず、そう聞き返しながら
ラウに借りたコートの中を探る

ポケットからそっと抜き出した手には
言われた通りに古い鍵が1つ握られていた




「それは、この城の薬品庫の鍵
 場所はオーバストが知っているはずです
 その一番奥の棚の床下・・・・
 地下庫にジーナ様の、これからの治療に必要な薬草を確保しています
 万が一、追い詰められたガルシアが血迷い
 城に火でも放ってはと、隠したのです」


「ジーナの薬・・・・
 薬品庫の鍵・・・・」


「ええ・・・ あなたが一番欲しがっていた物です
 あなたが、ただひたすらに ガルシアの仕打ちに耐えてきたのは
 全てその薬の為、ジーナ様の為
 その薬草がガルシアの手の中にあると思っていたからです
 でも本当は・・・・
 私はもうずっと前から その鍵を持っていたのですよ
 なのに私は、あなたを利用し続ける為に言わなかった
 薬草が既に こちらにある事が判っていれば、
 あなたは何も ガルシアの言いなりになる事はなかった」


「これが・・・・ ジーナの・・・・」



シュリは、自分の手の中にある鍵をじっと見つめた

自分が ジーナの薬の為に耐えてきたのは本当だ
その為に、ナギにも本当の事を打ち明けられず
助けも求められなかった
今日でさえ、ナギを追い返そうとした程だ
もし話せていれば、この胸の印も無かったはず・・・・・
 



・・・・・・・でも・・・・・・

・・・・でも・・・・・・

・・・・でも・・・・・・






「それでも・・・・・!
 私の気持ちに・・・・ 変わりはない・・・・・・」



ガルシアの骸(むくろ)を抱えるラウの腕に力が入った

そのまま グッと唇を嚙んでシュリを見つめると
スッと息を吸う


 

「シュリ!!!!
 いい加減に目を覚ましなさい!!!
 どこまで言えば判るのですか!!!」


「判らない!
 何も判りたくない!!!」


「いいですか、よく聞きなさい!!
 私は・・・・
 あなたを・・・・・
 シュリを・・・・ 自分の意のままに動く人形とするために・・・・・
 ・・・・薬を飲ませていたのですよ・・・・・!
 私がシュリに渡していたあの薬湯と薬・・・・・
 あれは・・・・ ・・・・・・・・  麻薬・・・」



「やめろ!
 それ以上言うな!ラウム!」

叫んだのはナギだった



予想外の場所からの声に
ラウも驚きを隠しきれず、思わず視線を合わせる





「これ以上・・・・ もう・・・・・   ・・・・シュリを傷つけるな!」



ナギはこの事実を既に知っていた


ヴィルが城から持ち帰った薬の中で、ナギが注目していたのは2つ
大量の麻薬成分が配合された薬と、毒薬の瓶・・・


自国の検査で これが麻薬だと判明した当初、
ナギは ガルシアがこれで財を成しているのでは・・・・と考えた

違法な麻薬をラウに作らせ、その販路に西国を選んだのだ、と・・・
そして、男を呼び寄せ城内で秘密裏に取引・・・・
そうだとすれば、あの異常な財力にも説明が付く




だがあの財は 大国の姫を次々と娶り(めとり)ながら増やしたものだった
ガルシアが婚姻の持参金として相手国に要求した金額は
小国ならば、かるく数年の国家予算に匹敵する

それでもあの大国、 あのガルシア王の妃になれるなら・・・・と
巨額の金と共に娘を差し出した国々・・・

その末路は 金のみならず、宝剣を含む財宝から武器・兵力
果ては自国の領土と、大事な娘の命まで
根こそぎ奪われる事となったのだが・・・・




結局 残った謎の1つ、麻薬について話したのは 
思いがけずも あの西国の男だった
自分の保身の為の最後の切り札としてナギ達に密告したのだ




”皇子は麻薬を常習しているはずだと・・・”




それは長年、西国で あらゆる薬を作り出し
諜報してきた男の直感だった


自分の作った薬と針の痛みに 普通の人間が・・・
まして、酒さえ飲まないという皇子が耐えきれるなど 考えられない。
というのが理由だった


もしそんな事が出来るとすれば、答えは1つ・・・
薬に何か強い耐性・・・・ 麻薬の様な強いものを
毎日体内に取り込み続けて、初めて出来る事だと
あの男はナギに話していた






華燭の城 - 194 に続く
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華燭の城 - 192

「誤算・・・・?」


ナギがラウを見る


ラウはその視線を受け止め切れぬ様に 目を反らすと、
自分の腕の中で息絶えるガルシアに視線を移した
もがき苦しんだのか、見開かれたままの瞳・・・
ラウはそれを、そっと指で閉じた



「私の誤算は3つ・・・・・
 1つは・・・・ ガルシアが帝国に親書を頼んだ事
 あれさえなければ、すぐにでもガルシアを殺るはずだった・・・
 
 2つ目は、シュリに あの悪魔の紋まで刻んだ事・・・
 ・・・・私は、ガルシアの性癖を身を持って知っていた
 美しいシュリをみれば、当然そうなるだろうと判っていた
 だが・・・・ 私はそれでも構わないと、思っていた・・・」



その言葉にシュリが伏せていた顔を上げた
そんなシュリの目を見ながらラウは続けた



「神国の事をガルシアに進言する前・・・・・
 私はシュリについて多くの事を調べあげた

 産まれた時から神の子として羨望と期待とを一身に背負い
 溢れる程の愛情を注がれ、何不自由無く育った美しき皇子・・・・
 だが、私は・・・・・
 同じ皇子として生を受けながら、城を追われ、身を隠し、
 最愛の母は失意の中で死んだ・・・

 その上、実の父に石牢で弄ばれ(もてあそばれ)
 歩くことさえ儘ならない凌辱の毎日・・・・
 私は・・・ 調べるうちに・・・ シュリに嫉妬したのです
 私と同じ苦しみを味わえばいいと・・・・心のどこかで、そう思った・・・・
 だが・・・・まさかあの紋まで刻むとは・・・・」



「もういい・・・ラウ・・・・
 お前が居なければ、私も今日まで生きてはいなかった・・・・
 それに、この傷は・・・・・・ もう浄化されたのだろう?」




「来るな、シュリ!」

ラウの側に歩み寄ろうと 一歩踏み出したシュリに ラウが怒鳴った






「その優しさだ・・・・
 その優しさが私の最後の誤算・・・・」


「・・・・ ラウ・・・・・・・」


「ガルシアは、私の口車に乗り、策通りあなたを攫って(さらって)来た 
 見張りの目的で私に世話をさせたが、
 でも、私の本当の目的は・・・・
 あなたが ガルシアの日々の責めに耐え切れなくなって逃げ出さない様に・・・・
 そして 自死しないように・・・・ 
 時には手を握り、時には抱き締めて・・・・・
 心の拠り所となる甘い飴を与え続ける事・・・・
 あなたが居なくなってしまうと、
 私の長年の計画が遂行できなくなりますからね・・・・」


「だから・・・初めて会った日に、
 自分は何があっても味方だと・・・・」


「ええ・・・
 呆れる程、ずるいのですよ・・・私は・・・・・
 優しく笑みながら、あなたをここから逃がさぬ様に騙していた
 ・・・・でも たまに私の中の闇の部分が顔を出した・・・・
 あなたが私の前に跪くと 押さえていた嫉妬心が、優越感を覚え
 ついキツク当たってしまったかもしれませんね・・・」


それは初めてシュリが ラウの前に跪き、
男の部分を口に含んだ日の事だろう


「嫌になりましたか?
 軽蔑するでしょう・・・・?
 あの時 私は、あなたを・・・・ 
 神の子を自分の前に跪かせ、服従させた事に
 歓喜していたのですよ
 ・・・・ 憎み続けて来た この人・・・ガルシアと同じ様にね・・・・
 
 そして、私は自ら・・・ あなたの身代わりとして名乗り出た
 わざと、あなたの前でガルシアに抱かれる事で恩を売り
 罪悪感を植え込んだ
 17年も弄ばれたこんな心・・・ もう痛みなど感じもしないのに」


ラウは腕の中のガルシアをチラと見た後、
思わず顔を伏せたシュリを見ながら からかう様にクスリと笑った


だがシュリの返事は ラウの予想を裏切るものだった



「嫌いになど・・・ 
 ・・・・・軽蔑など・・・・する訳がない・・・・・」



その言葉にラウの顔が曇った



「・・・・・・本当に・・・・あなたはどこまでお人好しなのですか・・・・!
 私はあなたを騙していたのですよ!?
 それでも・・・・」


「それでもだ・・・・・!
 私はお前を・・・・ラウを愛している!
 その気持ちに偽りはない・・・・!」



そう言うシュリの言葉にも、ラウは黙ったまま、頑なに首を振った






「どうしてだ、ラウ・・・!


 ・・・・もういい!
 こんな事・・・・

 もう止めよう・・・ ラウ・・・ もう何も聞きたくない」







「・・・・あなたの着ているコートの内ポケットに鍵が入っています」






華燭の城 - 193 に続く
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華燭の城 - 191

「・・・・・・・陛下っ!!!!」
側近達が一斉に叫び、ラウに向かって飛び掛かろうとした



「・・・・動かないでもらいましょうか」

ガルシアを抱きかかえたまま返り血を浴び
朱に染まったラウが口を開く


 
「ガルシアは死んだ
 帝国に背信の罪も問われていたのです
 そんな王に これ以上忠誠を尽くしても、無駄死にするだけですよ」


それに対し声を上げたのはオーバストだった


「側近の・・・・ いや、元側近長だった者として私も命じる
 もうガルシアの意に従う意味はない
 剣を下ろせ
 帝国に抵抗するな」


その声に氷の様だったラウの視線が、ほんの少しだけ緩んだ


「ありがとう、オーバスト
 貴方とは最後まで相和できませんでしたが・・・・ 感謝しています
 そのまま・・・・ これからもシュリを支え、この国を守ってください」






そして、一つ小さく息を吐くと
オーバストに抱えられる様にして立っていたシュリに
いつもと同じ 穏やかな表情を向ける


「シュリ・・・・ 
 今まで騙し続けた事、本当に申し訳なく思っています
 いくら謝っても・・・・
 あなたをそんな風に傷付けたことは・・・・ 許されない・・・・
 だから・・・・」


「・・・・ラウ・・・ 
 ・・・裏で何があったとしても・・・
 この命を、実際に救ってくれたのはお前だ・・・・
 その事実が変ることはない・・・
 ・・・・お前を責める事など・・・・」



両腕を差し出すシュリを拒む様に、ラウは小さく首を振った



「本当に・・・・ あなたは優しすぎる・・・・
 あなたの人生を狂わせたのは、この私なのですよ
 何も無ければ、神国の皇子で居られたあなたを、私は・・・・
 そんなに お優しくては・・・・ この国を託すのが心配になるでしょう?」








「託す・・・・ どうしてだ・・・・
 ラウが・・・・  ガルシアの・・・・
 この王家の血を引くのならば、次の王はお前が・・・・」


「確かにそうだ!
 実の子が生きていたんだ
 ラウム・・・・  いや・・・
 シヴァ・アシュリーを次の王とするのが、正当な後継だ
 父親を粛清したのも、ガルシアが帝国に反逆した故(ゆえ)の事
 帝国皇太子として、この件は私が引き受ける!
 絶対に! 誰にも咎めさせはしない!」


「殿下、有難いお言葉・・・・・」




ラウは既に事切れたガルシアを抱えたまま、頭を下げた




「でも私は、ガルシアを殺ると決めた時から
 表舞台に戻る事など、望んではいない
 それでは身内を殺し王座に就いたガルシアと同じ・・・
 私を実子と認めさせ
 次期王とする事だけが夢だった養父には申し訳ないが
 私は ただ・・・ 死んだ母の恨みを晴らせれば・・・・
 ガルシアを葬る事ができればそれでよかったのです」



「ではなぜ!! なぜシュリ様を巻き込んだ!!!
 殺すなら、お前たちが勝手にやっていればいいではないかっ!!!
 どうして・・・ 
 ・・・・ どうしてシュリ様を・・・・・」



ジルが悔しさに崩れる様に座り込み、暗い石畳を拳で殴り付けながら
必死の叫びを上げた





「ジル殿・・・ と言われましたか・・・
 本当に申し訳ない・・・・」

ラウは、涙を流しながら睨み付けるジルに向かい 深く頭を下げた




「この国の行く末の為・・・・なのか・・・?
 ・・・・陛下が居なくなれば、この国は脆弱・・・
 バラバラになったこの国は、すぐに他国に攻め入れられる・・・・」

シュリを支えたままのオーバストが呟いた



「ええ・・・ その通りです、オーバスト
 身勝手だと思われるでしょうが・・・・」


ラウは顔を上げるとジルを見つめた


「私にも守りたい者が居た
 育った街に暮らす人々、養父・・・ 
 この城の使用人達と、その家族、友人・・・
 そしてこの国の全ての民・・・ 

 私は 復讐は誓ったが、この国を潰したい訳では無い
 広大な土地と多くの国民、優れた産業・・・
 巨大で豊かなこの国は、常に他国から狙われている
 にも関わらず、国の大きさだけに胡坐(あぐら)をかき
 1人では何も決められず、私利私欲に走る官吏達・・・・

 善悪は別として・・・・ ガルシアには確かに統率者としての資質があった
 有無を言わさぬ強さがあった
 ガルシア1人で建っていたこの国の王が居なくなれば
 他国に攻め入れられ、一溜りもない・・・・
 
 この脆さ(もろさ)を知った時、 
 私は、この国の王という存在の必要性に気が付いた」



「それで・・・  シュリを選んだのか・・・・・
 ガルシア亡き後、速やかにこの国をまとめるには、皆が認める王が必要
 それは絶大な信頼と、信用に足る人物でなければならない・・・・・」
 

そう問うナギに ラウは頷いた




「ええ・・・・ 
 シュリならば・・・ 神の子ならば誰も文句は言わない
 神の子が統べる国ならば、私の故郷としてのこの国も 恒久に安泰・・・・
 だから、どんな手を使っても、シュリを連れてくるべきだと・・・・
 そうガルシアに進言した・・・
 ガルシアが神という存在を嫌っていたのはわかっていたし
 ”貴方がその神の上に立つのだ” と、甘い言葉で煽(あお)れば
 ガルシアはすぐに私の思い通り、その気になった・・・・
 だが・・・・ 私の誤算はそこからだった・・・・」






華燭の城 - 192 に続く
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華燭の城 - 190

ラウは冷たく微笑むと
苦しさに首を垂れたガルシアの顔をグイと上向かせる

 
「・・・・ その時の医師は、私達母子を助ける為に
 二人の死の責を負うという名目で自ら城を出て、
 身を隠すために医師を辞め薬師になった

 でも母は・・・・ 元々、苦労知らずの王妃ですからね・・・・
 侍女の一人も居ない街での暮らしは、相当辛かったと思います

 貴方に裏切られたショックと心労で 私が2歳の時に亡くなりましたよ

 その後、薬師は私を養子として育て
 ・・・・ 私は6歳の時に全てを知らされた
 
 ”お前は正当な王の血を引く皇子だ
 いつか現王の跡を継いで王になれ”
 ・・・・養父は口癖の様にそう言い、私は厳しく育てられました
 普通の街の子が 一生知りもしない様な剣、乗馬、帝王学・・・・」





