0-story

18禁 BL小説です。主に拷問・凌辱等ハード系。 こういう小説に興味の無い方、嫌悪感がある方はご遠慮ください。サイトマップより一気読み出来ます
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華燭の城 - 78

「本当にこれを・・・・ 好きにしてもよろしいのですか?」

シュリを見上げていた首をグルリと回し、男が振り返る



「ああ、存分に楽しんでくれ
 その代り 約束は必ず守れよ」

「勿論ですとも
 これだけの上モノで遊ばせて頂けるなら
 我が軍の情報など、いくらでも お安いもの・・・・」


言い終わらぬうちに男は
シュリの体に巻かれた包帯を挘る(むしる)様に解き始めていた

傷だらけの上半身が剥き出しになると 男はニヤニヤと口元を緩める
そして 「これは?」 と、シュリの首にかかる古いカギを摘み上げた




「ああ、部屋が汚れぬ様に奥に石牢があるのだ
 お前も使いたければ行ってみるがいい・・・」


「・・・・なりません!! 陛下っ!!!」



酒が入り上機嫌のガルシアが言い終わる前に
扉横に立ったままだったラウが 我慢しきれず声を上げた



「おい・・・・ ワシに文句があるのか?
 早くカギを開けて部屋の準備をしろ、ラウム
 客人がお待ちかねだ」
 

「陛下! ・・・・それだけはお止めください!」


「うるさいぞ
 ラウム、聞こえんのか?」


「・・・しかし!」


「・・・・・ラウ!止せ!」



食い下がるラウを止めたのはシュリの声だった





昼間 弟の話をしていた時のシュリ・・・・・
その嬉しそうな様子は、今でもラウの目に焼き付いている
何があっても弟を救うのだというシュリの気持ちは
十分過ぎる程判っている


だが・・・・


そう思いながらも ラウは拳を握り締めた
逆らう事は出来なかった
諦めた様にシュリの元へ歩み寄ると、首からカギを外し
悔しそうに目を伏せたまま奥の部屋へと向かった





ラウが石牢の燭台に火を灯し戻って来ると
ガルシアはゆっくりと立ち上がり
体が触れる程の眼前で、ラウの前に立ちはだかった


「お前は入るな
 シュリが弄ばれる様を、お前は見たくもないだろうからな?
 今夜は自分の部屋で待っていろ
 終わったら連絡する
 シュリには 報いを受けさせねばな」


「・・・・ 報い・・・・」

ラウがハッと顔を上げた



「判らぬとでも思うたか?
 身に覚えが無いとは言わせんぞ
 誰がシュリを ”愉しませろ” と言った?
 ワシは跪かせ、口で奉仕する事を覚えさせろと言ったのだ
 その命に背いた罰だ」 



ガルシアが氷の様な目で見ていた

ガルシアは・・・・
シュリが自分に抱かれた事に 気が付いている・・・・

元々、感の鋭いガルシアだ
自分の獲物に、自分の許可なく、横から他の者の手が付いた事を
黙認するはずなどないのだ




黙って視線を落としたラウの手から
ガルシアは奪う様にカギを取り上げた


シュリとすれ違い様、
ラウが小さく 「申し訳ありません・・」 と呟いたが
その声にシュリは一瞬立ち止まっただけで、黙って首を横に振った





「さっさと行け」

ガルシアがシュリの体を部屋へと押し入れ 
そのあとに2人が続くと ガチャリと中からカギが掛けられる音がした










ラウはそのまま部屋を出た
王の命令なのだ
それに鍵を掛けられてしまっては、ここに居ても出来る事はない



また大量の薬が必要になるかもしれない・・・ 

あの陰湿な男の目を思い出し、言い様の無い不安に駆られながら
扉番が無言で開けた黒扉から 表の、絨毯敷きの廊下へと出た








「・・・・ラウム!」

部屋に戻る途中、ラウは名前を呼ばれハッと我に返った


いつから呼ばれていたのか、呼んだ声はもう目の前に来ていた

「何をぼんやりしている!
 陛下はどこだと聞いている」

声の主はガッチリとした体格の男
身長はラウと大差ないが、その体つきのためか ラウより一回り大きく見え
上下共、黒のスーツを着ているあの黒服の側近、オーバストだった





「・・・・・・・陛下は、あの部屋だ」

宴の場にも入り、いつもガルシアの側にいるこの男は
側近の階級としてはトップクラス

この男が ガルシアの最も近くに居る男で
側近の中でも最上官・・・ いわゆる側近長という立場である以上、
あの部屋の存在も、ガルシアの性的嗜好も全てを把握している

実際に神国からシュリを護送してきたのもこの男だ
その事を判った上での ラウの短い返事だった




「ああ・・・」

オーバストの声には 「またあそこか」 という響きがあったが
それ以上余計な事は言いはしなかった


「陛下に、急ぎ話があったのだが・・・・
 あそこと言う事はシュリ様も一緒だな?」

「・・・・・」


それは今、いくら急用でも自分が入室してはマズイのだろう? 
・・・という問いだった

しかしラウは それに対し何も答えなかった




冷然としたまま 自分の質問に答えようともしないラウの態度が
癇(かん)に障ったのか

「・・・ しかし・・・ 
 世話係が主の側を離れて何をしている?」

オーバストは 職務怠慢だろう。 とも言いたげな
挑発的な声で続けた



「・・・・・・今夜は・・・ 他国からの客人が居られる
 自室で待てと、陛下のご命令だ」

その答えにオーバストの表情も変わった

「他国の客人?  ・・・・あの部屋に?」


同じ事を聞き返されただけの質問に
ラウはこれ以上話す気にもなれなかった


この男にシュリを気遣う気持ちなど微塵も伺えない
少しばかりの同情はしているのだろうが・・・・

男の声を無視し、無言で歩き始めたラウに
オーバストはもう何も言わなかった






華燭の城 - 79 に続く
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華燭の城 - 77

「ああ、本当にあのシュリ様だ
 間近で見れば一層美しい・・・
  
 正装がよくお似合いで、立っておられるだけでも絵になりますな

 宴の時は それはそれはご立派に立ち振る舞われていたが・・・
 それが・・・ まさかこのような玩具とは・・・・」


嬉しくてたまらないと言う様に 男はクック・・・と喉を鳴らして笑った





「躾が終われば人形か
 確かにそうだな、ワシにも覚えはある」

ガルシアは酒を口に運びながら 扉横のラウを一瞥(いちべつ)した



その視線に気付いた男の目も ラウを見捉える


「あれは・・・ 廊下に居た者でしょうか?
 黒髪とは なんとも珍しい
 しかもあの出で立ち・・・・
 あれもかなり上物ではございませんか、陛下」


「あれか・・・」  



ガルシアは次の酒をグラスに満たしながら続けた



「あれはシュリの世話係
 そしてお前の言う ”人形” だ」

嘲笑う(あざわらう)ように唇を上げた




「ほう・・・ あれも既に陛下の玩具でしたか 
 これはさすが、さすが、お目が高いと言うべきでしょうな
 いや、しかし 既に人形とは惜しいですなぁ・・・
 私も一度 鳴かせてみたかったですよ」



暗い廊下ではよく判らなかった男の顔が、暖炉の灯りで揺れていた

暗く くすみ、酷く黄味を帯びたその土気色の肌に
ギョロリとした大きな眼だけが目立ち
かさついた頬が引き攣る様に嗤うと 途端に陰湿さが度合いを増す





「だがあれは卑しい平民の出だ
 少しばかり鳴かせれば、すぐに人形
 それよりもやはり神の子だ
 気品も強情さも、身体も・・・・ それにアレの感度もな
 全て言う事なしだ」


「おお、それはそれは・・・・
 やはり身分で違いますかな」




新たな酒が注がれたグラスを持ち上げながら 男のじっとりと湿った目が
再びシュリを見つめた



「すぐにでもいろいろと試してみたい所ですが、
 それでは勿体のうございますな
 ここは時間を掛けて楽しませて頂きましょうか・・・・
 では・・・ まずご自分で上から脱いで頂きましょう
 ゆっくりとですよ・・・ シュリ様」


「・・・・・」


「シュリ、例の件、忘れた訳ではあるまいな?
 弟がどうなってもいいのか?・・・・・ さっさとしろ」




グッと男を睨みつけ動かないシュリに ガルシアの声が冷たく響く



やっと医師を集める所まで来たのだ
ここで約束を破棄させる訳にはいかなかった



二人をじっと見据えたまま、唇を噛み締めたシュリの手が
ゆっくりと自分の衣服に掛かる



男は正装と言ったが、これは正確には 準正装だ
本当の正装はこれに左肩の勲章から純白のストールが付き、奉剣を携える
今までで、正装まで着用したのは 初回の宴だけだ

それでも多くの勲章や銀飾りの付いた上着は
バサリと重い音を立て足元に落ちる

ネクタイを外していくその様子を
ガルシアと男は 酒を酌み交わしながら眺めていた


シャツのボタンを外し、それを脱ぐと
痛々しく包帯が巻かれた上半身が現れた




「ほう、これはこれは・・・」

男は嬉しそうに立ちあがった




シュリの前に立つと肩口に巻かれた包帯をチラと除ける
そこに現れた、まだ生々しく裂かれた傷痕を見ると
男の顔は、その目は 一瞬で妖しい光を帯びた



「これは・・・ 鞭・・・
 しかもこの切れ味は・・・希少な黒革ですか?
 で、こちらはナイフ・・・?」

嬉しそうに笑いながら男がガルシアに尋ねた




「ああ、そうだ
 そこまで判るとは さすがだな」


「良いですねえ・・・ 
 皆の前であれほど美しく立派に振る舞う神の子の体が
 これほどに傷だらけとは・・・
 ・・・そそられますなぁ
 それにまだ塞がってもいない」
 



男はすでに興奮した様子で、肩口から胸への傷・・・
ガルシアにナイフで斬られた割創を、掌で撫で回すと
煽る様な不敵な笑みを浮かべ、シュリの顔を見上げた


だがシュリは、その男の不快な行為を
ただじっと、無表情のまま見下ろすだけだった


動かないシュリの冷たい顔に、男は更に薄ら嗤いを浮かべる

傷の両側に 自分の両手の親指を添えると、
シュリの目をじっと見ながら、一気に・・・・
グッ・・ と左右に押し開いた

まだ薄い皮膚が無理矢理こ引きちぎられ、ビリと裂ける


「んっ・・・」

シュリがその痛みに一瞬、目を閉じると
男はその声に反応し、益々歓喜の表情で目を輝かせた
傷口が開き、中の血を見せていた






華燭の城 - 78 に続く
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華燭の城 - 76

「そのままの服装でいい、部屋に来い」


宴が終わり、広間から出てきたガルシアは、それだけをシュリに告げ
隠れていたあの男に近付き 一言二言交わすと
一緒に廊下の奥へと消えていった



いつもは 装飾が多く、脱ぎ着し難い重たい服を脱ぎ
着替えてからあの部屋へは行くのだが、今日は着替えず来いと言う


・・・どういう事だ? 


シュリが その答えを求めるようにラウを見たが
ラウもまた 理解出来ず、小さく首を振るだけだった










シュリが言われるまま、宴を終えたままの姿であの部屋へと出向き
ラウが扉をノックしようとすると 中からガルシアの声がしていた


・・・誰か他にいる?


