0-story

18禁 BL小説です。主に拷問・凌辱等ハード系。 こういう小説に興味の無い方、嫌悪感がある方はご遠慮ください。サイトマップより一気読み出来ます
月別アーカイブ   [ 2017年12月 ]  

≪ 前月 |  2017年12月  | 翌月 ≫

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m
--/--/-- | スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

華燭の城 - 109

皆の期待感で膨らんだ正面門に最初に現れたのは
ガルシアの命を受けた4人の側近だった

すでに各々が自分の愛馬なのだろう、慣れた様子で騎乗し
浮足立つ兵達を厳しい眼つきで見回しながら、周囲を警戒している



次に馬番が4頭の馬を引いて現れ
正午になるとほぼ同時に ラウを従えたシュリと、
ヴィルを従えたナギが姿を見せた





「シュリ!いい天気になったな!
 体調はどうだ? 大丈夫か?」

「ええ、御心配をお掛けしました
 もう大丈夫です」


2人の若き皇子が微笑み合っただけで周囲からは
「おおー!」 という感嘆の声が上がる



その声にナギは照れ笑った


「・・ったく・・・・・ お前の人気ってここでも凄いな
 馬に乗るだけでこの騒ぎか?」

「いえ、殿下のお姿に、皆喜んでいるのですよ」

「そうかー? 目当てはシュリだろ」




そう言いながらも ナギが面白半分に片手を挙げて挨拶すると
門前は再び喜びの声に満ち、何故か拍手まで湧き起こった

驚いた様にナギが肩をすくめ、シュリに笑いかける



だがその、湧き上がった歓声に驚いたのはナギだけでは無かった


引き出されていた馬が、急に前足を踏み、
首を振って落ち着きを無くしたのだ

それを 4人の馬番が必死に手綱を繰り、なだめている




「あの馬・・・・
 この程度の騒ぎで暴れるとは・・・・・ 大丈夫か・・?」

それを見ていたヴィルが、独り言の様にボソリと呟いた





広場中央の皇子2人・・・ 
そのかなり後ろに控えるヴィルの声が聞こえた訳ではなかったが
その馬達を見ていたシュリもまた 同じ不安を抱いていた


4人の側近の乗る馬は それぞれが戦慣れした馬なのだろう
この騒ぎにも全く動じる様子もなく、堂々とし、主の手綱に従っている


だがこの4頭は・・・


馬を選んだのは恐らくガルシアだ
どういう意図があってかは判らないが、
側近達の乗る馬とは明らかに程度差があることを
馬に慣れたシュリは ハッキリと気付いていた






ようやく馬達が落ち着くと、ナギの前に白馬が、シュリには黒馬
後ろの二人には 栗毛が2頭引き出された


シュリは馬番に礼を言うと、騎乗するナギに手を差し伸べる

介添は通常 馬番がするものなのだが、
シュリが手を差し出すと ナギは嬉しそうにその手をとった


そしてナギが馬上でキチンと体を整えるのを見届けてから
シュリはそっとラウを振り返った




二人だけなら シュリは迷わずラウの介添に行った事だろう
だがこれだけの人前で、皇子が使用人を手伝うなどあり得ない



心配そうに見つめるシュリの視線に気が付いたのか
ナギもまたラウを見つめる



だがラウは 馬番に、持っていた自分の杖を預けると
左足を鐙(あぶみ)に掛け、不自由な右足をかばいながらも
誰の手も借りる事無く、ゆったりと優雅な動きで馬上の人になった


そのまま馬番に何か話し掛けているのは
きっと、帰るまで杖を預かっていて欲しいと伝えているのだろう

馬番がラウの杖を抱える様に持ったまま
何度も頷くと、ラウも顔を上げた



そしてシュリの視線に気が付くと、
大丈夫と言う様にフッと微笑み頷いて見せた


落ち着きの無かった馬も、今はラウの元で
嘘の様に冷静さを取り戻している






「凄いな・・・」

その技量に、ナギが思わず漏らした小さな声が頭上から聞こえると
シュリは 自分が褒められた以上に誇らしく
「ええ・・」 と微笑んだ



さすがだな、ラウ・・・


シュリが微笑みを返すラウの後ろで・・・
ヴィルは力で馬をコントロールし大人しくさせている
それはそれで力強く、頼もしい光景だった



皆が騎乗したのを見届けてから
シュリは自分の前の黒馬にゆっくりと歩み寄った


すると、手綱を引く馬番がすまなそうに小さく頭を下げる


「シュリ様、申し訳ありません
 実はこの馬、その・・・ 色々と頑固な馬でして
 まだ調教が行き届いておらず・・・・」




やはりシュリの思った通りだった
だがこの馬番に非があるわけではない


「わかった、謝らなくていいよ
 教えてくれてありがとう、気をつける
 ・・・それで、この子の名前は?」

そう微笑み尋ねるシュリに、
馬番は恐れ入った様に深々と頭を下げ 
「レヴォルトと呼んでおります」 そう答えた




「レヴォルト・・・
 反抗的なヤツ・・・か、ぴったりの名を貰ったんだな」


クスリと笑いながら そっと手を伸ばしその首筋を撫でると
レヴォルトはじっとシュリを見据えた






華燭の城 - 110 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 108

その日から2日後

ラウの言った通り いつもの分厚い雲は嘘の様に消え、
この国では珍しい程の青空を見せていた



「ここで、これほど美しい空が見られるとは
 思ってもいなかった」

格子の窓に指を掛け、冷たい朝風を受けながらシュリが呟いた



「ええ、本当に、年に一度ぐらいだと思います
 ですが、天気は良くても寒いですから、冷やさない様に」

ラウが側に寄り シュリの肩にそっと上着を掛ける



「ああ、ありがとう」

肩に置かれたラウの手に自分の手を重ねた




「今日の乗馬、いくら楽しくても無理はダメですよ?
 傷もやっと塞がりかけたばかりなのですから
 薬も・・・・・」


「・・・・わかっている
 殿下にもう二度と
 あんな姿を見られるわけにはいかないからな・・・」


そう言って ラウには頷いてみせたが、
シュリの本音は、ラウに心配を掛けたくない・・・・だった

自分が苦しむとラウが悲しそうな顔をする 
その顔を見るのが、自分の痛みよりも辛かった







「それで、今日はどこへ行く予定なんだ?」


道案内役のラウに今日の行き先は任せてある
シュリが隣に立つラウを見上げて微笑んだ

数か月ぶりに城の外へ出る
それだけでシュリの気持は逸って(はやって)いた




「そうですね
 馬駆けですし、街にと言う訳にはいきませんからね」

そう言って微笑み返すラウの顔は
既に心に決めた場所があるように見えた

その妙に嬉しそうな顔に、シュリは ラウの顔を下から覗き込んだ




「・・・ん? どこへ行くんだ?」

「お知りになりたいですか?
 到着まで秘密にしようと思ったのですが・・・」


ラウは悪戯っぽく笑った後

「先日見た・・・・
 あの湖の対岸の森、はいかがでしょう?」





その言葉にシュリの顔が一瞬驚いた後
見る見るうちに華開いた


「本当か、ラウ! 本当にあの森へ行けるのか?!」


「ええ、湖を北側から迂回して、
 途中の分岐を南西へ向かうと 森の奥の滝に出るはずです
 
 お体の事もありますし、休みながらゆっくり走ったとしても・・・
 ここから片道2時間程度

 向こうで一度 休憩を取り、薬を飲めば帰りまで大丈夫でしょう
 今日は昼食を早めにして、午後すぐに出れば日没までには・・・・」



最後まで聞かぬうちに
シュリはラウの首に腕を回し抱き締めていた










今日、シュリがあの帝国皇太子と一緒に
馬乗りに出るという噂は、どこからともなく城中に広まり
朝から城の正面門には、明らかに普段よりも多い人間が
不自然に集まっていた


門塔の番をする地位の低い門兵などは、
”同じ城に仕える者” とはいえ、
高位にある者の姿を拝謁する事は簡単にはできない


唯一と言っていい機会が、自分の守る門をくぐる時

だが、それさえも最近では
馬よりも、車という屋根付きの乗り物が主流になってきてからは
その数も 益々減ってきていた


シュリがここに入城した日も車


しかも、数多くの車列の中の1台であったし
まして外出を許されていないシュリは・・・・・
・・・・ 許されていないという事実は誰も知らない事ではあったが・・・・
シュリはこの門の側に近寄る事さえ、ほとんど無い




24時間交代で番を張り、
宴に出ることも無い下位兵にとっては
初めて その神の姿を、自分の目で見る事が出来る絶好の機会なのだ


多少そわそわと浮かれていても、
今日が当番で無い者までが、
わざわざ どうでもいい様な雑用を作って出てきていたとしても
誰も咎める者はいなかった




ただし、雑用であっても手を止める者などいない
皆、自分の仕事をしながら、チラチラと視線を向け
今か今かとその姿を待っていた






華燭の城 - 109 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 107

「・・・・ こんな物などと、言うな・・・
 私がお前と、お前の作ってくれるこの薬でどれだけ救われたか・・・
 感謝しているんだ・・・」

「・・・・」



会話が止まり、静まり返った部屋に窓ガラスがカタカタと鳴る
外は冷たい風が吹いている様だった
それでもこの部屋は、
ラウが居ればいつも暖かく、そんな寒さを感じる事もない

どんな薬だろうと、ラウさえ居てくれれば・・・




「・・・顔を上げて・・・」

シュリは左手をそっと伸ばすと俯くラウの頬に当て
顔を上げさせると、視線を合わせて微笑んだ




「ラウ・・・ 星が出ているか見てくれないか?」

「・・・・・星・・・?  ・・・・・ですか?」

唐突なシュリの言葉にラウが戸惑いながら少し首を傾げた
それが意図せず、添えられたままのシュリの手に
自分の頬を擦り合わせる形になって
ラウも少し照れた様に クスリと微笑み返す





「さっき、サロンで雲間に星を見た
 もうすぐ晴れるんじゃないかと思うんだ」


ラウは包んだシュリの手をそっと寝具の中に戻し立ち上がると、
窓辺まで行き、カーテンを少しだけ開けた


窓越しに外を見たが ガラスに室内の灯りが映り込み
外のわずかな輝きを見る事は出来ない


冷気が入り、更にシュリを冷やしてしまう事をわずかに ためらったが
窓の飾り取手に指を掛け手前に引いた


ガチャという音と共に夜風が室内に流れ込み、
暖炉の炎を揺らす


格子のはめ込まれた窓からは 身を乗り出す事はできないが
ラウは出来る限り窓に寄り、格子の間から空を見上げた




暗い空に目が慣れてくると、
その目にうっすらとだが、星の瞬きが映る





「本当ですね、シュリ、星が見えます
 この風でしたら・・・ 明後日 辺りには晴れるかもしれません」

「明後日か・・・・」



ベッドに横になったまま 
シュリは視線を再び天井へ移して、何かを考えていた

天蓋ベッドの薄いブルーグレーの幾何学模様をいくつか目で追った頃


「明後日、晴れたら・・・
 殿下に 約束通り馬乗りに出ましょうと伝えてくれないか?」


窓とカーテンを元通りに閉じていたラウが、驚いて振り返った




「そんな、いけません
 まだお体が・・・無理です
 乗馬がどれほど体に負担を掛けるか、シュリなら判るはず・・・」

そう言いながらベッドの横へ戻って来ると
シュリの答えも聞かず話し続けた



「殿下には風邪だと言ってありますから、
 そのお約束は多少遅れても何も言われないでしょう?
 休暇も余裕があると言われていましたし、そう急がれずとも・・・
 もう少し良くなってからでもよろしいのでは?」


ラウの言葉にシュリは目を閉じると
先のバルコニーでの出来事を
ゆっくりと、正確に思い出す様に話し始めた




「バルコニーで殿下は私に・・・
 どうしてこの国に来たのかと、聞いた
 ガルシアの何が そうまでさせたのかと・・・
 殿下は・・・ 私がここに来た事を不審に思っている
 公に発表された ”跡継ぎとなりこの国を救う” という話だけでは
 何かが腑に落ちない、そんな様子だった
 だからまだ書状も渡さないのだと・・・
 オーバストにわざとあんな挑発的な行動を取ったのも
 相手の出方を見たかったのだろう・・・・ 
 ・・・・殿下は、ガルシアを探るつもりだ」


「そんな・・・・!
 それは、なりません、絶対に!」
ラウの語気も自然と強くなった



シュリも目を開け、小さく頷きながらラウを見た



「殿下が何をしようとしているのかは判らない
 だが、このままズルズルと滞在を伸ばさない方がいいと思う・・・
 殿下が私と馬に乗りたいと言うならその願いを叶え
 早々に帰って頂くしかない」


「・・・はい」


「明日にでも殿下に伝えてくれないか
 あと、ガルシアにも・・・・
 側近も来るなら、その手配もあるだろうから・・・・
 ・・・・・ 今夜の殿下の態度で・・・・ ガルシアはきっと苛立っている
 そんな時に外に出るのは、益々怒らせるだけだろうが
 それでも、これで殿下の気が済んで帰って下さるのなら・・・
 反対することは無いだろう・・・」


「わかりました
 すぐその様に手配を」


ラウが深く腰を折り、恭しく頭を下げる
これはシュリ個人としてではなく
この国の皇太子として、使用人に下された命令だと受け取った証拠だ



「悪いな、ラウにはいつも面倒な事ばかりを押し付けて・・・」

それだけ言うとシュリは体から力を抜いた
体の怠さに、辛そうにフゥと小さく息を吐く



「いえ、私は大丈夫です
 それよりもシュリ、お疲れになったでしょう
 側に居ります
 眠れるうちに少しでもお休み下さい」


「・・・・・そうさせてもらう・・・  
 ・・・・ラウ・・・ ・・・来て・・・・」




上掛けの間からシュリが手を伸ばす
ラウはその手を取って静かに微笑んだ
そして上着を脱ぐと、ベッドへと上がる



シュリの頭より少し高い位置で、横に体を置くと
スッと自分の左腕をシュリの頭の下に差し入れ
空いた右手で、差し出されたシュリの手を取り、
指を絡ませる様に握った


シュリはその腕にゆっくりと体を預け、安堵した様に微笑んだ



「シュリ、おやすみ」

そう言いながら、自分を見下ろすラウの顔をじっと見て
わずかに顎を上げる

そこにラウの唇が降ってくると、シュリはゆっくりと目を閉じた






華燭の城 - 108 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 106

「・・・シュリが?」

「はい、ラウムが連れ帰ったので・・・・」

「それで?」

「あ、大事はないとラウムは・・・・」

「シュリではない、話の方だ
 あの小僧とシュリは何を話していた?
 何かおかしな動きは無かっただろうな?」



珍しく酒も飲まず、自室でオーバストの報告を待っていたガルシアは
経緯を簡単に聞くと、シュリの体調など気に留める様子も無く本題に入った




「あ・・・・はい
 部屋での話はほとんどが学校の事や、幼少期の話で
 何も変わった様子はありません」

「・・・部屋、での?
 部屋以外があるのか?」


机の前で両足を揃え
不動で報告をするオーバストを見るガルシアの目が鋭くなる




「いえ、部屋が暑いと言われバルコニーへ出られただけで・・・・」

「バルコニー・・・・
 ・・・で? お前はどうした?
 二人の話は漏らさず聞いていたのだろうな?」

「それが・・・・申し訳ございません
 ラウムもあの近衛も動かないものですから・・・
 私だけが出て行くのも不自然かと思い・・・・
 ・・・ですので、よくは聞き取れず・・・・」

「この愚か者がっ!」



ガルシアが執務用の椅子から勢いよく立ち上がる


「よく聞こえなかっただと?!
 何の為にわざわざ お前を行かせたと思っているのだ!!
 そのための ”給仕”だろうが!
 ・・・くそっ! 使えん奴め!
 肝心な所を聞き逃しおって!!!
 ・・・・・何でもいい! 
 何か少しでも聞こえた事や 気が付いた事はないのか!」




そう怒鳴られて、
オーバストは、ナギの挑発的な行動をどう報告すべきか、一瞬躊躇した

だが、今以上にガルシアの怒りが大きくなったとしても
自分がこの陛下に対し、報告を偽る・・・ 
嘘を付く、という選択肢はない

オーバストは、ありのままを話し始めた 






「なんだと!!?
 それはヤツの、明らかな挑発ではないか!
 ナギは確かに お前の存在を意識しながら
 隠れるようにして、シュリに何かを耳打ちしたのだな!」

「はい、それで私は 急ぎお側に・・・」

「そこでナギが ”神国” ”ガルシア” と言ったのも聞いた、と」

「はい、確かにこの耳で。
 その後すぐにシュリ様の容体が悪くなり、部屋に戻られましたので
 それ以上の会話は何もありません」

「シュリが倒れたのも そのすぐ後か・・・ 
 ・・・・・ 小僧め・・・ コソコソといったい何を探っておる・・・・・・・」



これでナギが自分にとって、味方に成り得ない存在である事は確かだ
ガルシアの顔が憎々し気に歪んだ










 

「ラウ・・・ごめん・・・」
部屋に戻り、ベッドに横たわったままシュリは ラウに謝っていた


「何を謝られているのですか?」

ラウはベッドの横に椅子を引き、
そこに腰かけて じっとシュリを見つめている
そのシュリは真っ直ぐベッドの天蓋を見たままだ



「色々・・・・
 ここまで運んでくれたこと・・・
 迷惑を掛けたこと・・・
 それから・・・・・」

「言い付けを守らず、薬を多用した事」

「・・・・」


シュリは黙って目を閉じると静かに頷いた



「今更 謝っても仕方ありません
 それで・・・・ 
 実際のところ、今はどれぐらいの時間 薬は効くのですか?」

「・・・・」

「・・・シュリ」

静かだが強い声・・・
もう偽れなかった




「・・・3・・・時間・・・ぐらい・・・」

「そんな・・・・!」


何か言い掛けたラウは、グッと唇を噛むと
拳を握り、すぐに言葉を飲み込んだ

そのままシュリの横顔を黙って見つめていたが、
暫くすると、小さく一つ息を吐いた



「謝るのは私の方ですね・・・
 そこまでお辛い事を
 キチンと理解していなかった私に責任があります」

「・・違う・・・・ ラウは何も悪くない
 ラウには感謝してもしきれない・・・」


シュリが慌てて首を回し、ラウへ顔を向けた
だがラウはゆっくり顔を横に振る



「・・・・新しい薬の配合を・・・ 考えてみます
 ですが、それが出来るまでは、今までの物しかありません
 シュリ、お願いですから・・・
 本当に・・・・ 出来るだけ我慢して下さい
 こんな物を渡しておいて、勝手だと思われても仕方ありませんが・・
 今のままでは・・・・」
 