「それで・・・  お前の乗馬は・・・・
 ただの使用人が・・・ オカシイと思ったんだ・・・・
 あれは平民の乗り方ではない・・・・  貴族の乗り方だ・・・・
 それに、その非の打ち所の無い完璧なまでの立ち居振る舞い・・・」

ナギがポツリと呟いた
あの馬駆けの日、ナギの抱いた疑問の1つがこれだった





「殿下・・・ 細かい所まで見られていたのですね
 内情を知るために、この城で働きたいと
 私が養父に申し出たのが10歳の時
 それまでは毎日の様に、剣術や乗馬、作法・・・教え込まれましたからね
 ・・・・・・まさか・・・・ 城で・・・・
 たった10歳で・・・・・
 実の父親の慰みものにされるとは思いもしませんでしたが・・・・」





そう答えるラウの腕の中で、ガルシアの体の力が抜けていく

蒼白の顔で今にも倒れそうにズルズルと膝を折っていくのを
ラウが乱暴に引き摺り起こすと
腹に新たな血が湧き出し、ガルシアは痛みに呻いた





「痛みますか?
 私の話は長すぎますか?
 でも、私にも27年間の積もった恨みがあるのですよ
 それを聞いて貰わなければ・・・・
 何も知らないまま、
 ただ静かな安楽の死を貴方に与える訳には行かないのです
 それに・・・・
 貴方がシュリに与えた痛みは、こんな物ではない
 手を一本ずつ折りましょうか? 脚を折りましょうか? 
 それとも、劇薬でその傷の中・・・・ 灼きましょうか?」
 

そう言うとラウは抱き寄せたままのガルシアの首元に
剣を突き付けた


「この剣が・・・・
 炎で真っ赤に熱せられていないだけでも、有難いと思って下さい」

ガルシアを見つめるラウの顔は、氷の様に冷たく静かだった





「貴方が痛みに耐えなければならない時間など
 シュリに比べれば、ほんの僅か・・・
 どんな苦痛があっても、もう暫くの辛抱です」

ガルシアの首に ツ。。と赤い筋を引きながらラウの腕がゆっくりと動く





「・・・・ ン”ッ!!」

「これは亡き母からの挨拶代わりとでも思ってください
 逝くときは、この母の形見の剣で送って差し上げますから・・・
 それよりも・・・・・
 苦しいのが嫌だというのなら・・・・
 今ここで、すまなかったと泣いて謝罪しますか?
 そうすれば少しは考えない事もない」




既に虚ろな目で ラウを見るだけのガルシアだったが
それでも最後の意地なのか、グッと唇を噛み締め わずかに首を振った




「そうですか
 この期に及んでその意地は、さすがとしか言えませんね
 まぁ 今更 謝罪など・・・ 母も嫌がるでしょうが・・・
 ・・・・・ どちらにしても・・・・ 
 貴方は私の手の中で苦しみながら逝くのです
 それが15年前の、私の決意ですから」



「15年・・・・・」

ラウはその声の主、ナギに向かって顔を上げた


「ええ・・・・・
 私は10歳で実の父親に犯され玩具にされた
 そして12の時に、この脚の自由を奪われた・・・
 その時に、私は決めたのですよ」


ラウの視線が、再び腕の中のガルシアに戻される


「貴方のカラスになると・・・・
 忠実な僕(しもべ)を完璧に演じ、
 貴方の一番側にいて、貴方の一番の信用を得てから
 最後に、絶望の淵に追い落とし・・・・ 
 ・・・・・・・・ この手で殺してやると」


ラウは、ただじっとガルシアの瞳を見つめる
たった一つの、この決意を持って・・・


その冷たい視線に射貫かれたガルシアの目が・・
虚ろだったその目が大きく見開かれ、何かを発しようと唇が僅かに動く

それが万が一にも 謝罪や命乞いでないことは、
そこに宿る激しい怒りの炎を見れば明らかだったが
もう既に声にすら、ならなかった



「そろそろ限界の様ですね・・・・
 では、ここでお別れです
 ・・・・・・さようなら、父上・・・」



ラウの腕が動き、ガルシアの短い叫びと共に鮮血が辺りを染めた






華燭の城 - 191 に続く
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華燭の城 - 189

「おい、ラウム、何をしている!
 さっさと奴等を殺ってしまえ!
 手加減するなと言ったはずだぞ・・・!」


「そうですね・・・・
 いつまでこうしていても、心は鈍るばかり・・・・・・」


ラウは小さく息を吐き、独り言の様に呟くと
握っていた剣をカチャリと眼前に捧げ上げた

対峙(たいじ)する近衛隊が
一斉に剣を握り直し、緊張の顔で身構える

ラウの剣の腕は
近衛隊長ヴィルの大剣をはじき飛ばした事だけでも相当だと判っている
まして、罠があるというなら油断はできない





誰の言葉も無い静寂の中


近衛隊が一歩、また一歩と慎重に間合いを詰めた刹那
一瞬の月灯りを受けてラウの剣が翻った

そして・・・・

短く苦悶の声を発し体を屈った(おった)のは
ラウと体を密着させていたガルシアだった



   

「陛下?」
「陛下っー!」

側近達が口々に叫び、一斉に走り寄ろうとするのを
無言のままのラウの冷たい目が睨み、制止させる






「ングッ・・!!  ・・・・お・・・・・おまえ・・・・・・・」

ガルシアが苦しそうに呻き
両手で押さえた腹には、深々とラウの握る剣が刺さっていた





「・・・・   何・・・・・・・・・  を・・・・・・」

ズルズルと倒れ込みそうになるガルシアを
ラウは左腕で抱いたまましっかりと支え上げると
そのまま ズズッ・・・! と一気に剣を引き抜いた



「・・・・ンッっ・・・!!!!」

ガルシアの叫びと同時に、腹から血が吹き出し
見る見るうちに 石の地面に溜まって行く






「手加減無しに・・・・ と言われたのは貴方ですよ」

その冷然たる声に、ガルシアの目がラウを凝視する





「・・・・裏切っ・・・ たのか・・・ ラウム・・・・・
 ・・・・・・・・ ワシを・・・・  どうして・・・・・・・」


「己以外信じるなと言われたのも、貴方です」


「・・・グッ・・」


内腑から込み上げた血を、口から一気に吐き出すと
ガルシアはもう一度ラウを睨み付けた

が、体に力は入らず
地面に膝を付きそうになるのをラウが再び抱き寄せる






「まだ逝くのは早い・・・・・
 ・・・・母に謝ってからにして頂きたい」


出血が増えすぎない様、
ラウはガルシアに回した腕で、容赦なく腹の傷口を押さえ付けると
痛みでガルシアが呻く




「母・・・・?」

目の前で繰り広げられる光景が信じられず
誰一人 声さえ出せなかった中で、ようやくナギが呟いた


そう言われたガルシア自身さえも 小刻みに首を振り
意味が判らぬという仕草を見せていた





「まだ判りませんか・・・・?
 どこまで愚かな人なのか・・・
 私の本当の名は、シヴァ・アシュリー・・・・」


「アシュリー・・・」  シュリがポツリと呟く


「母は貴方が迎えた最初の妻・・・・ 黒髪の王妃を覚えてはいませんか?
 私は貴方とその母との間に出来た子」


「そんな・・・・・・・
 あの時の子は・・・・ 死んだはずだ・・・・・
 生まれてすぐに死んだと・・・・ そう聞いて・・・・」


「ええ、貴方への報告はそうらしいですね
 でもそれは・・・・
 貴方が ”男子さえ生まれれば妃は用無し、葬ればよい” と
 医師に命じていたから・・・・
 その医師は迷った挙句、
 私も母も死んだと・・・・ そう報告して逃がしてくれたのですよ
 どうして貴方がそこまで女性を忌み嫌うのか判りませんでしたが・・・
 先のナギ殿下の・・・ 貴方の生まれに纏わる話・・・
 あれが当たっているのでしょうね」


「まさ・・・・ か・・・・・  あの時の子が・・・・・・お前・・・・・」


「ええ、そのまさかです
 この痣に見覚えは・・・?」



ラウは剣を握ったままの右手で自分の上着を緩め
左上腕にある痣を覗かせた

だが、ガルシアにはその意図が理解できず小さく首を振る





「でしょうね・・・・
 27年前・・・ 
 もし貴方が、少しでも父親らしく 産まれた我が子を
 一度でもその腕に抱こうと思っていたら・・・・
 あ・・・ いや・・・ 貴方にそこまで求めるのは無理ですか・・・
 ・・・・ 産まれた子を 一目だけでも、見ようという情があったなら
 その子に この特徴的な痣があったのは、すぐに判ったはず

 だが、貴方は10歳の私の体を見た時も、何も言いはしなかった
 あれから何十回・・・・ 何百回と私を抱きながら、貴方は気付かなかった

 当たり前です・・・
 貴方は生まれた私を見た事さえない
 母と私の葬儀の日、棺が空だった事さえ知らないのですから・・・」





ガルシアの口から 再び血が溢れ出る





「大丈夫ですか?父上
 まだ話は終わっていないですよ」






華燭の城 - 190 に続く
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華燭の城 - 188

「ラウ・・・・・?」

驚き見つめるシュリに振り向きもせず
それまで微動だにしなかったラウが 左手に杖を
右手に抜いた剣を握ったまま、真っ直ぐにガルシアの前に歩み寄った



「遅いぞ!ラウム!」

ガルシアがチラリと後ろを振り返り、
崖までもう僅かな距離しかない事を咎める様に怒鳴った


「申し訳ありません
 あのまま、殿下が引き下がってくれれば・・・・ 
 ・・・・・ と思ってしまったものですから」

ラウはそう言うとガルシアの横にスッと並び立った




「・・・・まぁいい
 こうなったからには、最初の手筈(てはず)通りにやるだけの事
 全員、ここで消えてもらえ
 手加減も無しだ、存分にやれ!」


「ええ、そのつもりです」


「ラウ・・・・・・ どういう事だ・・・・・・
 ・・・・何故・・・ お前がガルシアを・・・・」


茫然と問い続けるシュリに視線を合わせると
ラウはいつもと変わらぬ柔らかな微笑みを返した







「ラウ・・・・・・」

「まさか・・・・
 お前は本物のカラス・・・・」

フラフラと立ち上がろうとしたシュリを支えながら
オーバストがポツリと呟く




「カラス・・・?
 それは何だ!どういう事だ!!
 ・・・ラウム・・・!
 お前はシュリの味方では無かったのか!」


叫ぶナギにも ラウは顔色一つ変える事は無かった
ただ静かにガルシアに隷従し立っている 






「陛下には・・・・ 側近と呼ばれる私兵集団が付いている・・・・
 だが、我々はあくまでも表・・・・
 ・・・・ この城には・・・・ 
 裏のカラスが居るという噂を聞いたことがある・・・・
 闇夜に紛れ隠密に行動し、常に陛下を守るカラス・・・・
 決して素顔を晒さない故に、噂でしかなかった悪魔のカラス・・・・
 ・・・ラウムと言う名・・・・ まさか本物だったとは・・・・」



「ラウが・・・・ ガルシアの・・・・・?
 ・・・・・ でもその名は、黒髪の事だと・・・・
 ・・・・・ あれは嘘だったのか・・・・・?
 ラウ・・・・・・!」


信じられないと言う風に小さく首を振りながら
シュリはラウに着せられたコートの端を握り締める

こんなにも温かいのに・・・・
ラウが私に嘘・・・・・・





「・・・・・・・・ 答えろ・・・ ラウっ!」 

「ハッハッハッ!!」

豪快な笑い声を上げたのはガルシアだった



「人間はな・・・ 他人が隠した物ほど、探したがる
 それを見つけ出そうと躍起になる
 だから本気で隠したい物は、敢えてよく見える所にぶら下げておく・・・
 これが真に賢い者のやり方だ
 シュリ、お前は本当に可哀相なヤツよ
 騙されているとも知らずにな・・・・
 ラウムは ワシに片脚を捧げた12の時から闇に染まったのだ
 頭が良く、冷静で、薬にも長(た)け、その上この美しさ
 この頭脳も体も、端から全てワシのモノだ」


そう言うとガルシアはラウの腰に手を回し、グイと抱き寄せた

ラウは嫌がりもせず、反対に自らもガルシアに体を押し付ける様にして
腕を回し、寄り添う様に密着する




「どうだ? ワシに対してこの度胸
 そこらの出来損ないの奴等とは訳が違う」

ラウの妖猥な返しに益々満足したのか、
ガルシアは 腰が引け動けなくなっていた自分の側近達に向かって声を上げた

事の次第が未だ理解できず、抜いた剣をどうすべきか迷っていた側近達は
そのガルシアの言葉に唇を嚙んだ




「・・・ああ、シュリよ・・・・ ついでにもう一ついい事を教えてやろう
 神国を攻め、お前を攫い(さらい)
 跡継ぎにせよと言い出したのも このラウムだ
 戦を放棄した神国ならば、簡単に落とせるとな
 全く、こいつの頭の良さには驚かされる
 おかげでワシはこうしてお前を手に入れ
 次期帝国の王として、皇帝の座まで昇り詰めることが出来るのだからな」


「・・・・ そんな・・・・
 ・・・嘘だ・・・・・!
 いい加減な事を言うな!!!
 ラウは・・・・・ ラウは・・・・・・・・・・・」


「嘘ではないわ!
 だからワシは お前に忠告したはずだぞ
 ”己以外信じるな” とな・・・・・」




高笑いを続けるガルシアの横で、
ラウは何事も無かったかのように ガルシアに添い立っているだけだった

じっとシュリを見つめるその静かな瞳は
同情にも似た悲哀さえ浮かべている




「・・・・・・・そんな・・・・
 ・・・・・・・ラウ・・・・・!
 ・・・・・嘘だと言え・・・・ ラウ!!」

叫び続けるシュリを他所に
ガルシアは勝ち誇った顔で、ラウの腰に回した腕に力を込める




「・・・・で? 次の策は何だ?
 お前の言う通り、わざわざこんな所まで奴等をおびき寄せたのだからな
 策士たるお前の事だ
 何か必勝の罠でもここに仕掛けてあるのだろう?」


「無論です、お任せください」









ーーーーーーーー だが、その言葉とは反対に 
静かに時だけがただ過ぎていく・・・・





昇ったばかりの薄月も雲間に隠れ、闇に包まれ始めた湖の崖上で
ガルシアは焦れ始めていた






華燭の城 - 189に続く
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華燭の城 - 187

自分の横を 薄笑いながら通り過ぎたガルシアを
ナギが呼び止めた



「ガルシア、もう一度 聞く
 シュリをあのような姿にしたのは
 最初から帝国の為だった、と言うのだな?」


「ええ、先程言った通りですが」

首だけでチラと振り返ったガルシアが 
何度も同じ事を聞くな・・・・ とでも言いたげな不快な表情を見せる




「・・・・そうか、わかった
 では・・・・ガルシア
 お前を我が帝国に対する背信の罪で収監する」


その声と同時に、墓地の外に居た近衛達が一斉に走り込み
門戸を塞ぐ様に立ちはだかるのを見て
ガルシアの足がピタリと止まった



「・・・・・・・・・何だと?」

体ごとゆっくりと振り返るガルシアの顔は 既に鬼相だった


「何度も言わせるな」

ナギの瞳が真っ直ぐにガルシアを見据える




「どういう事だ、何が背信だ」


「判らないか?
 お前は我が帝国の軍事機密を、敵国である西国に漏らしたのだからな
 捕まって当然だ」


「情報を漏らした・・・・?」


「ああ、お前のやった事が最初から帝国の為だったと言うのなら
 シュリはあの傷を負わされた瞬間から、我が帝国のもの
 お前はその貴重な力・・・・ あの西国の男の言い方で言えば・・・
 ”最強にして最悪の武器” を勝手に使い
 北の小国を落とそうかと・・・・そう言ったそうじゃないか
 この姿のシュリならば容易いと・・・・」