ラウの表情が曇った



あの陰湿な目をした小男の顔が脳裏に浮かんだが
あれほどシュリとの秘密が外に漏れる事を恐れていたガルシアが
この部屋に 第三者を招く等という事は考えられなかった


現に、ラウがこの部屋の存在を知ってから今まで15年間
ここにガルシア以外の人間が居た事は一度もない





「失礼します。
 シュリ様をお連れしました」




一瞬のためらいの後、そう言ってラウが静かに扉を開けると
薄暗い部屋の中央で、一際 目立つ真紅のソファーに
ガルシアと あの男が向かい合わせで座り
楽し気に酒を酌み交わしている所だった


その光景にラウは思わず唇を嚙んだ
心臓の辺りで警鐘が鳴り始める


まさか・・・ とは思ったが、こんな事は初めてだった


シュリも何か感じたのか、
ラウの一歩前に居るその手は、強く握り締められている




ガルシアはチラと視線を上げ二人を見ただけで、また男との談笑に戻り
一仕切り 話しが終わるまで
シュリとラウは扉の前で、立ったまま待たされる事となった



小声で、しかも手で口元を隠したままの小男

何を話しているのかは、部屋が広いせいもあって判りはしないが
時折チラチラとこちらを伺い見る小男の視線から
シュリの話をしているのは確かだった




「では、頼んだぞ」 のガルシアの声に
男は 「勿論です」 とでも答えたのだろうか

満面の笑みで頭を下げる男を前に ガルシアはシュリを手招きで近くへ呼んだ




「今日は客がいる
 存分に楽しませてやってくれ」


「楽しませる・・・・?
 ・・・・・ それはどういうことだ、ガル・・・ 陛下・・・」


二人の少し手前で立ち止まったシュリは
かろうじて呼称を 外交的な物に戻し、蝋燭の灯りに照らされた男の顔を見た





その男は シュリにも覚えがあった
宴の最中 広間の片隅で、一人隠れる様に酒を飲んでいた男だ



「文字通り、客人だ
 楽しませてやればいい・・・ ・・・お前のその体でな」

「・・・・なっ・・・」

「・・・陛下!」



何を言うのだ! と声を上げそうになったシュリを遮ったのは
入り口横に立つラウの声だった



「んん?」

ガルシアはジロリとラウに鋭い視線を送り、言外に 「黙れ」 と示すと
それでも食い下がろうとするラウを完全に無視し、男に向き直った







「さあ、これがあの有名な神の子だ
 お前の希望通り 宴の時のままだ、好きな様に遊んでくれ
 世界中探しても、これ以上の上物はないぞ?
 まぁ、まだ躾 (しつけ) がなっていないのでな
 芸は出来ないが」


「いえいえ、陛下
 躾が足らぬぐらいの方が楽しみ甲斐があるのですよ
 嫌がり暴れるも良し、泣き叫ぶも良し・・・
 これが完全に服従した ただの人形では、そうはいかない」



そう言って男は改めてシュリの全身を舐めるように見つめた






華燭の城 - 77 に続く
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華燭の城 - 75

その吉報は翌朝もたらされた


ベッドに座ったまま
開け放たれた格子の窓から朝陽を見ていたシュリに
ラウが声を掛けた



「シュリ様・・・・ 実は昨日・・・・・」

だがぼんやりと外を見ているシュリは返事をしない




「・・・・シュリ様? 大丈夫ですか?」

テーブルに朝食の準備を終えたラウが
シュリの側まで来て顔を覗き込んだ




「・・・シュリ様? 痛みますか?」

「・・・・ああ・・・・いや・・ 痛みは大丈夫
 さっき、ラウが来る前に薬を飲んだから・・・
 あの副作用にも少し慣れたけど、やはり体が重いな・・・・
 ・・・・・・・それに・・・・・
 ・・・ 二人の時に ”様” は無しの約束だ」


そう言って微笑んだ
その笑みにラウも頷く



「そうですか
 薬を一人で飲まれるのは良いですが、時間は守ってくださいね
 強い薬ですから、必要以上に飲まない事・・・  
 よろしいですか? シュリ」


「ああ、わかっている
 それで昨日・・・?」


「・・・ああ・・・・ 昨日、養父の所でジーナ様の元へ・・・ 
 神国に派遣する医師団の名簿ができました
 伺ったジーナ様のご容態から 考えられる病気を考えて
 それに詳しい医師を集めました
 今 招集を掛けているので、揃い次第 神国へ出向ける様です」


「それは本当か!?」



シュリの顔がパッと明るくなる



「ええ、幸いにも似たような症例を見た事があると言う医師もおりますので
 その者に聞けば、有効な薬も作れるのではないかと
 養父も申して・・・・」


「・・・・ありがとう!!ラウ!!」



シュリがラウに飛び付く様に抱き着いた
その喜び様にラウも笑顔になる



「いえ、私は何も・・・
 ・・・・安心されたら、シュリは食事ですよ?
 ジーナ様がお元気になられても、貴方が弱ってしまっては困ります」


抱き着くシュリの背中をトントンと優しく叩きながらラウが言うと
「そうだな」 そう言ってシュリは ラウの唇に軽く口付けた






その日のシュリは本当に嬉しそうだった
体の事を考え、部屋から出る事は無かったが
朝食も昼食もラウと二人で摂ると
午後は窓際のソファーに座り、多くの話をした

シュリの幼い頃の話、学校の話、神国の話・・・
ジーナの話はラウも熱心にメモを取りながら聞いていた

格子の窓から見える空は 相変わらずこの国特有の暗さを持っていたが
部屋に笑みが絶える事は無かった








宴の前には、ラウはいつものように支度を手伝い
夕刻からの宴が始まると、広間の廊下に控えてシュリを送り出した

シュリの体に異変があった時はすぐに対処できるよう
内ポケットには薬も忍ばせている



同じように、広間に入る事を許されないガルシアの側近達も
廊下に立たされ控えていた

ガルシアの側近も、名は ”側近” だが実情は私兵
軍と同じく階級という位置付けがあるらしかった

階級が高い者・・・ 
オーバストなどはいつもガルシアの側に付き、一緒に広間にも入るが、
位が下がれば、いくら側近と言えども
簡単にガルシアの横に立つ事は出来ない

相当の月日を経て、功を上げ
ガルシアの確実なる信頼をその手に勝ち取った者だけが立てるのだ




そして その下級の側近達の更に後ろ・・・
ガルシアと共に広間に入って行ったシュリの後ろ姿を
半身を隠すようにして 柱の陰から見ていた一人の男が居た




見た事の無い男だった

ラウはその異質な視線・・・ シュリを見る視線に思わず眉を顰めた
だが、ガルシアの私兵達が何も言わないのだ

異質 と感じるだけで、使用人の自分が何か行動を起こす訳にもいかず
ただその男を視界の端に捉えていた



広間に比べると廊下は暗く、顔ははっきりと判らなかったが
ガルシアよりも 年は若く見える
が、背は低く小男だ
変わらないのはその湿気を含んだような目だった

そして男は スルリと宴の中へ 溶ける様に入って行った






その男は宴が終わる直前に また廊下へと姿を現し
じっと何かを待つ様に、最初に居た時と同じ柱の陰に立っている
  
ラウはその様子が妙に気になっていた






華燭の城 - 76 に続く
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華燭の城 - 74

「・・・・んっ! ・・・・・・・んっっっ・・・・・・・・・・!」


ガルシアには犯されている・・・・ 初めてではない
だがそこはまだ狭く、執拗な責めで傷もついている

そこへ新たに押し込まれたモノの痛みでシュリは唇を噛んだ




その声に ラウが動きを止めた

「シュリ様・・・・」

自分を気遣う声を、シュリは遮った


「二人の時は・・・・・ ”様” は無しだ・・・・・・・
 ・・・構わない・・・・・・ラウ・・・・・・・・・ 
 ・・・・・続けて・・・・ もっと・・・・・・」




もう反論はなかった
ラウは 「はい」 とだけ答えると
またシュリの中に自身を送り込み始める



「んっ!・・・・んっ!・・・ぁぁあっ・・・・!」

絡めた指が痛むほど シュリは身を捩り
ラウの手を握り締めた




「シュリ・・・ もっと力を抜いて・・・・ 楽にして・・・・・
 でなければ余計に痛みます」


「ぁっ・・・ぁ・・・んっっっ・・・・」


「息を詰めないで、ゆっくり呼吸をして・・・・・・・」




ラウの静かな声に促されて シュリは必死に深い呼吸を繰り返す

そのシュリの胸の上下に合わせて ラウのモノが緩やかに
そして確実にシュリの中へ挿入され、深部まで届こうとしていた




「そう・・・ お上手ですよ・・・・・ そのまま楽に・・・」

そう言うとラウは 体を繋いだままシュリのモノを手に取った
優しく指で先端をいたわる様に撫でた後、
根元から大きく包み込み、動かし始める




「んぁ・・ぁああ・・・・・ラウ・・・・・・・・・ぁ・・ぁあ・・っ・・・・!」

あの石牢でのどんな責めとも違う 初めての本当の快感に
シュリは甘い声を上げた




「そんなに声を上げないで・・・ 
 外にまで聞こえてしまいます」


「・・・・ ぁああ・・・そんな・・・無理っ・・・・・・・・」


「シュリ、ほらもっと顔を見せて・・・・」


「・・・ぁっ・・ぁっ!  ・・・ラウ・・・・ラウ・・・っ・・・・!
 ・・・・・・だめだ・・・・ 恥ずかし・・・・  んっ・・・!」


「本当に貴方は可愛い過ぎます・・・・」


「んっ・・んぁっ・・・・・ ラウ・・・・」






愛しい者と体を繋ぐ・・・・
それがこれほどに満たされるものなのかと
シュリはこの時 初めて知った


ラウも膨潤した自身のモノで 深く、浅くシュリを突き上げ
そして悠々と内の粘膜を掻き回していく


時が経つに連れ、シュリの呼吸は甘い喘ぎになり
その体内は、まるで生き物の様に、益々 熱く強くラウに吸い付いてくる
普段の穏やかなシュリからは想像も出来ない程だ


これが・・・ シュリの・・・・ 
あのガルシアさえも虜にしたシュリの身体・・・
絡み取られる様なその感覚に、ラウも驚きながらも喜し
その質量は一層 増えていく




「・・・! ・・・ぁ・・・・
 ・・んっぁあっ・・・・・・   ラウ・・・・いい・・」


「・・・シュリ・・・・ っ・・んっ・・・・」


「・・だめだ・・・  ラ・・ウ・・・ 
 ・・・・・・ もう・・・いきそう・・・・っ・・・
 ・・・・・・・・・・・・いか・・・ ・・せて・・・・・・・・・・・」



その切ない懇願の声にラウの動きも早くなった




「・・・・一緒に・・・・
 ・・・・・・シュリっ・・・・・っ・・・・んっ・・・・・・!!」


「・・・・・・っっぁ・・んっ!」




シュリの身体が大きく仰け反り 自身の腹上に白い粘液を吐き出すと同時に
ラウのモノも シュリの中でビクと跳ねた


シュリはそのラウの脈動をハッキリと感じながら肩で息をする

達したばかりのその身体は快感の余韻に酔い
思考は熱にうなされた様に熱く、半ば茫然としていた
それでもシュリは心から嬉しいと思えていた




「・・・ラウ・・・・・・・」

「・・・・ シュリ」

シュリが腕を伸ばし ラウを迎え、
ラウの腕がシュリをしっかりと抱き止めた









シュリを部屋へ送ると自室に戻ったラウは一人で奥の薬品部屋へ籠った

灯りは点けず、所狭しと多くの薬品が並ぶ机の蝋燭1本だけに火を灯すと
椅子に腰掛け、ラウは額に当てた拳を強く握り締めた

どれほどの時間か・・・・・
暫く目を閉じたままじっとしていたが やがて顔を上げると
机の端にあった小さなガラス瓶を取り上げた

琥珀色の液体が、瓶一杯の状態で入っている

それを高さが5センチ程の細く小さなグラスへ
量る事もせず、直接数滴を滴らすと、傍らの水差しの水で薄める


二本の指で持ち上げたそのグラスをゆっくり燻らせ(くゆらせ)ると
琥珀の液体の濃度が濃いのか、
度数の高いアルコールを水で割った時の様な 不思議な雲様の模様が
グラスの中に浮かび上がり、うねり、混ぜ合わされていった