言葉に詰まり、ラウはシュリの右手を両手で包み込む様に握った
そのシュリの手は体の熱さとは真逆に 驚くほど冷えきっている

そのシュリの冷たい手に、ラウは一層 辛そうに俯くと
その手を自分の額へとあて
「シュリ・・・・ お願いです・・・」 
ただそれだけを祈る様に懇願した






華燭の城 -107 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 105

「・・・・シュリ様」

その時、直接 頭の中に響いたのかと思う程の近くで
いきなり名を呼ばれ、
シュリはビクンと身を震わせて直立した

一気に血の気が引いて行く
ギシギシと音がしそうな体をぎこちなく動かし、
シュリはやっとの思いで振り返った




「・・・こちらに、お茶を置いておきます」

バルコニーの中央にあるテーブルには既に2つのお茶が置かれ
オーバストが、体が触れ合おうかと言う程の真後ろに 無表情で立っている




シュリは思わず息を飲んだ




「あのなー・・・・・ 驚かさないでくれ
 気配消して近付くって、お前は密者かよ
 心臓止まるだろーーー 死んだらどうするんだ」


同時に振り向き、冗談半分に笑って見せるナギにとは正反対に
シュリの顔には明らかな狼狽が浮かんでいた


オーバストはシュリのその表情をチラと伺い見ると
ほんの数秒、シュリの目を見つめた

鋭く細められた目は言外に物語る
”黙っていろ” と・・・

それは神国からここへ連れて来られた日、車の中で見たあの目だ


そしてオーバストは二人に無言で頭を下げ
室内へと戻って行った





今、ほんのわずかでも自分の脳裏に浮かんだ事・・・・

口にはしなかったが、それが見透かされたのではないかと
シュリの心臓はドクドクと体中で荒鳴り、鼓動を早くする




「な?? あの反応だもんなぁ・・・
 やっぱ、何かアヤシイよなぁ・・・」

ナギは挑発成功と言わんばかりに 笑いながらテーブルに向かうと
ティーカップを手に取った




その姿を見ながら、シュリは自分の平衡感覚が
おかしくなっていく事に気が付いた

鼓動が早くなり、激しく上下する胸に合わせ、呼吸が苦しくなる

小さく煌めいていた星が 徐々にぼんやりとその輪郭をぼかしていく
霞んで行くその星が頭上にあるのかどうかさえ・・・・





「折角 淹れてくれたんだ、シュリも飲もうぜ」

ナギが振り返ったその視線の先で、シュリの体がガクンと崩れた



片腕は倒れまいとバルコニーの手すりを掴んではいるが、
両膝は既に冷たい石の床に着いている






「・・・・!! ・・・おいっ!!」

ナギが慌てて走り寄り シュリを抱き起こす



「どうした!? おい! シュリっ!!!」

ナギがシュリの額に浮かぶ大粒の汗に気が付くとほぼ同時
そのシュリの体は 走り寄ったラウの両腕に奪われていた




「・・・・シュリ! ・・・・・シュリ!!」

呼びながら額に手を当てる




シュリの手が胸の上で強く握り締められている
傷が痛むのか、呼吸が苦しいのか・・・


「水を!」

ナギと並んで膝を付くヴィルの後ろ、 
駆け寄って来たオーバストにラウが叫んだ




「・・・シュリ!・・・・・ おい!大丈夫か!?」

ナギとヴィルも覗き込む様にして必死に呼び掛ける




その二人の姿に、ラウは数秒で冷静さを取り戻していた

「・・・大丈夫です
 元々風邪気味でしたから、
 今日は楽し過ぎて また熱が上がったのでしょう」

ラウは静かに答えた



「・・・・そういえば、そう言ってたが・・・・
 こんなにも苦しそうだぞ・・・・・ 本当に大丈夫か??
 ああそうだ!・・・・・ヴィル! 
 薬を持っていたろ? あれを部屋から持って来い!」

「はい!」

立ち上がるヴィルをラウが片手で静止した




「ありがとうございます
 でも 薬なら私が持っていますのでご心配なさらず」

そう言って自分の上着の内ポケットから白い包みを取り出し
中の錠剤と、オーバストの差し出す水とを一緒にシュリの口元へ運んだ



「シュリ・・・薬です・・・さぁ飲んで・・」

「・・・・ん・・っ・・・」




ラウの腕の中で目を閉じたままのシュリが小さく口を開け、
薬を含むとコクリと喉が動く


ラウはグラスをオーバストに返すと、シュリの額の汗を拭い
そのまま・・・ シュリを抱いたまま立ち上がった



「あ・・・ 私が部屋までお連れしよう」

ヴィルが慌てて両手を差し出したが

「大丈夫です、シュリ様は私が」

そう言って、抱いたシュリの負担にならない程度まで
ゆっくりと腰を折る




「・・・・城に従医はいないのか? 診せた方がいいんじゃないか?
 かなり悪そうだぞ・・・」

ナギが心配そうにシュリの顔を覗き込む



「私は薬師もしておりますので、大丈夫です」

「薬師? そうなのか・・・・?
 いや・・・  本当に大丈夫なら良いんだが・・・・・」

「はい、シュリ様の事は御心配なく・・・
 殿下、申し訳けありませんが今夜はこれで・・・・」

もう一度頭を下げる



「ああ・・・・そうだな・・・・
 じゃあ・・・・ ラウム、シュリを頼んだぞ
 今夜はゆっくり眠らせてやってくれ
 ・・・・長時間、悪かったなシュリ・・・・・・・」



ナギはそう言うと、シュリの頬に軽く指で触れた





4人2組はそれぞれ自分たちの居室へと戻って行く
そしてオーバストはそのまま、ガルシアの部屋へと足早に向かった






華燭の城 - 106 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 104

「ん? どうした? 暑いのか? 
 ・・・・・ああ、ずっと暖炉の前だしな」

そんなシュリに気が付いたのか
ナギは座ったまま右に視線を動かし、外に出られるバルコニーを見つけると
「ちょっと向こうで風に当たるか?」 そう言って立ち上がった





「あ・・・・はい」

窓に向かって歩き始めるナギに従い、シュリも立ち上がる

「・・・・・・っ・・・!」

後に続こうとした所で、それまでじっと耐えていた体の痛みに
思わず声を漏らしそうになった






だが気丈に耐えたその声は 唇から零れる前に飲み込まれ、
前を行くナギには届いていない 

入口に立つラウ達からも シュリの背中しか見えていないはずで
その苦痛の表情は誰にも知られることは無かった



ゆっくりと一歩、足を踏み出し、
まだ歩ける事を確認してから、シュリがバルコニーへと向かうと
ナギは手すりに両腕を乗せて空を見上げていた




「なぁ、そろそろ晴れるんじゃないか?」

追いついたシュリが横に立つ気配に、
視線は夜空のままで、ナギが話しかけた


そう言われて 並んで一緒に見上げた空は
重い雲が覆っているのか、いつもと同じ黒とグレーの世界・・・・
が、珍しく その雲には切れ間があった



その隙間から チラチラと瞬く星が見えている

この国に来て初めて見た、と言っていい程の久しぶりの星だった




「本当に・・・星が見えますね・・・」

「・・な!
 ガルシアは、意地悪く ”当分晴れないぞ!” なんて言ってたけどさ
 これなら そろそろ馬駆けも出来るんじゃないか?
 今度、晴れたら絶対に行こうな!」

「・・・ええ、是非」

「おう!約束な!」

そのシュリの答えに、ナギが嬉しそうに頷き
隣に立つシュリの右手・・・
手すりを掴んで痛みに堪える右手を、軽くポンポンと叩きながら
満面の笑みを見せた





が、直後に
「なぁ、1つ聞いていいか?」
その声が一段、小さくなる




空を見上げていた首を、そのままぐるりと後ろの・・・
室内のあの水場に向け、
それに気が付いたオーバストと、視線を合わせると
悪戯っぽくニヤリと笑った

拳に握った右手の親指を一本立て、
クイクイと、わざとオーバストを指さすというアクションまで付けて
眉根を寄せた側近を、いや・・・・ その背後にいるガルシアを煽る(あおる)ように
じっと男を見据える

そして、その視線を外さないまま、
これからいかにも秘密の話をしますよ。と言わんばかりに
シュリの耳元にそっと顔を寄せた






「・・・なぁ・・・・・ ガルシアって、どんなやつ?」

「・・・ぇっ・・・」

耳元で囁かれたそのいきなりの言葉にシュリは戸惑った
思わず聞き返す様に、ナギに顔を向ける





「ガルシアには、お前の人柄を見に来たって言ったけどな
 本当はガルシアの方を見に来た様なものなんだ
 あの ”神国のシュリ” がその地位も務めも全て手放してまで
 助けようと思った国の王、ガルシア・・・・
 それが、どれほどの人物なのかと興味が湧いてさ、それで見に来た」


「・・・・」


「・・・いや、お前にはお前の考えがあるんだろけど
 申し訳ないが・・・
 俺にはアイツがそれほどの人間には見えないんだ
 確かにうちの親父が一目置くぐらいだ
 闘将と言われるだけの 度量と腕と頭脳もあると思う・・・
 ああ、おまけに蓄財の能力もな
 でもなぁ・・・
 なんか俺は今回・・・ 初めて見た時から・・・
 ・・・ んー・・・・ なんだろうなぁ・・・・
 あのまま素直に 書状を渡す気には なれなかったんだよ
 だから、まぁ半分思いつきだが暫くここに居座ってやろうかと・・・」




ナギはそこまで言って、困った様に俯く(うつむく)シュリに気が付いた




「・・・・あ・・ 気を悪くしないでくれ
 今はもう お前の継父だったな、悪い」


「いえ・・・」



この人はもう何かを感じ取っている・・・・

あの暗い石牢が脳裏に浮かぶ
ガルシアの醜行を思い出す
激痛と屈辱が体内を巡る


この人に全てを話すことが出来たら・・・
もっと早くに出会えていたら・・・
そう思う気持ちが 心の隅で頭を持ち上げ・・・・


そして 弟の優しい笑顔が浮かぶ・・・・


そこまできて、シュリは今にも全て話してしまいそうになる真実を
グッと拳に力を入れて握り潰した


だめだ・・・・
ジーナを救えるのは自分だけなのだ・・・・






華燭の城 - 105 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 103

ナギが話す”外”の話は 
この閉ざされた城内しか居場所のないシュリにとって
とても楽しいものだった


それはナギも同様だった様で、
現在の国外情勢から他愛のない天気の話、
懐かしい学校の話や、自分が仕組んだちょっとした悪戯の話

それが最後には 大失敗に終わるという面白顛末など
時が過ぎるのも忘れ、楽しそうに次々と話題を繰り出しては笑いを誘った




途中で悪ノリし過ぎ、扉横に控えるヴィルに
「おい、ナギ! それは皇太子として どうかと思うぞ?」
と冗談半分に怒られる場面まであった


これにはさすがのラウも苦笑いを堪え(こらえ)きれず、
複雑な表情で苦し気に目を伏せるラウを見て、シュリもまた笑顔になった



ラウと一緒に笑いながら
「・・・・呼び捨てに?」

ヴィルがナギの事を名前だけで呼ぶのを聞いたシュリの口から
ふと質問が零れる




ラウも 最近ようやく自分の事を ”シュリ” と抵抗なく呼んでくれる
それがとても嬉しかった

だからこそ、その本当に何気なく、自然体で発せられたヴィルの一言が
心に触れたのかもしれない





「ああー、ヴィルの家は代々うちの近衛を務める家柄なんだ
 だからヴィルは産まれた時から いずれ産まれる皇太子・・・
 ・・ああ・・俺の事な、
 俺の近衛隊長になる事は決まっていたし
 実際、俺が産まれてー、コイツは7歳で近衛隊長になったんだ
 それからは、ずっーーーと、一緒

 あー、
 ちなみにー・・・俺は 個人的には ”俺” って言うけど気にするな
 公の場ではちゃんと ”私” って言うからさ
 まぁこれは 親父がうるさいから 仕方なく、なんだけど

 ・・・・で、ヴィルのヤツ
 俺が学校の寄宿舎に居る時も、実は近所に家を借りて住んでるんだぞ?
 ・・・どう思う??
 そこまでしなくていいって言ってるのに
 俺と離れたくないんだってさ」


そう言って扉横のヴィルに視線を送りクスクスと微笑んだ 





「いや!それは違うぞ、ナギ!
 あれはだな・・・
 お前一人にしておくと、何をやらかすか心配だからであって・・・」


「あー・・はいはい!」



必死に反論するヴィルを笑いながら片手で制し、ナギが向き直る




「・・・そういう訳で俺達は、産まれた時からの幼馴染でもあり親友、
 それにヴィルとは乳母兄弟だから、
 そういう意味でいえば本当に兄弟と言っても間違いじゃない

 多少、口が悪いのと喧嘩早いのには困ったものだが・・・
 ヴィルは俺が一番信頼できる男、だから呼び捨てでいいんだ」


「まぁ・・・そういう事です
 同じ乳で育ったにしては、ナギの身長は今一つ・・・・だったけどな」



急に褒められて照れたのか、
ヴィルが話題を変えようと、右手を自分の胸辺りで水平に動かした


「そんな小さくはないだろ!!
 お前がデカすぎなんだよ!
 先に乳母の乳を飲んだお前が 栄養全部持っていったんだろうが」


ナギも笑いながらそれに応戦する姿勢で、体を預けていたソファーから身を起こし、
少しでも大きくみせようと背筋を伸ばす



ナギの言う通り、4人並べばヴィルは シュリもラウも抜いて
断トツで一番の大男だ

続いてラウ、シュリの順でやはりナギは一番低い事となる

それでもこの時代の一般成人男性の平均よりは上で
結局、ヴィルが大きすぎるのだ! と言う事でその場は丸く収まった




ナギはその結果に満足したのか ふぅ。と大きく息をつき
再びソファーにゆったりと身を委ねると
「俺達はいつもこの調子」
と軽く肩をすくめ、
隣の・・ 最初から全く姿勢を崩していないシュリに笑い掛けた




「なぁ、そんなに力んで(りきんで)ると疲れるぞ?
 俺に対して緊張なんてしなくていいし
 先輩ー・・・ んーー・・できれば友人と思ってくれ」


「・・・いえ、それは・・・」

シュリが困った様に目を伏せる
いくら何でも年上の、帝国皇太子を友人とは恐れ多い




それに、皆が笑いあう中でも 一度も表情を緩める事もなく
眼光鋭くこちらをじっと見ているオーバストが
自分達の見張り役なのは明白だ

一言たりとも聞き逃すまいと 耳をそばだてているのであろう 



ガルシアは今も部屋で一人、ここで話されている内容に気を揉みながら
この男の報告を待っているに違いない



そんな見張り役に、あまり仲良さ気な様子を見せてしまっては
後でガルシアに何と報告されるか判ったものではない



ナギには申し訳ないが、この場は適度に距離を置き
早々に切り上げるのが一番だとシュリは思っていた





そして この会を終わらせたい理由はもう1つ・・・
夕食前に飲んだ薬がもう切れかけていた
ラウは、深夜までは大丈夫だろうと言っていたが、実際は違う
思っている時間の半分が、今のシュリには限界だった

ナギに対して返事に詰まったシュリの額には
苦痛の汗が浮かび始めていた・・・






華燭の城 - 104 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 102

ガルシアに指定された部屋は広間ではなく
文字通り部屋、サロンだった



「どの部屋もすごいな」

ヴィルが先導し押し開いた扉から一歩入るなり、
ナギは素直に驚きの声をあげた



ヴィルも声にこそ出さないが 目を見張り一瞬、足が止まった
だがそれも刹那、すぐに平常心を取り戻し、スッと入口横に避ける

近衛であっても単なる臣下
使われる身の者が、主と同じ位置に立つ事は
その主の命令無くしては許されない
そこに第三者の目があれば、尚更だ





そのサロンは、千人以上はゆうに集える今までの広間とは違い、
かなり小ぶりだったが、家具・調度品の豪華さは負けてはいない
いや、小さいからこそ その輝きは凝縮され
圧倒的な威圧を伴って見る者の目を奪った


低めの位置に下げられたシャンデリア
6本の蝋燭が一度に立てられるガラス細工も見事な枝付きの燭台が
等間隔に5基並べられた巨大なテーブル


そのテーブルを半円に囲む10人分の大きなソファーは
部屋の左壁の大きな暖炉の方を向き、
ソファーの後ろ・・右壁は一面の飾り棚
入って正面はそのままバルコニーに出られる いわゆる掃き出しになっている



入口横はカウンター式になった水場が設けられていて
そこにはオーバストが、煌び(きらび)やかな食器の飾り棚を背にして
既に立っていた








部屋をグルリと見渡し終えたナギは 複雑な溜息を洩らした


自分の城もかなりのものだ、と正直思う
だがそれは多くの国を従える帝国としての城だ
それなりの威厳も格式もあって当然の事


だが、その帝国に属する
ただの一国でしかないこの城がこれ程とは・・・・

いったいこの国の財政はどうなってるんだ? 
ナギが思うのも当然だった





そのまま、半分呆れた様に ドサッと暖炉前のソファーに腰を下ろす

腰が沈み、油断すると両足が床に着かなくなるほど大きく深いソファーの背に
ゆったりと体を預けた所で ラウを伴ってシュリが現れた



入ってすぐ、扉の左手に立つヴィルに二人は軽く会釈をし
ラウはそのまま扉を挟む様にして右側に立った

ヴィルも軽く頭を下げながら その唇が「どうも」と動く







「遅れて申し訳ありません」

「いや、俺も今 来たところだ
 急に呼んだのはこっちだし 気にしないでいい、座って」

入口で頭を下げるシュリにナギが微笑んだ





シュリが部屋の中へと進み 
ナギとほぼ対面に当たる一番入口に近い下座に寄ると
「シュリ、ここだ」
ナギは、自分の隣のソファーをポンポンと叩いた


一瞬戸惑ったが シュリは素直にナギの隣へ移動した

隣と言っても、
1点ずつの大きな1人掛けソファーを並べて10人分

座の左右には、グラスならば2、3個は楽に置けそうな
木製の立派なひじ掛けがあり
体が密着して窮屈などと言うことはない



それでもナギとは1m程の距離しかなく、そこで話しをするには
常に体を横向きか斜めにして対さなければならない位置だった


しかもそのソファーに 包み込まれる様に身を置くナギを見れば
この座は相当に柔らかく沈み込む程の物らしい


いくらナギが気さくで友好的であったとしても
自分までもが 殿下の前で、同じ様に足を投げ出し、
寛いだ(くつろいだ)姿勢で居る訳にはいかない


シュリは 一礼すると、深く沈み込んでしまわない様に
ソファーに浅く腰を下ろし、腹筋に力を入れて背筋を伸ばす


止血の為に包帯を強く巻いた体が悲鳴を上げたが
それでもシュリは、ナギの方へ体を向けたまま 美しく微笑んで見せた






そこへオーバストが紅茶を運び、静かに一礼する

ナギもそれに頷き、オーバストが無言のままテーブルに紅茶を並べ
元の壁際へ戻って直立するまで
ナギは面白そうに無言のまま、じっと見つめていた


そしてシュリに視線を戻し、目が合うとクスリと笑った


「本当にお前は大事にされているというか、過保護というか・・・・
 2人きりにはしてもらえそうにないな
 しかも給仕まで 厳つい(いかつい)男って・・・
 ボディーガードのつもりか?
 ガルシアは 俺がお前を取って食うとでも思っているのかな」