「・・・西国の男の言い方・・・・
 
 ・・・・・・なるほど・・・

 ・・・・・・ワシを・・・ 嵌(は)めたな・・・・?
 最初から、シュリは帝国のものだと、そう言わせる為に・・・・・
 ・・・・・・・だが、シュリはワシの子だ
 それをどうしようが ワシの勝手」



「確かに、人としての扱いならば こちらは何も言えない
 だが、帝国の兵力としてなら・・・・
 これは紛れもなく我が国の最高軍事機密にも成り得る情報と用途を
 勝手に敵国に漏らしたと・・・ そういう事だ
 そもそも、お前のやった事は
 人としての扱いからも大きく外れているがな・・・・」



「何を屁理屈を言う
 そんなものは・・・・」



「屁理屈だろうが何だろうが、理屈のうちだ!!!
 俺はお前を絶対に許さんっ!!!
 お前がシュリに与えたのと同じ・・・・
 ・・・・ いや、それ以上の苦しみを、お前に味あわせてやる!!
 覚悟しておけ!!」





ザッと剣を引き抜く音が墓地に響き、近衛隊が一斉に身構える

目の前に揃った50の近衛の剣を前にして
ガルシアはジリと後退った

ヴィルを先頭にした近衛隊は、
見る見るうちにそんなガルシアとの間合いを詰めていく




ガルシアの側近達も、全員が一応に剣を抜いてはいたが、
数も圧倒的に少ない上に、諸国からの寄せ集めの傭兵集団が
帝国一と謳われる(うたわれる)ナギの近衛隊と
互角に渡り合える可能性は低い

まして、その側近達は皆、何かに迷い、臆している様にも見える・・・
これでは勝てる見込みはゼロに近い




「くそっ・・・・」

ジリジリと ガルシアが崖の近くまで追い詰められた時だった



「もうそこまでだ、諦めろっ・・・!」

近衛隊長 ヴィルの大剣が、ガルシアに向かい閃いた












ーーーーーーー カンッッッ!




「・・ っ・・!!」

金属と金属とが短くぶつかる音・・・・ 
同時に小さく呻きを上げたのは ヴィルだった

握っていた大剣は宙高くに跳ね上げられた後、
冷たい墓地の石畳の上で
カランと甲高い音を残し跳ね返り転がった





そのヴィルの大剣を弾き飛ばしたのは1メートル程の小ぶりの剣

柄頭に青い房が揺れるその剣を握っていた腕は黒いコートに覆われ
細身ながらも長身で、肩から背中へと
長く美しい黒髪が夜風になびいていた・・・・






華燭の城 - 188 に続く
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華燭の城 - 186

ガルシアは まだ後ろ手に捕らわれているシュリの側まで歩いてくると
そのシャツに手をかける


「やめっ・・ ・・・ろっっ・・・!!!!」

側近の手から逃れようと暴れ始めたシュリの、その胸元に手を掛け
ガルシアは乱暴に引き裂いた



沈んだ陽を追う様に上ってきた薄い月の下に
剥き出しにされたのは無数の痛々しい傷跡

体中に付けられたその傷の中・・・・
一際 ハッキリと胸に刻まれた 召魔滅神の紋が露わになる

嫌がり呼吸を乱し、激しく上下するシュリの胸の上で 
赤黒い疵(きず)となった悪魔が歪(いびつ)に蠢いていた




「ヒィッ・・・!」

シュリの腕を押さえていた側近達も 
思わずその 異形の魔に恐怖し、突き放す様にして数歩後ずさる
ある者は口元を押さえ、ある者は目を覆い・・・・

ナギとヴィルも その想像以上の痛々しさに目を伏せていた




「・・・・・・!!!」


ジルは驚きで 声にならない悲鳴を上げ
その吸気はそのまま絶叫となり吐き出された





「・・・・・ シュ・・・・  シュリ様っっっーーーーーーー!!
 貴様等!!!!  シュリ様に何をした!!!
 
 シュリ様は神の子ぞ!!!!!
 
 何という恐ろしい事を!!!!

 シュリ様!!!!
 シュリ様っっーーーーーーーーーーー!!!!」





半狂乱と言っていい程の取り乱し様で今にも飛び出し
ガルシアに飛び掛からんとするジルを
ヴィルが後ろから羽交い絞めにする

それでも振り解こうと暴れる非力な老人を
ガルシアは、面白そうに眺めていた



その横で、捕らえられていた腕を突き放され、支えを失ったシュリが
片膝を付く様に崩れ落ちる

咄嗟に手を差し伸べ支えたのは
ガルシアの隣に居たオーバストだった



「どうだ、ジジイ、 これでわかったか?
 シュリは穢れたのだ
 もうお前の言う高貴な体などではない」


「シュリ様っ!!! シュリ様っっ!!!!
 シュリ様っっぁぁぁ・・・!!!」


ヴィルに押さえ込まれたまま、必死に手を伸ばし
シュリの名をただただ叫び続けるジルの声と重なる様に
ガルシアの無情な声が冷たく響いた






「ガル・・・・ シア・・・・・  これ程までとは・・・・・
 お前の言う通りだ・・・・・ これぞ最強・・・・
 
 ・・・・ 1つ・・・・  聞く・・・・ どうしても確かめておきたい・・・・
 ・・・ その力を・・・・・・
 ・・・・ これからは、我が帝国の兵力として・・・・
 使っても良いのだな・・・?」


問い掛けたのはナギだった



「これから・・?
 今更 何を言われる! 端からそのつもり!
 これは全て、帝国の御為にした事ですよ!」




ガルシアにとって、このナギの静かな反応は全くの予想外だった

皇帝閣下を欺いた事、シュリに悪魔の紋を刻んだ事・・・
これを知った時、ナギは間違いなく
怒りに任せて戦を挑みかかって来ると思っていた

が、 実際はどうだ・・・
予想に反して、シュリへの行為も、”構わぬ” と一蹴し、不問に付したかと思えば
その上、帝国の武力として使いたいと言う

仲間よりも、友人よりも、帝国の繁栄を第一とするとは
やはりこれも帝国皇太子として生まれ育った者の性(さが)なのか?


挑んでくれば、予定通り このナギの近衛も西国も
そしてその先にある帝国本体さえも討ち倒し、
自分が皇帝になるつもりだったのだが・・・・ 


まぁ、これはこれで、悪くはない・・・・


兵力としての所有権は帝国にあったとしても
シュリはあくまでも自分の息子なのだ
人間としての所有権は自分にある

その大事な世継ぎの命を、帝国に供与するならば
それ相応の礼をたっぷりと頂き、恩を売り続けるのも良い
帝国兵力の実権を裏で握ったまま、高みの見物・・・・ 
急ぐことは無い



そして今以上に、強大で豊かな一大帝国となった頃、
ゆっくりと時間を掛け、策を練り、丸ごと全てを我が物とする

それは今ここで無理をし、力づくで近衛を破るより遥かに旨い話だった


・・・・勝ったな


ガルシアの顔に完全勝利の笑みが浮かんだ




「では、殿下
 色々と行き違いもあった様だが、これで 今宵の御用はお済みですな
 ここは冷えます
 城内で 我が国と帝国の未来の為に、祝杯などいかがですか」


そう言うと、シュリの側に跪き、胸の傷が見えない様に
コートのボタンを甲斐甲斐しく止めてやっているオーバストに向かって

「・・・・・おい、何をしている
 お前は誰の側近だ?
 ・・・・行くぞ」

ガルシアが冷たい声を落とし、
先頭に立って墓地を出ようと、歩き出した時だった



「待て・・・・」






華燭の城 - 187 に続く
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華燭の城 - 185

「ナギ殿下!!! 今更、何を!
 ・・・・ シュリ様を助けてくれるのでは、なかったのですか!!
 それでは約束が!!!」


「ジル殿・・・・  申し訳ない・・・」

ナギは一度深くジルに頭を下げた



「残念だが今の帝国の掟に、このガルシアのやった事を罰する法は無い
 出来るとすれば、我が父、帝国皇帝に”虚偽”の報告をし
 その親書でシュリを”無理矢理” 跡継ぎの座に置こうとした、と言う事だ」



ガルシアがギリと奥歯を噛む 
虚偽・・・・ まさに自分が恐れていた事を口にされたからだ




「しかし・・・・」

だが、次にそう続いたナギの言葉で
ガルシアはニヤリと片唇を上げる事になる



「しかしそれも・・・
 シュリは俺・・・ いや、私の目の前で
 ハッキリと、自らの意志でこの国の次期王になると宣言したのだ・・・
 
 私は帝国皇太子であって、考えるべきは帝国の利
 その帝国の害損となる背信者に制裁を与える事は出来ても
 世界中の人道を裁く審判ではないのだ・・・・
 この程度の国の、身内同士の勝手な家督争いなど・・・・」
  

「そんな・・・・ 帝国の利にならなければ
 シュリ様はどうなっても良いと仰るのですか・・・・!」

ジルがナギを鬼の形相で睨み付ける




帝国の利、か・・・・・

そんな二人を目の前に
勝利宣言でもする様にいきなりガルシアが両手を大きく広げ咆哮した


「殿下! やっとご自分の立場を理解された様ですな!
 殿下の言われる通り、ワシに 何一つ非は無い!
 神国を攻めようが、シュリをどう扱おうが、ワシの自由!」


ガルシアはここで一際 声量をあげる


「ワシは神の子に悪魔の紋を刻み、魔の力さえも与えてやった!
 神と悪魔!これぞ最強の兵力!
 ・・・・これも全て帝国の為にした事!!
 これほど素晴らしい物を作って頂いて有難いと、礼を言って欲しいぐらいだ!」


これがガルシアの脳内が、全精力を傾けて導き出した勝利への計算式だった
シュリにあの紋を刻んだのも、
全て帝国の最高兵力とする為だった・・・ と。




「ああ・・・・ 確かにそうだ・・・・
 シュリに悪魔の紋を刻んでも文句は言えない・・・・・」

ナギが呟く


「・・・・殿下・・・?  今何と・・・・・
 ガルシアは・・・今・・・・ 何と・・・・??」

ジルが思わず聞き返した
聞き違いでなければ、今 悪魔の紋を身に刻んだと聞こえた・・・・・・



シュリはそんなやり取りを ただ唇を嚙んで聞いている事しかできずにいた




「殿下・・・・? 殿下???
 何か仰ってください!!!
 悪魔の紋を・・・って・・・・・・・・いったい何のお話なのですか!!」


ジルがナギに詰め寄り、取りすがる
両腕を強く握り、問い続けるが ナギは黙ったままだった

そんなジルをそっとヴィルが押さえ、ナギの腕から引き剥がした





「殿下! 殿下!!?
 どういう事なのですか!・・・・・殿下っ!!



 ・・・・・・・・・・・・・・・・シュリ様・・・・・・・?

 ・・・・ シュリ様っっ!!!!」




震える声は、黙ったまま何も答えないナギから、
未だ捕えられたまま俯くシュリに向けられた




「シュリ様・・・・・・・・・!!
 何があったのですか!!!
 悪魔とは・・・・ いったい・・・・・・っ!」


「お前はあの時、神国にいたジジイよな」

ヴィルに押さえられたまま取り乱すジルに、ガルシアの声が飛んだ





「誰も答えられぬ様だから ワシが教えてやろう」



「やめろ・・・・・・・・」

シュリが俯いたまま呟く





「ん?何だ?シュリ
 さすがに神国の者に見られるのは嫌か?
 だが、すぐだ、
 すぐにお前は 幾千、幾万の兵の前でその体を晒すのだからな」



「馬鹿な・・・・!
 シュリ様は神の化身ぞ!!
 その神聖なる御身体を人前に晒すなど・・・・
 その様な事が許されると・・・・・!!」



「ジジイ、まだそんな事を言っているのか?
 お前の大事なシュリ様は、もう 神聖なる者 などではないわ!
 ワシや、あの西の小男に、自分のモノを嫌と言う程しゃぶられ、
 白く透き通った肌を紅潮させて、後ろを犯され、
 女の様に声を上げたのだ
 あの きつく吸い付き、締め付けてくるシュリの体・・・・・
 一度味わうと忘れられんぞ?
 そうそう・・・・ あの美しい顔でワシのモノの前に跪き、咥え、精も飲んだな
 もうあの体は、その内腑までも 十分に穢れ(けがれ)ておるわ!」




「・・・・・・犯・・・ さ・・・・・・・!!!




 嘘・・・ だ・・・・・・・



 シュリ様は・・・・・・ 御幼少の頃から私が大切にお世話をして・・・・・
 穢れなき美しさと、高貴な・・・・・・


 高貴な・・・・ 御身に神を・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 その御身体にお前が触れたというのか!!!

 その汚らわしい手で・・・・!!!