琥珀から透明な液体へと見た目を変えたそれをじっと見つめてから
ラウはグラスに軽く唇を付けると、そのまま一気に天を仰いだ

量はほんのわずか

たった一口にもならない
それでも トンとグラスを机に置くと同時に
ラウの肩が大きく2度上下し、そのまま強く目を閉じた






華燭の城 - 75 に続く
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華燭の城 - 73

その声にラウの唇が再びシュリのモノを含み
細い指先が後ろに触れる


「んっ・・・」

シュリが小さく体を震わせながらも頷くと
ラウの手がシュリの脚に掛かった


長く白い脚を開かせたまま持ち上げると 後ろが露わになる

そこへラウの唇が寄り
舌先が、緊張でまだ硬いシュリの粘膜を こじ開ける様に動いていく
だがそれは 決して強引ではない



「ぁっ・・・・     ・・・んっ・・・・っっ・・・・・」

手で自身のモノを上下に刺激されながら 後ろを舌で責められる
同じ行為でも、それはガルシアのものとは全く違う感覚だった



「ぁぁ・・・ ラウ・・・・・ ラウ・・・・・・・・・・・・」

ゆっくりと、温かく、促す様な舌先に喘ぎながら
シュリはラウの肩に手をかけた






「ラウ・・・・ 私の中にお前を・・・・」

その声にラウがフッと顔を上げる
そして一瞬の間の後、ゆっくりと大きく息を吐いた




「シュリ様・・・・・ やはりいけません・・・・
 ここまでです・・・
 これ以上は・・・・  最後までは・・・・
 使用人に身を任せ、私の様な者と体を繋ぐなど・・・・」


その声に、シュリの ラウの肩を掴む手がぎゅっと強くなる
じっとラウを見つめる瞳が悲し気に揺れた



「シュリ様は今、弱っておいでなだけなのです
 心も体も・・・
 ですから私などを求められるのです
 もっと冷静に・・・・・」


「違う・・・・! 私は・・・・・・・」



そう言いかけて言葉を飲んだ


神の子として、今まで 不可侵不犯の掟の中で生きてきた自分が
自ら抱いて欲しいなど・・・・
しかも男に・・・・・
本当にどうかしている・・・・・


ラウの言葉を 否定できなかった


それでも、ラウにこの身を委ねたいと思う気持ちは事実だった
離したくないと思った
誰にも渡したくはなかった
ここにラウが居るのだと、この体に刻み込んで欲しいと・・・




「・・・ でも・・・・・ それでも・・・・・  私はお前に・・・・」

それ以上は胸が詰まり、言葉にならなかった 
シュリの頬をツ。と涙が伝う




「シュリ様・・・・・」

その涙を指で拭ったラウの指が シュリの額に掛かる髪を掻き上げた
そっと唇を寄せ肩を抱き締める






「・・・・よろしいのですか? 本当に・・・」

耳元で呟かれたその声に シュリは小さく頷いた



シュリを左腕で抱き締めたまま
ラウの唇がシュリの首筋を這い、右手が下へと延びる
自身に触れられビクンとシュリの身体が反応する




そのまま中指を後ろへ落とされた

先程までラウの舌で解された(ほぐされた)そこは
ラウの細い指をすんなりと飲み込んでいく


「ぁぁ・・・・・・・・・」

片膝を立て 脚を開いたシュリは、ラウにしがみついていた






ラウの指がゆっくりと動き始める

「んっっ・・・・  んっ・・ ぁ・・・ぁっ・・・」


内部を焦らす様に、優しく丁寧に擦られて シュリは思わず声を上げた

早くなる鼓動に胸の傷がトクトクと痛む
それでも体はしっかりと反応し、しなやかな身体を仰け反らせる


シュリの呼吸と ラウの指の動きが重なり、室内に湿った音がし始めると
ラウは シュリの膝を曲げ、抱え込ませるようにして覆い被さった

そして その柔らかな粘膜に自身をあてがう




恥かしさで、自分の腕で顔を覆うシュリの手を取り
ラウはその指に 自分の指を絡め握った



「お顔を見せてください」

覆いかぶさったまま、シュリの顔を見つめそう言うと
そのまま グッ・・ と先端を押し込んだ





華燭の城 - 74 に続く
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華燭の城 - 72

シュリの呼吸が落ち着き始めた頃には
部屋は温かくなっていた


「ご気分は? 大丈夫ですか?」

ラウはシュリを腕に抱いたまま、心配そうに顔を覗き込む


まだハッキリと声は出ないが、小さく頷いたシュリに微笑み
シャツのボタンを外し、包帯を解くと
その体をゆっくりとベッドに横たえさせた


幸いにも出血はしていない
だが、脈を診るために 傷の無い首筋に手を当てると
まだシュリの体は冷たいままだ




「こんなに冷えて・・・・・」

手を伸ばし、シュリの額にかかる髪にそっと触れる



 
自分を心配そうに見つめるラウの顔が間近にあった



「・・・   ラウ・・・・・」

もしこれが幻ならば消えないで欲しい・・・
シュリはそっとラウの名を呼んだ


「大丈夫・・・
 ちゃんとここに居ますよ、シュリさ・・・・」




・・・ ラウ・・・!



言い終らないうちに シュリは腕を回し ラウにしがみついていた

本当にラウが居る
昨夜と同じ言葉・・・・
今日一日、何度聞きたいと願った事か・・・・
どれほど逢いたかったか・・・・



冷たい腕で強くラウを抱き締め
決して幻ではないその声を、その温もりを感じながら
シュリの唇がラウの唇を塞いだ




「・・・・っ・・」

それは以前の様な 触れただけの物ではなかった

驚いて一瞬目を見開いたラウだったが、
そのままシュリの身体をそっと抱き止める

その腕に安心したようにシュリの唇はラウを求め続けた
その存在を確認するように・・・・・
もう離さないと意志を示すように・・・・





そして長い時のあと やっとシュリは唇を離すと
その小さな、形の良い唇が動いた

「・・・・ラウ・・・・ ・・お前に・・・  私を・・・・・」

最後は声にはならなかったが
 ”抱いて欲しい” と、そう動いていた





「・・・・・」

シュリを黙って見つめていたラウは、そのまま小さく首を振った

「シュリ様・・・・ それは・・・」


言いかけるラウの目を シュリがじっと見つめ返す
それは訴える様に、悲しそうで辛そうな瞳・・・・・
見ているだけで胸が締め付けられ苦しくなる


・・・・・シュリ・・・・・様・・・・


ラウはしがみつくシュリの腕を外し 再びベッドへ横たえると
もう一度その瞳を見つめた
真っ直ぐに・・・・・

胸の苦しさは酷くなった




ラウは そっと唇を寄せ、シュリの冷たい首筋に触れた

シュリの身体が ピクンと震える



首筋から耳元へ・・・
耳元からまた喉へ・・・・
唇を這わせながら、シュリの衣服を脱がしていくと
シュリは ゆっくりと目を閉じた



薬湯のおかげでもう痛みも苦しさもない
それどころか体は熱く反応し そこに這うラウの唇は優しかった


喉から胸元へ下りた唇が小さな突起を捕え、舌先で転がすと
シュリは小さく声を上げた

「ぁ・・・ぁっ・・・」

捩る(よじる)その体には
まだ鞭痕とナイフで切られた割創がはっきりと残る

そこにもラウの唇はゆっくりと這った


それはガルシアの責めなどとはまるで次元の違うものだった
胸から腰まで1つ1つの傷を 唇で手当ての様に労わられると
体は驚くほど熱くなっていく



「ラウ・・・・」

名前を呼ばれ、ラウもベッドへと上がる

シュリのベッドとは違い小さな物だったが
それが余計に体を密着させた


ラウは シュリの脚を開かせ、間に身を置くと
以前、シュリに教えるために見せた行為を繰り返す様に そこへ唇を寄せる
先端の穴を舌先で解す(ほぐす)様になぞった後、そっと口で包み込んだ


「ぁぁっ・・」

足の先まで力が入り シュリは思わず体を仰け反らせ
シーツを両手で握り締める


その姿にラウは戸惑う様に顔を上げた



「シュリ様・・・・」

「・・・・構わない、続けて・・・・・ ラウ・・・・」






華燭の城 - 73 に続く
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華燭の城 - 71

「・・・・・・ラウ・・・・・・」

「シュリ様・・・・?」

驚いたラウの言葉が詰まると同時に、杖の音が早くなる





「シュリ様がお前の部屋を探して居られたのでお連れし・・・・」

話し続けるダルクの声は
もうシュリの耳には入らなかった




「・・・ ラウ・・・・・・・・・・・・」

名前を呼びながら、シュリからも歩み寄っていた
が、実際にはもう足は重く、痛み続ける傷のせいで
ほとんど倒れかかっていたのだが・・・



その肩を ラウが素早く正面から抱き止めた



「ダルク、ありがとう、助かった
 今夜はもう遅いから、部屋に戻ってください
 後は私が・・・・ シュリ様をお連れする」


だが ラウに口早に話しかけられても
ダルクはその場から動きもせず、返事もない
グラリと倒れた様に見えたシュリに驚いたのか、冷たい廊下に立ったままだ



ラウの表情が一瞬 曇る・・・・

「さぁ、もう行ってくれ、ダルク」


ラウの低く強い声で、ダルクはようやく我に返った

何か 見てはいけない物を見てしまったのかもしれない・・・ と感じながらも
ダルクはその考えを、見間違いだ。と即座に自身の中で否定した
神の子が、神が・・・ 倒れるはずなどないのだから・・・・
 

「ああ・・・ わかった、ラウ・・・・
 後はお願いするぞ
 おやすみラウ、シュリ様」

そう言って自分を納得させる様に何度か頷き
深く頭を下げると、今 歩いて来た廊下を戻って行った






足音が遠のくと 途端にシュリの体から力が抜けた
全体重がラウの腕に掛かる


ダルクの前で、弱っている姿を見せまいと
懸命に気を張って来たのだろうが、
ラウの顔を見てその緊張の糸がプツリと切れたのだ





「シュリ様!・・・・大丈夫ですか!?
 どうして こんな所までお一人で・・・・・ 早く部屋に・・・・」



鍵を開け、シュリを抱きかかえる様にして自分のベッドまで運んでいく

朝から一日、誰も居なかったのだろう
部屋は冷え切っていた



「今、火を・・・・・」

そう言って立ち上がるラウの手をシュリが掴んでいた




「ラウ・・・・・ どうして・・・・・・
 どうして今日は来なかった・・・・」


一瞬 困った様にラウが目を伏せる
そしてベッドの横に跪くと



「今日は 休暇でしたので・・・・
 ジーナ様の件、養父に直接話をしようと思い、
 早くから街へ出ておりました
 朝のご挨拶もせず申し訳ありません

 昼食前には戻るつもりだったのですが、
 急な嵐で身動きが取れなくなってしまいこんな時間に・・・」

そう言って頭を下げる




ジーナ・・・・・ 休暇・・・・・・



ラウが使用人である以上、休暇があるのも当たり前のこと
その休みにわざわざ 弟の事で出かけてくれたと言う・・・・・





そして何よりも、嫌われた訳ではなく
今、目の前にラウが居る・・・・・
それだけでシュリの胸はいっぱいになった



「そうか・・・・・・・・
 ごめん・・・・・
 ありがとう・・・・」


それだけ言うのが精一杯で 今にも溢れそうな涙を留め様と目を閉じた




「本当に・・・・ 貴方と言う方は・・・・・・・・
 そのご様子だと、薬も飲んでいないのでしょう?」

ラウは立ち上がると 自分の濡れたコートを椅子に掛け
隣の部屋へと入って行った




程なくして戻って来たラウは、
その手に まだ湯気の立つ薬湯の入ったカップを持っていた


「さあ、これを・・・・
 苦いですが、錠剤より湯の方が少しでも暖をとれるはずです
 落ち着かれたら傷の手当てを致しましょう」


シュリの上半身を抱きかかえるように起こし、薬湯を口に含ませると
シュリの肩を抱き締めた






華燭の城 - 72 に続く
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華燭の城 - 70

使用人棟は確かこの廊下の先を・・・・

広い城内を記憶だけを頼りに歩いていた


だが入り組んだ複雑な造りの城内で、どこまでも続く似たような廊下
そして痛み続ける体
何も羽織らず飛び出してた寒さが シュリの体力を余計に奪っていた





何十分経ったのか・・・・
足が動かなくなり廊下の壁に肩を預け ハァハァ・・と息を整えた
胸の傷が酷く痛み、右手で胸元をグッと握り締めると
あの鍵に指が触れる

「・・・クッ・・・っ・・!」

複雑な形の鍵を思い切り握り込み、
掌に痛みの感覚を集中させてシュリは再び顔を上げた

完全に迷ってしまったのだろうか、それとも昼間との印象の違いなのか
見覚えのある場所は1つも無いような 孤独感に襲われる




どこだ・・・・ ラウ・・・・ 

どこにいる・・・・・!