屈強な体躯の側近が身を屈め、
小さく繊細な食器を扱うという不似合いさに
軽く肩をすくめ冗談の様に言ってから、一口、紅茶を口に運び

「なぁ 学校の物理学の教授、覚えてるか?」

ナギは楽しそうに学校の話を始めた






華燭の城 - 103 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 101

ナギが来てからというもの、宴は一時中断の形をとっていた


宴を開けば身分が上であるナギが主役になるのは当然で
自分が下に・・・ 引き立てる側に回る
ガルシアには それが耐えられなかった


そして何よりも、ナギ本人が
 ”宴が、自分の為の祝宴ならば、そんな気遣いは無用” と言ったからだ

その一言が、ガルシアの神経を余計に逆撫でた

別にナギの為などと微塵も思ってはいない
だからこそ余計に腹が立った



”誰がお前の様な生意気な小僧の為に
 私財で宴を開いてやらねばならんのだ!” そう言い返したかった

言えるものならば・・・・




結果的にお互いの利害は一致し、宴は中断になったが
今夜もまたナギが 個人的にシュリと話がしたいと申し入れて来たことで
ガルシアの腹の底の怒りは益々その量を増した


こうも昼夜問わずシュリを連れ出されたのでは
毎回 自分が同席という訳にはいかない


だが二人きりにも出来ない


結果、ガルシアは サロンと呼ばれる
この城でも比較的小さめの茶会用の部屋を指定し
”給仕”の名目であのオーバストを張り付かせた


食事程ではないにしても、相手は帝国皇太子殿下
飲み物ぐらい出すのは当たり前だろう・・・ という言い訳の上に立った
苦肉の策だった


部屋が小さければ 必然的にオーバストとシュリの距離は縮まる
秘密の話は出来ないはずだ
それでなんとか出来るか・・・ とガルシアは思うしかなかった




しかし、どうにもならないのは自分自身だった

ナギがシュリを呼べば、
当たり前の事だが あの石牢へシュリを呼ぶ事が出来ない
同席しているラウも居ない


ガルシアは、今日もただただ苛立っていた









夕刻、いつもの様に自室でラウと二人 食事を済ませ
ソファーに座っている時に、扉がノックされた


呼ぶ声はオーバストだ


応対に出たラウは、オーバストと何事か会話をしながら
数度頷いた後、扉を閉め シュリに向き直った




「・・・どうした? ・・・・・ガルシア・・・ ・・か?」

この時間に側近が何かを伝えに来るのはあの部屋への呼び出し・・・
シュリの声が小さくなる




「いいえ、ナギ殿下がシュリと話しをしたいと・・・
 1時間後にサロンでと」

「ガルシアも一緒か?」

「陛下は来られず、オーバストさんだけの様です」

「そうか、わかった」


ホッとした表情を見せながらも、
ラウとの穏やかな時間が削られた事に 寂しさは隠せなかった




「シュリ、そんな顔をしてはダメですよ
 私もご一緒しますし、いつもお側に居ります」

その寂しさを読み取ってか、ラウがシュリに微笑みかける

「・・・ そうだな・・・」 
シュリも小さく頷いた




「さぁ、あと1時間しかありません、着替えて準備をしなければ」

傷に障らぬ様にと言うラウの配慮もあって
普段は比較的 締め付けの少ないシャツを着ていたシュリだが
殿下の誘いとあってはこのままと言う訳にはいかない

ラウは敢えて元気な声を出して、シュリの手を取り
ベッドへと誘導し、座らせた




「着替えの前に手当をしておきましょう
 薬は・・・ 夕食の前でしたから
 日付が変わるぐらいまでは大丈夫でしょう」

ラウは懐中時計を見ながらそう言うと
座らせたシュリのシャツのボタンを外し、包帯を解く
体中の斬られ灼かれた深い傷はまだ塞がってはいない




「用心の為に、少し強めに巻いておきますね」

あの殿下の事だ
サロンで話し・・・ と言いながら
何か突拍子もない事を言い始めたとしても おかしくはない
しかも こちらは、その誘いを断われない


こんな時間から乗馬などと言う事はあり得ないが 
ダンスでも! ぐらいなら十分に考えられるだけに
丁寧に消毒をし、再び包帯を巻き始めたラウはそう言った

万が一にでも途中でシャツに血が滲む・・・
そんな事があっては困るのだ


シュリは目の前で跪くラウの肩に手を置き
クッと唇を噛んでその痛みに耐えていた




「・・・これでいかがですか? お辛くはありませんか?」

暫くして 目の前に跪いたままラウが顔を上げると
大丈夫 と、シュリは小さく頷いた






華燭の城 - 102 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 100

「ナギ、どうしてああも好戦的に出るんだ?」

部屋に戻ったナギを ヴィルが窘めて(たしなめて)いた
自分の事は棚に上げて・・・




「よく言うぞ、お前だって今にも暴れ出しそうだったろ?」


「私のはちゃんと理由がある
 お前に対するあの非礼な態度、嫌みな言動・・・全てが気に入らん
 だがナギのはどうも・・・・・
 なんというか、ただ喧嘩を吹っ掛けて楽しんでいるとしか見えないんだが?
 ガルシアをわざと怒らせたいのか?」


「別に楽しんではいないし、吹っ掛けて来たのはガルシアだ
 だが、なんだろうなぁ・・
 なんとなく、あのガルシアを見ていると苛々するんだ
 礼を欠くのは別にいい
 こっちが年下だし、あれでも一国の王だ
 子供程、年の違う小僧に頭を下げるのが嫌な事ぐらい判る
 だがなぁ・・・
 神国を捨ててまで、よくあの王の養子になろうなんて考えたよ、シュリは」




寝転がっていたベッドから ナギはガバッと身を起こした




「それにな、ヴィル・・・ シュリの手、見たか?
 指先が・・・ 爪が割れて傷だらけだった・・・ なんであんな・・・」
 
「爪・・・?」

「ああ・・・・やはり何か変だ」

「お前がそう思うなら、何でも言ってくれ
 調べてくるぞ?」

「それが・・・ 何か変だとは感じるが、
 肝心の ”何が” と言われると、まるっきり見当もつかないんだ・・・
 やはり、もう少しシュリと話をしないとなぁ・・・・」











「・・・シュリ・・・ 傷は痛みませんか?」

「大丈夫・・・・・ っん ・・・・ラウ・・・っ・・・」



暖炉の薪がパチパチと爆ぜる音が鮮明に聞こえる静かな部屋で
二人の囁き合う声がわずかに響く


傷に障らぬ様に抱き締められ、うつ伏せにされたシュリはラウと体を繋げ
その喜びを全身に感じていた


ガルシアとは違う静かで繊細な行為・・・
愛しい者に抱かれるという安らぎ・・・


ラウは後ろから覆い被さる様にして
シュリの、数少ない無傷の場所・・・ シュリのその手に自分の手を重ね
指を絡ませていた




幾度となく繰り返されるラウの挿出に シュリのその細い指にも力が入る



「・・んっ・・・・・ぁっ・・・ラウ・・・・っ!」

「まだです・・・シュリ・・・ もう少し・・・・」

ラウが耳元でそう囁き、わずかに体を引く



「・・・ぁっ・・・・」

今にも溢れ落ちそうだった快感を奪われ、
ふいに遠のく絶頂感にシュリが詰めていた息を吐くと、
その体から力が抜ける




「・・・また・・・・っ・・・  ラ・・ウ・・・・もう無理・・・・ いかせて・・・・」

「もう一度です・・・・」


泣き出しそうな切ない懇願の声に
ラウは片手でグッとシュリの腰を持ち上げ、四つん這いにさせる


「・・・っっぁ・・・!」

挿入されたまま体位を変えられ、また違う部位へ移ったラウの刺激に
シュリが再び小さな声をあげ、腕の中で身を捩った


ラウはそんなシュリへ 愛おしそうに手を伸ばし
その頬に触れ、自分の方へと振り返らせる
喘ぐ唇をそっと指でなぞり、そのまま顔を寄せると 軽く唇が触れた


「シュリ・・・ そんなに力を入れないで・・・・
 唇もです・・・・ もっと力を抜いて・・・ ほら、口を開けて」

「・・でも・・ん・・・っ・・・」


戸惑いながらも僅かに開かれた口を塞ぐ様にして ラウは舌を絡ませた




「・・っ・・んっ・・・ぁっ・・」

ラウの指で顎を支えられ逃げ場の無くなったシュリは
柔らかな舌で口内を弄(まさぐ)られ、甘い声を漏らす

ラウはその声にフッと微笑み もう一度自身を最奥へと送り込んだ



「んっ・・っ! ぁあっっ・・・」

再びシュリの体が大きくのけ反った


ラウは片腕でシュリを抱き締めると そのまま手を前に回す
直にシュリに触れ、そっと包み込む様に握ると
その先端を指でなぞり、またゆっくりと促し始める


深く挿出される後ろと、
優しい手で誘われる自身の快感にシュリは思わず声をあげた
が、その口さえもラウの唇で塞がれている


「・・んっ・・・ぁっ・・・ んっっ・・・・!!!」

シュリの小さな喘ぎが幾度が続いたあと
ふいに唇が開放された



「・・・シュリ・・・・一緒に・・・」

耳に触れんばかりの所で囁かれたラウの声
そのまま、耳たぶを軽く噛まれると、
ようやく許可を得た事に安堵し、シュリが小さく頷く

ラウの動きもそれまでの静から動へ激しさを増し
シュリの体を内部から圧し上げた



耳元で聞こえるラウの静かな声と息遣い
湧き上がる快感に、シュリの体は敏感に反応し
絶頂へと一気に駆け上る




「・・ぁぁ・・・ラウ・・・・・んっっっ・・・
 ・・・もう・・・だめ・・・ ・・ んっっぁぁっ・・・・!!!!」

「・・・シュリ・・・っ・・・」


四つん這いのまま、大きく天を仰ぐ様にして達し
そのまま崩れ落ちそうになるシュリの体を ラウはしっかりと抱き留めた


シュリもその腕に抱かれたまま、トクトクと体内に注がれるラウの感覚を
幸福の中で感じ取っていた


ラウの脈動が止まると シュリは抱かれたまま振り返る

「ラウ・・」
呼ぶ唇をラウが微笑みながらもう一度塞いだ

「ん・・・」


安心し静かに目を閉じたシュリをラウはそっとベッドへと横たえた






華燭の城 -101 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 99

「ああ、そうだ!
 見たいと言えば シュリ、私がここに居る間に一緒に乗馬をしないか?
 お前の馬を駆る姿を もう一度見たいと思っていたんだ」

「・・・・乗馬・・ ですか?」



ナギのどんな話題にも よどみなく会話を合わせていたシュリだったが
さすがにこれは 自分の一存で返事をする訳にはいかなかった
城から出る事を許されていないのだ

まして食事にまで同席するガルシアが許すかどうか・・・



伺う様にガルシアへ視線を向ける


「・・・良いではないか
 ”公務” で疲れている様だし
 シュリも良い気晴らしになるだろう」


「・・・あ・・・  ・・・ありがとうございます」

驚く程あっさりと許可が出たのには、シュリも驚きを隠せなかった





「だが、まだ体調も優れぬのだろう?
 慣れぬ城外は何かと危険だ
 護衛にワシの側近を何人か連れて行くがいい」

ガルシアの後ろに立つオーバストが
”承知” の意を込めて小さく頭を下げる




「お心遣いありがとうございます
 ではその様に・・・・」

シュリが言い掛けるのを ナギの掌(てのひら)が軽く上がり、
ガルシアの腹の内を制した




「ああ、それなら心配は無用
 護衛はヴィル1人居れば十分だ
 1人でそこらの兵、10人、20人分ぐらいは 優に働く
 それに大勢でぞろぞろと連れ立つのは余計に目立つし
 そういうのはあまり好きじゃないんだ、我ら3人でいい」


「・・・しかしそれでは・・・・・ 殿下・・・・!」

ガルシアが悔しそうに唇を歪める




形勢不利となったガルシアを助太刀する様に

「では殿下、ラウムだけでも同行させて頂けませんか?
 私もまだこの国に不慣れ
 ラウムに道案内をさせましょう」

シュリが申し出た



「道案内かー・・・ 確かにそれは必要かもな
 しかし・・・・
 こう言っては申し訳ないが・・・ 使用人に乗馬が出来るのか?
 それに見た所、脚が悪そうだしな・・・・」

ナギがシュリの後ろ、杖を持って控えるラウに目を向ける



「・・・・ラウ? どうだ?」

シュリも振り返って その脚を気遣った




「上手くはございませんが、私で宜しければお供致します」

その答えにシュリの顔がパッと明るくなった




「陛下もよろしいですか?」

その笑顔を一瞬で元に戻し、
冷静な顔で正面へ向き直ったシュリが ガルシアに尋ねる



「ああ、・・・・ ラウムも一緒ならばいいだろう
 しかし、やはりここはワシの側近を3名
 皆の邪魔にならぬ様、遠巻きにつけさせる・・・ それが条件だ
 ラウム、くれぐれも、、、 シュリの事、頼んだぞ」



ガルシアの ”くれぐれも” が強調されていたのは
暗に秘密は死守しろという意味だろう


ガルシアとしては、自分の居ない所で交わされる二人の会話の全てを
一言も漏らさず聞きたい所だ
だが、今はこの条件で許可を出すしかなかった

側近3人でも居ないよりはマシだ




「承知致しました」

頭を下げるラウに シュリはもう一度振り返り嬉しそうに微笑んだ




「遠巻きに3名か・・・
 邪魔にならないなら、まぁいいか・・・・」

ナギもそれで同意する


 


「しかしーー・・・」

ガルシアが、幾杯目かもわからなくなったワインに手を伸ばす



「今は雨の時期、乗馬りが出来る程に晴れるのは、いつでしょうなぁ・・・
 残念ながら、無理かもしれませんなぁ」

あくまでも独り言を装って、
残念至極と言う口調で、ガルシアがナギの方をチラと見る
あっさりと許可を出した思惑は それもあっての事の様だった

現にここ数日は毎日、雨ばかりだ



「ああ、それなら心配に及ばない
 学校も長期の休みを取ったし
 皇太子と言っても、私はシュリ程 忙しくない
 丁度いい機会だから、ここで暫く羽を伸ばさせてもらうよ
 そのうちに晴れる日もあるだろう」

ナギは事も無げに笑みを浮かべ ガルシアの独り言をサラリとかわした


尽く(ことごとく)翻え(ひるがえ)される自分の意見・・・
ガルシアの表情がハッキリと変わり始めていた





「しかし殿下・・・
 学校が同じと言うなら、既に殿下はシュリの事を御存知でしょうに・・・
 現に昨夜も 親し気なご様子
 それなのに今更、
 シュリの人柄を見てから書を渡すかどうかを決める などとは・・・
 いったいどういう了見なのか・・・ 理解できませんな」


厭味(いやみ)たっぷりなガルシアの言葉に 
そろそろヴィルの我慢が限界に達し様としていた


だが背中で感じるヴィルの怒気を ナギはフッと笑って制した



「だから、ここで羽を伸ばしたいと言っているだろう?
 聞こえなかったか?
 国では立場上、なかなか遊べなくてな
 人柄を見ると言ったのは、あれは方便、皆への体裁だ
 ああ言えばゆっくり遊べる」



クスクスと笑う様なナギの返事に
 
「・・・クッ・・・・・ ならば好きにされるがよい!」

ガルシアは唇を噛み、その後 一度も口を開く事はなかった






華燭の城 - 100 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 98

その昼、ナギがガルシアの側近に案内された広間は
よくある晩餐用の細長いテーブルではなかった


広間の中央、巨大なシャンデリアの下に
10人は優に座れるのではないかという大きな円卓があり
そこに、贅沢にもたった3席だけが準備されている

その1つの席の横には、すでにシュリが立ったまま待っていた

側には世話役と言っていた ラウムと名乗った黒髪の男も一緒だ





ナギが部屋に入るとほぼ同時・・・
いや、わずかに遅れて 広間の奥の扉が開き
ガルシアも数人の側近を連れて入ってくる



ナギはこの芸の細かさに思わず苦笑いをこぼしていた
だがそれを笑って済ませられないのは
ナギの横に立つ近衛のヴィルだった


「円卓とはなんと無礼な・・・
 しかも帝国皇太子より後に入ってくるとは・・・・・
 それに あの王を呼んだ覚えはないぞ」





円卓とは文字通り円形のテーブル
通常の細長いテーブルならば 必ず上座・下座というものが出来る
そのために、必然と身分の上下で座る位置が決まる

だが、円卓にはこれがない
円卓を用いるのは 全ての者が対等 という意思の現れだ



入室も、通常ならば もてなす側が先に入り
ゲスト・来賓を待つのが通常で、客を待たせるなど考えられない事だった

わざわざ円卓の広間を指定し、
わずかでもナギの後から入室する事で、
自らの自尊心と地位を堅持しようとするガルシアの滑稽な行動に
ナギは呆れたのだった





「まぁいいじゃないか、ヴィル
 一緒に食事したいなら歓迎しよう
 ・・・・昨日、俺に玉座に座られたのが余程 気に入らなかったのだろうし」

他の4人・・・ ガルシアにオーバスト、シュリとラウム
その4人と、扉横に控えた数人の側近達にも聞こえない様、
ナギはクスリと笑った





全員が揃ったところで

「ああ、最初に紹介しておく」  ナギが軽く後ろを振り向いた



「これは私の近衛隊長、ヴィルだ
 暫く一緒に世話になるから よろしく頼む」

紹介されたヴィルも頭を下げる


それに応えシュリも目礼を返すが、
その時、ガルシアは既に 聞こえないのか・・・・ そのフリなのか・・・
早々に席に着くとワインに手を伸ばしていた

ヴィルの顔が一段と険しくなる




円卓に着いたナギの後ろには
ガルシアの態度が気に食わないヴィルが不貞腐れた顔で立ち
シュリの後ろにはラウ
ガルシアの後ろにはオーバストという
八方睨みならぬ、三方睨み合いに似た様相で 
昼食会は粛々と始まった