 ・・・・・・・嘘だ・・・・・・・・!」







「信じられぬか?
 ならば見せてやろう
 殿下も・・・ ワシが作った帝国最強の力となるシュリを
 しっかり品定めされるがいい」






華燭の城 - 186 に続く
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華燭の城 - 184

ガルシアの怒声に男は 「えっ・・・」 と小さく声を上げ振り返った


ナギとガルシアを交互に見る

だが、返されたのは 二人共に同じ視線・・・
蔑む(さげすむ)様な、氷の様に冷やかな視線
そこには赦し(ゆるし)の色も、救いの色も無い



「えっ・・・・・  殿下が?  ・・・私を騙した?
 ・・・・・ そんな・・・・  ウソだ・・・
 ・・・ええっ・・・・・・ ガルシア・・・ 陛・・・・ 下・・・・・・・?」

 

男の思考が停止する
一歩前へ踏み出してしまった事への強烈な後悔が男を襲う
そのまま 頭を抱え、悲鳴に似た声を短く発すると、ズルズルと後退り、
逃げ去ろうと墓地を出た所で、ナギの近衛隊に取り囲まれた



「ヒィィィーーー!! イヤダァァーーーーーーー・・・・!」

「馬鹿が・・・!」


断末魔の様な叫びを残して、男が引き立てられて行くと、
ガルシアは小さく吐き捨てた



だが、すぐにナギに向き直り
「まぁいい・・・ それで?」 と、薄笑さえ浮かべたのだ

そのひどく余裕のある声に、ナギの方が眉根をひそめた
そして 自分のすぐ横にいるジル・・・・


ジルの、強く握り締めた骨張った細い拳は既に白くなり
その目は周りの物など何一つ眼中に無く
ただ真っ直ぐに 捕らえられているシュリだけを見つめている


ナギはその手に触れ、無言のままジルにも墓地の外へ出る様に促した
が、ジルは首を振り、頑として シュリの居る墓地から出ようとはしなかった




神国に何が起こったのか
シュリが自分に助けを求めない理由は何なのか・・・・
それを知るために あの男を尋問しながら軍を進め
神国を訪ねて謎が解けた

その時、最初にここまで同行すると言ったのはシュリの父である現国王だった
だがそれは余りにも危険が大き過ぎる

現王にまで何かあっては、取り返しが付かないと
皆で なんとか思い留まらせた時、自分が行くと声を上げたのがこのジルだった

この老体ならば、万が一 命を失っても惜しくはない、
どうしてもシュリ様の元へ行きたいと願い出たのだ



あの時の、強い意志を持ったジルの目を思い出し
ナギはそれ以上何も言えなくなっていた



自分でさえ、真実を知った時には 
口惜しさと悲しみと・・・・耐え難い思いがあったのに
これから目の前で起きるであろう事を、この老人の精神は耐えられるのか・・・・
シュリを大事に思っている気持ちが判るからこそ、ナギは余計に心が痛んだ




だが、ナギは顔を上げた




「お前の出生について調べた
 そして7人もの王妃殺し・・・・
 ・・・それだけではない
 四代目の王だったお前の父と、その後を継いだ4人の兄達までも
 次々と殺ったのはお前だろう・・・・?」


ナギの声に側近達がざわめく




「お前の父親は確かにこの国の四代目王だ
 だが母親は正式な妃ではない
 街の娼婦・・・・ それがお前を産んだ母親・・・
 もう50年以上も昔の事だ
 その頃の話を知っている者を探すのは大変だったが、
 ようやく当時の事を覚えている婆さんを見つけたよ
 ある女が 王の子を宿したと、ふれ歩いていた・・・とな・・・
 こう言っては何だが・・・・ なかなかの男グセだったそうで・・・・
 お前の女嫌いは この辺りが原因か?」



ガルシアの眉がピクリと動いたのは
無意識の反射だったのか・・・



「それにだ・・・ 
 四代目が崩御(ほうぎょ)し、跡を継いだ正妃の子である兄達が
 たった2年で4人、次々に逝くというのはどう考えてもおかしくないか?
 まぁ、そのお陰でお前は それまでの日陰暮らしから
 アシュリー家の最後の血を引く者として、一躍日を浴び 王になれた訳だ
 ついでに言えば・・・・
 その時、お前が王座に就く事を認めようとしなかった者・・・・役人、貴族・・
 どういう訳か、みんなもう墓の中だ」



「これはこれは・・・ まだお伽話の続きですか?
 確かに 我が父も兄達も、そして妃達までも・・・・ワシ一人を残し、皆病死した
 が、あれは確か・・・ 繰り返しこの国を襲った流行病のせいだったかな?
 それが、どれほど悲しかったことか・・・・・・・・・・・」



ガルシアは大袈裟な身振りで話していたが
堪(こら)えていた笑みが押さえきれなくなったのか 
とうとう クック・・・ と失笑し始め、遂には腹の底から笑い始めていた






「もしそれが事実だったとして、それがどうした?
 先代も兄も妃も、ワシが殺ったという証拠はどこにある!
 その骸(むくろ)さえない今、どうやって調べるのだ?」


「そうだな、
 その証拠が欲しくて、我々も必死に探した
 街にあると言われていた妃達の墓・・・・
 だが、いくら調べても、そんな物はどこにも存在しない
 そんな時に、この城の噂を聞いたよ
 妃達の遺体は 一旦、門を出た後、また秘密裏にこの城へ戻され
 この崖から その底無しの湖に投げ捨てられていると・・・
 葬儀の日、遺体を城から運び出すのは
 いつも決められた者の仕事だったらしいからな・・・・
 その先を見た者は誰もいない
 この湖は深すぎて死体さえ上がらないと言われているそうだし・・・・
 ・・・・・それが真実だろうな
 きっと、墓の下で眠っているはずの先代王達の遺体さえも、
 証拠隠滅の為に最初から在りはしないのだろう?
 可愛そうに・・・」



ナギが悔しそうに唇を嚙む
 


「それでも・・・・
 初めから殺害が目的の・・・ 要りもしない妃を次々と娶った(めとった)のは、
 その妃の実家となる国を自分の物とするのが目的か・・・・?
 お前が戦わずして手に入れた7つの国は
 どれも戦の拠点と成り得る大国ばかりだ」



「確かに死んだ妃達の国は、ワシが引き受けている
 だが短期間であっても正式に婚姻した我が妃の国だ
 そうする事が、残されたワシの義務だと思うが?
 それに この湖にそんな噂があるとは、初耳だ
 知らなかったな」



ガルシアは不敵に笑う



「病死した先代王達と妃達
 その志を引き受け、ワシは1人でこの国を守ってきたのだ
 それのどこが罪なのだ?
 それにだ・・・・ 
 ワシが神国を攻めたからと言って何が悪い!?
 神国は この帝国とは同盟も結んでいないただの小国
 そんな国への1対1の正式な戦で、ワシは堂々と勝利したのだ
 
 ・・・・なのに 殿下は何を怒っておいでなのか?
 
 この戦の世に 国が国を攻め落とし領土を広げ、
 その国の皇子を人質として連れ帰ったとしても・・・・
 さて、何が悪いのか・・・ 責められる理由が全くわからん」



「1対1の正式な・・・ だと・・・・!
 あれは、卑怯な不意打ち!
 しかも神儀の日になど・・・!!
 各国からの客人さえ人質にした、卑劣極まりない行為だ!
 そもそも神国は・・・・」




怒りで叫び続けようとするジルを ナギが左手で静かに制した


「・・・そう、だったな・・・・」

俯き、呟く様なその声は 今までとは明らかに違っていた
力無い悔しさに包まれた声だった



「我が帝国は、帝国内における・・・・
 いわば、身内同士の戦いを禁止してはいるが
 それ以外ならば、各国の自主性に任せていたのだった・・・・
 お前が神国を攻めても、何も問題はない・・・・
 その国の皇子 シュリを脅し、連れ帰っても・・・・
 その後に何をしたとしても・・・ 一向に構わん・・・
 誰も咎める事は出来ない・・・」



「そ・・・そんな!! ・・・殿下っ!!!」

思わずジルが叫んだ






華燭の城 - 185 に続く
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華燭の城 - 183

「シュリ!!」

ラウも思わず叫んでいたが、自分も腕を取られ身動きが出来ず
隣で、今にも痛みに崩れ落ちそうなシュリを
ただ 見つめることしかできなかった




そんな二人を見ながらナギが叫ぶ

「ガルシア!シュリを離せ!卑怯だぞ!
 お前の事は全て調べが付いている!
 もう諦めろ!」


「ほう・・・ 
 いきなり人の城の城門を突破しておいて よくその様な事が言えますな
 いくら帝国皇太子とは言え 余りにも非礼ではありませんか
 こちらとしては、それなりの謝罪を頂きたいところですよ
 それにいったい、何を調べ、何を諦めろと言われているのか、さっぱり」

ガルシアが余裕の笑みで応える




「神国に攻め入り、国王一家と民を人質にして
 シュリを連れ去っておきながら、よくもそんな事を!!
 その後の・・・・ 
 ・・・・・・ シュリへの仕打ちも全て調べはついている!
 大人しく俺の言う通りにしろ!」
 


「殿下・・・ それはオモシロイお話ですな
 しかし、この大国の王に向かってその様な事を言うからには
 何か確たる証拠でもあるのですかな?
 もし、何の証拠も無く、殿下お一人の考えで暴走されているのでしたら
 ワシも黙っておく訳にはいかない
 ・・・・ 帝国全体への信用問題と成り得ますぞ?
 これはもう貴方お一人の問題では済まされない
 御父上の立場を考えた事が御有りで?」



ガルシアは、この程度の挑発でナギが怯むとは思っていない

だが、この近衛軍・・・・ いや、いずれ帝国そのものを討つにしても、
後々困らぬだけの大義が要る
力づくでいきなり門を破られた、
濡れ衣を着せられ冒涜された、という事実、理由付けも
手抜かりなくやっておくことが必要だった







「私が証明する!!」

だがガルシアの思惑に反して声が上がった


近衛隊の後ろから聞こえたその声に シュリはハッと顔を上げる

痛みで霞む視界に入った、初老と言っていい程の年齢の男
それは聞き慣れた声・・・・ 懐かしささえ感じる
幼少の頃から、ずっと傍にあった、ずっと聞いて育ったその声・・・



・・・ジ・・・・ル・・・・・・

「シュリ様ぁッ!」



ナギの近衛に守られる様にして前へと進み出たのは
神国の侍従長ジルだった


ジル・・・!
どうしてこんな所へ・・・・  ・・・・来てはダメだ!
塞がれたままの口で言葉にする事が出来ず、シュリは必死に首を振る



「シュリ様!・・・・・・・・!大丈夫ですか!!!
 お前達・・・・! シュリ様に対してなんという扱いを!! 無礼だぞ!!
 すぐにシュリ様を解放しろ!! 
 神国でお前達がやった事は全て私が証言する!!」


男達に後ろ手にされ
押さえ付けられる様にして捕えられているシュリの姿に
老人とは思えない程の迫力で、ジルが叫んだ




「・・・・・わたしも・・・・証言す  ・・・・するからな・・・・・」

気丈に叫ぶジルを前に、自分もここで出なければ・・・・ とでも思ったのか
あの西国の男も 近衛の垣の中から おずおずと前に歩み出た

その姿にガルシアも 少なからず驚きの表情を見せる



「ほうーー・・・・・
 お前までワシを裏切る度胸があったとは驚きだな
 お前・・・・
 自分が今、やろうとしている事の意味が判っているのか?
 お前は、神を悪魔に貶め(おとしめ)たのだぞ?
 その報い、受ける覚悟があるのだな?」


「な・・・・ 何を・・・・」



男の歩む足が止まった
膝が震えて歩けなくなったのだ



ナギは 自分の隣に立つヴィルへチラと視線を向け、
後ろにいる十数名の近衛達を、墓地から出す様にと促した

ガルシアの後ろは断崖絶壁の湖だ
入り口さえ固めておけば、もう逃げ場はない
そして・・・それ以上に・・・・
シュリの身体の事を、大勢に知られたくはなかった


ヴィルの指示で、近衛達は静かに下がり、
残った帝国側は ナギとヴィル、ジルと男の4人になった



今まで自分を守っていた近衛が下がって行くのを見て
男は一瞬怯えた表情をみせた
だがそこで渾身の力を振り、もう一歩・・・ 前へと踏み出した
もう どちらに付けば得か・・・・ などと考える余裕さえもない
もう引けぬのだ




「さ・・・・最初から私を・・・・
 帝国に売るつもりでハメたのはお前だろう!ガルシア!
 私は、お前に唆され(そそのかされ)、騙され、利用されただけ!
 ・・・殿下には・・・・ もう全てをお話ししたぞ!
 優しい殿下は、御咎めなしと、判って下さった!!」




「馬鹿野郎が!
 ハメたのはその小僧だ!
 お前はその小僧に騙されたんだ!
 まだわからんのか!!!」






華燭の城 - 184 に続く
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華燭の城 - 182

「こんな所に出る抜け道が・・・・・」


そう呟くシュリの目の前で いつもは城の背に隠れている夕陽が
巨大なオレンジの円塊となり
広大で真っ青な湖に溶ける様に沈もうとしていた

遮る物も何も無く 真っ直ぐに目の前で・・・・ 
それはそれは美しい光景だった


一日の終わり・・・・ 


だが シュリは、それだけでは無い・・・・
何か、大きな物の終焉を見ている様な錯覚に捕らわれていた

自分の中に、言い知れぬ不安の様な 小さな暗雲が湧き上がるのを感じ
無意識のうちに指が求め、傍らに立つラウの手を握り締める




そんなシュリに構いもせず、
ガルシアは墓地の門戸を開け中へ入って行くと
中ほどでピタリと立ち止まった

周囲を警戒しているのか、それとも何かを探しているのか
何度か辺りを見回していたが、やがてそれも終えると くるりと振り返った


「この辺りでいいだろう
 あとは ここで小僧が来るのを待つだけだ
 シュリが騒がぬ様、しっかり捕まえておけよ」

その命令に、一番近くに居た二人の側近が
シュリの腕を両側からグイと掴み取る



「んっ・・!」

痛む右手を取られ、シュリが顔を顰める

「おい!シュリ様に手荒な事をするな!
 怪我をしているのが判らないのか!」

思わず隣のラウが声を上げると、ラウもまた側近の手によって
取り押さえられる様に両腕を掴まれていた


「私は大丈夫だ・・・ラウ・・・・ 心配するな」

シュリは、隣で同じ様に捕らえられたラウに頷いて見せる
今考えなければならないのは、自分達よりナギの事だった


ガルシアのあの余裕は・・・・・
あの様子は、待ち伏せ・・・
・・・だとすれば・・・ 罠・・・・

・・・・ナギ・・・・・・!



拳を握り締めた

もしも、ここに罠があるというなら、
あのガルシアの過分な余裕も頷ける

一点のシミの様だった不安が
シュリの中でどんどんと大きくなり広がっていった


・・・・ どうすれば・・・・!