「あの・・・シュリ様・・・・?」

その時、廊下の奥から声がした



「ああ、やはりシュリ様だ
 どうされました? こんな嵐の夜にこんな所へ・・・・」
 

ランプを持ち上げて、歩み寄ってきたのは、あの地下で会ったダルクだった
シュリは慌てて預けていた体を壁から引き剥がす





ダルクは側まで来ると深々を頭を下げた後、辺りを見回した


「あの・・・・ お一人で・・・?
 ラウはご一緒ではないのですか?」


「・・・ダルク、会えてよかった
 ラウの部屋へ行きたいんだが・・・・
 どうやら迷ってしまったみたいなんだ・・・・
 案内してもらえないか?」



寒さと痛みで震える声を懸命に抑え、平静を装いそう言うと
ダルクは 「お易い御用です!」 と
そのままシュリの足元をランプで照らしながら歩き始めた






「今、仕事が終わって部屋に帰るところだったんです
 まさかシュリ様に逢えるなんて」

ダルクは嬉しそうに、笑顔をみせる



「こんなに遅くまで・・・・?
 ・・・・・ ここでの暮らしは・・・ 辛くはないか?」


「いえいえ、とんでもない!
 ここの暮らしが辛いなどと言ったら罰が当たります
 先々代・・・・ いや・・・先々々代か・・・あーっと何代前だ・・・・」



ダルクは何か言いたげに 
しきりに指を折って数えながらブツブツと考えていたが
それをじっと見つめ、待っているシュリに気が付くと
正確な数字を出すのは諦めたのか顔を上げた



「・・・すみません・・・・
 ・・・・ 実は先代王から、今のガルシア王になられるまでに
 陛下の兄上に当たられる3人の王が居られたのですがね
 皆様、お若くして急逝されたものですから・・・・・
 一時はどうなるのかと思っていたのですよ」


「3人もの兄王が?」

 
「ええ、数年の間に次々と亡くなられまして・・・
 流行り病いとはいえ、本当にこの国は悪魔にでも呪われているのかと・・・
 それが4兄弟の末皇子だったガルシア陛下が即位されてやっと、
 この国も落ち着いたのです
 ・・・・あ、シュリ様、そこ・・・お気をつけ下さい」


ダルクはシュリに足元の段差に気を付ける様に促してから
またゆっくりと先導し始める



「そこからの陛下は本当に素晴らしかった
 それまでは 帝国の一小国に過ぎなかったこの国を、
 あっという間に ここまで大きくされたのは全て陛下のおかげです
 産業も農業も、広大な土地も、それに多くの国民も・・・・!
 これだけ豊かな大国の城で働けることは、
 喜びでこそあれ、辛い事などありません」


「そうか・・・・ 全て陛下のおかげか・・・・・」


以前ラウも同じ様な事を言っていたのをシュリは思い出してした

ただ、その平和の陰で・・・・
侵攻された側の国の者が、本当にその後も、今も・・・ 皆幸せであるかどうか・・・
虐げ(しいたげ)られた者は居ないのだろうか・・・




「そして、今はシュリ様のおかげでもあります!」

フッと俯くシュリを他所に、ダルクが嬉しそうに声を上げる



「私は、何も・・・・」


「いえいえ!
 国は大きく豊かになりましたが、今度は陛下の妃様達・・・
 世継ぎ様も居ないまま、7人もが相次いで亡くなられた時には
 ずっと葬儀続き・・・・ 国中が喪に服し、皆 笑う事を忘れた様でした
 だが神は我々を見捨てはしなかった
 神ご自身が・・・ シュリ様がここへ降り立たれ、来て下さった!
 この城にも国にも、ようやく春がきたのです


 ・・・・ああ、私ばかり勝手な話を・・・・ すみません!
 ここがラウの部屋です!」


長い話が終わる頃、ダルクはある一室の前で立ち止った



ドアノブに手をかけるが、鍵が掛かっているのか
ガチャガチャと音を立てるのみで開かない


「ラウ!おいラウ!? 居ないのか?
 おかしいなぁ・・・・ 鍵なんて掛けて・・・・」

寝てるのか?とダルクが独り言の様に呟き


「おーい、起きろーーー!具合でも悪いのかー?」

ドンドンとドアと叩きながら呼びかけた時


「・・・・どうした?」

背後で・・・・ 廊下の最奥の暗がりの先でラウの声がした



「おお!居たか、ラウ!」

振り返るダルクとシュリの視線の先に
外から戻ったばかりなのか 雨に濡れたラウの姿があった







華燭の城 - 71 に続く
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華燭の城 - 69

翌朝 シュリが目を覚ますと、
部屋には既に朝食の準備は出来ていたが
いつもそこにあるラウの姿は見えなかった




「ラウ・・・・・・ 居ないのか・・・・?」

名を呼びながら ゆっくりと起き上がり
鈍く痛む体に手を添えると、傷の手当ても終わっているらしく
包帯も新しく取り替えられている




小さなため息を付き、ふと目に留まった ベッドサイドのテーブル
そこに置いた あの薬を入れた箱の下に、
挟む様に置かれた1通の手紙に気が付き、シュリは手を伸ばした



そこには  『6時間置きに必ず1錠 飲む様に』 とだけ書いてある



・・・・ラウ・・・?


嫌な思いが脳裏を巡った





・・・・・・ラウ・・・!?


自分の血が一気に下がるのが判るほどだった

心臓がドクドクと暴れ出す





昨夜のラウの姿が脳裏に浮かぶ


自分の身代わりに、ガルシアに体を差し出したラウ・・・・・
一言の声を発する事もなく、ただじっと耐えていたラウ・・・・・

あの時、ラウの瞳には何が映っていたのか・・・・

自分を犯すガルシア
そして何も出来ず自分を身代わりにした無力な皇子




そこまで考えてシュリの胸は締め付けられるように苦しくなった



そのラウが 自分とガルシアに嫌気がさし
城を出て行ったとしても不思議ではない

そもそも使用人のラウがそこまでして
自分やガルシアに尽くす義理はないのだから・・・

街には養父の家もあるという

薬師としての腕もあるのだし
今まで逃げ出さなかった事の方が不思議なぐらいだった









ラウが・・・・・   
居ない・・・・

ラウが・・・





そのまま一日が過ぎようとしていた






何度かガルシアの側近らしき男の声で・・・・
・・・・ この部屋に来るのはあのオーバストだろうが・・・
着替えは・・・  昼食は・・・  と声が掛けられたが
その度に必要ないと扉を開けることさえなく追い返した


宴の準備を・・・ と言わない所をみると
今日はガルシアも居ないのだろう




ベッドに座ったままシュリは ずっと自分の手を見つめていた

昨日の夜、確かにラウが握ってくれた手を・・・

ここに居ますよと聞こえた声を・・・




夜になってもラウは姿を見せる事はなかった
暖炉の火もない部屋はひどく冷え
手紙にあった あの薬も飲むことさえしないシュリの体は
痛みに襲われ続けていたが、もうそれさえもどうでもいいと思った




ラウ・・・ 本当に居なくなったのか・・・・
もう私の元へは戻ってきてくれないのか・・・・・




午後から降り始めた雨は激しさを増し嵐になった

冷たい北風が 真っ暗な部屋の窓をガタガタと揺らし
稲光が時折 部屋を明るく照らした直後、ドドンと腹に響く雷鳴が轟く



その音に紛れ、廊下でカタンと音がしたような気がした




「ラウ・・!」


痛む体が反射的に動いていた
ベッドから降り、慌てて扉まで駆け寄り、開く

が、そこには誰もいない



宴も無い嵐の夜
誰も皆、暖かい部屋で束の間の休息を取っているのだろう

人影さえないシンと静まり返る廊下が ただ延々と続くだけだった





・・・ ラウに逢いたい・・・・



そう思うともう我慢できなかった



薄暗い廊下をシュリは1人 歩きはじめた






華燭の城 - 70 に続く
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華燭の城 - 68

「ワシは抱いたのか、と聞いているのだ!
 シュリは お前のモノを咥えたのだろうがっ!」


その声にラウが唇を噛む



「はい・・・  一度・・・・」


「ほう・・・・
 ではお前には出来て ワシには出来ぬと言うのか?
 お前をただ喜ばせる為だけに シュリを与えたのではないのだぞ?
 その意味、お前はわかっているのだろうな?」

冷たい声だった




「・・・ はい・・・」

ラウが頭を下げたまま、小さく答える

それは ”使用人” が ”皇子” を跪かせろという屈辱
”神”を凌辱し、地に堕とせとという命令
幾重にもなるシュリへの冒涜だった




「申し訳ありません・・・・・
 ・・・・・もう暫く時を・・・」



そのラウの苦し気な返答に
ガルシアの冷ややかな目が一層 鋭く細くなる



「ただ許しを乞うだけか?」


その射る様な視線に 深く頭を下げたラウが
ゆっくりと 縛っていた髪を解いた


腰を折ったまま、ガルシアの方へと上げた顔に黒髪がサラリとかかり、
その美しさを更に際立たせ
わずかに上に見る眼は妖艶さを漂わせる




「ほう・・・・ そういう手で来るか」

ガルシアが薄ら嗤(わら)った







「ならば・・・・
 お前が存分に満足させてくれるのだな?ラウム  
 今日は咥えるだけで終わると思うなよ?
 久しぶりにその体、可愛がってやる・・・・ こっちへ来い」



ニヤリと笑いながら顎で指図する



呼ばれたその声に 無言のまま小さく頭を下げたラウが
コツコツと杖を付き側に寄ろうとした時だった



「やめろ・・・ラウ・・・・・・
 もうお前はこんなこと・・・ するんじゃない・・・・・・・
 ・・・・・私が・・・・」


「私でよろしければ」


ガルシアの足元で、
まだ自分の体を支えるのがやっとのシュリが小さく呟く声を
ラウが遮った



「・・・・・・・・ラウ・・・・やめ・・・」

「・・・・何も出来ぬくせに うるさいぞ」


ガルシアの足が 四つん這いのシュリの体を・・・・
出血の続く胸元を下からドスッ!と蹴り上げた


「・・・んッッ・・・!」

その衝撃で一瞬 呼吸が止まる
震える腕が体を支えきれなくなり、
シュリはその場に崩れるように蹲った(うずくまった)


ガルシアは、そんなシュリを冷酷な目で見下ろしながら
床に着いた肩をグイと踏み付ける


「良い恰好だな
 神と言えど所詮はこの程度・・・ ワシの足元でおとなしくしていろ」

そう言うと、再び蹲る(うずくまる)シュリの胸を蹴り上げた



「グッ・・・・!    ・・・・・ゴホッ・・・・・・・・・・・・!」

口内が切れたのか、苦しさに咳き込む唇端からポタリと血が落ちる




揺れる炎の前で ラウが自らシャツを脱ぎ 「陛下・・・」 と声を掛けるまで
憑りつかれた様にガルシアの足は止まる事がなかった

重い音が何度も響く




ラウに呼ばれ、ようやく我に戻ったのか・・・・
顔を上げたガルシアが その姿にニヤリと笑った

ラウは ガルシアの淫猥な視線を正面から受け止め
その意識を自分に向けさせるようにして ガルシアをじっと見つめながら
ゆっくりと全ての衣服を脱いでいく

痛みと苦しさで俯せるシュリには、もう ラウを止める力は残っていなかった





誘う様なラウの身体と視線に自身が抑えきれなくなったガルシアは
テーブルの上の酒瓶を床になぎ落す



ガシャン!!と、グラスや瓶が床に散乱する派手な音で
シュリは顔を上げた


そこには、ラウを乱暴にテーブルに押し倒すガルシアの姿があった




「・・・・・! や・・・・・・・め・・・・」

満足に息を吸う事さえままならず、枯れた喉からは声も出ない
ただ拳を握り締めた



そんなシュリの目の前でガルシアがラウを犯していく

自分の部屋で見たラウの美しい体
それが今、ガルシアの下に組み伏されていた




聞こえるのはラウに命令する声と、
その後に続くガルシアの上ずった息遣い、湿った淫猥な音・・・


ラウは声を上げることさえなく 
ただ玩具の様にガルシアの命に応え
長い手足をガルシアの体躯に伸ばし
言われるがまま、そのしなやかな体を差し出し、弄ばれていた




・・・・・・ラウ・・・・・・・
ラウ・・・・・
やめろ・・・・・
ラウに手を出すな・・・・・・・
ラウは私の・・・・・!!