「で、シュリは神国へは帰らないのか?
 神儀はどうするんだ? もう行わないのか?」

その異様な雰囲気に いきなり直球を投げ込んだのはナギだった




フォークでプツリと刺した鹿肉を口に運びながら
ガルシアの視線がシュリを目端で捉える



「私はもうこの国の人間ですから、後は弟に任せております」

その冷たいガルシアの視線を容易く受け流し
シュリが静かな微笑みで答えた




「ちょっと里帰り・・・ ぐらい構わないと思うがな?
 それに弟君って確か・・・・ 具合が良くないと聞いたが?」


弟の体の事まで知っているのか・・・と言わんばかりに
ガルシアの視線が 今度はナギの方へチラと向かうが、
そのまますぐに戻し、黙って食事を続ける



「はい、弟は体調を崩しております
 なので すぐには無理かも知れません・・・
 ですが、陛下が良い薬を探してくれましたので、今、治療を・・・
 この国の医師団を神国へ派遣して頂いている所なのです」


シュリの応えに 「ほう・・」 とナギは以外そうな表情を見せたが
それはほんの一瞬だった


「そうか、では私も弟君の全快を祈るよ」

「ありがとうございます」
 
「弟かー・・・ 私には兄弟がいないので、なんだか羨ましいな
 だが、一度 お前の舞う神儀を見たかったのに残念だ」

「神儀は弟が立派に受け継ぐと思います、その時は是非」

「ああ、そうしよう」





積極的には自分から話さないシュリ
何が気に入らないのか、
鋭い眼つきで黙々と食事を進めるだけのガルシア


見えないテーブルの下では、互いに剣を抜き
切っ先を突き付け合っているのではないかと思う程の
冷酷な空気が満ちた和やかな昼食会を、ナギは面白そうに見ていた






華燭の城 - 99 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 97

この小瓶の存在は、
ガルシアの体を疼かせるに十分な存在感を持っている
現に今も・・・
あれだけ咆哮した後でさえ自身のモノは熱を放ち続けているのだ


「ラウム・・・・ 
 お前の薬の才で、これと同じ物を作ってみろ」

そう言って瓶を指さした



一礼し、それを取り上げたラウは 蓋を開け
直接鼻を近づけるのではなく 
瓶の口から少し上を 掌(てのひら)でゆっくりと扇ぎ、
立ち昇る気を ほんわずかだけ嗅ぎ取った


そして、ガルシアと同じ様に その匂いに顔を顰め(しかめ)た
・・・あの日の石牢の匂いだ





「これは・・・」

「わかるか?西国の者が使う淫なる薬だそうだ」

「それはわかりますが、この匂いは・・・・」

「ああ、酷い匂いだ
 ワシが欲しいのは 中身は同じ効力でも、そんな匂いがせぬ物だ
 できるか?」

「・・・・・・ 時間は掛かるかもしれません
 いろいろと調合も試してみなければ・・・・」

ラウは一瞬だけ考える仕草を見せたが、すぐにそう返事をした





「そうか」

ガルシアは執務机の引き出しの中から ジャラと鍵の束を取り出すと
そこから1つの鍵を抜き取りテーブルの上にコトンと置いた


「薬品庫の鍵だ、自由にやってみろ」

「承知しました」

「言っておくが、
 持ち出した薬・薬草の類いは必ず倉庫番に伝えよ
 それから・・・・・
 出来た薬の人体実験は 一番にシュリにさせるからな
 くれぐれも、要らぬ事を考えるなよ」


一礼し、鍵を上着のポケットに入れるラウを見ながら
ガルシアはそう付け加える事を忘れはしなかった


 




そしてガルシアは ラウをその場に押し倒した


怒りと焦りの元凶は払拭された
残ったのは自身の燃えるような激しい欲
後はそれを満足させれば良いだけの事だった



ガルシアはラウの衣服を剥ぎ取る様に 荒々しく全裸にすると
四つん這いの姿勢から 両腕を背中に回させ後ろ手にして
その背中を押さえつけた

そのまま グイとしなやかな腰を持ち上げる

支える腕を取られたラウは 床に押し付けられた顔と両膝の3点で体を支え
されるがまま、床にうつ伏す



持ち上げた腰を掴み、ラウの露わになった後ろへ
ガルシアは熱く猛り立つ自身を 容赦なく突き込んだ


「・・・ンッ・・!」 

ラウは唇を噛んだまま、静かに目を閉じた







日が明け翌日
シュリはいつもの音で目を覚ました

ラウが朝食の準備をしている音だ

ラウが今日も側にいる、そして弟の治療は進んでいる
・・・もうそれだけで充分だった

ナギが来た事で 城内も数日は落ち着かないだろうが
そのナギが、いつシュリに声を掛けるかわからない状況では
ガルシアも 自分をあの石牢へ呼ぶことが出来ないはずだ


現に昨夜は何も無かった
凌辱を受けなかったのは幾日ぶりだったろうか・・・




「おはよう、ラウ」

「おはよう、シュリ・・・」

ベッドの側に来るとラウはそっとシュリに口づけた



「ご気分はいかがですか?」

そう言ってシュリの額に手を当てるのも、もう日課だった

「ああ、大丈夫」

これも同じ答えを返し もう一度、今度はシュリからラウへ口づける



ラウの首に両腕を回し、抱き付く様にして
互いに深く長く唇を求め合った後、
シュリは額を寄せ ラウの瞳を見つめ微笑んだ



「ラウ?  ・・・どうした? これ・・」

間近のラウの額に、
薄く赤い痣(あざ)の様な傷があるのに気が付き、そっと指で触れる


「ああ・・・・ 何でもありません
 昨日、ちょっとぶつけたのです」

恥ずかしそうに自分の額に手をやり
髪で傷を隠しながら、照れた笑みを浮かべる



「ラウでもそんな事があるのか?
 珍しいな・・・・」

「私も人間ですから」


笑いながらテーブルへ歩いて行くラウの後ろ姿を見ながら
シュリはそっとベッド横のテーブルに置かれた箱から
薬の包みを幾つか握り取りポケットへ忍ばせた




いつ頃からか、別々に朝食を摂るのは効率が悪い と言い出したシュリの発言から
二人は一緒に 同じテーブルで並んで食事を摂る

この日も、二人分のティーカップに紅茶を注ぎ終えてから
ラウが今日の予定を話し始めた



「本日の昼食は ナギ殿下がご一緒にと申されておりますが
 どうなされますか?
 まだお体が無理の様でしたらお断りも出来ます

 もしご一緒されるのなら・・・・
 陛下もご同席を望まれておりますが」



その言葉にシュリはフッと笑った
ナギと二人きりにするのが、そんなに心配なのかと思ったのだ


案外と臆病な・・・・


そんな事を考えながら 「ガルシアも一緒で構わない」
そう返事をした


ガルシアにも、今まで通り 自分に裏切りの意が無い事を
キチンと見せておかなければ・・・ そう思ったからだった






華燭の城 - 98 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 96

薄暗い使用人棟の廊下を抜け、自分の部屋へと戻ると
ラウは真っ直ぐに奥の薬品部屋向かい、その扉の鍵を開ける


机の上の蝋燭を灯し、ガラスの小瓶を取り上げた
すでに2割程減った琥珀色の液体
それを確認した後、いつものようにグラスに入れ、水で割り、
一口で、一気に飲み干した
そして再び部屋に鍵をかけ、夜の廊下へと足早に出て行った




使用人棟から執務棟へ大理石の廊下を抜け、
主棟の真紅の絨毯の上を歩き、向かった先はガルシアの居室

その扉の前でラウは立ち止まった

陛下は今夜の事で苛立ち、そして焦っている
このまま怒りを放置すれば、その捌け口に使われるのはシュリなのだ

一刻も早く シュリの意向を伝え、怒りを鎮めなければ
次に何を考え、何を言い出すか・・・・・ それが恐ろしかった






宴から戻ったガルシアはオーバストも追い返し、一人 荒れていた
勿論、やっと届いた書状を素直に渡さないナギに対してだ


「くそっ!小僧めが!
 さっさと渡して帰ればよいものを!!!」


誰も居ない自室で一人、酒を煽りながら怒鳴っていた
怒りのせいか、酒のせいか、体が酷く熱くなっている

このどうしようもない熱を放出しなければ
内側から灼け崩れてしまいそうだった



いつもなら すぐにでもシュリを呼び出し、石牢に吊るし
この有り余る熱を鞭に代えて打ち据えている

だが 「また声を掛ける」 等とナギに言われてしまっては
それさえも儘ならない



あの小僧さえ大人しく帰っていれば、
今夜は最高の夜になるはずだったのだ
あの小僧さえ!

思考の最後には そこに巡り戻って、益々怒りの炎は高くなる





「くそがぁっっ!!」


一人叫び、振り返ったその目に 棚の端に置かれた瓶が映った
それはあの小男が ガルシアに渡した薄紅の甘い匂いの液体


その瞬間、灼熱の針で体中を刺され、
縛られたまま痛みに体を捩り 叫んでいたシュリを思い出した

ゾクリと脳天から背中まで痺れる様な快感が走り
それは自身の下半身へ到達し大きく反応する


シュリの あの痛みに苦しむ叫びが聞きたかった
血を流し、苦痛に耐える美しい顔が見たいと思った

ゾクゾクと体中が喜びに震える程のシュリの体内・・・
柔らかく、熱く狭いそこへ、この猛る自身を無理矢理に捻じ込み
滅茶苦茶に犯したい・・・



ガルシアは思わずそれを手に取り
あの甘美なシュリの苦痛の余韻に浸るかの様に蓋を開けた

途端に強烈な香気が鼻をつく
思わず顔を顰め(しかめ)た

・・・!
くそっ・・・!!!

余計に腹が立った




「陛下・・・」
その時、静かに扉がノックされる

そしてガルシアは、入って来た男の顔を見るなり 怒鳴り声を上げていた


「ラウム!!!
 あの生意気な小僧はどうした!
 何故さっさと書状を渡さん!!
 いったい 何が気に入らぬと言うのだ!!!
 しかもシュリと知り合いだと???
 そんな事はワシは知らん!
 何も聞いてはおらんぞ!!!
 くそっ!!! ワシに皆の前で恥をかかせおって!!」


忙しなく(せわしなく)部屋をウロウロと歩きまわり
邪魔なテーブルを蹴り上げ、脈絡なく怒鳴り
腹に溜まった怒りを 目の前に現れたラウにぶつけまくった



だがそれだけでは まだ収まらない
テーブルの上の酒瓶を片手で握ると
いきなり、力任せにラウへと投げつけた


---- ガシャンッ!!


「・・・・ナギ殿下でしたら、
 お通しした部屋でお休みではないかと」


飛んで来た酒瓶が 顔の横をかすめ、扉にぶつかり
派手な音を立てて割れてもなお、ラウは微動だにしなかった


ラウにしてみれば、この程度の怒りは判っていた事だ
ガルシアのこの状態も想像していた通り

10歳の時からもう17年、この陛下に仕えてきたのだ
わからぬはずがない




ラウは驚きもせず、怯み(ひるみ)もせず、
頭を下げたまま、静かにシュリの意向をガルシアに伝え始めた


秘密は必ず守る、守り続ける
だからジーナ皇子の・・・ 弟の約束も、神国の安全もそのままだと・・・
全て今まで通り、何も変わりはしないのだと・・・





淡々としたその姿を、
始めこそ 怒りで睨むように見つめていたガルシアだったが
そこは世に名の知れた一国の王
話が進むに連れ、徐々にその顔は落ち着きを取り戻していった



そうだ、そうなのだ
シュリが黙ってさえいればいいのだ

あのナギが幾日滞在するのかは知らないが、所詮はただの使い走り

いつかは書状を置いて ここを出ていくしかないのだから・・・・
すごすごと、この城を出て行くナギの姿を思い浮かべた

最後に勝つのは己(おのれ)なのだ・・・・



一つ大きく息を吐き、落ち着きを取り戻したガルシアは
「確かなのだな・・・?
 ならば、それで良い」
それだけを言うと、テーブルの上の 例の小瓶に目を遣った






華燭の城 - 97 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 95

抱きかかえられる様にして部屋に戻り
薬と、ラウの手当てで落ち着きを取り戻しはじめたシュリは
戸惑っていた


・・・ナギ殿下・・・・
あのガルシアが絶対に逆らう事が出来ない帝国に
自分の味方となり得る人間がいた


あの殿下に全てを話せば、自分はここから救い出され
元の生活に、神国に戻れるかもしれない

・・・・ もちろん穢された(けがされた)自分では、もう神儀は行えない
そんな資格が無い事ぐらい判っている

それでも、もう一度 皆の元に・・・・ そんなわずかな期待





だが・・・・・

自分は戻る事が出来たとしても
もう、どうしても引き返せない事が1つだけあった

それは弟 ジーナの治療・・・・

もう投薬は始まっている
途中では止められない薬
この国にしかない薬
ガルシアが全てを握っている薬



自分の事が公になり、ガルシアが失墜し全てを失えば
もしかしたら・・・
いつか・・・
いつかは、その薬も 自分の手で自由に使える様になるのかもしれない

だが ”いつか” では遅すぎるのだ

そしてもし失敗したら・・・




ガルシアが自分を裏切ったシュリに
大人しく残りの薬を渡すとは考えられない

むざむざとシュリに渡してしまうぐらいならと、
それがどんなに高価で貴重な物であったとしても
残った薬の全てを廃棄することぐらい、あのガルシアならば不思議ではない
・・・ いや、これはもう仮定ではなく
ガルシアを僅かでも知れば断言できる事だった


ジーナに薬を届ける事が出来なくなったら・・・・
届ける事が遅れたら・・・・

それは確実に弟の死を意味する

自分の為に 弟を殺すのか・・・・・



答えは1つだった



今まで通り、ガルシアとの契約を守り
何があっても最後まで、弟に薬を届け続ける・・・・

それが、あの殿下を騙す事だとしても・・・

自分を見詰める屈託のない明るい笑顔を思い出し
シュリは横たわったまま目を閉じ、グッと拳を握り締めた







シュリからナギの話を聞いたラウも困惑していた
ガルシアの怒りの原因が判ったからだ


シュリをこの城へ迎えるにあたり、
世話役としてこの部屋の準備を進めたのはラウだ

その時に少なからずシュリの周辺は調べていたつもりだった
年齢・家族構成・趣味・嗜好・・・・ その他の事も数多く

それでもナギの・・・ 帝国皇太子の存在がそれほど近くにあったとは
全く知らない事実だった

だが、もし最初からその可能性を考え、手を尽くし調べたとしても
極秘扱いで、決して外に情報を漏らさない学校の情報は
結局の所、判るはずもなかったのだが・・・




これからどうなるのか・・・

暖炉に薪を入れながら
ラウもシュリに聞かれぬ様、小さく息を吐いた





「・・・・ラウ・・・・」

その時、シュリの声がラウを呼んだ



振り返ったラウの前に
何かを覚悟した様にじっと目を閉じ、拳を握るシュリの姿があった


・・・ シュリ・・・・
ラウはその時、全てを理解した








「どうしました?ここに居ますよ
 ・・・痛みますか?」

ベッドの横に跪き、ラウがシュリの手を両手で包み込むと
シュリは静かに首を振る



「もう大丈夫だ・・・ ・・・隣へ・・・・」

その言葉にラウは頷くと
着ていた上着を椅子の背もたれに掛け、ベッドへと上がる
シュリの横に体を置くと 優しく肩を抱き寄せた



「・・・シュリ・・・ 
 本当にそれでよろしいのですね?」

目を閉じたままのシュリの顔を見つめながら ラウが一言だけ尋ねた
それは疑問形だが質問ではなく、確認だった



シュリも ”それ” の意味は判っている

・・・ガルシアとの契約を
弟の為に今まで通り続けるのだな、というラウの確認・・・



「ああ、それでいい」

小さく頷いたまま、シュリがしがみつく様にラウに体を預ける
ラウはもう一度 シュリを強く抱き締めた







その夜、ラウはシュリの寝顔を見た後 そっと部屋を出た






華燭の城 - 96 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 94

急遽用意された貴賓室へ向かうナギ達と一緒に
ガルシアとシュリは広間を出た


すぐ前を行くナギの背中・・・・
繊細な金刺繍の飾り房が揺れる背中を
ガルシアが鋭い眼光で睨みつけていた



今夜は最高の夜になるはずだった

自分の栄光と繁栄を揺るぎない物にする書状
だが、今 それを受け取るはずだった自分の手には何も無く
その書状はまだ、手を伸ばせば届きそうな場所・・・・
ナギの隣を歩く近衛の手の中だ



それも腹立たしかったが、それ以上に・・・ この帝国皇太子・・・
自分に臆する事無く、正面からモノを言う

この生意気な皇太子が シュリの知り合いだと・・・・?