隣のラウを見た
だが、シュリの視線にラウは無言のまま小さく頭を振った

もうここまで来ては止められません・・・・

そんな言葉が聞こえた気がした




墓地の中程で、
ナギ軍を迎え撃つ様に夕陽を背にして仁王立つガルシアと
それを守る様に居並ぶ側近達

シュリはそんなガルシアから少し離れた場所で
ラウと共に側近に両腕を掴まれ、捕えられる様に立っていた


何としてもナギだけは守らなければ・・・・
だがこの状況で自分に何が出来るのか・・・・ 気持ばかりが焦っていた







湖を渡る風音だけが聞こえる

冷たい風がシュリの柔らかな髪を揺らし、沈む陽もあと僅かになった頃
静寂を破り、遠くで人の声がし始めていた
やがてそれは数を増し、確実に近付いて来る



「来たな」

ガルシアが小さく呟いた



暫くして、そこに現れたのはナギを先頭にした14、5名程の集団だった



「シュリ!!!!」

巨大な城の 棟という棟を探し歩き、
やっと見つけたシュリの姿に ナギが思わず叫ぶ

だがそのシュリは 墓地の中で 黒服の男達に両腕を押さえられ
人質の様に捕えられている
それはどう見ても皇子の扱いではない



「・・・・シュリ!! 大丈夫か!!!?
 ・・・・・ くそっ!
 ガルシア!! シュリを離せ!!」


「・・・・・殿下!だめだ! 来ては・・・・!」




罠がある・・・! そうシュリが叫ぶのより一瞬早く


「シュリを黙らせろ!!!」

ガルシアの命令に、シュリは掴まれていた右腕を後ろ手に取られ
背後から口を塞がれていた 



「・・・・ン”ッッ・・!」

折れた右手を強く捩じり上げられた痛みと、
その無理な体制で張り裂けそうに引き攣る胸の痛み・・・
その両方でシュリは思わずくぐもった呻き声を上げた






華燭の城 - 183に続く
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華燭の城 - 181

「皇帝・・・・?
 ああ・・・・ あれか・・・・」

ガルシアの声が不に満ちた


「なぁ、シュリよ・・・
 どうせならば近衛だ、西国だと面倒な事は言わず
 帝国そのものを討ち取って来い」

それは以前、西国の小男がガルシアを煽った話だ
あの時は一笑に付して見せたガルシアだったが
男に言われる間でもなく、既に腹に一物あったのだろう




「幸い閣下も 信仰深いお方だ
 お前に逆う事は出来ぬはず
 しかも その子、ナギまでも お前にご執心だ
 あいつらさえ居なくなれば、ワシはすぐにでも 巨大帝国の王だ」


「・・・・そんな・・・!!
 帝国全軍にまで戦を挑むつもりなのですか!!
 ・・・ 陛下!!!
 その様な事は・・・・!!!」
 
唇を嚙んで懸命に抗議するラウをシュリが制した



「ガルシア・・・・
 戦が本当に必要だと言うのなら、私は軍を率いて戦場にでも出る
 だがその時は お前の言う 神の力も、悪魔の力も借りはしない
 私は私の剣で戦うだけだ
 ただし・・・ 
 その戦が、本当に国の為、民の為になると言うのなら」



真っ直ぐに自分を見据えるシュリを、ガルシアはふっと鼻で嗤った



「さすが、お前らしい綺麗事だな
 だが、お前も現実の非情さがどんな物か・・・・
 これからまだまだ思い知る事になる
 ・・・ まぁいい・・・ とりあえずは今だ
 あの小僧の近衛と西国を討ち、帝国への宣戦布告の手土産としてやろう
 息子を失った閣下の顔を拝んでやるのも、面白い」





このやり取りで 側近達の間に、今度こそ明らかな動揺が広がった

自分の主たるガルシアが、あの大帝国を討ち倒そうとしている・・・・
しかも皇子に・・・ あの神の子に戦を起こせと命令して・・・・


だが、そんな事が本当に可能なのか・・・?


いや、可能かどうかは自分達の考えの及ばない所であり
考えるべき事でもない・・・・
行けと言われれば、不可能と判っていても
行かなければならないのが、自分達なのだから・・・・

むしろ、問題なのは・・・・
自分は、そこまで このガルシアに忠誠を誓ったのか? と言う事だった
・・・・この男の為に自分は死ねるのか・・・?


側近・・・・ 傭兵・・・・ 生きる為の仕事として
金と地位の為だけに集まった男達の素直な戸惑いだった



そしてもう一つ・・・・・

いつも穏やかに美しく微笑む皇子が声を荒げ、
父である陛下を ガルシアと呼び捨てにし、「お前」 と呼ぶ・・・・

それ以上に驚いたのはそこに出て来る言葉だった


神の子を悪魔に・・・・・
その両方を持つ皇子の体・・・・
それを晒(さら)す?
そして、西国と取引し、何度でも抱かせてやる・・・・  とは・・・・・


いったいどういう事だ・・・・・
この二人の間に何があったというのだ・・・・

誰もが一様に驚き、互いに顔を見合わせ困惑の表情を見せる

この場所で、その言葉の意味の全てを理解出来ていた側近は
オーバストだけだった 






その不穏な空気を感じ取ったのか、ガルシアの眼光が鋭くなった


「お前達!何をしている! 行くぞ! 
 さっさとシュリを連れて来い!
 
 お前らの君主は、ワシだ!
 帝国でもなければ、この国でもない!
 このガルシア・アシュリー ただ1人だ!

 相手が誰であろうが、ワシの命令にだけ 忠実に従え!
 その為にお前たちはここに居るのだ!
 それが出来ない奴は不要!!」




ガルシアは戸惑う側近達に向かってそう怒鳴ると
オーバストと共に後方の扉へと向かった


残った数十人の側近達が ザザッと一斉にシュリとラウを取り囲む
ガルシアの言う不要とは、即刻の死を意味するからだ




「シュリ・・・・・
 今は何をしても無駄な様です
 ここは大人しく付いていきましょう」

側近の手からシュリを守る様に付き添うラウの声に
シュリは悔しさを隠せなかった











入って来た扉と向かい合う少し小さな扉
そこを出ると石を荒堀りしただけの、廊下とも言えない質素な通路になっていた

敢えて名を付けるなら 抜け道・・・ が相応しい

その灯りもなく暗く細い道を直走り、やっと外の空気が吸えた時には
皆、肩で息をしていた
数十人が一気に駆け抜けるには、それほど狭く息苦しい通路だった


シュリもまた苦しさに喘いでいた
外の石の壁に寄りかかり、吹き流れて行く風を体で感じ
やっと呼吸を整えた


そこでシュリは、体に感じるにこの風に 覚えがある事に気が付いた

湿気に混ざる 僅かな緑葉の匂い
遠くで聞こえる木々の揺れる音


そこは城裏の墓地の目の前だった






華燭の城 - 182 に続く
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華燭の城 - 180

「話し合い?  逃げる?
 ・・・・・甘いな
 この期に及んで、そんなものは無意味だ
 どうしても行くと言うなら、
 その体で 今すぐワシに逆らう奴等を全員、討ち取って来い!
 お前が先頭に立って出ると言うなら
 ワシは一向に構わん、止めはせんぞ!」


「・・・・討ち取って・・・・・・・・!
 まさか陛下・・・・・ !!
 ・・・・・シュリを・・・ 本当に戦に出すおつもりですか!!」


驚きに声を上げたのはラウだった
ガルシアとシュリの間に割って立ち、真正面から
睨む様に王の顔を見た




「それがどうした、ラウム
 前々から言っていただろう?
 良い手だとは思わんか?
 歴戦の猛者である このオーバストでさえ、
 シュリの体には あのうろたえ様だったのだぞ」


いきなり名を呼ばれたオーバストは顔を上げ
思わずシュリの方を見た

そして 冷たい視線でじっとこちらを見ているシュリと目が合うと
戸惑う様にまた俯き、隣のガルシアに呟いた




「陛下・・・ 私は・・・・
 あの時の事はもう・・・・・ 御赦しを・・・」

「ほら見ろ、未だにこれだ!」

ガルシアはオーバストの反応を面白がるかの様に
満足気に声を上げる




「それでなくともシュリは神・・・!
 神に弓引く者は居ない
 戦わずして勝利は決まったようなものだ!
 が・・・・ もしもだ・・・・
 神を斬り殺し、地獄に堕ちる事も厭(いと)わぬという
 命知らずの馬鹿な輩が居た時は・・・
 望み通り、そいつの目の前に あのシュリの体を晒し、
 悪魔の力で地獄送りにしてやれば良い!」
 


「なっ・・! ・・・・陛下!!!!
 馬鹿なお考えはお止めください!
 シュリは世継ぎなのですよ!!
 次期王を万が一にでも失っては・・・・ どうするおつもりですか!
 しかもあれを・・・・ 戦場で見せろと言うのですか!」



「・・・そう怒るな、ラウム
 神と悪魔、両方を併せ持つシュリは その体だけで最強の武器だ
 万が一など起こるはずもない」




神と悪魔・・・・・?
二人のやり取りを聞いていた側近達が、僅かにざわめき
ヒソヒソと囁き合い始める





「ガルシア・・・!」

だが、そのヌルリと生温い・・・ 泥泡が纏わり付く様な不快な空気は
シュリの凛とした声で断ち切られる
側近達は一瞬で口を噤み(つぐみ)、身を硬くしシュリに小さく頭を下げた


「お前は帝国を裏切り・・・
 裏で西国と手を結んでいたのではなかったのか・・・!?
 その西国を討てとは・・・ 
 どこまで人を欺(あざむ)けば気が済むんだ・・!」

ガルシアを睨み据える




「手を結ぶ?・・・・・何を馬鹿な事を」

ガルシアの笑い声が部屋中に響き渡る



「最初から手など組んでおらぬわ!
 お前の体と引き換えに、西国軍の動きを教えろと言ったまでの事
 これは取引だ

 ワシはまだ何度でも お前を抱かせてやるつもりだったのだ
 それを翻(ひるがえ)し、先に裏切ったのはあの男の方だ!
 ナギの近衛小隊ごときに尻尾を巻きおって!」


「あの男がナギに翻った・・・・?」 


「ああ、そうだ
 西国を見張らせていた者から報告があったのだ
 あの男が、小僧とその小隊を 自邸に招き入れた、とな!」



オーバストが隣で小さく頷くのを見て、
シュリはガルシアの執務机にあった大量の報告書を思い出していた




「敵の軍隊を、抗いもせずに ”どうぞ” と自邸に入れる
 これを裏切りと言わずして、何と言う!?
 ワシはそれに応じるまでの事

 ・・・まぁ ヤツも、神の子を悪魔に貶(おとし)める片棒を担いだのだ 
 そんな事が外に知れれば、死罪より恐ろしい目に遭うのは必至
 いくら馬鹿でも、さすがにそこまでは 易々と口を割らぬだろうが・・・
 ああいう男は案外、肝が小さい
 さっさとカタを付けるに限る
 
 シュリ、お前もヤツに負わされたあの痛み、屈辱・・・・
 忘れてはいないだろう?
 その恨み、自分の体で晴らしてみたいとは思わぬか?
 ヤツを平伏せさせたいと思わぬか!?」




「陛下!!
 ・・・・ では・・・!
 このシュリの体を・・・ 傷を・・・ 万民に晒した後、
 帝国の皇帝閣下にはどうご説明をするのですか!!
 ご自分で傷付けたと、そう言うのですか!」


ラウがシュリを庇(かば)う様に前に出た






華燭の城 -181 に続く
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華燭の城 - 179

「遅いぞ!」

シュリが一歩、室内に踏み入れると同時に
ガルシアの低い声が響いた

そのガルシアの前に幾重にも並んでいた男達が 一斉に振り返る


軍用の会議にでも使うのか・・・
簡素なテーブルと椅子が多く並べられた広い部屋に 
30人以上・・・ 全員が同じ黒服を着たガルシアの側近達だった


その男達が 中央のテーブルに着くガルシアを守る様に立っていた
ガルシアの隣、側近たちの中心に居るのは やはりあのオーバストだ


オーバストはシュリと目が合うと、
ふっと困惑した様に視線を反らし、下を向いた
先日の、あのガルシアの部屋で見た
シュリの暴辱された姿を思い出したのだろう





だがシュリはそんな事には構いもせず ガルシアに向き直った



「今、外はどうなっているんだ・・・・」

尋ねるシュリに ガルシアは面倒臭そうな視線をチラと返した
だが、それだけだった




そのまま全員が無言・・・・
誰一人 口を開く者は居ない




暖炉も窓もなく、前後に扉が1つずつあるだけの部屋は
完全に締め切られ、外の風音さえも聞こえず、
ただシンと静まり返っていた



ラウは入り口近くの椅子の1つをシュリに勧め座らせると
その横に立った

「大丈夫ですか?寒くありませんか?」

腰を折り、シュリの耳元で小さく尋るラウに
シュリも黙って頷きを返しただけだった








ここでどれくらいの時間が経ったのか・・・・
テーブルの上の燭台に置かれた蝋燭の ジジジと燃える音が響く中
廊下を駆けてくる足音に シュリは閉じていた目をゆっくりと開けた



「陛下! 報告します!
 帝国の近衛が約50!
 開城を迫り、制止も聞かず、既に城内に入ったとの事です!
 それに続き、西国軍が約30!」


走り込んで来た同じく黒服の男は 入り口で片膝を付き、
頭を下げながらそう告げた



「ふん、来たか・・・・・
 だが、たったのそれだけとは・・・・・ワシも甘く見られたものよな」


「・・・・・現在は城内を順に・・・・しらみつぶしに回っているとの事
 ここにも いずれはやってくるかと!」






西国・・・・
やはり、ラウの言った通りだった

シュリは、自分を台に縛り付け、針を握り、
不気味に見下ろし笑うあの小男の顔を思い出し
思わず拳を握り締める

そんなシュリの肩に、ラウの手がそっと寄り添った


シュリは 傍らに立つラウを見上げ、大丈夫だ・・・と唇だけで呟く
それに対しラウも黙ったまま、小さく頷いただけだった







「さて、
 では、そろそろ行くか」

ガルシアはそんな二人に チラと視線を向け
ニヤリと片唇を上げて笑うと、困惑の色を隠せないシュリや
額に大粒の汗をかきながら走り込んだ側近の焦りを他所に
悠々と腰を上げた





「場所を変える
 皆、ワシに付いて来い」

「・・・・待て!」

声を上げたのはシュリだった



真実を知ったナギが考えることは
自分の救出と、ガルシアへの制裁だろう

それはこの凌辱に満ちた生活から解放される事を意味する



・・・・だが今、何の策も無くナギに事を起こされると
ジーナの薬が止まってしまう・・・・
そうなれば 今まで耐えてきた事の全てが水の泡だ


ジーナの治療が終わるまで、もう少し・・・
ほんのわずかな時間稼ぎであってもいい・・・
いや・・・ せめてジーナの薬が確保できるまで・・・・
最愛の弟が元気になるという保証が得られるまで・・・・

あと少し・・・・・
それまでは・・・・・





「ガルシア!
 殿下と西国を相手に これ以上、どこへ行く気だ 
 どこへ逃げても同じ事・・・
 ・・・・  私に・・・・・ 殿下と話をさせろ
 そうすれば このまま大人しく引き上げて頂く様に話をする
 お前にとっても、それが一番良いんじゃないのか・・・!」



シュリは焦っていた

だがガルシアの答えは非情に満ちたものだった






華燭の城 - 180 に続く
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華燭の城 - 178

「落ち着いて・・・・
 大丈夫・・・・ 今は私の言う通りに」


その力強い腕の中で 
シュリは自らを落ち着かせるように必死に呼吸を整える

何が起こっているのか・・・・ 起ころうとしているのか解らない
ただ、もう後戻り出来ない事だけはハッキリとしている・・・

グッと唇を噛み締め、ラウを見た


「ラウ・・・
 わかった
 お前の・・・・ 言う通りにする」



見上げるシュリにラウが頷いた



「・・・・この館棟の一番奥に 予備の兵舎棟があります
 文字通り、兵士達の仮住まいになる棟です
 とりあえずそこへ来いと・・・・ 陛下のご命令です
 しかし、そこへ行くには棟続きではなく
 一度外に出なければなりません
 外は冷えているようなので、
 先に私の部屋で準備をしてから参ります」



そう言うと ラウは、いつもと同じ優しい微笑みを見せ、シュリを見つめた
腕の中のシュリをもう一度強く抱き締めると
そっと唇を合わせる

シュリもラウの背中に両腕を回し、その唇を受ける

強く回した腕からも、触れた舌先からも
ラウの温かさが流れ込み、荒らんでいた心臓が不思議と大人しくなった


大丈夫だ・・・ 
・・・とでも言う様にシュリが小さく頷くと、ラウは唇を解放し
額と額を合わせる様にして もう一度シュリをじっと見詰める

そして二人は頷き合うと、また前を向いて歩き始めた












自室に入るとラウはシュリをベッドに座らせ
自分は奥の部屋へと入って行ったが
暫くして戻ってきたその姿にシュリは驚いた

上に羽織った黒く長いコートの中・・・・
その腰に剣を携えているのがチラと見えたのだ



「ラウ・・・・どうして剣など・・・
 殿下の軍・・・・ と・・・ 戦う・・・ のか?
 何故だ・・・・?
 いや、もしそうだとしても、お前まで剣を持つ必要はないはずだ!
 どういう事だ・・・? 
 それもガルシアの命令なのか!?
 剣ならば私が・・!」