そこに思い至って、シュリの目から涙が零れ落ちる
愛しい者を目の前で犯される様は 耐えられなかった




やめろ・・・・
やめろ・・・・・・!
やめろっ!

言葉にならない絶叫と共に、胸が圧し潰される様な苦しさがあった
徐々に呼吸が出来なくなり、シュリの意識は闇に沈んでいった














「・・・・・ラウ・・・・・  ラウ・・・・」


うわごとの様なその小さな呼びかけに 
ラウは 「ここに居ますよ」 と手を握り返す

いつもと同じ静かな声と、細い指に安心し、シュリは眠りに堕ちていった






華燭の城 - 69 に続く
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華燭の城 - 67

その夜、シュリはあの部屋でガルシアの腕の中に居た

腕の中と言っても優しく抱かれている訳ではない



冷たい床に 全裸で仰向けに引き倒され
その肢体を開かされたシュリは、両腕を押さえ付けられたまま
自身の後ろにガルシアの激しい責めを受けていた





「んっ! ・・っっ・・・・・・んっァ!! ・・・・・・・!」 



既に深々と挿入され
強引に体内から突き上げる肉塊の痛みに
シュリはただ呻く事しかできなかった


石造りの薄暗い部屋に薪の爆ぜる音と、シュリの呻きが響き
苦しさに喘ぐ声と、燃え上がる暖炉の火に照らされた白い身体が
艶めかしく揺れる

ここに来る前、ラウが巻き直した包帯は
また血に染まろうとしていた






「お前は・・・ んっっ・・! 
 本当に役者だな・・・・・・・
 
 皆、お前の秀逸ぶりに驚き
 その容姿の美しさに
 さすが、神の子よと感嘆する・・・・・

 ・・・・・ んっ・・っ・・・・・っ・・・

 だがそのお前が・・・・・

 ワシの下でこの様な淫靡(いんび)な声を上げているなど
 誰も思いはしないだろう・・・

 ぁぁあ・・・・ 
 いいぞ・・・ シュリ・・・・・
 ・・・ もっとだ・・・・
 ・・・・・・ もっと・・・・・・っ・・・・」




ガルシアが腹を打ち付けながら その快感に声をあげる



「んっ!・・・ぁああっ・・・・
 ・・・  っ・・・・んっ・・・・!!
 ・・・・んぁっ・・・!」





首を振り痛みに耐える満身創痍のシュリの体を
ガルシアは物のように弄んだ


傷だらけの胸の先端を左の指で握り潰し、右手はシュリ自身を握り込む
シュリの脚を自らの肩に抱え上げると
角度を変え、更に奥深くまで自らを圧し込み、抽挿を繰り返す
自分の絶頂が近くなると、その傷だらけの体に容赦なく手を付き
歯を立てた



そして その猛る精をたっぷりとシュリの中に注ぎ込んでから
それはやっと引き抜かれた







ふう・・・ と一度だけ息を吐き
ドッカと真紅のソファーに身を沈めると
仰向けのまま、痛む胸の傷を手で押さえ
まだハァハァと肩で荒い息をするシュリの顔をグイと引き寄た


「んっッ・・・・・・・・・・・・・・・・」

再び小さく呻くシュリを そのまま四つん這いにさせると
自分の、大きく開いた脚の方へと向けさせる



目の前に一度では萎えきらないガルシアの猛ったモノがあった




「お前の身体は段々とワシに馴染んでいくな 
 まさにワシの為にある様な器だ
 
 ・・・で?  あれはもう仕込んだのだろうな? ラウム」



そう言うと シュリの顎を押さえたまま
部屋の入口に立つラウへ湿った視線を向けた




「陛下・・・・ それは・・・・
 ・・・まだ無理かと・・・・」



二人の行為を黙って見ていたラウが
苦しそうに喘ぐシュリを 庇う(かばう)様に答えた





「無理だと? 
 お前達の様子を見ればわかる
 お前・・・・・  もうシュリを抱いたのだろう?」



「申し訳ありません・・・・ 今夜はお許しください」





質問に対して、それは的確な答えでは無かった





上機嫌だったガルシアの顔が ラウの答えで一気に曇った






華燭の城 - 68 に続く
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華燭の城 - 66

ギリギリまで自分の部屋でシュリを休ませたラウは
落ち着きを取り戻したシュリを連れて部屋に戻り
宴の身支度をした




「陛下のお側にあがられる時は
 必ずこれをお忘れにならないように・・・
 陛下は、シュリ様が言い付け通り、これを持っているかどうかを
 いつお試しになるかわかりません
 もし持っていないと・・・・」



シュリの首にあの石牢の鍵を掛けながら、ラウがシュリを見つめる

それはラウ自身の経験から来るものだった



「わかっている、ラウ・・・・・」

小さく頷くシュリの、包帯が痛々しく巻かれた体に 古い鍵が揺れる

ラウが後ろで広げたシャツに袖を通し
上から宴用に準備された装いを重ねていくと、
そこには全ての傷を隠し包んだ神の子・・・ 美しき皇子がいた




ラウは着替えを手伝い終えると
これを・・・ とオルゴールにも似た小さな木箱を差し出す



蓋を開けると 中には茶色の小瓶と
その横には1錠ずつ 丁寧に畳まれたあの小さな紙包みがいくつも入っていた


瓶の中には親指の先程の大きさの、白い錠剤になった薬が
こちらは 包まれる事なく、そのままの形で数多く入っている




「・・・ありがとう」

シュリはその箱を受け取りベッドサイドのテーブルへ置くと
中から包みの方を1つ取り出し、それを上着のポケットへそっと忍ばせた







夜の宴の間はまだ薬が効いているのか
酷い痛みを覚える事も無く、無事に終えようとしていた

シュリの本質を試そうと寄って来る学者肌の者、
その身体に触れ、御利益を授かろうと手を伸ばす者・・・
日によっては色々な客がいる

立食形式のこの雑踏の中で 今、不用意に触れられては
いくらシュリであっても、薬が効いているとはいえ
その表情は痛みに歪んだ事だろう

だが今夜、幸いだったのは、
いつにも増して研ぎ澄まされた様なシュリの
凛とした美しさに皆、気後れするのか
安易に触れようとする者が居ない事だった

来賓達は シュリの美しさと聡明さに ただただ陶酔し、感嘆し
そしてガルシアを褒め称(たた)えながら、遠くから見つめるだけだ



その客の反応に ガルシアは上機嫌で大広間を出た

その後ろ・・・
シュリが外へ出ると 廊下で待っていたラウが走り寄った




心配そうにシュリの額に手をあて、体温を確かめながら顔を寄せる


「大丈夫でしたか?
 シュリ様、熱は・・・?  痛みはありませんか・・・?」

「ああ、大丈夫、心配するな」



周囲に聞かれぬ様、小声で尋ねるラウに シュリが微笑みながら頷いた




「ほう・・・」

その様子を ガルシアがじっと見ていた





そのまま二人の側に寄り
ラウから奪う様に グイとシュリの体を抱き寄せた


「・・んっ・・」

強く抱き締められ、傷の痛みにわずかに声を漏らしたが
シュリはそのまま、驚きもせず、嫌がりもせず
ただ、じっと人形の様に無表情で されるがままに立っていた

シュリのした事と言えば わずかにその顔を背けた事ぐらいだった





そんなシュリに 表向きには 「ご苦労だった」 と息子を抱き締め
褒め労わる(いたわる)父親を装いながら


「随分と気心がしれた様だな
 少しばかり体を重ねて 情が移ったか? 
 ・・・・長年、ワシが躾けたラウムの体はどうだ?
 なかなか良かっただろう?」

ガルシアは低い淫猥な声で シュリの耳元にそう囁いた

 



その言葉にシュリの顔色が変わった


「ガルシア・・・・ 貴様っ・・・」


目の前のガルシアをグッと睨みつけ、その胸元を掴もうとした





「・・ シュリ様っ・・・」

言葉で 短く止めたのはラウだった





ガルシアの後ろ、少し離れた場所ではあったが
宴から引き揚げようとする客達が 廊下に溢れていた

その者達が、シュリとの別れを惜しむ様に
まだこちらを熱い眼差しで見つめ続けている

それに加え、ガルシアの側近達
多くの使用人も 後片付けに廊下に控えている





「・・・今夜も待っているぞ」

何も言い返せないシュリの耳元でガルシアはそれだけ言うと
身を翻し(ひるがえし)、廊下の奥へと消えていく

それを見ていた来賓達からの

「微笑ましいですなぁ」
「本当の親子の様で」

という感嘆の声が聞えていた






華燭の城 - 67 に続く
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華燭の城 - 65

使用人棟と呼ばれる場所の一角にあるラウの部屋


全てが石造りに見えていた城内の棟・・・
だが、意外にも内部は木造だった

いや、元々 木造建築だった物の外側だけを
戦さに備え、上からぐるりと石で囲った。といったところだろうか・・・



木造の、決して充分な広さとは言えないその部屋には
小さな窓が一つに ベッドに机、椅子

あとは衣類を入れておく棚ぐらいしか 家具らしきものはないが
今、自分の寝ているこの部屋の奥にも 
もう一つ部屋が続いているのか・・・
出入口の他に 別の小さな扉が見えていた



床も壁も使われている木が薄いのだろう
廊下を行き交う人の気配も感じられ、わずかに薬品の様な匂いもする





「・・・・これは・・・ 薬の匂い・・・?」

「あ・・・ 申し訳ありません
 ご不快でしょうが、暫くここで御辛抱を・・・・・」


確かに、多くの薬剤が混ざり合い、決して良くはない匂いだ
慣れない者が不快に思っても仕方がないと、ラウが頭を下げる





「それは構わない・・・・ でも、ラウ・・・・ 薬をここで?」

「はい、隣の部屋で調合しています
 危険な薬品も多くありますので、
 あそこにはお近付きにはならない様・・・・・」


ラウが奥にある もう1つの小さな扉に視線を送る





「危険な・・・」


ラウの言う通りだった
そこはどう見ても薬品を扱うのにふさわしいと言える場所ではなかった
簡素な木造の部屋で、小さな窓がたった一つのこの部屋では
十分な換気さえ出来ない程に・・・・