何もかもが自分の想定を覆し、
何もかもがうまく行かなかった事にガルシアは
空(カラ)の両手を握り締め 苛立っていた



ナギに聞こえぬ様に 
「後で来い」 それだけをシュリの耳元で呟いた


この苛立ちを抑え、発散出来るのはシュリの体だけだ
そして何よりも、今まで以上に綿密に口裏を合わせ
シュリに釘を刺して置く必要がある





だが、そんな思惑さえも ナギの一言で叶わなくなった

「なぁ、シュリー! 
 やっぱり、少しだけでも話をしないか?
 本当に話したい事が山ほどあるんだ!
 私が今日まで、どれだけお前に逢いたかったか!
 お前の部屋で構わないし、 ・・・ああ・・・ 体が辛ければ
 シュリはベッドで横になって居てもいいぞ!」


ナギが屈託のない笑みで振り返り、そう誘ったのだ






ガルシアが驚きのあまり、一瞬 睨む様にナギを見た


広間から出たシュリを迎えようと側に寄ったラウも
同じく驚きを隠せなかった


宴の中に入れないラウは
話の成り行きが全く理解できていない


宴の途中で、帝国皇太子が
以前から城で噂になっていた”あの親書”を持って入った事は知っている
中では、受書式が行われたはずだ・・・ と思っていた

だが出てきたガルシアの機嫌は、いつにも増して最悪と言っていい程悪く
しかも、帝国の皇太子殿下が余りにも親し気に
シュリに逢いたくてと声を掛ける・・・・ これはいったい・・・



殿下の前で頭を下げたまま、伺い見たシュリの顔・・・ 
その目は、ラウにすがる様に ”無理だ” と助けを求めていた



シュリの体は もう限界だった
が、それ以上に 自分の部屋にナギを招くなど不可能なのだ
あの鉄格子の部屋に・・・・






「殿下・・・・ 申し訳けありません
 本当に今夜は、あまり体調が優れず・・・・
 少し休ませて頂きたく存じます
 お話はまた明日・・・・」


そう言いながら頭を下げるシュリの体がわずかに揺れるのを
ラウが見えぬ様に背中に手を回し、咄嗟に支えた



「私はシュリ様の世話役、ラウムと申します
 どうか今夜はシュリ様の望み通りに・・・・」

ラウももう一度、静かに頭を下げる




「・・・そ、そうだ・・・・
 シュリは少し休んだ方がいい
 毎日、私の右腕となって公務に忙しいのだから
 体調が悪い時はゆっくりと休め」

ガルシアも続く



近衛のヴィルにさえも
「そんなに急がずとも、また明日でいいのでは?
 どうせ暫く滞在なさるのでしょう?
 我々も今日は休ませて頂きましょう」
と添えられては、ナギも引くしかなかった




「そうか・・・ 
 ・・・・残念だけど仕方ないか
 ではまた改めて声を掛けるから、その時にな!」



また声を掛けるだと・・・?
ナギの残した言葉に、ガルシアの表情が益々不機嫌になる

その異変に気が付いたガルシアの側近達が
ナギを取り囲み・・・・ 実際には警護する体(てい)で、だが・・・・
ほぼ強制的に「お部屋はこちらです」と促し、廊下の奥へと消えて行く




その姿が見えなくなる頃には
シュリの体重は徐々にラウの腕に圧し掛かってきていた


だがまだ倒れる訳にはいかない
まだ廊下にはたくさんの客や官吏もいるのだ

必死に耐えようとしているが 自分ではどうにもならない
シュリの体が小刻みに震え始めていた



その様子に 「陛下・・・」 と、ラウがガルシアを小さく呼び止め
今夜の相手は無理だと小さく首を横に振り、目で訴えた

「ふん・・・・
 仕方ない
 その代わりラウム・・・・ 判っているな?」

「・・・・はい」

ラウは シュリを支えたまま静かに頭を下げた

「それから あの殿下の事も、だ」

憎々し気に廊下の先へ・・・ 
既に見えなくなっているナギの姿に視線を送った後、
ガルシアはジロリと二人を一瞥(いちべつ)して そう言うと
自室へと帰って行った







この夜の シュリとナギの宴での一連のやり取り・・・

特に ナギがシュリの事を 自分よりも格上だと認め、宣言し
いきなり抱き締めた事は 記者の手によって瞬く間に城の内外へ
いや、国内外まで、話を多少 大きく膨らませながら、
たちまちに世間に知れ渡る事となった






華燭の城 - 95 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 93

「じゃあ、堅苦しいのはここまでな
 皆も宴の続きを楽しんでくれ」


ナギはこういう大広間の構造にも慣れているのか
2階ホールで指示を待っていた楽団の指揮者へ、迷う事無く視線を上げた
指揮者も 「承知致しました」 と言わんばかりに微笑み小さく頷くと、
軽やかにタクトを振り上げる


広間に優雅な管弦の音が響き始めると
書を受け取れず、身を固くしたままのガルシアの内心を
恐る恐るに探っていた来賓達にも、僅かな安堵の空気が流れ
鎮まり返っていた広間に再び人の声が戻って来る




するとナギは玉座を立ち、跪いた(ひざまづいた)ままのシュリの横へ下りると、
その手を取り、立ち上がらせた

そして 「会いたかった・・・!」 
シュリをいきなり抱き締めた



「おぉ・・!」

会場から驚きと喜びと感嘆の声が上がり
受書の瞬間を撮り逃していたカメラマンは
ここぞとばかりに一斉にカメラのフラッシュを焚いた




「・・・ンッ・・」

「ん?どうした?」

「・・・ いえ・・」

強く抱きしめられて思わず傷の痛みに呻いたが
シュリは何事も無かったかの様に、微笑んで見せる




「シュリとは いろいろ話したい事があったんだ!」

瞬き続けるフラッシュにも臆する事もなく、
ナギはその手を取ったまま 屈託なく笑った



「学校、急に辞めただろ? どうしたのかと思って心配していた」

「えっ・・」



思わず そんな・・・と言い掛けて慌てて言葉を呑んだ
それもシュリが初めて聞く事実だった

だが、考えてみれば当たり前の事だ
神儀の為に取った10日間の休みなど とうに終わっている

自分は人質であり この城に、あの石牢に幽閉されているも同じ
再び学校に戻る事など、あり得ないのだ





「教授達に聞いても、わからないと首を振るだけだし・・・
 そしたら、神国を出てここに居るっていうしな・・・・ 正直、驚いた
 3週間後には今年の馬術大会だったんだぞ?
 忘れたのか?」

「いえ・・・」

「まぁ、色々と忙しかったのだろうが
 国が変わっても 学校は寄宿だし、来られない事はないだろう?
 2年生ながら馬術部のエースで
 その成績は 全4学年合わせてもトップクラスのお前が
 急に辞めるなんて・・・・」

「・・・・」

「実を言うと私も お前の馬を駆る姿が大好きで、
 練習しているのをこっそり見に行ってたんだ
 年に一度のお前の晴れ舞台、今年も楽しみにしていたのになぁ」

「・・・はい・・・・ 申し訳ありません・・・・」





シュリの後ろには まだガルシアが立っている
振り向かずとも判るその強烈な威圧感に
シュリは言葉を続ける事ができなかった



そして何よりも
この想定外のナギの登場で、いつも以上に時間が経っている
薬が切れかけていた


ひどく体が熱く、
全身を刺すような痛みが広がっていくのがわかる


ラウにも内緒で 内ポケットには薬の包みが忍ばせてある

いつもは 宴の途中で飲み物と一緒に紛れさせ
誰にも気付かれぬ様に飲んでいたのだが
これだけの注目を浴びていてはそれも出来はしない





「・・・・・どうした? どこか具合でも悪いのか?」

口数も少なく額に汗を滲ませるシュリに気付いたのか
ナギが顔を覗き込む



「いえ・・・ 大丈夫・・・・・」

そう言い掛けた声を 突然ガルシアが後ろから遮った



「はい、殿下
 それが・・・ シュリは先日から風邪気味でして
 今一つ体調がすぐれません
 父親としても心配していた所なのです
 出来れば宴も休ませてやりたいと、思っていたのですが
 殿下からは、お見えになると連絡があったきり・・・
 仕方なく、毎夜 無理矢理に出席させていた訳でして・・・・

 本日は殿下もお着きになられたばかり
 如何でしょうか・・・ 
 今夜はもうお開きという事で、ゆっくりお休みになられては?」


軽く頭を下げながらもチクリと嫌味を言うガルシアに
ナギの後ろに立つヴィルの眉がピクリと動く

が、ガルシアはそんな近衛・・・ 
たかが兵にしか値しない男の表情になど動じることは無い



ガルシアが焦っていたのは
ナギとシュリが知り合いだったという予想もしていなかった事実・・・
とりあえず考える時間が必要だった




「風邪か・・・ 大丈夫か?
 確かにこの国は寒いしな
 気を付けるんだぞ?」


そう言ってナギは優しくシュリの肩に手を置いた






華燭の城 - 94 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 92

中央の絨毯の上をゆっくりと歩みながら 一人の青年が入って来る

年は シュリより少しばかり上に見えるが
身に着けた軽略式用の白い軍服には
帝国の勲章がいくつも並び付き、
それが広間の煌びやかな明かりで見事に輝き揺れていた


年に似合わず堂々とした足取りは、
やはりシュリ同様 生まれ持った王の品格という物だろうか・・・







広間の最上段まで来ると その青年はガルシアの方を向いた


数歩後ろについている大柄な男が近衛隊長らしく
こちらは黒の軍服を着用し、
手には書状が入っていると思しき(おぼしき)筒状の物を持っている




「ガルシア、息災か?
 皇帝閣下より書状を預かって来た」


「遠路遥々、私如き者の為に 殿下自ら足を運んで頂き
 真に光栄に御座います
 有り難く拝領させて頂きます」


ガルシアが恭しく(うやうやしく)口上を述べ、
深く腰を折り、頭を下げ両の手を差し出した

それに続き、シュリも・・・・他の列席者全員が頭を下げる
今、頭を上げているのは
この瞬間を写真に撮ろうと狙っている新聞記者だけだ



音楽も止まった会場内はシンと静まり返り、その時を待つ





だが頭を下げたまま待つガルシアのその手には
いつまで経っても何も載せられない

記者達も おや?と言う表情で構えたカメラを次々に下ろし
場内にもザワ・・ とした空気が流れ始める




「あの・・・殿下? 書状をお渡し下さい・・・・」

とうとう痺れを切らしたガルシアがチラと顔を上げた







そのガルシアにナギは小首を傾げ、フッと微笑んだ


「今、着いたばかりだぞ、急かすな」

そう言うと、そのままクルリと背を向け玉座まで行くと腰を下ろし
ふぅと一つ大きく息を吐いた



「思ったより長旅で、少々疲れたんだ
 それに、そのシュリの人柄を見て来いとも 閣下に言われている
 とりあえず数日、ここにゆっくり滞在させて欲しい
 書状の受け渡しはそれからでもいいだろう?」

そう言うと ナギはシュリを見てニッコリと微笑んだ




「シュリ、こっちへ」

問いかけたにもかかわらず、ガルシアの返事を待たないのは
ガルシア側に拒否権はないからだ




呼ばれたシュリは 「はい」 と小さく返事をし、
呆然とするガルシアの横を抜け ナギの前に歩み出ると 
玉座の下に跪き、右手を左胸に当てる最礼を尽くす


それを見てナギは満足そうに頷いた





「シュリ、顔を上げて・・・ 私に見せてくれ」

「・・・はい」



シュリがゆっくりと顔を上げる
と、ナギの表情はみるみるうちに一変した





「シュリ、やっと会えたな!」 

「・・・・・?」

嬉しさを通り越し、喜々とした笑顔で自分を見詰めてくるナギに
シュリはただ不思議そうにその顔を見るだけだった




「わからないか?
 これでも同じ学校の先輩なんだけどな、私は。
 まぁ仕方ないか・・・・
 あそこは各国の王族や貴族だとか、凄い身分の者ばかりだし、
 私程度の ”たかがイチ帝国の皇太子” なんて珍しくもないから
 シュリが私を知らなくても当たり前だが、
 私は知っていたぞ?

 ”神国のシュリ皇子” は 帝国の皇太子などとはワケが違う
 世界にたった一人なんだ
 学校でも入学して来た時から
 密かな有名人だったんだぞ、お前は」


満面の笑みで一気にそう告げた




それは シュリにとっても初耳だった 

確かに自分の行っていた寄宿学校は、その方面では名の知れた有名校だ

ほとんどと言っていい程の生徒が 何かの称号を持ち
どこかの国の皇太子同士が隣の席・・・・ が当たり前だった

だから自己紹介でも わざわざ自分の国や身分を名乗ったりしない



そういう生徒ばかりだから、
学校側も生徒に関する情報は厳重に管理され最高機密扱いで
一切 何も公表しない事が徹底されている


国に居れば何かと制約が付き纏う事が多い日常で育った者同士だからこそ
その ”ただの生徒” として扱われる事を望み
それを学校も推奨していたのだ


まして、数百を超える生徒の中で
学年の違う上級生に誰が居るのかなど 知る由もなかった




「・・・・そうだったのですか
 お心にかけて頂き光栄です」

シュリが上げた頭をもう一度下げる




その返事にナギは満足そうに何度もうんうん。と頷くと
「では、ガルシア
 そういうことだ、数日よろしく頼む」
ガルシアへ顔を向けた


「・・・・・はっ・・・・・・・
 ・・・・・・仰せの、ままに・・・・」



事の進みに言葉を失っていたガルシアは
乾いた口でそれだけ返事をするのがやっとだった






華燭の城 - 93 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 91

そしてその時は唐突にやってきた

いつもと同じ宴の最中、側近の一人がガルシアに走り寄り
何事か耳打ちをすると

「おお、やっと来たか!」

ガルシアの表情が喜へと一変した





他国の外相と談笑していたシュリにもその声は届いた

城内でも ”皇帝閣下から届く祝いの親書” の話は
随分前から、あちらこちらで噂され
ガルシアがそれを待ち望んでいる事は知られている





帝国の使者か・・・・ 
シュリは虚無感の中でそう思った


これでガルシアの行為が
”公然と認められた正当なものである” というお墨付きを得る・・・

ガルシアが神国に砲を向けた事・・・
自分が脅され連れて来られたという事実・・・
そんな事など何も知りもせず、全てが無かった事になり、隠蔽される
そして歪められた真実は、もう二度と表に出る事はないのだろう・・・


そう思うと怒りと悔しさが込み上げて来る

しかし、だからと言って自分には何も出来ない
使者の書など、自分にはもう関係の無い事・・・・



そんなシュリが一番に思ったのは、
今夜は少しは眠れるかもしれない・・・ ただそれだけだった







「・・・使者は何人だ?
 段取り通り上手くやれよ・・・」

気の早い来賓からの早々の祝辞を受けながら、
ガルシアが側近に小さく耳打ちをする





「それが・・・・ 陛下・・・・・」
男は俯き、言い淀んだ


「どうした、さっさとしろ」

「それが、誠に申し上げ難いのですが・・・ 使者は二人だけなのです」

「たった二人だと?」

ガルシアの眼光が鋭くなった




たった一通の書状とはいえ、皇帝閣下直々の王印のある物
王印があるという事は、それ自体が皇帝閣下の御言葉となる
しかもこの大国の王である自分宛の親書なのだ


使者はたぶん・・・ 
相応の身分の役人達が10人程で仰々しく列を成してやってくる
その護衛が居ればもっと多いかもしれない
きっと、到着が遅いのも、それだけの人数を揃える為なのだ・・・

そして、大勢の御付きの者は 控えの間で酒でも出し、
形ばかりでも労をねぎらえば良いとして・・・・
重官は代表として そのまま宴の席に案内し、
大勢の記者や列席者の目の前で すぐに盛大な受書式を行う


玉座に腰を下ろした自分に跪く使者達
その口上を聞き、頷き、たっぷりと時間を掛け
尊大に親書を受け取ってやる

・・・・そう思っていた





それがたった二人・・・?


”軽く見られた” 

咄嗟にガルシアはそう思った



その眼光に怯えた下位の側近は ビクリと視線を震わせ
慌てて次の言葉を繋いだ

「いや、しかしその二人というのが・・・・
 ・・・・・帝国皇太子 ナギ殿下と、その近衛隊長だそうで・・・・」






ガルシアの表情が変わったのは二度目だった

「なんと!!
 帝国皇太子殿下、御自ら!
 私の為に遠方よりお越し下さったのか!」



大きく声を張り上げ、皆に聞こえる様に広間に響いたその声に
会場中が驚きと称賛に沸いた




「皇太子殿下が自らお出ましとは!さすが陛下!!」

「閣下はさぞ陛下にお目を置かれているのでありましょうなぁ!」


その称賛の声を ガルシアは満足の笑みで誇らしげに受け取ると


「では早速、受書の式を執り行う!
 早くお通ししろ!」

そう側近に、そして皆に聞こえる様に告げた









ガルシアは、当初の自分の考えていた予定とは少し違っていたが
いつもの、最上に設えた(しつらえた)玉座を下り
その一段下の左脇に控えていた
これは帝国皇太子相手ならば仕方がない事だ

その横ではシュリが半歩ほど下がった位置で黙って床を見つめている

この日に備え待機させていた記者が広間に入った事を確認して
ようやくガルシアは楽団の指揮者へ目で合図を送った


演奏が一層華やかになる

その音と同時に 重厚な扉がゆっくりと押し開らかれた






華燭の城 -92 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 90

「ガルシアが全てを・・・・」


ポツリと呟いたシュリだったが
それでも、”既にこの国にある” という事実は変わらない
これから世界中を探し回らなければならない。と言われるよりはいい・・・
これでジーナを救えるのだから・・・・
しかし・・・


「・・・・領土にしたと言うのは・・・・ 
 戦さを仕掛け、力で奪い取った・・・・ という意味だよな・・・・」

「・・・・・ はい」

「そんな貴重な薬草が、偶然にも侵攻した国に・・・・」




皮肉な話だと思った
侵攻など、ただ自国を大きくする為の戦さなど
シュリは あってはならないと思っている
表には出ずとも、その陰に泣く多くの人が絶対に居るのだから・・・
自分の様に・・・


だが、そのおかげでジーナが救われたのも事実だった




「・・・・ガルシアに感謝・・・・・ と言うべき、なのだろうな・・・・」

思わず苦々しい笑みを浮かべたシュリに

「感謝すべきは神にもですよ
 シュリが ジーナ様の事をずっと案じていらしたから
 このような事が、偶然という形であっても起こったのです
 神のご加護があったのですよ」

そうラウが優しい笑みを返す




・・・・神・・・・

かつては、その神を自身に宿し
現世の神の化身として、皆の幸福の為にその身を捧げた自分・・・
だが今は 痛みと凌辱、屈辱を受け続ける毎日
これほどの苦しみの中で、この世に本当に神は居るのかと・・・
そう思った事も、また事実だった






「ジーナ様の薬は もう手配を済ませましたから
 もうすぐ一回目の薬が神国へ届くでしょう
 どれほどで効果が出るかは 個人差もあり、断定できませんが
 早くて数ヶ月、長くても数年・・・・
 その薬を定期的に欠かさず飲んで頂ければ
 必ずお元気になられるだろうと」



「・・・神は・・・ やはり居られたのか・・・・・」



「ええ・・・・
 ただし・・・ どんな薬にも副作用はあります
 幼いジーナ様にも戦って頂く事になります・・・・
 そして、一度 投薬を初めてしまうと途中では止められません
 止めるとその反動で一気に・・・・ 
 ・・・・今以上に容体が悪くなり最悪の事も有り得ると・・・・」



シュリが一瞬顔を曇らせ、眉を顰めてラウを見た
そんなシュリの手に ラウが手を重ねる




「ですから これから数ヶ月以上、
 どんなにお辛くとも それを続ける御覚悟がお有りかと・・・・
 養父が、ジーナ様に尋ねたそうです」


「それで・・・・?
 ジーナは・・・・ ジーナは何と?」


「兄上様が遣わしてくださったのだから
 どんなに辛くても治してみせると、気丈に答えられたそうです」


「・・・・・・・そうか・・・・
 ・・・・よかった・・・・」


「まだ小さいのに、
 本当にお強い方だと養父も驚いておりました」


「・・・ああ、ジーナは・・・・・ 今までずっと・・ 苦しんできたのだ
 ・・・・私以上に強い・・・・
 神儀も立派に・・・・ 継承できるだろう・・・・
 これから・・・・ まだ先も長いが・・・・
 ラウの御父上にも・・・・
 ・・・・よろしくと・・・・」




傷が痛み始めたのか シュリが苦しそうに肩で息をする



「シュリ、大丈夫ですか?」

「・・・ラウ・・・・ 薬を・・・・・」

「・・・そうですね・・・・ 少し話し過ぎました」



ラウがポケットから懐中時計を取り出し、時刻を確かめる
前回から、ゆうに6時間以上は経っていた


薬包を解き、水を側に置いてから
ラウはそっとシュリの頭を抱き起す
小さく開かれた口に 薬と水とを少しづつ含ませて、
ラウはシュリの体を 再びベッドへ横たえた


もう薬にも慣れたのか
シュリは以前の様に副作用で苦しみもがく事もなく
時折、苦痛に顔を歪めるものの
目を閉じたまま、じっと静かにそれが効くのを待っている





・・・・・ シュリ・・・・?
 