立ち上がり、自分の腕を掴むシュリを
ラウがなだめる様にベッドへと座らせ、自らも目の前に跪いた




「ご心配なく・・・
 これは単に、外出時の護身用です
 万が一の為にです
 さぁ、シュリもこれを着て・・・・」


ラウはもう1着、腕に持っていたコートをシュリの肩に掛けた


「私のコートですが・・・・ 少し大きいですか?
 先日、雪が降った程ですから、きっと今夜も冷えます」


ラウはシュリの体に自分のコートを合わせると


「大丈夫そうですね・・・
 陛下がお待ちです、急ぎましょう」

問い続けようとするシュリの声を流し、ラウは立ち上がった











初めて足を踏み入れた予備の兵舎棟は
ラウやロジャーの部屋がある使用人棟とは違い
建物内部まで、完全な石造りだった

薄暗い、誰も居ない石畳様の廊下を
手に持ったランプ1つでどんどんと真っ直ぐに歩いていくラウの後ろで
シュリは、周囲を見回した


予備と言われるだけあってなのか、廊下には明り取りの窓さえも無い
両側にずらりと並ぶ扉の間隔のから考えると
各部屋も相当に狭いはずだ

ここで普通の人間が長く生活するには、
お世辞にも適しているとは言えない


一時的に多くの傭兵が必要となる大戦時用か、
もしくは収容所か監禁部屋・・・・
石牢があるぐらいなのだ
その程度の物があってもおかしくはない・・・ 



傭兵・・・・
大戦・・・・・・


ふと頭に浮かんだ言葉にシュリの胸が再び騒ぎだす





「ラウ・・・・ これからどうなる・・・・・
 軍がこの城へ来て・・・ ロジャー達は大丈夫なのか・・・」


「・・・・ いくら敵である西国軍が居るといっても、ナギ殿下とご一緒です
 殿下が どうされるおつもりで来られたかは判りませんが、
 非武装の使用人や官吏達を巻き込むとは考えられません」


確かにラウの言う通りだった
他国が攻めて来たのとは訳が違う

自分やガルシアがどうなるのかは検討もつかなかったが、
ロジャー達に危険が及ぶ事はないはずだ







そして廊下の突き当たり、
両開きになる大きな扉を開けると
ラウはシュリに中に入る様に促した






華燭の城 - 179 に続く
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華燭の城 - 177

部屋をノックされる音に二人は目を覚まし、顔を上げた


「ガルシア・・・・・」

シュリが溜息と一緒に小さな声を漏らす


「・・・私が」

ラウはそう言うとベッドを降り、簡単に身なりを整えると扉へ向う
鍵を開け、わずかに開けた隙間からスルリと廊下へと出た


相手はたぶんオーバスト
いつもより時刻は早いが、またあの部屋への呼び出し・・・
そう思いシュリも起き上がった





「陛下がお呼びです」

暫くして戻ってきたラウは、今日も同じセリフを告げる


「・・・・わかった」

このやり取りももう何度繰り返したろう・・・
ラウの後ろについて行くシュリの足取りも重くなる







だがこの日はいつもと違っていた
主塔へ向かう廊下を、ラウが途中で曲がったのだ


「ラウ・・・?どこへ行く?」

だがラウは唇を結んだまま、何も答えない


「ラウ・・・? どうした・・・?」

前を歩くラウの手を掴もうとした時だった



「あれは・・・・」

シュリが足を止めた






長い廊下の右側にズラリと並ぶ窓の向こう・・・・
シュリの居る丘の上から見下ろす棟々の間に、わずかに見える城門辺り
そこに多くの人間が集まっている様だった


時刻は午後・・・
日暮れの早いこの国では
そろそろ城の背に、陽も傾きかけようかという頃だ


いつもならば、左右の門塔には番兵が1人ずつ

これから夕暮れを迎え、雲ばかりの空には星も月も無く、
漆黒の闇夜が訪れようという鎮静の時に
今日は、何故かザワザワと 空気が荒く騒いでいた



それは、まだ ほんのり明るさの残る時刻にも関わらず
煌々と点けられた灯りのせい・・・
それに映し出された多くの人間の影だけが
忙しなく動き回っているのが見えているからかもしれない





「こんな時間に・・・・
 ラウ、あの灯りは? 
 ・・・・あの人だかりは何だ?
 ・・・・いつもと様子が・・・・
 何か変じゃないか・・?
 ・・・・・・ ラウ・・・  何処へ行こうとしているんだ・・・・?」


「とりあえず、私の部屋へ・・・」

「ラウの・・・・?」


矢継ぎ早の質問に それだけを答え
先を急ごうとするラウの後ろで、シュリは立ち止ったまま動かなかった
胸騒ぎの様な嫌な感覚で、胸が苦しくなる



「待て、ダメだ、ラウ・・・・
 私の質問に答えろ
 今、この城で何が起っているんだ」




一瞬、ラウの動きが止まった






「・・・・・あそこに見えているのは・・・・・
 きっと、帝国軍・・・ ナギ殿下の近衛・・・
 その後ろにあるのが、西国の軍旗」


「なっ・・・
 帝国の近衛と、西国の・・・ 軍・・・・?
 ・・・・どういう事だ?
 西国は 殿下の帝国には属していないはず
 いわば、敵だ・・・
 それが一緒になって この城に来るなど・・・・」


「・・・・・シュリ・・・」


溜息様に小さく 1度だけ息を吐き
ラウがシュリへと振り返った



「殿下が・・・・・
 ご自身の軍を動かしてまで、ここに戻って来た理由・・・・
 ・・・・ シュリはその身に覚えがあるのではないですか?」

「・・・・・っ!」

シュリの心臓がドクンと鳴った



「しかも西国も一緒となれば
 あの西国の男と陛下が、シュリに対して行った行為は
 もうナギ殿下の耳に入っていると思っていいでしょう」




ナギに・・・・
この身体の事を・・・ この傷の事を・・・ 
・・・知られてしまった・・・

この身が凌辱され穢されている事も・・・

もう・・・ ナギは知っている・・・・・・





グッと心臓が締め付けられる

頭の中が真っ白になり、呼吸が出来なくなった
意志とは関係なく、勝手に震え始めた体を止めようと、強く腕を回す
だが、力は入らなかった

脚にも力が入らず、膝が折れそうになるのを必死で堪えた





「シュリ、おいで・・・・」

そんな蒼白のシュリを、いきなりラウの腕が抱き寄せた






華燭の城 - 178 に続く
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華燭の城 - 176

「・・・っっ・・・ ラウ・・・・ラウ・・・」

小さく名を呼び続けるシュリの左腕に力が入り
ラウを強く抱き寄せる
その反動でシュリの最奥にラウのモノが突き当たる


「ンッ・・・!」

呑み込まれ、締め付けられたラウも 思わず声を上げた
熱い程のシュリの体内
そこが柔らかく濡れ、強くラウのモノを絡め取る



「・・・・  ンッ・・・・・  シュリ・・・」

「ぁああっ・・ ・・・んっっっ・・・・・・
 ・・・ ラウ・・・・ ダメ・・・・ もうむり・・・・ いかせて・・・・・・!」

「・・・・・まだ だめです・・・・
 ・・・・次は長いと言ったでしょう・・・・・?」



ラウはこの時間が終わるのを惜しむ様に
シュリの身体の下に腕を差し入れると、
体を繋いだままグッとシュリを抱き起した

自らは後ろへ倒れ、ベッドに体を沈める




「ッあっ・・・・・! ラウ・・・・ 何を・・・・・
 ・・・・ンックッっ・・!」

やっと慣れかけていたラウの動き・・・
昇り詰めようとしていたその体を無理矢理に抱き起こされ
また違う部位へ当たる様になったラウのモノ・・・

その新たな刺激にシュリは思わず声をあげた





「ラウ・・・・ いや・・・・だ・・・
 こんな恰好は・・・・・」

恥ずかしさでシュリが俯く
いきなり抱き起され、ラウの上に跨る様にして座らされたシュリには
俯いた先・・・ 自分自身さえもハッキリと見えていた



「いいえ、シュリ・・・ このままで・・・
 今度はご自分で動くのですよ・・・・」

ラウはシュリの細い腰に両手をあてがうと、そっと上下に動かし促し始めた



「ぁ・・・ぁ・・・そんな・・・
 ・・・んっ・・・・無理・・・・・」

初めての事に戸惑いシュリが首を振る



「大丈夫です・・・
 膝を立てて・・・・ ゆっくり足に力を入れて・・・・・・」

ラウの腕がシュリの腰を先導する



「んっ・・・・んっっ・・・・・・ぁっ・・・・・・・」

ラウの胸に手を付き、体を支えながらシュリは天を仰ぐ
しなやかで、傷だらけの体がのけ反る様に伸び、ラウの目の前にあった


揺れる髪、小さく喘ぐ口元、震えながら自分を求める手・・・・
ラウは自分の上でゆっくりと動き続ける美しい神の子から
目が離せなくなっていた



「シュリ・・・・ とても綺麗ですよ・・・・・・」

「んっ・・・・んっ・・・・ぁぁ・・・ ラウ・・・・・・ラウ・・・・・」


その甘い呼び声に
ラウは胸に置かれたシュリの左手に 自分の右手を重ね
「・・・・・ここにいますよ」  そう言いながら自らも突き上げた



「ん! ・・・・んっ!! ・・・・ラウ・・・ ラウ・・・・!
 そんなに・・・・動かないで・・・・」

喘ぐシュリを下からじっと見詰めながら、その切願とは逆に
ラウの動きは早くなった

重なり合った指がお互いを求めて強く絡み合う





「んっっ・・!! んっ・・・!
 もう・・・・ 本当に・・・ 無理・・・・・・・・
 ・・・・ そんなに激しく・・・  しないで・・・・・・・
 ・・・・ 我慢・・・・・できない・・・・っ・・・・
 ・・・・ ラウ・・・・ ・・・・・ラウっ・・・・もう・・・・ お願い・・・・・」


「・・・ええ、楽にして差し上げます・・・」



今にも泣き出しそうなシュリの切ない声にラウはそう言うと
空いている左手に、二人の間で熱く猛っているシュリのモノを取り、握り込んだ
指先でゆっくりと、促す様に穴を弄る