こんな場所でいつもラウは、自分の為に薬湯を作り
そしてここで眠るのだ


薬品の知識があまりないシュリにでも
ここで日々を暮らす事が
どれほど体に悪い事なのかぐらい容易に判る






「ラウ・・・・」

横になっている自分を覗き込む形で見るているラウの顔に
シュリの両手が伸びる

その頬に触れると・・・・ そのまま引き寄せた





「・・・・シュリ・・・・・ 様・・・・?」

横たわったまま 首にしがみつく様にして
シュリがラウを抱き締めていた



「・・・・どうされました?」




そう問われても自分でも判らなかった


ラウと出会ってから、日が経つに連れ大きくなるこの想い


いつも自分を側で支えてくれる ”感謝” 
だが、それでは伝えきれない自分のこの気持ち・・・・



これは何なのか・・・・



無意識の中で、
それが何なのかシュリ自身もハッキリと判らぬまま、
唇が・・・ ラウの唇を求め、触れた







自分でも何故こんな事をしたのか判らない

抱き締めたラウの体がピクンと動いたのがわかったが
今はただ そうして居たかった








「・・・・あまり力を入れられては傷に障ります」

そんなシュリの気持ちを余所に、ラウはそっとシュリの肩を押し戻し
いつもよりも 一層静かな声でそう言った



シュリの顔が見える距離まで離れると、その目をじっと見据え

「眠っておられる間に 薬湯を固形にしてみました
 中に1錠入っています
 これなら持ち歩けますし、今日の様な事があっても・・・ 
 外へ出られる時でも安心かと」


そう言ってシュリの手に
小さく折り畳まれた白い紙を一包乗せ、握らせた

何事もなかったかのように・・・・





「ラウ・・・・・・・」



何か言いかけたが、それは言葉にならない想いだった




「よろしいですか? 一錠で一回分です
 もうお分りでしょうが、副作用がかなり強い物です
 後でお部屋にもお届けしますが、必ず用量は守ってください」




黙ったシュリに一方的に説明をすると

「今日は夜から宴があります
 それまでもう暫くここでお休みください
 私はもう少し、この薬を作っておきますので」

そう言って立ち上がり隣の小部屋へ入って行くと
カチャリと中から鍵の掛かる音がした






華燭の城 - 66 に続く
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華燭の城 - 64

「シュリ様!」

ラウが慌ててその体を支える



「ごめん・・・・ やっぱり・・・」

そう呟くシュリの呼吸はみるみるうちに荒くなり
はだけたシャツから見える出血は
じわじわと浸み出す様に増えていった




薬湯が効いている間は 嘘の様に体は軽く、痛みもなかった
だが、一度切れてしまうと その痛みと苦しみは 
それまでの反動もあってか
何倍にも酷くなり その傷だらけの体を襲っていた





「シュリ様! ・・・・シュリ様っ!!」

呼びかけるラウの声が段々と遠くなっていった










シュリは体に何かの振動を感じていた
息苦しく目を開ける事さえも辛かったが
それでもそれが、ラウが自分を抱えて歩いているのだと
その腕や体から伝わる温もりから感じ取っていた

脚が悪いのに・・・・・・

遠のく意識の中でそう思っていた









「シュリ様・・・・・ シュリ様・・・・」

大粒の汗を浮かべながら 苦しそうに息をするシュリの名を呼んだ
熱で紅潮した頬にそっと指先で触れると、シュリはようやく薄く目を開く




「よかった・・・・  
 ・・・・ 薬湯です・・・・ これを・・・」

ラウは、ベッドに横たわるシュリの首をわずかに持ち上げると

「口を開けて・・・」  指で促す様に唇に触れ、
その薬湯を口に含ませた

だがシュリは、朦朧とする意識の中に注がれる薬に、思わず咳き込み
嫌がる様に首を振る



「もう少し・・・・
 もう少しだけ我慢してください」



肩で荒く息をするシュリの唇端から零れた薬を ラウが指で拭うと
外界からの刺激は全て痛みだと認識しているのか
痛みから来る拒否反応なのか
それとも、自己防衛の無意識の反応なのか
その指を振り払おうと、シュリは体を捩り、暴れ様とする


それでも嫌がる手を押さえ付け、
ラウはシュリの口内へ残りの薬湯を注ぎ込んだ


多少強引ではあったが、コクリとシュリの喉が動くと 
ラウはその体を自分の方へと抱き寄せる
すぐにシュリが苦しみ始める事は判っているからだ




「・・・っ・・・・・・・・!」

直後に襲う激しい副作用



「暫くの辛抱ですシュリ様、すぐに楽になります」

そう言って ラウは両腕で熱いシュリの体を強く抱き締めた








やっと呼吸が出来始め、シュリはゆっくりと目を開けた
ベッドの横で自分を覗き込むラウの顔が 間近にあった



「・・・・ラ・・・・ウ・・・」



「気が付かれましたか?
 申し訳けありません
 お体の事も、薬の時間も考えず
 あんな遠い所まで連れ出してしまい・・・・ 全て私の責任です」

「ラウが・・・ 謝る事じゃない・・・」

頭を下げるラウにシュリが小さく首を振った
 




「・・・ここ・・・・ は・・・・・?」


視界に入ったそこは見慣れない部屋だった

床に血の付いた包帯がまとめて置かれているのは
ラウが手当してくれた物だろう





「私の部屋です
 シュリ様のお部屋まで、
 お連れできれば良かったのですが・・・」

ラウは恨めしそうに自分の脚に視線を落とした



シュリは 自分を抱えて歩いていたラウを思い出していた
不自由な脚で自分を抱えて部屋まで運んでくれたのだ
きっと 人に見られぬ様に、気を使いながら・・・





「ありがとう・・・ラウ・・・」

シュリは胸がいっぱいになり それだけ言うのがやっとだった






華燭の城 - 65 に続く
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華燭の城 - 63

「あれは?」

湖を見ていたシュリが
墓地から少し離れた先に 小屋らしき物を見つけ指さす



「ああ、あれは物置小屋です
 かつて・・・ 先代王の頃は、
 ここを管理する墓守の小屋だったのでしょうが、
 今では 城で不要になった古具などが入れてあります
 
 ・・・・ここの管理と言っても、今はご覧の通りの有様で、
 手入れをする事も無く忘れ去られてしまい、
 もう誰も使いませんので・・・・」


一度言葉を切った後

「シュリ様、行きましょう!」

ラウが突然シュリの手を取り立ち上がった





「えっ・・・ラウ? どこへ・・・・ ラウ・・・?」

ラウは 戸惑うシュリをどこか愉しむ様に
その手を取ったまま 小屋の方へとどんどんと歩いて行く



そして小屋に着くと 扉横に置いてあったイスの横に屈み込み
下を探り始める

ほどなくラウの手には小さなカギが握られていた





「・・・それは? ここの?」

「ええ」 

宝物を見せる子供の様な笑顔で嬉しそうにラウが答え、
慣れた手つきで鍵を開けると ギィと軋んだ音と共に扉が開いた





中にはラウの言った通り かなり古びた道具や箱が積み置かれ
昔はそこが緑豊かな丘だった事を思わせる芝刈りの器具なども
整然と置かれていた


その部屋の一番奥の壁際に
道具達に隠される様にして一段高い場所がある


ラウはそこへ行くと、
大きな木箱をいくつか横へズズズ・・・・ と動かした


その奥に、箱に隠される様にあったのは十字架とマリア像
蝋燭を灯す燭台も両側にあり、それは さながら小さな祭壇だった






「これは・・・・!」

ラウは無言のまま 小さなマリア像の前に
不自由な脚で跪いた(ひざまづいた)



ひとしきり祈りを捧げた後

「陛下はこういう物を嫌われますので・・・ 秘密ですよ?」

そう言って振り返り 悪戯っ子の様に微笑んだ






「・・・・これはお前が?
 ・・・・・・ああ! ラウ! すごい! 
 わかっている!! 他言はしない!」


長く歩いたせいか わずかに汗を滲ませたシュリも
嬉しそうに笑みを浮かべ ラウの横で跪き祈りを捧げる





「・・・・ありがとう!! ・・・ラウ! ここへ連れて来てくれて! 
 本当に、本当にお前はすごい!」

祈り終えたシュリは 思わずラウを抱き締め、頬を寄せた




「いいえ、私はただ・・・・」

ラウが少し照れくさそうに言いかけた時だった





「・・・・?
 ・・・・ シュリ様? 
 熱が上がっていませんか?
 ・・・ 体が熱い・・・ 」


ラウはハッと顔を上げ、懐中時計を取り出した

朝、部屋を出てから 昼もとうに過ぎ、
既に午後から夕刻近くと呼べる程の時を指している

いくら楽しかったとはいえ、こんな失態を・・・・
ラウは自分自身に舌打ちをした





「申し訳ありません・・・ 今日の私はどうかしている・・・
 薬の時間を忘れるなど・・・
 お辛くありませんか・・・?」

「大丈夫だ・・・ そんなに心配しなくても・・・」

抱きついたままでそう言うシュリの額には
大粒の汗が浮かんでいる





「シュリ様、失礼します、お体を・・・」

自分にすがる様な体制のまま動かないシュリの腕を解くと
その体は既に自身が支えられないのか ユラリと揺れた

シュリを支えながら ラウがシャツのボタンを外す

今朝、ラウが巻いた包帯に血が滲み出ていた







「シュリ様、とりあえず部屋へ戻りましょう」

「大丈夫・・・・ もう少しここに・・・・」

「いけません、戻って手当しなければ!」


ラウが杖を掴み、右手でシュリを立たせる・・・・立たせようとした
が、シュリはもう立ち上がる事も出来ず
そのまま辛そうに肩で息をしながら床へ手をついた






華燭の城 - 64 に続く
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華燭の城 - 62

「シュリ様、そろそろ昼食に・・・・ ここはもう・・・・」

墓地から出ようと促すラウに
「いや、昼食はここで食べよう」  シュリが立ち上がる


「ここに亡者など居ない
 皆、神に召された安楽の場だ
 あ・・・ しかし さすがに墓標の前では不謹慎か・・・・」




 
周囲を見回したシュリの目線の先
湖のすぐ側の崖に 大きな岩があった

「あそこにしよう」

先導してシュリが歩き始めると

「シュリ様、ご注意ください
 この先の崖は柵もなく危険です」

ラウが慌てて後を追った






崖傍まで行くと、そこはラウの言った通りの断崖絶壁だった


湖の水は青く澄み、一見するだけならとても美しかったが
その底は果てを知らぬほど、
どこまでも暗い深淵に続いている様に見える


「ここから落ちた者は、その遺体さえ上がりません
 故に(ゆえに) その底を見た者も居らず
 この湖は 底無しと言われているのです」

 





大岩に腰を下ろそうとするシュリを ラウは一度制してから
岩の上に自分の上着を掛け広げた

「どうぞ」 とシュリに座るよう促してから
袋の中から 少年にもらったパンを取り出す

ハムやサラダを器用に挟むと、
ナイフで食べやすく切り分けシュリの前に置き
飲み物も準備していくと、
岩の上が あっと言う間に ランチテーブルになっていく





「ラウは、何をさせても完璧だな」

切り分けられたパンの半分を シュリはラウの前に置いた



「パンはこれだけですので、私は結構ですよ」 

そう言って微笑むラウの顔を シュリがじっと見つめた



「どうかされましたか? 何かお嫌いな物でも?」

「いや、そうじゃない
 ラウは優しいなと思っただけだ」




その言葉にラウは不思議そうな顔をした

「私が優しい・・・・ ですか?」

「ああ、他の食材同様、
 パンを余分に持って来ようと思えば出来たはず
 だがそれをしない」



ラウは ああ・・・・ と言った様子で
少し照れた様な笑みを浮かべる

少年が下りたすぐ後に パンを取りに行けば
やはり小さい方では足らない と言っているようなものだ

それを少年が見れば、やはり大きい方を渡すべきだったと
後悔するかもしれない
だからパンは少年のものだけで、他には持って来なかった・・・




シュリは微笑みながらもう一度 ラウに半分のパンを差し出す

ラウもシュリと目が合うと、クスリと笑って そのパンを受け取った




遅めのランチは少し焦げの味がしたが
緑風に髪を揺らすそのシュリの顔は本当に嬉しそうで
今までで最高の笑顔を ラウは見る事が出来ていた







「ラウ? あのロジャーはいくつだ?
 あんなに小さな子も ここではたくさん働いているか?」

紺青の湖を見ながらシュリが尋ねた




「あの子は10歳のはずです
 今は他の使用人達と一緒に
 城内の使用人専用の別棟に住んでいます
 両親が亡くなり、街で路頭に迷っていたのを 
 官吏の誰かが連れて来たと聞いています」