これを飲まなければ、耐えられない痛みだという事は
ラウにもわかっている
だが、慣れるのが早すぎでは・・・・
ラウの中に言い知れぬ不安が湧き上がった


シュリの額に浮かぶ汗を拭いながら
「・・・・・用量は必ず、守ってくださいね」
今のラウには そう言う事しか出来なかった






ラウも帝国の使者に対して怒りを覚えていた

一度連絡があったきり その後、音沙汰もないのだ
その事で、ガルシアの怒りは日々増している

主役たるシュリは、宴を休む事が許されない上に
毎夜のあの石牢での責め・・・・

いつまで続くのか・・・

いつ来るのか・・・・

早く来てくれなければ・・・・・

早く・・・・早く・・・・

それだけを思っていた






華燭の城 - 91 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 89

昼前になってラウは自分の仕事を終えると
そっとシュリの部屋の扉を開けた


シュリはまだ薬で眠って居る時間だが、そろそろ暖炉の火が落ちてしまう




起こさない様に暖炉の側へ行き、薪を足すと
パチパチと爆ぜ、炎が揺らぎ始める


2つとして同じ形を成し得ない炎が、次々と色を変え
生まれては消えていく・・・・・

その炎を見ていると、色々な憂惧(ゆうぐ)を ほんの少しの間だけ
忘れる事が出来る気がした






「・・・ラウ・・・ 少しは眠ったか・・・・?」

小さく声を掛けられてラウは振り返った
シュリが横たわったままこちらを見ていた



シュリが起きた事にも気が付かないとは・・・・

自分が思っていた以上にぼんやりとしていたのかもしれない
フッと苦笑いをこぼし、ラウは杖を支えに立ち上がった





ベッドの側まで行くと、傍らの椅子を引き、そこに腰を掛けた

「ええ、眠りましたよ
 シュリは? 眠れましたか?」


シュリの右手を包み込む様に両手で握ると
ラウの顔を見つめていた目が 安心したようにゆっくりと閉じ
コクンと頷いた



ラウも同じように頷くと 「傷を見ますよ」
そう言って握った右手をそっとシュリの体の横に置き
上掛けを腰のあたりまで引き下げる



「シュリ、今日は良い報告があるのですよ」

シャツのボタンを1つずつ外しながら
ラウは返事を待たず、話し続けた




「昨夜遅く、
 ジーナ様の元へ派遣していた医師団が戻って参りました」

「・・・・!」

「・・・動かないでください」


思わず体を起こそうとしたシュリの腕にそっと手を添えて
横になるように促した

シュリは大人しくその手に従い、頭を枕に置くと
顔だけをラウに向ける





「それで・・・・・
 ・・・ジーナは?
 ・・・父王は・・・ 皆は・・・・」


「国王、皇后共にお元気だそうです」
ラウが微笑む





「急な医師団の訪問に 最初は驚かれたそうですが
 今回の医師団が、シュリ様の命で来たと告げると、
 国王もそれは安堵され喜ばれたとか

 こちらにも監視が常についておりますので
 込み入った話は難しいようですが、
 神国の他の者も皆、変わりなく暮らしているから案ずるなと、
 国王よりシュリ様へのご伝言です」




実は今回、医師団が神国へ派遣されるのにあたり
シュリは父王宛に手紙を書いていた

だがそれは、ガルシアの検閲の名の元に一笑に付せられ
目の前で破り捨てられた

その為に、神国にとっては
いきなりの医師団の訪問となっていた





「そうか・・・ 皆無事か・・・・ 
 よかった・・・・
 ・・・・・それで・・・・  
 ジーナの病気は・・・・?」


「はい、
 先日申し上げたあの医師が知っている病に 間違いないとの事です
 珍しい病気だそうですが、幸いにも治せる薬があるとか」


「それは本当なのか!」


「ええ・・・・
 実はその薬草・・・ 私も名前だけは存じておりますが
 かなり稀少な物で、なかなか見つけることも難しいのです」


「見つけられない・・・・ 薬・・・・って・・・」

シュリの顔が不安に曇り、ラウをじっと見つめる



「それが偶然にも・・・・ 
 2年程前に我が国が領土とした国に
 自生しているのが見つかっているらしいのです」


その言葉を聞いたシュリの体からスッと力が抜ける
小さく息を吐き、安心した様に目を閉じるシュリの額に
ラウの指がそっと伸び、柔らかな前髪に触れた




  
「世界でも珍しい物なので、
 本来なら市場にも出ず、貿易で手に入れるのも難しいのですが
 そこはもう我が国の領土
 ジーナ様の病を治す量は充分に手に入るだろうと、養父も申しておりました

 貴重な価値ある薬ゆえに 
 その全てを陛下が管理されていますが・・・・・」






華燭の城 - 90 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 88

それから数日、ガルシアは酷く苛立っていた
ただじっと使者を待つという事が ガルシアにとっては苦痛でしかない


だが相手は 帝国
文句の一つも言えはしない


いつ来るかもわからない使者を待ち 宴は毎夜開かれた
そして 今日こそは、という思いが裏切られた時
ガルシアは怒りの矛先を シュリの体へと向けた


あの小男に灼き開かれた傷が塞がらぬまま
新たな鞭傷が毎晩の様に増えていく


朝方にやっと開放され、午後まで食も摂らず、ラウの薬で痛みに耐え
夕方には宴の支度をして、夜まで来賓の相手を立派に神の笑顔でこなす

そしてまたあの部屋でガルシアの怒りと性の捌け口にされる
それがシュリの日課になっていた





この日も、ラウに支えられて部屋に戻ったシュリは
ベッドにその体を横たえると
痛みに耐えながら小さな呼吸を繰り返した

ラウがその横で手当ての準備を始めた時だった


「ラウ・・・・」

小さな声でラウは振り返った


「ラウ・・・・ ちゃんと眠れているか?
 少し顔色が悪いぞ・・・・」

「シュリ・・・ 今、私の事など心配している場合ですか?
 ご自分の事だけを考えてください」

「だめだ、お前が居なければ、私は・・・・」



手を伸ばしかけたがそれさえも辛く、言葉が続かなくなっていた

「さあ、もう黙って
 お話しにならないで下さい・・ 消毒をしますから・・・・・
 それから薬を飲んで、ゆっくり眠るのですよ」






シュリが薬でやっとの眠りに落ちてから、ラウは部屋を出た
シュリが眠っている間にしなければならない事は多くある
休んでいる暇は無かった

薬を作る事も ジーナ皇子の医師団の件も
何一つ欠けても、今のシュリは壊れてしまう

重い足を引きながらラウは自室へと向った

これがラウの日課だった

それに昨夜は神国へ派遣した初めての医師団が帰国したはずだ
もう何か報告が来ているかもしれない

その思いが一層ラウの歩調を早めさせた






それから3時間程経った頃、シュリは目覚め様としていた
十分な睡眠がとれた訳でも無ければ、誰かに起こされた訳でもない
眠っていられなくなっていた


心臓が鼓動を刻む度、傷が鈍痛を繰り返す
この痛みはいつもの事だ
声を上げる訳でもなく、ただじっと耐えればいい

寝がえりもままならない体で唇を噛んで拳を握り締めた
だがそれだけではなかった



酷く苦しかった
深い呼吸が出来ず浅い息を繰り返すうちに、手足が小さく震えだす

数日前から・・・・ 
石牢で、あの小男に責められた時からか・・・
何度もこの震えに襲われる様になっていた
ラウには言っていない
いや、言えなかった

本人は大丈夫だと笑うが、最近 ラウの顔色が悪いのは気が付いている
これ以上 迷惑を掛けたくはなかった



だがこの震えは・・・・
これは放っておくと時間が経つにつれ痙攣の様に酷くなり
呼吸さえままならなくなる

自分では止められないこの苦しさは 
痛みと違い我慢するという事が出来ない

そのことを、シュリは初めてこの症状に襲われた時に学んでいた

自分の体に何が起こっているのか・・・・
あの小男の妖しい笑みを思い出す・・・





「・・・・・ラウ・・」

薄らと目を開けて首を巡らせるが
その目には シンとした部屋で
静かに燃える暖炉の炎がわずかに映るだけで
ラウの姿も気配も感じられない



「・・ンッッッ・・・・っ!」

鈍痛に耐えて震える右腕に力を入れて体を起こした
両肩の傷は今も塞がっていない・・・

無意識に左手は傷をかばう様に体を押さえてはいるが
体中にある無数の傷のいったいどこを押さえているのか
もうわからなかった




やっとの思いで半身を起こすと
右手はベッド脇の箱へと伸び、中の瓶を握り取っていた

水差しもテーブルには置いてあったが
そこまで歩いて行くのは、到底無理だ

ハァハァと肩で息をするシュリの息遣いと
瓶の中の小さな錠剤がカラカラと鳴る音だけが
静かな部屋に響き渡る



シュリは震える手で瓶の蓋を開け
親指の先程の錠剤を1粒、掌に取り出した



箱の隣に置かれた時計は、
まだ前の薬から3時間程しか経っていない時刻を指している

時間は必ず守る様に。
いつもそう言っていたラウの顔が脳裏に浮かぶ・・・



ラウ・・・・・・・

一瞬 躊躇し・・・

薬を握り締めた

・・・ だがシュリは、それを口に運んだ






そのまま力尽きた様に 横向きに倒れ込み
上掛けを握り締めて薬が効くのをじっと待った






華燭の城 - 89 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 87

「おい、起きろ、もうすぐ王都に入るぞ」

「んー? やっと着いたかーー
 長かったなーーーー 疲れたーー」


頭から被っていた上着を除け、大きく伸びをしながら 
その青年は窓の外に目をやった




薄灰の雲が頭上に覆い被さるように立ち込め
風も強いのだろうか・・・
道路脇の街路樹も時に大きく揺れる

青年は思わず  「寒そうだなぁ・・」 と一人呟き
ブルッと身を震わせた





「ナギが車で行くなどと言うからだぞ
 空路で飛べばすぐだったのに」

黒の軍服をキッチリと着こんだ男は
隣に座る青年に呆れたような視線を送る




「車の方が、色々と寄り道も出来ただろ?
 それに、俺一人の為に 公用機なんて大袈裟だ
 降りられる場所があるのかどうかも判らないのに
 飛行機なんて・・・
 あんな御大層な物を持ち出したら、余計 話が面倒になる」


「一人ではないだろー?
 帝国皇太子が他国へ出向くとなれば
 本来なら近衛隊が総動員されるほどの公務だぞ
 それを 護衛も付けず、一人で行くなどと・・・
 そもそもだ!
 親書程度の物は相応の役人に行かせれば良かったんだし・・・」


「だーかーらー」



まだまだこの小言は続くと読んだのか
青年はその言葉を途中で遮った


「だから、お前を連れて来ただろ?
 お前が居れば大丈夫! なっ?? 近衛隊長っ!」


ナギと呼ばれた皇太子は
満面の笑みでニコニコと隣の座席に座る男に笑い返した


「・・・たくっ・・・・ 
 羽を伸ばし過ぎるなよ?
 くれぐれも大人しくして 私の仕事を増やさないでくれよな・・・」



 
隊長と呼ばれた男も、小言を言いながらではあったが
それがいつもの、日常のやり取りであるかの様に
言葉とは反対に笑顔だった







「思っていたより 大きくていい街だな」


車窓に肘を付き、その上に顎を乗せて
先程からぼんやりと外を眺めていたナギが呟いた


もうすぐ日が暮れる時刻
道路の両側に並ぶ店々には ポツポツと灯も入りだし
花屋が店先の花木を片付け始めている


家路へ着く人々が寒そうにコートの襟を立て
石畳をやわらかく灯すオレンジ色の街灯の下を足早に歩いていく


馬と車とが一緒に行き交う真っ直ぐに伸びた路
その遥か遠く、正面の丘に
夕陽を背にした石の城が 街路樹の陰から小さく見え始めていた






「この国は 現国王ガルシアの代になってからここ数十年で
 一気に発展を遂げたようだな
 先代の時はまだ・・・・・」

隣の男・・・
近衛隊長と呼ばれるにふさわしい大柄な体に軍服を着た男が
スラスラと一通りの概要を説明した



「さすが、ヴィルだな
 もうそんなに調べたのか」

「出向く国の事だぞ?
 ナギも少しは覚えて、社交辞令の1つでも言えるようにならないと」

「んーーー
 そういう事はお前に任せた!参謀!」

「近衛隊長だの参謀だの、
 そうやって面倒な事は全て私任せにするんだからなぁ、お前は・・・・・
 わかったよ、はいはい・・・・」


ヴィルは笑いながら肩をすくめてみせる






「でもナギの言ってたやつは・・・ まだ何も・・・だ」

「お前でもか・・・・
 わかった・・・・ もう少し時間が要るな」



視線を窓に戻したナギが呟いた



「シュリ・・・・」






華燭の城 - 88 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 86

小男と二人でシュリを凌辱したその日、
ガルシアが目を覚ましたのも 陽が沈む頃だった

ずっと眠り続けていたわけではない



朝早くにオーバストに呼び起こされた
それを廊下に立たせたまま 煩い(うるさい)と一喝し
その時に今日の予定は全て取り止めると伝えた

その後も 昼に午後にと自分を呼ぶ声で起こされたが
半醒半睡を貪っていた




あの薬のせいだ とガルシアは思った

まだ体に纏わりついているのではないかと思う程の
あの甘い甘い匂いを思い出すと胸やけがしそうだった


だが薬自体の効果は褒めるに値する


まだまだ衰えなどというものとは無縁の自分だったが
昨夜は いつも以上の快感が得られたのは確かだ


そして久々に聞いたシュリの悲痛な叫び声、
気を失う程の苦痛に身を捩る姿・・・
それを思い出すと また体が疼きそうになる






棚に置いた小瓶に目をやった


男の置いて行ったあの薬、
あれで匂いの無い物が出来たら どうだろうか
どうせ香料は、あの小男が 自分の好みで添加させた物だろうし
似た物を作らせてみるか・・・・

それに、またあの小男を シュリで遊ばせてやるのもいいかもしれない・・・

あの匂いにはウンザリだが、
今までは 鞭打つ事が主だった自分とは違うあの男の
道具やその使い方・・・・
色々と収穫があった事は確かなのだから・・・

小男の恍惚とし呆けた(ほうけた)顔を思い出しながら
ガルシアは苦笑いをこぼした






取り留めなくそんなことを思い巡らせていると
また自分を呼ぶ声に 今度こそガルシアはハッキリと覚醒した

聞き慣れた オーバストの声だ




「入れ」

それを待っていたかの様に男が扉を開く



「何だ。 何度も何度もうるさいぞ」

起き上がり部屋の中央へ移動し
ソファーへドッサリと身を沈め脚を組んだ




「お休みの所、申し訳ありません」
オーバストは頭を下げ
「取り急ぎ、お伝えしたい事が」 そう続けた


「どうした?」


「はい
 昨夜、帝国の皇帝閣下付きの者より連絡がございまして
 書状の準備が出来たので持っていく との事でございます」


「おお! やっと来たか!
 で!いつだ? いつ届く!」


「それが、近々・・・とだけで、日にちは判らないそうです」


「判らんだと・・・?
 馬にしても車にしても、大凡(おおよそ)の日時ぐらいは掴めるだろう!」




声を上げたガルシアだったが、
皇帝閣下に、日程をハッキリ教えろ、などと 誰も言えるはずがない

「まぁいい、
 届いたらすぐに 宴の席中で受書の式を盛大に執り行い、
 皆の前で書状を読み上げる
 ああ、そうだ・・・・新聞の記者を呼んでおけ 
 記事を書かせ、国内外まで広く知らしめるのだ
 それでワシの地位も揺るぎないものになる
 使者がいつ来ても良い様に、準備だけはしておけ」


「かしこまりました」

オーバストは深々と一礼し、、、そのまま立っていた



「ん?
 もう下がってよい
 それともまだ何かあるのか?」

ガルシアがテーブルの酒に手をのばす



「陛下、真に僭越(せんえつ)ながら・・・・」

「なんだ?」

その手が止まった



「昨夜の事ですが
 シュリ様の件、特にその待遇に関しては
 出来るだけ内密にされた方がよろしいのでは?
 表向きはあくまで この国の救い主であり皇太子
 あの部屋で、部外者と会うというのは・・・・」


「ああ、その事か
 それなら、そんな懸念には及ばぬわ」


ガルシアは自信たっぷりに言い切った
そしてグラスを持ったまま グイと体を乗り出した



「いいか? 昨日のあれは帝国と西境界を接する
 いわば一番近い”敵国”の国防の大将だ」

そう言われて初めてオーバストは、昨夜の客が西国の者だと知った



「あの小男は自国・・・ 西国軍の動きを
 全てこのワシに教えると約束したのだ
 シュリの体一つでな」


「そのような約束・・・
 敵の大将の言う事など、容易く信じられるのですか?」


「お前はまだ考えが足りんな
 国の情報を、敵国に漏らすという事は 明らかな売国、裏切りだ
 しかもそれで得る対価は あの男自身の欲望を満たすだけの物・・・・
 よく考えてみろ、
 異常な・・・・  いや・・・・・  
 あれはもう猟奇的と言うにふさわしい性欲だけの為に
 自国を売ったのだぞ?
 