「ぁ・・ぁあああっ!!!  ・・・・・・んぁっ・・・!
 ・・・・んっんっ・・・!!!」

自らの中で更に弩張していくラウを感じながら
自分のモノを包む手も早くなり
擦り上げられると シュリは堪え(こらえ)切れず、思わず声をあげた



「いきたい・・・・・もう・・・んっ・・・・
 ・・・・・んんっぁああああ・・・っっ・・・ラウ・・・・・!」

「んっ・・・ シュリ・・・・ 私も・・・・中に出しますよ・・・・・ 」

「んっ・・・・!!  きて・・・・ラウ・・・
 ・・・・ぁっ・・・     ・・・・・・・・・・ンッ。。。!」

「シュリ・・・・・っ・・」



小さく呻き、絡めた左手指に力が入るのと同時に
ラウの腹の上にシュリの精が遠慮がちに吐き出され
ラウ自身もシュリの中で強い脈動を繰り返した



「・・ラウ・・・・」

直後に力尽きた様に前のめりに倒れ込み
自分にしがみつくシュリの体を、ラウの腕がしっかりと抱き留めた
まだその肩はハァハァと息を乱し、苦し気に動いている


「シュリ・・・・
 シュリ・・・・・」
 
何度も名を呼びながら、
ラウの優しい手がシュリの柔らかな髪を愛しむ様に頭を撫でる




「大丈夫ですか?」

「・・・大丈夫・・・・じゃない・・・・・」

脱力感と恥ずかしさで
少し拗ねた様に ラウの胸に顔を埋めたシュリだったが
早くなったラウの鼓動に気が付くと、ふっと微笑み
もう一度強く指を絡め合った


そして、まだ繋がったままの体内にラウの熱を感じ取ると
安心した様に目を閉じた






華燭の城 -177 に続く
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華燭の城 - 175

ラウの唇がシュリの首元に落とされる

「んっ・・・・」

シュリはピクンと身を震わせ目を閉じた
自分を落ち着かせる様に、小さく息を吸いラウの頭を抱く様にして
その動きに身を委ねる・・・

首筋から降りて行くラウの唇は優しかった
シュリの身体を労わりながら、少し冷たい、それでいて繊細な唇が
一つ一つの傷を縫い留める様に動き、その後を舌が追う



「・・ぁっ・・・」

途中で胸の小さな突起を啄(ついば)まれ
シュリは思わず微かな声を上げた
身体を甘い痺れが満たし、足指に力が入ると僅かに腰が浮く

ラウも その声を愛しむ様に、幾度も甘噛みを繰り返しながら
手はシュリの下腹部へ向っていた



「んっ・・・ん・・・ラウ・・・」

ゆっくりと下りて行くその手の感覚に身を固くし
シュリは羞恥で一杯になる
無意識に自身を隠す様に膝を立てていた



「シュリ・・・ 隠さないで・・・・ 私に見せて・・・」

静かな部屋にラウの良く通る澄んだ声が響くと
その手がシュリの膝に掛かる



「・・・・・ でもっ・・・・・ ・・・ぁっっ・・・」

制止する間もなく、脚は左右に割り開かれる
鼓動がトクトクと早くなり、シュリはクッと唇を嚙むと強く目を閉じた


そんなシュリをラウは優しく見つめながら
晒されたモノに、直に触れる

そのまま、長く細い指が上下にゆっくりと動き出すと
シュリは大きく身体を仰け反らせていた


「ぁっ・・・ っ・・・・・・ んっっ・・・・・!」

「可愛いですよ・・・シュリ・・・」

ラウはそう微笑むと、鳩尾(みぞおち)から下腹へと舌を這わせ・・・
それをゆっくりと口へと運ぶ



「・・やっ・・・・・ んっぁっ・・・!・・・ラウ・・・・!」

ラウの温かく、柔らかい口内・・・
根元から先まで何度もゆっくりと唇で包まれ、
先の穴に舌を差し込む様にして責められると体中が熱くなる

閉じてしまいそうになる膝は押さえられ、身動きできないまま
シュリは小さく首を振りながら、左手でシーツを握り締める




「んっ・・・ぁぁぁっ・・・ ラウ・・・ラウ・・・」

シュリはラウの名を呼びながら、肩を掴んでいた


「きて・・・・・ ラウ・・・・お願い・・・・・・・
 ・・・お前が欲しい・・・」


その甘い懇願にラウは頷き、
肩に置かれた手に呼ばれるまま身体を移動させると
シュリの脚を・・・ 膝を抱えさせる様にして持ち上げた


そして露わになったそこへ・・・
シュリの零した湿りを纏った中指を当てがい、そっと落とし入れると
シュリの身体は、ラウの細い指をゆっくりと静かに深く呑み込んでいく



「ンッ・・・・・・・っ・・」

シュリの体が小さく震え、差し入れた指を動かすと
その白い体は花開く様に紅を点す





位置を変え、角度を変え・・・
滑らかに、柔らかに、開かれ始めたシュリの身体を抱き締め

「もう大丈夫な様ですね・・・・」

ラウが耳元で囁く



まだ指が入れられたままの場所に、ラウのモノが触れていた
微かな喘ぎと一緒に小さく頷くシュリの手もラウを求めていた




「シュリ・・・入れますよ」

「きて・・・・・」

その声にラウは、自らをシュリの中に圧し込んでいく



「んっっ・・・!・・・・ぁっ・・・・・」

ゆっくりと抽挿を繰り返しながら自分の体の奥へと入ってくるラウの感覚
それは僅かな痛みと共に ハッキリとシュリの体内に刻み込まれていく



「ぁぁっ・・・ ラウ・・・ラ・・ウ・・・・」

途切れ途切れの声が静かな部屋に広がっていった


「シュリ・・・ もっと力を抜いて
 ゆっくり息をして・・・・」

「んっぁ・・・・・・・・っ・・!」

促され、必死に息をするシュリの吸気に合わせ
ラウは自身を 最奥まで送り込む



「・・・ もっと・・・ ゆっくり・・・・・ラウ・・・
 ・・・・ヘンになりそう・・・・」

身体が密着するとシュリは左腕でラウにしがみ着き
甘い喘ぎと共に訴える


「構いませんよ・・・・
 私がついています・・・ もっと感じて・・・・」

シュリの願いをサラリとかわし、ラウの動きは早くなる



「ぁっっ・・・!
 ラウ・・・・ラウ・・・・んぁああっ・・・!」

「でも、声は少し控えめに・・・・
 廊下に、まだ人が居るかもしれませんからね」


そう言いながらも動きを激しくし、
クスリと笑いながら冗談の様に耳元で囁かれた声にシュリは身を捩った



「・・・! ・・・ そ・・ そんな・・・っ・・・・
 ぁあんっ・・・  む・・・・り・・・・・・ッ・・・・
 んっ・・・!!ンッァァッ・・・・!」


「・・・んッ・・・・  シュリ・・・・・
 目を開けて・・・ 私を見てください」



ラウの瞳がシュリを見つめ、
その声に肩で息をしながらシュリもまた、ラウを見つめ返す


狂気に満ちたこの城で、やっと見つけた至福の時だった






華燭の城 -176 に続く
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華燭の城 - 174

「判っている・・・・」

シュリがポツリと呟く



「では・・・ ここに刻まれていた魔は、
 ロジャーの、純粋で真っ直ぐな、穢れない子供の心で浄化された
 それはかつて 貴方が穢れなき神の子として戦っていたのと同じ・・・・
 ・・・・そうは思えませんか?
 それとも 神の剣を持たないロジャーではダメですか?
 虚礼に過ぎないと・・・ そう思われますか・・・?
 貴方の ”神としての信仰” とはそんなものですか?」


「判っている・・・・
 判っているんだ・・・ 本当に・・・・
 私もロジャーに救われた・・・・ そう思っている」


シュリはグッと左腕に力を入れ、
自分に覆い被さる様にしているラウを抱き寄せた




「だからこうして、ラウを抱き締められる・・・・
 でも・・・
 これが私の身体にある事は、もう消す事の出来ない事実
 
 これを見た者が、私を悪魔の紋を持つ者として、忌み嫌うのはいい・・・
 そんな事は構わない

 だが辛いのは・・・
 これを見た者が、自分自身を責めてしまう事・・・
 こんな忌まわしき物を見るに至った自分の行動に非があったのだと・・・
 自分が悪いのだと、そう思う事・・・

 いくら私が ”これは違う” ”もう浄化されたのだ” と言っても
 聞き入れはしないだろう
 オーバストがこれを見た時の反応・・・・
 あれが正しい反応であり現実・・・  
 幼い頃から教わり育ってきた ”皆の信仰” なんだ

 それにガルシアは、戦でこの身体を使うと言った
 これを敵兵に晒し、恐怖の中で屈服させると・・・
 その時 私は・・・・ 今まで、私を信じてくれていた多くの人達を
 最悪の形で裏切り苦しめる事になる・・・・」



シュリは抱えていた苦悩を一気に吐き出すと、辛そうに目を伏せた
じっとその言葉を聞いていたラウも視線を反らし
悔し気に小さく唇を噛む

だがそれはほんの一瞬の事だった



「信仰の事など・・・ 何も知らないまま勝手な事を言って・・・
 申し訳ありませんでした
 でも・・・・貴方を利用させるなど・・・・・
 そんな・・・・ガルシアの好き勝手になど・・・・
 その様な事は絶対にさせません」

「・・・ ラウ・・・」

「私を信じてください」

再び真っ直ぐに ラウが自分を見ていた






窓の外で風が鳴る
暖炉の薪がパチパチと静かに爆ぜる




暫くしてシュリはふっと身体の力を抜き、微笑み小さく頷いた

初めてこの城に入った時から、何も変わってはいない
この風の音も、暖かな部屋も
この真っ直ぐに自分を見つめてくる優しい瞳も・・・

ラウ・・・・
お前の言葉ならば信じよう、信じられる・・・・ そう思った

何の根拠も、確証も無い

結果が自分の意に反した物にしかならなくても、
どんなに辛い現実があったとしても・・・ 
ラウを信じる。それだけは揺るがない

自分が心から愛した男なのだから・・・





「・・・・ ラウ、ありがとう」

柔らかなシュリの微笑みに、ラウも小さく頷き、
押さえていたシュリの手を解放する



ラウはその手でそっとシュリの頬に触れた

「・・・傷も塞がってきています
 でもまだ油断はいけません
 毎日消毒をして、薬を塗って・・・・
 ああ・・・あと・・・ 新しい薬・・・・・
 そこのテーブルの引き出しに入れてあります
 前の様な副作用はありませんが、多用はダメです
 1日1錠で、3ヵ月分はありますから、
 あれが無くなる頃には、きっと今よりも良くなるでしょう」


ラウは 一度言葉を切ると視線を上げ、ベッドサイドのテーブルを示した
そして再び、シュリを見る

 


「・・・・ それから・・・・いいですか? シュリ・・・
 しっかり食べて下さい・・・・
 シュリは食が細いのだから、人一倍、気を付けなければ・・・・」


「・・・・ラウ、ラウ・・・・ ・・・・どうした・・・?」

その声に、頬に触れていたラウの指が止まる




「ラウ・・・・?
 急に・・・ どうしたんだ? 
 まさか・・ 何か・・・・ おかしな事を考えてはいないだろうな?
 ・・・・もしそうなら、絶対にやめろ!
 私の為にそんな事・・・・ 絶対にするな!
 これは命令だ! いいな!!」


その必死さにラウが微笑んだ



「ええ、判っていますよ、シュリ
 そんな馬鹿な事はしませんよ
 ・・・ 本当にシュリは心配症ですね」

  
「心配症なのはお前だ・・・・
 私は大丈夫だ・・・
 ラウこそ たくさん食べて、早く風邪を治さないと」


「・・・そうですね」



ラウの手が愛しむ様にシュリの頭を撫で、肩を抱き寄せる
そのままそっと耳元へ唇を寄せた



「シュリ・・・ 貴方に会えてよかった」

そう囁く優しい声に シュリの左腕にも力が入り 強くラウを抱き締めた



「私もだ・・・ ラウ・・・ 愛している・・・」






華燭の城 - 175 に続く
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華燭の城 - 173

・・・・ゴホッ・・・・  ゴホッ・・・・


「ラウ・・・・大丈夫か・・?」

ラウの腕に包まれる様にして
緩やかな眠りに落ちかけようとしていたシュリが
静かな部屋に響く咳音で目を開けた



「起こしてしまいましたね・・
 申し訳ありません」


「そんな事はいい・・・ 大丈夫か?
 このところ、本当に顔色が優れないぞ?
 咳も出ているし・・・・ 冷えるから何か着た方がいい・・・」



左手で少し冷たいラウの胸にそっと触れる
その声にシュリの肩を抱くラウの腕が強くなった




「もう少しこのままで・・・
 何も身に着けていない方が、シュリの温かさを直に感じられます・・・」

ラウの手がそっとシュリの髪に触れ頭を撫でると
シュリも安心した様に穏やかな笑みを浮かべ、ラウに体を預ける



そして少し首を伸ばし、ラウの首筋に唇を寄せた

2度 3度・・・ ゆっくりと触れるシュリに応える様に
ラウの唇がシュリを拾い上げる



「口を開けて・・」

耳元で囁かれる静かな声に抗えず
言われるがままに、シュリが小さく口を開けると
そこへラウの舌がスルリと滑り込んだ


「・・・んっ・・・」

優しく口内を撫でる柔らかな唇と舌が
シュリの体の熱を上げさせる





「ラウ・・・ もう一回・・・欲しい・・・」

そう言わされるまでの時間はほんの僅かだった






ラウは小さく頷きながら微笑み
シュリの頭の下にあった腕をスッと抜き出すと
身体を反転させ、シュリの上へ・・・ 覆う様に身を置いた

ハラリと揺れる黒髪を嫌う様に掻き上げる仕草を
シュリが下からじっと見つめる


「・・・・? ・・・どうされました?」

「・・・・見惚れていた」

真顔で答えたシュリに、 ラウがクスリと笑った
そして、そのままシュリの身体に目を移す




「今度は長いですよ?
 傷は・・・ 大丈夫ですか?」

ラウの長い指がそっと胸の傷に触れると
シュリの左手が 咄嗟にそれを隠そうと動いていた




「シュリ・・・ 隠さないで・・・」

ラウの右手がシュリの左手を握るとシーツに押さえ込み
指を絡める


「・・・・・でも・・・・・」

覆い被さる様にして組み伏され
正面からのラウの真っ直ぐな瞳から逃れる様に
シュリがわずかに視線を逸らす





「シュリ・・・・
 ずっと私に触れる事・・・・ 避けていらしたでしょう?
 私を穢してしまう、、、とでも思っていましたか?」


「・・・・気が・・ ついていたのか・・・・」

逸らした目を伏せながらシュリが応える




「判らないとでも思いましたか・・・?
 でも今日はこうして身を任せてくださる
 さっき抱いた時も目を逸らさなかった・・・・ 
 ・・・ ロジャー・・・・ ですよね・・・ 
 あの小屋で話をされたのでしょう?
 ロジャーも、そんな事を言っていましたし・・・
 だからもう、大丈夫なのだと・・・そう思っていました」


「ロジャーが・・・
 私に神の赦しを与えてくれた
 ・・・・・ でも・・・・」



シュリが傷を隠す様にわずかに体を捩る



「この体は・・・・ 醜悪で忌まわしい・・・・
 ・・・・出来る事なら・・・・・ やはり、誰にも見られたくない・・・
 お前にも・・・」


シュリはそれだけ言うと、クッと強く目を閉じた

ラウは小さく息を吐くと、横を向いてしまったシュリの顎に指をかけ
真っ直ぐに向き直らせる





「シュリ、この悪魔は・・・
 ・・・まだここで生きているとお思いですか?
 魔とはそれほど強く、絶対に越えられないモノなのですか?
 ・・・・違うでしょう?
 貴方が一番良く知っているはずだ
 これは浄化できるモノだと・・・
 今まで貴方はそうやって、多くの人を救ってきたのですから」



ラウの瞳が諭す様にシュリを静かに見詰めていた






華燭の城 -174 に続く
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華燭の城 - 172

「・・・少し・・・ 外にいる・・・」




男の話を聞き終わるとヴィルは、
部屋の外に待機させていた近衛に声を掛け、男を連行させると
それだけを告げて、自分も部屋の外へ出て行った



一人きりになった部屋で ナギの怒りと悲しみは爆発した
声にならない叫びを上げる

誰にもぶつける事が出来ない自分への怒りだった

今思えば思い当たる事はたくさんある




いつもシュリの側には、ガルシアの側近がいた
あれは見張りだったのだ・・・・


あの異常さを どうして自分はおかしいと思わなかったのか・・・
自分はそれを変に思うどころか
お前は過保護だと、シュリの事を笑ったのだ

何も考えず、シュリの目の前で その見張りを挑発した事もある
そんな愚かな自分を、シュリはどんな目で見ていたのだろう・・・




俺は・・・ 何て馬鹿なんだ・・・・・

申し訳なさと、後悔でナギは崩れる様に膝を付いた
じっと床の一点を見つめる視界が、どんどんと揺らいでいく



膝に置き、きつく握り締めた自分の両手の拳・・・
シュリの手は・・・・ ボロボロだった・・・・
どうしてもっと きちんと問いたださなかったのか・・・



一緒に駆けた森・・・・
鳥や花を見て、本当に嬉しそうに笑っていたシュリの顔
石牢・・・ 
そんな所に居たなんて・・・
どれほど外に出たかったか・・・



そうだ・・・
あの時はもう 身体は傷だらけだったはずだ・・・
苦しかったはずなのに
あれほど穏やかに笑い・・・ そして自分の命も救ってくれた・・・




別れの時の、あの腫れ上がった右手も
自分もまだ居た同じ城内で、ガルシアに砕かれていた


いや・・・もっと、前・・・

 
あの受書の時はもう・・・
悪魔の紋を灼き付けられていたのだ・・・・・

だがシュリは、そんな身体で
憎むべきはずのガルシアを 暴漢の刃から守り、父上と呼び
次期王になると自ら宣言した・・・・




何故だ・・・・

何故だ・・・シュリ・・・・!



そんな目に遭わされながら
何故、ガルシアを救った・・・?
何故、自分に助けを求めなかった・・・?


何故一言、俺に・・・・!!




何故・・・ 何故・・・ 何故・・・・
そう呟きながら、ナギはふと顔を上げた



何日も一緒に居て、あの異常さに気付かなかった俺には
何を言っても無駄だと思ったのか・・・・?

ガルシアが俺を狙っていたからか・・・?
俺を無事に国へ返す為だったのか・・・・?
だからあれほど強く帰れと言ったのか・・・?

俺はお前に守られるだけか・・・?
俺では頼りにならないと・・・ そう思ったのか・・・・?



次から次へと脈絡なく湧き上がってくる悔しさ、
自分への怒りと情けなさ・・・・
深い闇底へ堕ちていく思考・・・・ 思えば思う程苦しかった






その時、上げた視界にテーブルに置かれたままの小瓶が入る・・・

最後に男が明かした話・・・
もしあれが本当だとしたら・・・・

・・・・・まだ・・ だめだ・・・・
こんな事で堕ちている場合じゃない・・・・
俺にはまだ、やらなければならない事がある・・・・!


こんな物・・・・!!!

ナギは中の一つを握り取り、壁に叩きつけた
小さな瓶はパリンと甲高い音と共に粉々に砕け散る






シュリ・・・

シュリ・・・・・・


俺は・・・ お前に救われるだけの存在じゃないぞ・・・・

・・・・・今度は俺がお前を救ってやる!!!