「10歳でたった1人・・・・」


「はい、ですが・・・・
 街で家も食べ物も無い時に比べれば、城に居る方が幸せです
 ここに居れば暖かい部屋も、食べ物にも困りません
 学校へも通わせてもらえますし
 幼くても 午後、働いた分は、きちんと給金も出ます

 15歳で学校が終わり、独立出来る年になっても城を出ず
 そのままここで働く者がほとんどです
 皆、ここが好きなのです」




シュリは あの地下室でも
楽しそうに働いていた人々の顔を思い出していた

辛い仕事だろうが、その顔は皆、楽しそうで活気に溢れていた
そしてあのロジャーも、明るく元気だった

ラウの言う通り、皆の城での暮らしや待遇は
自分が思う程、悪くはないらしい






「・・・良かった」

シュリが安堵の表情を見せる




「シュリ様・・・・
 陛下はあのような・・・ 
 懸命に咲いた草花を一掃しろと言われ、死者を忌み・・・
 そして神国を攻め、シュリ様にあの様な酷い事を・・・・・・ 
 
 それでも・・・・
 それでも城は・・・ 
 この国の ”王” という存在は
 この城で働く者にとっても、 国民にとっても
 無くてはならないものなのです」



ガルシアを語るラウの声が重くなっていた

ガルシアの所業に納得ができないのは、
ラウが一番 身をもってわかっているはずだ

だが それでも。 と言うラウの気持ち・・・・




シュリが顔を上げた



「わかっている、ラウ・・・・」

ガルシアが 自分やラウに対してどんなにおぞましい行為をしようと・・・
その本質がどんな王であったとしても
今 この大国が、そこに暮らす多くの民が、
戦さもなく平和に豊かに暮らせている事だけは確かだった







シュリは静かに湖面を見つめた

薄い陽に映る湖は何事もなかったかの様に 静かに、ただそこにあった
ガルシアの あの醜行も夢だったと思わせてくれる程に・・・・






華燭の城 - 63 に続く
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華燭の城 - 61

城のずっと奥・・・・ 
緩やかに丘を上り、長い長い石畳を進んだ先
そこに黒い鉄柵が巡らされた一帯があった

その柵の1箇所が門になっていて、中へと入れる様になっている

ラウはその鍵のかかっていない小さな門を開け
シュリを中へと招き入れた




そのまま城の裏手へ回り込む様に角を折れると
そこは丘の最先端で、目の前に広大な景色が飛び込んでくる



「湖・・・」

シュリの部屋からは城の陰になり全く気が付かなかったが
城の裏には その全貌が一度では掴みきれない程の巨大な湖があった

城が建っている湖のこちら側・・・
手前はやはり今までと同じ石畳だったが
向こう側・・・・ 湖の遙か遠くの対岸には 豊かな森が見えていた

今、シュリ達はその広大な湖を見下ろす丘の上に居た




「森だ・・・・」

久しぶりに見る緑豊かな自然に、シュリが目を輝かせた




「ラウ・・・・・ ここは・・・・」

「ここは男子王族専用の墓地です
 これだけ大きな湖があれば、火を放たれてもここまでは届きません
 ですから対岸の森は そのまま残っています」




遠くの木々が風に揺れている
静かに植物の匂いのするその風が 頬を撫でる

耳を澄ませば 湖面を渡る水音

その水音は遠い神国の湖をシュリの脳裏に思い出させ
遥か対岸の葉を揺らす風音に、さえずる鳥の声さえも聞こえる様な、
そんな錯覚を起こさせた




「なんて良い風だ・・・」

シュリは思わず深呼吸をした





それを数度繰り返し、身体いっぱいに緑風を含んだシュリは
嬉しそうにラウの方へ首を巡らせた


「ありがとう!ラウ!
 こんな景色が見られるとは思ってもいなかった!」

「喜んで頂けましたか?」

「ああ、もちろん!」



喜ぶシュリの姿を見ながら微笑むラウの後ろには
たくさんの白く四角い石の墓標が、石畳の上に直接置かれ並んでいた




「男子だけの墓地って言っていたな? 
 墓まで女性は別なのか?」

ゆっくりとその墓標へ近付くシュリの後をラウが追った



「はい、陛下の命で
 妃様達女性の墓は全て城外の別の場所に移されました」

「亡くなってまで、そんな事を・・・・」





シュリが 足を止めた

どの墓も無造作で、手向けの花らしき物さえ 1つも無い
適当に、形式だけに、仕方なく、地面に石を置いた。
その類の形容がふさわしい閑散とした風景だった




その事にもシュリは違和感を覚えたが
それ以上に異様に思えたのは その墓石、そのものだった

足元の墓石は不揃いで 大小さまざまな大きさがあった
そして一番異質なのは、
どの墓標にも 書かれてあるべき名前が無い事だ
・・・いや、その部分が削り取られた跡があるからだった



「大小あるのは、亡くなった年齢に応じて大きさが違うからです
 小さいのは子供の墓です 
 名が削られたのは・・・ それも、陛下の命です」

無名の墓標をじっと見つめるシュリの様子に ラウが説明をした





「ガルシアが・・・?」


「はい・・・
 死者は汚れに満ちた亡者・・・・
 現世での名を付けたままにしておけば、
 いつまでもこの世に遺恨を残し
 生きている者に災いをもたらすと・・・・
 そう言われ、死者から全ての名前を剥奪したのです」


「そんな・・・・!
 死者は災いをもたらしたりはしない
 それどころか、神に召され我々を守ってくださる存在だ・・・!」




シュリは悔しそうに俯くと、一番小さな墓の前で跪いた
その小さな墓でさえ、名前が無残に削られている



「酷い・・ この子はなんと言う名だったのだろう・・ 
 可哀想に・・・・・」



シュリはわずかに残った BともSとも判らなくなった
読めない文字を指でなぞると、
胸のポケットにあった薄蒼の花を その墓標の前にそっと置いた

そして両膝を地面につけ、手を組み祈りを捧げる





「ラウ・・・
 もしまた城内の花を手折る事があったら・・・
 その時は捨てるためではなく、ここに・・・
 この子等にたむける為に摘んで来て欲しい」

そう言って顔を上げた



その言葉にラウは少し驚いた表情を見せた



「・・・わかりました シュリ様」

シュリのその姿をじっと見つめていたラウも心悲しげだった






華燭の城 - 62 に続く
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華燭の城 - 60

城の正面の棟・・・ 
公用の館の大きな扉が開くと 少し冷たい風が顔にあたる



「寒くないですか?」
ラウがシュリの傷を心配し声を掛けた



「神国は温暖な国だと聞いた事があります」

「そうだな、私の国はここより暖かい、日によっては暑い日もある
 でも、ここも・・・ 昼間はまだ平気みたいだ」

石畳の庭を歩きながらシュリが答える




「そうですね、この国は 日が落ちると一気に気温が下がりますが
 日中ならまだ凌げる(しのげる)かと・・・・・」

言いかけてラウが急に言葉を止めた





「・・・?  どうした?」

ラウは何も言わずに 杖を支えにして その場に片膝を付くと
地面へ手を伸ばした

その手の先・・・・
石畳の隙間の わずかに残った土の間から
小さな薄蒼の花が顔を覗かせていた



「花・・・・・!」
シュリも嬉しそうに屈み込もうとした時だった



プツ。。



小さな音を立ててその花は ラウの指で手折られていた



思わず 「あっ・・・」 とシュリが声をあげる





「どうして・・・・ どうしてだラウ! 何故 折った!」

いきなり大きな声を出すシュリに
今まさにその花を捨てようとしていたラウは不思議そうに顔を向けた





「どう・・ して・・・・  ですか?」

「そうだ! こんなに寒い場所で、懸命に花をつけたのに!」

唇を噛んで 真っ直ぐな視線で抗議するシュリのその悲しそうな瞳に
ラウは 少し困惑しながら 「申し訳ありません」 と答えた



「ただ・・・ ここでは・・・・
 城内では草も花も木も 
 種が落ちる前に全て根絶やしにしてしまうのが決まり
 陛下のご命令ですので、皆そうしております」


ラウが静かに頭を下げる


「草も花もみんな・・・・・?
 だからここの庭は一本の木さえ無いのか・・・
 どうしてそんな事を・・・・」


何もない、ただ無機質な石が敷き詰められただけの
冷たい広い庭を見ながらシュリが呟いた

そして その冷たい場所へ
今まさに捨てられようとしていた ラウの指先の小さな花

それをすくい取る様に シュリが両手を差し出すと
置かれた感覚さえ感じ取れない程のか弱い花が
そっとその手に乗せられた




「樹木は燃えます
 花も草も同じこと
 戦になり火を放たれれば ひとたまりもありません
 ですから、ここにあるのは燃えない石だけなのです」


「・・・・戦、戦・・・・・・
 ここは・・・ この国は全てが戦の為にあるのか・・・・」


シュリは悔しそうにそう言うと
手の中の小さな花を一度 両手で包み込み、何かを小さく呟くと
自分のシャツの胸ポケットへ挿し入れた




「城の外には 山も川も木も・・・・ 自然はたくさんあります
 街には花も草も広場も公園も・・・・
 無いのは塀の中、城内だけです
 この国の全てがそうだとは・・・・ 思わないで下さい」

少し寂しそうなラウの声だった




シュリは小さく息を吐き 「大きな声を出して悪かった・・・・」と
諦めたように言うと、ゆっくりと歩き始める

それを追うようにラウも後に続いた






「私も街に戻れば花を愛で、木陰で休みます
 なのに・・・ 城内では、これが当たり前だと思っておりました
 いつの間にか、少し感覚が麻痺していたのかもしれません」


確かに、城内に樹木や草花が無いことを不思議に思ったことなど
一度も無かった
特別に見たいと、そう願った事さえも無かった
そういう物は 街に戻ればいくらでも普通にあったからだ