 その様な事が国にバレれば自身のみならず一族皆が即、処刑
 何があってもそんな自分が不利になるような事を 他へ漏らす訳がない
 
 ・・・・・・な?
 シュリの、神の体はこういう使い方もあるのだ
 お前もよく覚えておけ」




嬉しそうに語るとグラスの酒を飲み干し、
そのまま出ていけと顎で男を追い出した











その頃、1台の車が国境を越えようとしていた






華燭の城 - 87 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 85

シュリを迎えに来いと ラウに連絡が来たのは
一睡も出来ず見ていた東の空が
わずかに橙味を帯び始めた頃だった




不自由な脚を急かす様にして、扉番の開けた長い廊下を行き
部屋の前で声を掛けたが返事はない

人の気配のない部屋に入ると、いつもとは違う微かな匂い・・・・


これは・・・
ラウは思わず顔をしかめた




開け放たれたままの石牢の扉・・・ 
急いでそこへ向かうと、その匂いは徐々に強くなっていった

そしてその石牢・・・
窓もなく、広くもない室内は 白い煙の様な甘い空気が満ちている






「シュリ・・・!」

嫌な予感が頭を過り(よぎり) ラウは思わず名前を呼んだ

口を開けば その嫌味な匂いが口内を満たし
ラウは咄嗟に口元に手を当て 中を見回した





二人の暴人の精の臭いと血の匂い
それとは真逆の 妙に甘い匂いとが不快に混ざり合う部屋で
台横の冷たい石の床に 全裸で横向きに蹲り(うずくまり)
倒れているシュリの姿があった


台の上には無造作に解かれたロープが血に染まり
床にも血だまり・・・・

きっと開放された後、痛みで苦しみ 床へ落ちたのだ





「・・・・・・シュリ!!」

駆け寄ってその体を抱きかかえる



「・・・ンッ・・!」

小さく震えながらもシュリが声を上げた


反応があった・・・・
生きている・・・・
よかった・・・・  

ホッとしながらも とりあえず外へ・・・・ と気持ちが騒いでいた


この匂いの正体に 確信ではないが心当たりはある
日々 薬を扱う者の本能が、ここは危険だと警告を発していた




横に落ちていた石牢の鍵を掴むと
ラウはシュリを抱きかかえ立ち上がり 急いで部屋を出た

その間にも シュリの震えは益々酷くなっている

早く部屋に戻らなければ、人目に付く
---- 夜が明ける










シュリの部屋へと戻ったラウは温かなベッドにシュリを横たえると
手元に灯りを引き寄せる


そこで改めて見たシュリの体は惨たる状態だった

腕と脚には縛られた跡
体前面にある細かい出血
何か細い金属で刺されているのは確かだ

酷いのは両肩の傷だった
ガルシアにナイフで付けられていた割創
やっと塞がりかけていた傷が、どれも無残な傷となってまた口を広げ
ゆっくりと血を吐き出している


だが今は傷よりも痙攣に似た震えの方が深刻だった
呼吸が余りにも早く浅い
このまま放っておけば、体に血液が廻らなくなる・・・




報いを受けさせると言ったガルシア・・・
こんな状態になるまで、いったい何をしたのか・・・・・



ラウは唇を噛み、ベッドの傍らの箱から薬を取り出すと
指で擦る様に潰した
元々が 液体を粉末に、粉末から個体へと固めていただけの薬は
ラウの指の上で簡単に元の粉状になる




「シュリ様・・・・  シュリ・・・・」

小さく呼びかけると
シュリは震えながらもその声に ピクンと反応した



「私が、わかりますか? ・・・口を開けて・・・」

指で唇に触れ、小さく開けさせて、
そこから指ごと咥えさせるようにしてシュリの柔らかな舌に触れた


「んっっ・・」

粉になった薬は苦かったのか
反射的にシュリは嫌がり顔を顰め(しかめ)る



「・・・・飲み込んでください」

そう言って、冷たい頬に指の甲を当てると
シュリはようやく、ゆっくりと薄く目を開けた

そのままじっとラウを見つめ、そして、小さく息を吐き頷いた



ラウが差し出した水差しの、ほんのわずかな水と共に
喉がコクンと動く









次にシュリが目を開けたのは もう夕刻になろうかという頃だった



「シュリ・・・・・ 気が付かれましたか・・・・?」

ベッドの横に椅子を引き
ずっと傷の手当てをしていたラウが声を掛ける



「・・・・・・ラウ・・・
 ・・・ここは・・・ 

 ・・・そうか・・・・・    ・・・終わったのか・・・」



そう問うシュリの言葉に胸が詰まった



「・・・・・・・ええ、・・・・・もう終わりました
 ・・・よく頑張りましたね」




ただじっと されるがまま、
耐えて耐えて ”その行為” の終わりを待つしかないシュリに
ラウはやっとそれだけの言葉を絞り出した




「・・・本当に・・・・・」

自嘲するようにシュリが言い、目を閉じる



「・・・今、水を・・・」 とラウが側を離れると

”いつまでこんな事が、続くのだろうな・・・・・・”
シュリはそう問いかけていた

言葉にはせずに・・・・・
誰に向かってかも わからずに・・・・・






華燭の城 - 86 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 84

「・・・ンンンンッ!!」

再び声を上げたシュリに 
男は興奮した様に自分のモノを打ち付ける



だが、男のモノは ガルシア程の質量を持ってはいなかった
それでも破壊的な痛みだけを引き起こす暴力的なガルシアの責めとは違い
男は巧みに角度を変え、位置を変え・・・ シュリの内部を蹂躙していく



「んッァアア・・・!! んっ・・・んっ・・・・・・・・・・んっっ!」


体中を針で刺された痛みはまだ続いている

そこにガルシアの手が伸びた
赤くなった胸の突起を、刺された針ごとギリギリと指で捩じり潰し
シュリのモノを握り激しく扱(しご)き始めると
シュリはその痛みと苦しさに声を上げた



「・・・・・ンッッツァアッ!!!!!!
 ・・・・・ やめっ・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」


「最高・・・・ ですな・・・・・・・
 シュリ様の中は・・・・・ 真に素晴らしい・・・・」


叫ぶシュリを弄びながら、男が嬉しそうに声をあげる




「そうだろう
 シュリ程の器はワシも知らぬ」

ガルシアもシュリの声に満足気に応える



「ええ、ええ・・・・  これが・・・ 
 神というモノなのでしょうな・・・・・・
 おおっと・・・シュリ様・・・・・ 余り興奮なさらぬ様に・・・・
 中に薬が入っておりますから・・・・ 余計に痛みますよ」


そう言いながらも男の責めは、言葉とは反対に、一気に激しくなる







「・・・・・・・・ンッ!!!


 ・・・・・・・・・・ッッグっっっ・・・・!」



直後にシュリの体が大きく跳ねる様に仰け反った
そしてすぐにその瞳は見開かれ、天井の一点を見つめたかと思うと
グッと唇を噛み締め、痛みを振り解くかの様に激しく首を振る





「あぁ・・・ とうとう来ましたな
 だから言ったでしょう・・・・・ 興奮なさらぬ様に、と・・・・
 この薬は生き物と同じ・・・・
 エサを与えれば・・・・ 人の血や汗、体液と混ざり合えば合う程
 反応を起こし、痛みは活性化する・・・・
 だから この小さな針穴でも出血が続く限り痛み続けるのです
 ・・・・せっかく、ご忠告差し上げたのに・・・・」


「ほう・・・・・」

ガルシアが珍しく感心した様に声を上げた



「まぁ、今のままでは ご自身の精を吐き出すことはできませんから
 暫くは痛みと快感と・・・・
 両方をじっくり味わって頂きましょう・・・」
 

一度止まりかけた男の動きがまた激しくなる




「やめっ・・・・・  

 もう・・・ やめっ・・・・・・・・・・・・・・んっっぁっ・・・・!!!」




薬のせいなのか、先端からほんのわずかな体液だけを滲ませながら
シュリは痛みに暴れ続ける


「最高の興だな」

ガルシアは 満足気にシュリを押さえ付けたまま
その苦しみもがく姿を じっと見下ろしている





「はい、陛下・・・・ 
 私もずっとこうして眺めて居たいのですが・・・・・
 シュリ様の御身体は良過ぎますな・・・・・
 ・・・・・・・・そろそろ・・・・・・ こちらも限界・・・

 ・・・・ああっ・・・ 陛下・・・・・
 私はこのままで・・・よろしいのでしょうか・・・・・
 神を・・・・ シュリ様を・・・・
 私如き(ごとき)の精で穢す事になりますが・・・・・・」



「好きにしろと言ったはずだ
 神など、もうとっくにワシの前に跪いておるわ」


シュリの中で果てる許可を乞う男にガルシアは
冷たい笑いを返した





「ああ・・・・っっ・・・・
 ・・・・・有難き・・・ ・・・ 幸せ・・・・・・・・・・
 ・・・感謝・・・・・・いたしま・・・・・ す・・・・
 ・・・・・・・・ではっ・・・・・
 
 ・・・・・・んっ・・・   ・・・・んんんんんぅ!・・・・    ・・・出るっ・・・」



そう呟くと同時に、シュリの中に男のぬるい精が吐き出された



恍惚の表情で体を密着させたまま天を見上げる男とは反対に 
必死に肩で息をしながら、シュリが再び痛みに叫ぶ




男は自身を絞り出す様にして シュリの中に全て注ぎ込むと
ようやく満足がいったのか、ユルユルとそれを抜き出し
ふぅ・・・と 大きく息を吐いた


そして男が台を降りると入れ替わりの様にして
ガルシアもシュリ脚間に立ち、
その傷だらけの身体を自分の方へと引き摺り寄せた

朦朧としながらも、ガルシアの手の感覚はシュリには判る
何度も体に覚え込まされた痛み・・・



「・・・嫌だ・・・・・・・・・・ やめ・・・・・・・・・・・・・・・」



無意識に呟き、それを嫌がり首を振るシュリを見下ろしながら
ガルシアはその脚を軽々と抱え上げ、まだ男の精の零れる場所へ
自身を強引に捻じ込んだ


「・・・・・・ンッッァアアアアッッ!」


圧倒的な破壊物の侵入にシュリが叫ぶ

湿った音をさせながら、根本まで一気に突き込んだガルシアは
激しくシュリの中を突き上げながらも、
台の横で、シュリの体を名残惜しそうに見つめる男に視線を向けた


「おい、前の部屋に酒がある
 どれでも好きに飲むがいい
 面白い興を教えてくれた礼だ」 


ガルシアの言葉に男は深く頭を下げたが

「ありがとうございます
 それは大変有難いのですが・・・・・
 もしよろしければ・・・・ 私はこちらを頂きとうございます」



両腕を縛られ、ガルシアに突き上げられながら 
ギシギシと身体を揺らすシュリの・・・
まだ薬のせいで精を吐き出せずにいるシュリのモノを手に取り
ゆっくりと手で扱(しご)いて見せる


「ンッッーーー・・・!」

触れられるだけでも激痛を放つそこに、シュリが喘ぎ叫ぶ・・・



「それが飲みたいのか?
 お前も相当 可笑しな奴だな
 ・・・・・ならば、もう少し待て」

シュリの身体を犯しながらガルシアが笑う


「お許し頂けるなら、いくらでも待ちましょう」

男は、右手でシュリのモノを扱き(しごき)
左手で胸の先端の針を指で弄りながら頭を下げた




それから程なく、シュリの叫び声と同時にガルシアが呻いた


ガルシアのモノが引き抜かれると、
男はすぐさまシュリのモノを手に取り
慣れた手付きで 先端の穴を解す(ほぐす)様に広げ、刺激を加える



「・・・ンッっ・・・・・・!・・・・・・・・・・ァアアアアアアアアアアっっ!!」



激しい息使いで、ぐったりと台に両腕を縛られたままのシュリの体が
小さく痙攣し激痛に仰け反った

それを合図にしたかの様に
それまで押さえ込まれていた自身の精を吐き出し始める


だがもうシュリ自身には ハッキリとした感覚はない・・・・
激痛で意識を失った身体から、ただ出口を見つけ流れ出しただけのそれを
男が嬉しそうに、素早く咥え込んだ






華燭の城 - 85 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 83

ぐったりとしたまま、荒い呼吸を続けるシュリの意識から
その囁きがまだ消えぬうち
男の手はシュリの胸を撫でる様に這い回っていた

そして胸の小さな突起を 指でクッと摘まみ上げると
そこへ、何のためらいもなく、真横からプツリと針を刺した



「・・・・ンッっ!!!」

痛みに息を詰まらせたシュリが目を見開く
だが、乱れる呼吸が喉を塞ぎ、圧し詰まった様に声は出なかった


刺し込まれた針は 
そのまま突起の反対側の皮膚を内側から突き破って貫通し
ブツリ・・とその灼熱の先端を現す



「・・・ンッァアア”ッ!!」

動かない体をわずかに捩らせて、ようやくシュリの叫びが響いた





「なるほど・・・・
 シュリをここまで追い込むとは・・・・ 期待以上だな」


満足気なガルシアが声を掛けると
男は満面の笑みで顔を上げた



「ありがとうございます
 針はまだまだあります
 次は・・・・ どちらがよろしいでしょうか」



冷静を装い、言葉こそ丁寧だったが
上げた顔は興奮に赤く上気し、
揺れる蝋燭に照らされたそれは、既に”人”という物を超えている様に見える



甘い香りの充満するその部屋で
男は次々と薬針を灼熱に変えると、狂った様にシュリの体を刺し続ける


極小ながらも気煙を纏う最強のその痛みは
シュリに気を失う事さえ許さなかった
首を振ってただ痛みに耐え続けるシュリの唇は切れ、
白い肌に小さな血がプツプツと湧く



男が正気を保っているのかさえ、疑いたくなるその責めを
ガルシアもまた酒を煽りながら、じっと見つめていた






そして男の左手は、徐々にシュリの下半身へと下りて行く

ゆっくりとさすりながら、その目が、”その場所” への責めの許可を請う様に
ガルシアの方へ向けられる




「そこにもか・・・?
 まあ、いいだろう 
 見えない所ならば、お前の好きにしろ
 だが 使い物にならなくするなよ?」


ガルシアが酷笑する



「それはもう、重々承知致しております
 ここに薬を入れれば、面白い効果もございますし・・・
 シュリ様もご自分でご覧になると
 一層、痛みを感じ易く、愉しめますよ」


男は片唇だけを上げ笑うと、シュリの頭の下に自分の包みを挟み
首を起こす様に持ち上げる




二人の会話は 痛みに呻くシュリにも聞こえていた

そして持ち上げられた頭の、その視線の先には
激痛を伴いながら小さく湧き出す血と、
自分の胸を貫通したままの針・・・
そのもっと先には・・・・ 
男の手で撫でられている自分の下半身があった




「・・・・な・・・   何を・・・・・!」

叫び続け、塞がりかけた喉で、それだけを絞り出すと
シュリは全身に力を込め、逃れようと必死に抵抗した

が、もうその身体は自分の意志では動かなかった





「・・・・!  やめろ・・・・  やめ・・・・っ・・!!!」




次の瞬間、灼けた針が自分のモノにプツ。と突き立てられた


「・・・ンッグッ!・・・・・・    ・・・・・・・・っッぁあああああッッ!!」


一瞬歯を食いしばった直後、シュリの絶叫が響き渡った





シュリの体の線に沿って流れ落ちた血は 
台の上で1つの血だまりになった

叫ぶ声も枯れ、意識も朦朧とし、縛られたままの体で
ハァハァと大きく喘ぐそのシュリの姿に 遂に我慢できなくなったのか
男は持っていた針を置き、自らの着衣を脱ぎ捨てる


それはガルシアも同じだった





男はシュリの足のロープだけを外し、台の上に這い上がった

シュリは自由になった足で
反射的に痛みから身を守ろうと体を丸める


だがシュリの頭側に立ったガルシアがそれを許さなかった
見るからに非力そうなこの小男の為に
シュリの両足を上からグイと掴み、引き寄せ膝を割る


「ンッ・・!」

後ろを露わにさせる様にして押さえ込まれたシュリを嬉しそうに眺め
男はガルシアに小さく首を垂れ、目礼をすると
刺された針をゆっくりと 1本ずつシュリの体から抜き取りながら
その代わりに自分の猛ったモノを シュリの体内に突き込んだ






華燭の城 - 84 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 82

「これが、私が日頃から最も愛用している物でございます
 ・・・・私はこれが好みでして」

男は喜悦の表情で、中の針を一本摘まみ上げる



「それがか?
 体も小さいが 使う物も小さいのだな」

神経質に1本ずつ丹念に刺し並べられた5センチ程の針を見ながら
ガルシアが悪気も無く言い放つ



「ええ・・・・
 ですが陛下・・・・
 ”小さきモノ” を侮って(あなどって)はいけません」



その言葉にガルシアが失笑した



「それはお前自身の事か?」

「はい、そう取って頂いても結構でございます」

二人の妖しい笑みが交錯する






「これは小さいがゆえに一ヵ所に与える痛みは局所的、かつ強力
 一本でも体中に電流が流れる程の激しい痛みが走ります
 それでいて、先程の2つと違い 体の奥深くまで・・・・
 そして何本刺したところで、出血も少なく死には至りません
 しかも傷も目立たない
 ・・・・まぁ、ゆっくりとご覧ください」