顔を上げた
頬を伝っていたものを払って、立ち上がる


扉を開けると、廊下にはヴィルが一人静かに待機していた

ヴィルは扉が開くと同時に礼を尽くし、主に頭を下げる




「これからすぐに神国へ向かう!
 あいつも連れて行く!
 道中、まだまだ聞きたい事がある!」






華燭の城 - 173 に続く
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華燭の城 - 171

ナギの身体がピクリと震えた


自分の耳に届いた言葉に恐怖した訳ではない
それが怒りだったのか、後悔だったのか・・・ 
ナギ自身も判っていなかった



「・・・・今・・・・・ なんて言った・・・・」

ただただ、聞き間違いであって欲しいと・・・ 
嘘であって欲しいと・・・
その一心で聞き返していた



だが男の答えは、非情な現実をナギに突き付ける



「わっ・・・ 私はその手伝いをしただけ!
 実際にやったのはヤツだ!
 ガルシアだ!!!
 私は止めた方がいいと、何度も・・・・!」


「貴様・・・・・・!!! 
 ・・・・ シュリに・・・・!!!
 神の子に悪魔の紋を灼き付けたと言うのか!!!!!
 ・・・・・・・・・・ それでどうなった!!! ・・・シュリは!!!」


「それだけ!!
 そこで皇子が倒れて、それでおしまい!!
 ・・・・ヒ・・・・・ヒィィ・・・・・ッッ!!!」




椅子を蹴倒し立ち上がったナギの剣が、男の首元にあった

あと20センチ腕を引けば、男の首は落ちる


口惜しさで唇を噛み締めたナギの顔は蒼白となり
その手は怒りに震える
許さない・・・!
その念だけがナギの全てを支配する





「・・・止めろ!!!ナギ!」

止めたのはヴィルだった
だがナギの剣を握る手は緩まない



「・・・止めろ・・ だと・・・・!?
 ・・・・・・お前も聞いただろ!!!
 ・・・こいつはシュリに・・・・・!!!
 ・・・・・ それなのに・・・ 斬るなと言うのか!!!!」


「今はだめだ!!
 この男には まだ証言してもらわなければならん事がある!」


「クソッ・・・・・・!!」



今この場で この男を斬り捨てられないという事が
余計に悔しかった

怒りが心臓に達し、胸が掻きむしられる様に熱く苦しくなる
剣を押し付けられた男の喉元に 赤い血がプツリと浮かぶ






「・・・・・ ギャぁあああーーー!
 痛いぃぃぃいーーー! 痛いぃーー! やめてくれっーーー!
 助けてくれぇぇ・・・・・!!

 ・・・・ああ・・・っ・・・ あ、、あ、、、・・・・・そ・・・・ そうだ!!
 ま、まだあった・・・・! 
 あの皇子には秘密があるぞ!!!
 それを知りたくはないか!?
 私だけが知ってる秘密だ!!」


「うるさいっ!! 黙れ!!
 ・・・・もう・・・ もう何も聞きたくは無い!!!
 ・・・・・ 黙れないならその首・・・・!!!」


「ダメだ!ナギ!!」




ヴィルが横から強引にナギの剣を奪い取る

手から剣の重さがなくなると、ナギはそれを取り返そうと暴れ
それも叶わぬと判ると 今度は素手で男に掴み掛かろうとした

それをヴィルが後ろから羽交い絞めにする





「落ち着けナギ!!
 ここでこいつを斬り捨てても何もならん!!
 皇子を助けたいなら、殺すんじゃない!!!」


「助けてくれ!!
 ・・・助けてくれぇ・・・・!
 悪かった・・・・ 許してくれ・・・
 私は全部 ガルシアに騙されたんだ・・・・!!!」



僅かに切れた首を押さえ、自分の手に血を見た男は
恐怖で震え、半泣きに叫ぶ


両手を擦り合わせ、懇願しながら蹲(うずく)まり
ナギの足元まで這いずると、靴を舐める様に取りすがった
そして額を床に擦りながら必死に命乞いを繰り返す




「俺に触るな!!!
 ・・・・・くそっ・・・・・!  
 ・・・・・・・・・ こんなヤツに・・・・・・ どうして・・・・・・・
 ・・・・どうしてシュリが・・・・・!!
 ・・・・・・・・・どうして・・・・・・・・・・!!!」



男の情けない姿と声に
ナギは一気に魂が抜けた様に放心し
天を仰ぐと、ぐったりとイスに座り込んだ




「おい、秘密とは何だ
 まだ何かあるなら、さっさと話した方が身の為だ」

そんなナギの代わりに、ヴィルの冷たい声が響く



「・・・・わ、、わかった・・・
 あの皇子はたぶん・・・・・・」






華燭の城 - 172に続く
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華燭の城 - 170

「・・・・頼む!・・・斬らないでくれ!!
 ・・・でも・・・・ でも・・・!!
 私が初めて皇子の身体を見た時は
 もう傷だらけだったんだ・・・!!
 本当だ! 信じてくれ!
 ガルシアが自分のナイフや鞭でやったんだ!
 ・・・・ 強淫もだ・・・!
 ガルシアは手慣れた様子で・・・・
 皇子は強情で なかなか躾ができないとも言っていた・・・・ だから・・・」


「・・・くそっ!!
 なんでそんな事に・・・・」

怒りに身を震わせるナギの声に

「し・・・・知らないっ!
 私は何も・・・!
 ああ・・・・で、でも・・・!弟がどうのと・・・・・!」

男は必死に説明という保身を繰り返す




・・・・ 弟・・・
シュリの病気の弟・・・・
確か、ガルシアが 医師を出してくれたと・・・

また1つ想定外の駒が増え
ナギは、今までの自分の考えの甘さにギリと奥歯を噛む

この蛮行の根は、いったいどこまで広がっているんだ・・・! 



「・・・他には!!!
 ・・・もうそれだけか!!
 まだ何か隠していたら・・・・!!」


「あ・・・ あ・・・!!!
 ・・・・・あと・・・・別の日に・・・・」

恐る恐る上目遣いにナギの様子を伺いながら 男が続ける





「・・・・・さっさと全部言え!!!
 ・・・・別とはいつだ!」


「ああああ・・・ 貴方が・・・!
 ・・・・ シュリ皇子が貴方と馬乗りに出た日の夜だ!!!
 あの夜・・・・また城へ呼び出されたんだ!
 ガルシアが・・・・すぐに来いと・・・・
 それで私はまた城に・・・ 急遽・・・
 ・・・・わ・・・・・私だって・・・・仕事があった・・・・
 でも・・・・仕方なく行ったんだ・・・・!
 あのガルシアに呼ばれたら・・ 逆らう事なんて・・・・・・」




馬乗りって・・・・

あの日の夜と言えば、自分達がまだ城に居た日だ
普通に食事を摂り、普通に入浴をして普通に過ごした・・・・
まさか・・・ その時、同じ城内でシュリが・・・・


ナギの感情は怒りを通り過ぎ
深い後悔の中に堕ちようとしていた

血の気を失い真っ白になる程、自分の拳を握り締め
溢れそうになる涙と怒りを必死に抑えながら
自らを鎮め様と椅子へと腰を下ろす

その肩にそっと、隣のヴィルが手を添えた






「・・・  それで・・・ どうした・・・」

一転 静かなナギの声は殺気に満ちていた

逆らえばこの場で斬り捨てられる・・・
そう確信するには十分だった



その恐怖に、男の思考も暴走を始める・・・



・・・ガルシアにも裏切られたのだ
いや・・・
最初から敵国のガルシアなど 信じた自分が愚かだったのだ

あの高名なシュリと何の足枷(かせ)もなく好きに遊べるなど、
今思えば、初めからオカシイ話だった・・・


そうだ・・・ ガルシアは最初からこのナギと手を組んでいて
自分は巧(うま)く騙されたのかもしれない・・

帝国に反抗し続ける我が西国に、攻め入る口実を作らせる為に・・・・
そうだ・・・ それしかない・・・
もしそれならば・・・・
そろそろガルシアも、この屋敷に踏み込んでくるのか・・・

このナギの横に立ち、「まんまと引っかかったな」 と・・・
「お前ほど馬鹿なヤツは居ない」 と・・・・
あの傲慢に満ちた顔で笑いながら・・・・・!

 
そうなれば シュリを弄んだ事も、自国軍の情報を渡した事も
全て自分一人の罪にさせられる・・・ 
・・・・ あの悪魔の紋さえも・・・・!!





今にも張り裂けそうな心臓で チラと上げた視線の先
目の前には、変わらない殺気を宿した帝国皇太子が鋭く睨みつけている


恐怖と怒り、そして絶望・・・




全ておしまいだ・・・

もう逃げられない・・・



そう悟った男は震える唇で最後の一手に出た






「あ・・・あの・・・ 全部・・・・全部話したら・・・・・
 助けては・・・ もらえないだろうか・・・・・
 ・・・・・ガルシアの事でも何でも・・・
 知ってる事は全て話すから・・・
 その・・・・・・・取引・・・・ というか・・・・・・」











そして男は大人しく経緯を語り始めた


「あの馬乗りの日だ・・・・
 ガルシアが・・・
 私に拷問用の道具を持ってこいと、そう連絡をしてきたんだ・・・
 前に使った劇薬を持って来いと・・・・
 ・・・・  私が行くと・・・
 ガルシアは馬乗りから戻って来た皇子を、石牢に呼びつけ・・・・
 ・・・殿下と結託して城から逃げる気だったと言って・・・ 掴みかかった・・・・
 
 それでも皇子は そんな事はしていないと・・・ 
 ガルシアが、皇子の右手を砕いても・・・ 認めなかった」



右手を・・・・ 砕いた・・・・
ナギの脳裏に、あの帰国の日に見たシュリの痛々しい手が浮かぶ
 


「だから私は、暴力は止めた方がいいと・・・
 ・・・そうだ!私は必死に止めたんだ・・・!
 殿下だって・・・!
 貴方だって、あの城で殺されるかもしれなかったのを
 私が止めたんだ・・・・!
 ガルシアは貴方も殺ってしまえばいいと・・・・!」


「俺の事はいい!!
 ・・・・シュリの事を話せ!!!」

「ヒィッ!」 男が小さく飛び上がる


「わかった・・・・・・ 話すから・・・
 それで・・・・ か・・・・ 代わりに・・・・
 暴力の代わりに私は・・ 自分の自白剤を使って皇子を尋問して・・・ 
 それで・・・ 皇子はシロだと判ったんだ
 それでも、ガルシアの苛立ちはおさまらず・・・
 ・・・・・その・・・・・
 ・・・・・私の道具で・・・・」



男がゴクリと唾を飲む


そして小さく震えながら俯き
膝の上に置いた拳を握り締めた





「・・・・お・・・
 ・・・・・皇子の体に・・・・」


「・・・体に? ・・・シュリに、これ以上何をした・・・!!!」


「・・・針と薬で・・・
 ・・・・・・ ”召魔・・滅神” ・・・の紋を灼き付けた・・・・・」






華燭の城 - 171に続く
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華燭の城 - 169

だがナギは気丈にも平静を装った
ここで隙を見せ、つけ込まれる訳にはいかないのだ

そして、未だ取り乱し暴れ回る男に更なる追い打ちをかけた


「なぁ、ガルシアは全て話したぞ?
 もうお前一人が ヤツを庇った(かばった)ところで
 意味がないのは判っただろう?
 全部 正直に話せ
 このままでは 全ての罪をお前一人で被る事になるぞ?」


「えっ・・・・・ま・・・  ・・・待ってくれ・・・」




その言葉に男は 汗でびっしょりになった顔を上げた
わずか数分で 何十も年を取った様な疲弊(ひへい)しきった顔だった


その生気のない顔で ナギ達の後ろに居並ぶ近衛兵を順に目で追い


「ここで・・・・ 皆の前で・・・ あれを話してもいいのか?」
そう言った






ナギの顔に懐疑の表情が浮かぶ
そしてそのままヴィルの方を見た

その視線でヴィルが近衛に合図をすると
後ろにいた兵達は一斉に頭を下げ、部屋を出て行く





バタンと扉が閉まり部屋に三人きりになるとナギは
これでどうだ。 とでも言う様に冷たく男を睨みつけた
その威に負けて、男がゆっくりと口を開く




「先に・・・・ 
 先に言っておくが誘ってきたのは向こうだからな・・・・・!
 ・・・・誰だって・・・・・
 誰だって断りはしないだろ・・・?
 あの美しい神の子を抱かせてやると言われて
 断るヤツなどいない・・・・」


「・・・・・!!!
 
 ・・・おいっっ!!! 
 ・・・今、何と言った・・・・!!!?」


「え・・・・・・
 シュリ皇子と・・・・
 ・・・遊ばせて・・・ くれると・・・・ ガルシアが・・・・・」






ナギが目を見開き、唇を嚙む


「・・・・ それ・・・・ で・・・・?」

冷静を装っても、ショックで乾いた喉からは
それだけしか言葉が出てこない






「・・・で・・・・・?
 で・・・・・って・・・・ あの・・・・
 ガルシアは全部・・・・ 喋った・・・んだよな・・・?」

ナギの様子に違和を感じたのか、男が口をつぐむ






「うるさい!!! 
 ・・・・ガタガタ言わずに、さっさと全部吐けっっ!!!
 何か1つでも隠したらどうなるか、判ってるだろうな!!!」


「ヒッィ・・!」




テーブルを叩き付けて立ち上がったナギの剣幕に
男は身を震わせ、両腕で頭を覆うようにして 口早に話し始めた





「その・・・ 石牢で・・・・シュリに・・・・
 ・・・シュリ皇子にその媚薬と道具を使って・・・・」


「・・・・・・石牢とは何だ!!! ・・・道具とは!!!」


「あの・・・ その・・・・ 
 ガルシアの部屋の奥が・・・ 牢の様な造りで・・・
 ・・・・そこで私の・・・針で・・・・
 あ・・・ 針は・・・ いつも私が仕事で・・・ 拷問に使う道具で・・・・・
 ・・・・・・ それでシュリ皇子の体を灼いた・・・・ り・・・・ 刺した・・・  り・・・・・・
 ・・・・その・・・・・ 色々と・・・ 弄んだ後・・・
 その・・・・    
 ・・・・・・ガルシアと二人で・・・・・・ 犯・・・した・・・・」


「・・・・灼いて・・・・ 犯し・・・・・っ・・・!
 ・・・・・クッ・・・・!!
 ・・・・それだけかっ!!」



ナギが自分の腰の剣に手を当てる



「ヒィッ! 
 ・・・・・・や・・・・ やめてくれっ!!
 ・・・・  話す・・・・今 全部 話すからっっ!!」


男は短い叫びを上げた






華燭の城 - 170に続く
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プロフィール

凛

Author:凛
BL・MLを日々妄想してる腐女子

しかもかなりハード目が好きな壊れかけ

SM・拷問等の酷い描写が苦手な方は、ご遠慮ください

1作目 『刻印』
2作目 『華燭(かしょく)の城』 
完結しました。
ブログタイトル下のマップより全話読んで頂けます。
『刻印』の簡単な解説はこちら から


まだまだ初心者故、描写の至らない点
設定の矛盾は笑って見てください 

読みやすく・・と思っているので、長編小説ですが、各回短く、短文、1日1回UP予定です


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