男は台に縛り付けられたままのシュリの横に立ち
甘く匂いたつ蝋燭を引き寄せる

包みから抜いた1本の針を 直接その炎で炙り始めると
細い針は見る見るうちに温度を上げ灼熱の赤へと色を変えた



そして、その灼けた針を持つ右手を
シュリの目の前に差し出す



「では・・・ 少しばかり失礼いたしますよ?」

「・・・・!!」


抵抗する間もなくその針は ジュッと微かな音を立て
シュリの胸の傷の中に刺され、そのまま内側を灼き抜いていた





「・・・・・ンッッっ!!」

雷に打たれた様なその痛みに、シュリの体がビクンと反応する
が、縛られた体は身動き一つ出来ず、一度 台を小さく動かしただけだ



男の秘蔵だというその道具に、大きな期待感を持って見ていたガルシアは
その光景に眉根を寄せた
顔には明らかな不満の色が浮かび
男に対する失望がハッキリと映っている





「おい、お前の秘蔵とやらはその程度か?
 それならば、先の皮膚をも灼くという薬にしろ、あれの方が良い」


「陛下、その様にお急ぎなさらぬよう・・・
 私は ごゆっくり・・・ と申し上げたはず
 今のは小手調べに過ぎません
 これからでございますよ」



男はそんなガルシアの言葉を、初めから予測していたのだろう
冷たく光るガルシアの眼光にも、全く怯む様子もなく答えてみせる




「この小さき針は我が国が作り出した最高傑作
 この細い針、一本一本の内部に僅かな空洞があり
 そこにも薬が入れられるのですよ
 さて、2本目からが本番です 
 これは・・・・・・ 相当痛みましょうなぁ」


不敵に笑う男の左手には、あの劇薬の瓶がしっかりと握られていた






シュリにもあの薬の痛みは激烈だった

薬品で灼かれる痛み・・・
それはガルシアの、
体の表面を裂く鞭ともナイフとも違う 全く別次元の痛みだった
事実、右肩はまだ激しく灼け付く痛みを放出し続けている




その薬を握り、ニヤリと笑い自分を見下ろす男・・・・

逃れられないのは判っている
逃げてはならない事も・・・・


それでも、あの激痛を甘んじて受け入れる事は
一度その痛みを知ってしまった本能が許さなかった

シュリは男を睨み付け
自分を縛るロープを振り解こうと 渾身の力で手足を動かした




だが構う事無く、次の針は あのキリと同じ様に
熱せられた直後に薬の気煙を纏いながら、腹の傷の中に刺し込まれる




「・・・ンッッッ!!!ァァアアあああああッ・・!!!!」



その衝撃にシュリは 手足を縛られたまま体を硬直させた
全身の筋肉が一瞬で収縮し、グッと力が入ると
余計に身体が針を咥え込む


極小の針だというのに、一点のみに奥深く刺されるからだろうか・・・
身体の深部で守られていた神経を、直接灼かれる様なその痛みは
あの、先端部分が短いキリ以上だった


ハァ・・・ハァ・・・・
・・・・・ハァ・・・・・・ ハァ・・・・・・


息をするのも痛む
針が刺さったままの神経が激痛を放つ





「3本目・・・・
 これは・・・ここに致しましょう・・・」

笑う様な声が、悪魔の囁きの如くシュリの頭に響いていた






華燭の城 - 83 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 81

男は慣れた手付きで白い手袋をはめ、蓋を開ける

先の薄紅の液体とは違い、それは無臭のようで
蓋を開けても、周囲には何の変化も感じられない
透明な・・・・ 一見、水の様に見えるだけだ


だが男の手付きは慎重だった

台の上のキリを取り、その先端から少し上・・・・
ザラザラと加工された部分に、中の液体をポタ。と滴らせる


すると液体は流れ落ちることもなく、金属にジワリと浸透していき
たった一滴の液体は蝋燭の炎にかざすだけで
一瞬の灯と共にすぐに蒸発し、薄い蒸気を上げた




男は、それをシュリの傷に・・・・
まだ出血が続く右肩の傷の中に
気煙を纏わせたまま 躊躇なく押し当てた

キリの鋭利な先端が
潰され剥き出しになった柔らかな内部組織に突き刺さる





「・・・・ンッ!!!!!! ・・・・ァアああっあああああッッ!!!!」


傷の中を刺された痛み・・・
そこから一瞬にして広がった焼け付くような激痛が
それまで耐えていたシュリに、思わず声を上げさせていた





「ほう・・・・・やるではないか
 その液体は何だ?」

ようやく声を上げたシュリにガルシアは満足そうに頷き
男の持つ瓶に手を伸ばす




「ああっと・・・ お気を付けください
 これは直接触れば、皮膚をも灼く劇薬
 この手袋も灼かれぬ様、特別誂え(あつらえ)なのですよ」


その言葉に ガルシアは思わず手を引いたが
表情は何故か不気味なほどに愉し気だ





「しかし、これほどの精神力とは・・・・ 驚くばかりですな
 気化させ、直接 原液に触れた訳では無いものの
 これを傷に入れて叫び声だけとは、全く感服致します
 拷問に対し、訓練を受けた大男の密者でも
 立って居るどころか、転げ回り泣き叫ぶというのに・・・・
 それを耐えきるなど・・・・ 
 しかも 極限まで神経を研ぎ澄まさせるこの部屋で・・・・」



そう言いながら、男がゆっくりと上を見上げた

狭い石牢の天井には あの蝋燭から立ち上った白い煙が
すでに一杯に立ち込めようとしている




「拷問を生業(なりわい)とするお前でもそう思うか
 確かに、力尽くでねじ伏せるのは良いものだが
 強情とも言えるシュリには なかなか躾(しつけ)も進まぬ」



「・・・・まぁ、それも良いのですよ
 日常的にこういう事ばかりをして居りますと
 簡単に口を割られては楽しみも半減です
 ・・・色々と試せる気丈な玩具をお持ちの陛下が羨ましい」


男は再びシュリを抱き寄せると、耳に舌を滑り込ませる様に顔を近付けた
薄気味悪く、耳の中で囁く様に聞こえるそれに
シュリは嫌がり 激しく首を振って抵抗する





「シュリ様に鳴いて頂くには、
 最上級の責めが必要な様ですから・・・ 
 私の秘蔵を出しましょう」


そう言うと男は、再び台の包みを物色し始めた

ガルシアは酒を煽りながらその様子を眺め
二人は時折、視線を合わせ嗤い合う






「さあ、シュリ様、次はここへ上がって頂きましょうか」

男が丁寧に頭を下げながら どうぞ。と掌を上に誘導したのは
あの台の上だった


自分の鞄と、ガルシアの箱を横へ退けると
いつも多くの燭台がまとめて置かれているその台は
大人一人が横になれる程の大きさは十分にある


まだ消えぬ痛みで 唇を嚙んだまま男を睨み続けるシュリに
ガルシアが無言で、言う通りにしろ と目で指示をした



「・・・・・・・」

シュリが出血の続く傷を押さえたまま 台の横に立つと
男はガルシアの箱の中からロープを取り出す



「これをお借りしますよ?」

そう言うとシュリを台上に仰向けに倒し、腕を頭の上に持ち上げた



「ンッ・・」 

無理矢理に引き上げられた肩の傷が大きく開き
出血がドク・・と増える


だが男はそれに構いもせず、そのまま両腕を1つに縛り台に固定し
脚も左右に開き、台の脚部に縛り付けた




「縛るなら向こうへ吊るした方が早いだろう」

それを見ていたガルシアが
部屋の奥にある滑車付きの鎖を クイと顎で示す




「そうですな
 鞭を使われるのでしたら、全身が打てる様に吊るすのが良いでしょう
 ですが私はこのように小男
 鞭を振るうには 今一つ体力に自信がございません
 ですので・・・・・」


男が金属の包みを更に解くと その先にはズラリと細い針が並んでいた






華燭の城 - 82 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 80

指で裂き広げた肩の傷に 男の舌が這い始めていた


初めはゆっくりと大きく・・・・
開いた傷全体の大きさ、深さを確かめる様に動き
何かに得心すると、細めた舌先で傷口の中を弄(まさぐ)った


「・・ッ・・」

シュリが唇を嚙む



ジワジワと滲み出る血と シュリの呻きに
男は嬉しそうに頬を上げ、ガルシアに振り返った


「陛下、この傷はそちらのナイフでしょうか?」


椅子に座ってじっと男を見ていたガルシアの腰元のホルダー
そこから覗く 太いナイフの柄を見ながら男が声を掛ける




「ああ、その通りだ」

ガルシアは腰に手を当て
ホルダーからナイフを引き抜くと 台の上に無造作に置いた



シュリの体を胸から左肩へ、20センチ近く切り裂いたナイフ

ガルシアが常に身に付けているそれは
手に馴染む様、特別に作らせた世界に1つしかない特注品だ

ガルシアの体躯に見合うそれなりの大きさ、重さがあり
護身用と言えども、柄にはダークレッドの宝石が施されている
小さな短剣ともいえる程、刃の切れ味も良く
紛(まご)うことなき逸品といえる





「やはりそうでしたか
 さすが陛下、素晴らしい物をお持ちで」

男は自分の舌だけで感じ取った情報が間違っていなかった事に満足し
何度も頷きながらも、ガルシアのナイフを褒める口上も忘れてはいない




「しかしながら、切れ味の良いナイフは時として拷問には向かぬもの・・・
 切り口が鮮やか・・・ 綺麗であれば、一瞬の痛みは鋭いですが
 傷もすぐに塞がる・・・・・
 長い時間 いたぶるには・・・・ こういった物も・・・・・」



男はシュリを抱いたまま、右手で2つ目の革包みを台に広げた

出てきたのは、薬瓶ではなく、いくつもの金属様の道具だ

大小長短 取り交ぜ、数多くあったが、
男の性格を表す様に、全てが握柄だけが見える状態で
綺麗に一列に並べられ、収納されている 





「それが例の・・・・ お前の自慢の道具か」


「ええ・・・ これはいわゆる・・・ 
 職業上の秘密・・・ と言った所なのですがね
 今日は 素晴らしい玩具を与えて下さったお礼に
 少しご披露致しましょう
 陛下の名品とは比べ物にはなりませんが」


と、謙遜も忘れずに、男はその中から
無造作に2本の金属を抜き出し、ガルシアに差し出した




一本はキリの様に先端の尖った物
一本はメスと見える物


ガルシアはそれらを手に取った



キリは一見、鋭く見えるが それは先端の僅かな部分だけで
直上はザラザラとした研磨機の様な質感を見せる

メスの方は見た目にもハッキリわかる程
先端が欠けた様に不揃いに形成されており、刃も分厚い
よく見るディナーの肉用ナイフを粗くした様な物だ


どちらも鋭い・・・・ とは言い難く、
切る、刺すを目的をするならば、ガルシアの通念の中では
ガラクタと言っていい物だった




「これが、良いのか?」

ガルシアが鼻で嗤う



「ええ、痛みはこちらの方が・・・」

言い終える前にメスを握った男は シュリの開いた傷の中に
その先端を突き立てていた




「・・・ンッッ!!」

一瞬の呻きを上げ、立ったままのシュリがよろめく

男はシュリを逃がさぬ様に抱いた左腕に力を入れると
グイと引き寄せ、その不揃いなメスをズズッ・・・・・ と引き下げた



「・・・ンァっ・・・・・グッ・・・・・・・・・・・・・ッ・・・!!!」


既に開かれ、血を滲ませていた傷口が 更に切り裂かれる
だがその傷口は ”裂く” とは違っていた
体組織は潰れ 削り取られた様に荒れている




「これらの良い所は・・・ このように傷口が不揃いな事・・・
 なかなか塞がらず、いつまでも痛み続けます
 悪点は・・・・ 力加減を間違うと出血が多い事・・・・ですかな」


そう言うと男は違う傷の上・・・
右肩に近い鞭傷の上に、一度目より強くメスを入れた




「・・・・・・・ンッ・・・・・ン゙ッ・・・・・・・・・・・・・・・・!」


呻き、反射的に傷を押さえたシュリは
身体を支える物が何も無い部屋の中央で
倒れまいと必死に堪え(こらえ)ながら、グッと男の顔を睨みつけた

痛みで酷く息が乱れ、激しく胸が上下すると
指の間から鮮血が零れ落ちる

それでもシュリは唇を嚙んでじっと耐え、声を上げはしなかった






「・・・・・・なるほど、これほど強情とは・・・・・」

男は一瞬驚いた様に一度シュリの体を離し
一歩離れた所から そのシュリの姿をジロリと眺めた






「・・・ シュリ様、酒は? お好きで?」

「いや、シュリは神聖なる神の子だからな
 人の世の酒など飲まぬらしい」


男の誰に問うでもない質問に ガルシアが皮肉を込めて答えると


「ほう・・・ そうですか・・・・
 では・・・・これなどは・・・・ 如何でしょうなぁ・・・・・」



男の手が薬瓶の包みを探り
あの薄紅の液体の隣にあった瓶を取り上げた






華燭の城 - 81 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m

華燭の城 - 79

石牢に入ると男はグルリと周囲を見渡した


「なんと・・・ これは良い部屋ですなぁ」



クンクンとわざとらしく鼻を動かし、部屋に残る血臭を嗅ぐ仕草をする

そして 木製の台の上に自分が抱えて来た鞄を置きながら
そこにあった木箱の中身を チラと盗み見る事も忘れはしなかった

天井から下がった滑車と鎖もガチャガチャと触り、感触を確かめ
「これはいい」 などと独り呟いてから シュリに向き直った





「さあ、シュリ様 始めましょうか」

そう言うと自分の鞄から何やらゴソゴソと包みを取り出した

それは、クルクルと幾重にも筒状に巻かれた革製の包み・・・

縛ってあった中央の紐を解き、
台の上に転がす様に開いていくと
最初に見えたのは、薄紅色の液体の入った小瓶だった



男はその液体を 台の上、
燭台で灯っている蝋燭の足元に張られた水の中に
ポタポタと流し込んだ

その作業をガルシアが訝しげ(いぶかしげ)に見詰める



「それは何だ?」

男が手を止めた



「これは香料でございます
 私の仕事は 我が国の国防 全てを統括すること
 中でも諜報、そして他国の密者を捕らえ取り調べる事は
 私の仕事の中でも、最重要・・・ 国の為の大事だと思っております
 その時に自白剤を使うのですが・・・・」


「ああ、それは我が国も同じだ。 知っている」


「ええ、その自白剤を作る時に偶然出来たのがこれでございます
 淫なる気にさせてくれる事この上なしで・・・・
 陛下も是非、いかがですかな?」





包みから同じ瓶をもう1本取り出すと、
「どうぞ」 と目配せしながら ガルシアの目の前に コトンと置いた


高さ10センチにも満たない細い瓶
少しくびれた首部分から上部の蓋にかけて 革布が掛けられ
厳重に縛られているところを見ると新品なのだろう




「ほう・・」

興味有り気に ガルシアはそれを手に取り
目の前の炎にかざすと、中身をしげしげと見つめた



「まぁいわゆる 麻薬の一種なのですが・・・」

「・・・麻薬だと?」



ガルシアは思わず 口に手を当てた

この時代も麻薬は既に世界中で横行し
その危険性は以前から大きな問題になっている
それを商売にし、法外の財を得ている者が居るのも事実だ


「そんなものを使って、ワシの体に害はないのか?!」

口を押さえたまま、鋭い眼差しが男を捉える



「大丈夫でございますよ
 麻薬と言っても、これは合法の域の物
 効き目は一過性で、
 数時間で完全に体から抜ける事が実証されております
 私も同じ部屋に居るのですから、どうぞご安心を」


それは正論だった
体を壊す様な危険なモノを 自分自身に使うはずがないのだ




「確かだな?
 それならば・・・ まあ、よかろう」

ガルシアのこの一言で作業は再開された






程なくするとその蝋燭から甘い香りが匂い立つ

それと同時に 意識はより鮮明になり
体だけが脈打つ様に 極めて敏感に反応し始めていた


「なるほど・・・・」

かなり強い甘い匂いにうんざりしながらも
ガルシア自身も その身に起きた変化を感じ取り
その絶大なる効果に満足したのか、自らも上着を脱ぎ捨てた



男もまた同じだった
その香りを存分に鼻から吸い込んだ後
急かすように シュリの残った衣服を剥ぎ取り始めた






全裸になったシュリが二人の前に立っていた
透き通る様な肌に纏っているのは、
上腕や腿に巻かれた わずかに残る包帯と、数えきれない程の傷


「ああ・・・ 痛ましい姿が、なんとも美しい・・・」

男は嬉しそうにシュリの傷だらけの体を引き寄せると
両腕で抱きつく様にして頬擦った

そのまま胸に舌を這わせていく



「んっ・・・・」


ガルシアは男の技量を測るかのように 台横の椅子に腰をかけ、
シュリが顔を背け 目を閉じ嫌がる様子を
じっと黙って見ているだけだ





舌が傷の上までくると 男の左手はシュリの体を抱き寄せたまま
右手で執拗に傷を弄り回した

その度に痛みでシュリの顔が歪む






華燭の城 - 80 に続く
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ ランキング参加中です。クリックして頂けると励みになります m(__)m
プロフィール

凛

Author:凛
BL・MLを日々妄想してる腐女子

しかもかなりハード目が好きな壊れかけ

SM・拷問等の酷い描写が苦手な方は、ご遠慮ください

1作目 『刻印』
2作目 『華燭(かしょく)の城』 
完結しました。
ブログタイトル下のマップより全話読んで頂けます。
『刻印』の簡単な解説はこちら から


まだまだ初心者故、描写の至らない点
設定の矛盾は笑って見てください 

読みやすく・・と思っているので、長編小説ですが、各回短く、短文、1日1回UP予定です


拍手・ランキング・感想など頂けると励みになります

ツイッター @0storyRin
UP情報や裏話を呟いてます

サイトマップ・全記事表示
最新トラックバック
カテゴリ
COUNTER



にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

↑ ランキング参加中です
1ポチ してもらえると嬉しいです
検索フォーム
QRコード
QR


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。