だが、この皇子は違う
ここから出られないのだ・・・・
もし陛下が城外へ出る事を認めなければ、
もう一生 草花や木に触れる事も、見る事もさえも出来ない・・・・

それは大袈裟ではなく、
ガルシアの性格を知っていれば 十分に可能性がある事だった




 
それで木が見たいと・・・・
以前シュリが呟いた言葉をラウは思い出していた





「シュリ様・・・・  城の裏手へ参りましょう」

「裏・・?」

黙ったまま前を歩くシュリにラウが声を掛け 横へ並ぶ



「はい、手は届きませんが・・・ きっと喜んで頂けるかと・・・」






華燭の城 - 61 に続く
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華燭の城 - 59

「でも、これはロジャーの昼食だろう?」

「僕は下で つまみ食いもできますからっ!」

そう言ってロジャーは満面の笑みで
困惑するシュリの手を取るとパンを乗せた




「ロジャー・・・ つまみ食いはダメだって何度も言っただろ」

横からのラウの声に、
ロジャーは しまったと言う顔で肩をすくめ ペロリと舌を出す

シュリの手の中では、ほのかな温かさと
甘い香りがふんわりと立った





「じゃあ、私はこっちを頂くよ」

シュリは少年の手に残ったもう片方の、小さい方のパンを取った



「あ、でも・・そっち焦げて・・・・」

言い掛けたがすぐに 「本当にいいんですか?」 と、シュリを見上げる



「ああ、これで十分、ありがとう ロジャー」

シュリが微笑むと 少年は 「はいっ!」 と元気に返事をして
大事そうに手の中のパンを紙袋に仕舞うと 
ペコリと頭を下げ、あの地下室への階段を駆け下りていった








その後ろ姿が階下に消えると
じっと見送っていたシュリの顔から笑みが消えた


「・・・ ラウ・・・
 まさかあの子も・・・・  ガルシアに・・・・」


そう言いかけて、
あまりの想像の残酷さに その先を言う事ができなかった





「ロジャーは大丈夫です」

シュリが何を思ったのか、何を言い掛けたのか・・・・
言い淀んだ言葉の続きを察したラウが
シュリの後ろで、同じく階下を見つめながら応えた



「あの子は町の子です
 陛下は 格や身分、家柄を大変気にされますので、町の子には・・・・」

そう話すラウを 「でもお前は・・・!」 
言いかけ シュリが振り返った



「そうですね・・・
 私の場合は・・・・ この黒髪が余程、珍しかったのでしょう
 珍しい動物を見れば、玩具にしてみたくなるのも人の道理」

自嘲するようにラウが目を伏せる




「・・・動物って、そんな言い方はやめろ・・・!
 ラウはそんな・・・・・」

その言葉に強硬に反論しかけたが、これ以上の言い合いは 
ラウに余計、忘れたい過去を語らせるだけ・・・・
シュリは仕方なく言葉を引いた




「・・・嫌なことを思い出させた、すまない・・・」
 

「いいえ・・・・ お気遣いなく
 それに・・・・ 今、陛下はシュリ様にご執心です・・・・
 ロジャーには 何もされないでしょう」


ラウの言葉にシュリが体の力を抜く


「・・・ならば・・・よかった・・ と言うべきだな・・・
 こんな私でも少しは役に立っているらしい
 あの子は、あんな目に遭わせたくない・・・」




誰も居なくなった階段に再び視線を戻し
ただずっと見つめ続けるシュリの顔を ラウもまた見つめていた







「シュリ様・・・・」

その声にシュリは我に返った

ラウが自分を見つめていた事に気が付き、慌てて視線を逸らした
静かな瞳に見つめられると昨夜の行為を思い出し、鼓動が早くなる




「シュリ様、少しここで待っていてください」

戸惑うシュリに気付くと ラウは何かを思いついた様にそう言い
コツコツと杖をつき、 たった今 少年が消えた地下室へと下りて行った








暫くすると袋を抱えたラウが戻って来る

何を持っているのか と言いたそうなシュリに
「下でハムとサラダ、飲み物も調達してきました
 今日の昼は 外でピクニックに致しましょう
 これなら少しは食欲も出るでしょう?
 何か召し上がらなければ」 そう言って微笑んだ




「ピク・・・・・   って・・・・
 でも、私の食事は決められた料理人が作るのだろう?
 ・・・・いいのか?」

半分冗談の様に言うシュリに


「シュリ様の世話係を 
 陛下から直々に仰せ付かった私が作るのですよ?
 それとも私ではお嫌ですか?」

ラウもまた冗談で応酬する




「いいや、構わない
 ・・・・ ピクニック、か・・・」

子供の様な屈託のない笑みに ラウもフッと表情を緩ませた




シュリは少年から貰ったパンを、ラウの抱える袋の中にそっと入れると
「よし、行こう!
 これは私が持つよ」
そう言ってラウの手から袋を取り上げようとする


「大丈夫です・・・・・・」 

ラウは言いかけたが、すぐにニコリと笑って素直に袋を差し出した






華燭の城 - 60 に続く
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華燭の城 - 58

翌日 二人は部屋を出た


食があまり進まないシュリを見て
ラウが 「また外へ出てみられますか?」 と声をかけたのだ

何もない城内で シュリの気持ちをほぐすには
それ以外 出来る事はなかった

それに対するシュリの答えは ”また使用人棟に行きたい” だった







使用人達の作業棟・・・

先日行った地下階段へと続く廊下を 二人が並んで歩いていると
正面から1人の少年がこちらに歩いてきていた



その少年は 腕に抱えた茶色の紙袋の中を
嬉しそうにチラチラと覗き込みながら、
まっすぐこちらに進んでくる

シュリ達が前から来る事など、一向に眼中にない様子で・・・・

そして案の定 2人とぶつかる寸前に
「こら、ロジャー」  とラウに呼び止められた





「ちゃんと前を見て歩きなさい」

「あ!ごめんなさい!ラウ!
 今 焼き立てのパンを貰ったか・・・・・」



言いかけ 顔を上げたその瞳にシュリが映る

と、みるみるうちに頬を紅潮させ
まるで 一瞬で春が来たようにキラキラと目を輝かせた





「あ・・・!! あ・・・ あ・・・!
 シュリ様・・・・!? シュリ様ですよね!!
 ・・・・ だよね!  ・・・ラウ!!」



ロジャーと呼ばれた少年は飛び上がらんばかりに
屈託のない笑顔を向けシュリ達を見上げる



「ああ、そうだよロジャー、シュリ様だ」

「やっぱり!!! 
 みんなは この前、シュリ様が来て下さったって喜んでたけど
 僕は学校だったから会えなくて・・・・
 あ・・・! あ・・・ あのっ・・・!  シュリ様っ! 
 よければ僕も握手を!!」


既に真っ赤になった顔で手を差し出した





「ロジャーもここで働いてるのか? 偉いな」

シュリが片膝を付き、少年と視線の高さを合わせて
差し出された手を両手で握ろうとすると


「あ、まって!」

ロジャーは 慌てて一度手を引っ込めると
ゴシゴシと自分のズボンで手を拭い 改めてその手を差し出した




「あ、うん! じゃない・・・ えっと・・ はい!
 今、学校が終って帰ってきたところで・・・・
 これからお昼を食べて・・・
 そのあと下で仕事です!」

少年は手を握られ、更に赤みを増した顔のまま 満面の笑みを見せた





「そうか、じゃあ たくさん食べないとな」

シュリが立ち上がり頭を撫でる


「わぁぁぁ・・・・・」

シュリに頭を撫でられたロジャーは
緊張と恥かしさに完敗し、視線を逃がすようにラウを見上げた




「あ・・ あの・・・ ラウ? 
 これからどこへ行くの? もうお昼だよっ?」

「ん? そうか、もうそんな時間か・・・ 
 シュリ様を・・・・  城内を案内していたんだが・・・
 迂闊(うかつ)だったな・・・・・」





部屋を出た時はまだ午前中だった
シュリの体を思い ゆっくりと歩くうちに
知らぬ間にかなり時間が経っていたらしい

私としたことが・・・・ と
ラウが申し訳なさそうにシュリの方を見遣った




「私なら構わない、あまり食欲もないしな・・・」

シュリが答えると 「だめですよおー!」 返事をしたのロジャーだった




「シュリ様もたくさん食べないと・・・ ですっ!
 ・・・・・・あっ。そうだ!」

少年は何かを思いついた様に
自分が抱えていた紙袋の中に手を突っ込むと
そこからパンを取り出し、パカリと2つに割った



「今 焼き立てを街で貰ってきたんです!
 売り物にならないやつだから 見かけはちょっと悪いけどー
 これ、すごく美味しいんですよ!!」


言われてみれば パンの上に小さなコブの様に飛び出した部分があり
そこが少し焦げている



ロジャーは大小、大きさの違う2つになったパンの
大きい方を、躊躇い(ためらい)もせずシュリに はい! と差し出した

焦げ目は少年の手の中、小さい方に残っている


そして 「いい?」  と、ラウに尋ねる様に視線を渡した




この国で王族・・・
今はガルシアとシュリの食事は、専属の料理人が選ばれている
そこでは材料も調理工程も、全てが厳しい監視の下で行われるのを
下で働く者は皆、当然の様に知っている

それを踏まえての ロジャーの 「いい?」 だった

ラウが優しく微笑み小さく頷く




管理下にあると言っても、余程の緊迫状態・・・ 
例えば外国との戦時下や内戦でもない限りは
本人の意志も ”ある程度は” 自由に尊重される

いつ、どこまで・・・・
それを見極めるのも 世話役としてのラウの務めだったが
この状況で、この年端も行かぬ子が毒などと考える訳もなく
ラウはロジャーが嬉しそうに笑うのを黙って見ていた






華燭の城 - 59 に続く
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華燭の城 - 57

数時間後、シュリは目を覚ました
まだ薬が効いているのか、傷の痛みはそれほど感じない



わずかな時間でも痛みを感じなくて済む安堵でフッ・・と息を吐き
首を巡らせると、側でラウが ベッドの端にうつぶせていた



ラウ・・・?



見るとシュリの右手が、しっかりとラウのシャツの端を握り締めている


ラウに 「外に居る」 とそう言われた時
無意識のうちに掴んでしまっていたらしい



部屋はまだ温かく、
シュリの額に乗せられた布はまだ冷たいまま・・・・
今しがたまで、起きていたのだろう・・・
ずっと・・・・・




「ラウ、こんな所で寝ては・・・・」

起こしかけて、シュリはその手を止めた




知り合ってもう幾日も経っていたが、
こうしてラウの寝顔を見たのは初めてだった


いつも自分が眠った後も火の番をし、
朝 起きた時には もう朝食の準備ができている
今、こうして痛みを感じずに居られるのも全てラウのおかげ・・・




すぐそばで目を閉じるラウの顔

シュリは横になったまま 手を伸ばし
解けた美しい黒髪が数本かかる顔に 指の甲でそっと触れた

その頬には、ガルシアの鞭で付けられたあの傷がある

もう血は止まっていたが、手当てをした様子もなく
乾いた血が かさぶたの様に盛り上がり固まっている



「・・・・ いつも私の事ばかり心配して・・・・」

シュリが呟くと
「ん・・」  と小さな声をあげてラウの瞳が開いた





「あ・・・・・ ごめん・・・・・ 起こしてしまった・・・・」

「申し訳ありません、私の方こそ居眠りなど・・・・・・
 傷はいかがですか? 
 まだ痛みますか? 
 熱は・・・・」


慌てて体を起こしたラウは、シュリの額の上の布をとると
体温を確認するように手を当てる



「急に体が傷付くと、熱が出ます
 ・・・まだ少しありますね・・・」

布を冷たく濡らし直し、そっと戻すと
心配そうにシュリの顔を見つめた



「まったく・・・」

その行動にシュリが呆れたように微笑んだ




「大丈夫だよ、ラウ・・・・
 私の事よりも 自分の手当てをしないと・・・・ 
 頬の傷、まだ血が付いている」

そう言われ、ラウはやっと自分の傷を思い出した様に
慌てて頬に手を当てた

その様子にシュリがクスリと笑う




「それに・・・・
 眠るなら、ちゃんと横になれ
 今の様に 窮屈に身を屈めたままでは、脚にも良くない
 ・・・ もっと自分の事を大切にしろ」


シュリの言葉にラウは一瞬驚いた表情を見せたが
その顔はすぐに柔らかな微笑に包まれ頭を下げた



「ありがとうございます
 シュリ様も もう少しお休みください
 朝までまだ時間があります
 薬も・・・・ まだ大丈夫でしょう」

上着の内ポケットから懐中時計を取り出し
時間を確認しながらラウがそう告げる



「わかったから、ラウも眠るんだぞ?」

「では、お言葉に甘えて少しだけ休ませて頂きます
 薬が切れて傷が痛み始めたら すぐにお声を掛けてください」




ラウは立ち上がり、軽く頭を下げると
窓際に置かれていた一脚のイスを 暖炉の横に引き寄せた


「・・・そこで?
 火の番をしながら そこで眠るのか?
 そんな所では、ゆっくりと眠れはしない
 ここに居てくれるなら・・・・・ 側にいればいい」

そう言って シュリは自分の隣に視線を向ける




大きな天蓋付きのベッド
シュリ1人が横になっても、まだまだ十分にスペースは空いている



「しかし・・・・・」

「また  ”私の様な者・・・” ・・・と言うのか?
 2度と自分の事をそんな風に言うな 
 ・・・ 横で休め、ラウ
 これも命令だ」

困惑の表情を見せるラウに そうシュリが微笑む




「わかりました、シュリ様・・・・・」

ラウも クスリと笑ながら、上着を脱ぐと
「失礼します・・・・」 そう言って シュリの横にその体を置いた






華燭の城 - 58 に続く
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華燭の城 - 56

最初はゆっくりだったラウの手が徐々に速度を増していくと同時に
そのモノも硬く変化していく




「んっっ・・・んっっっ・・・・・・・!!」

質量を増したそれが 頭を動かされる度
喉の奥に当たり突き上げる



脚にしがみついたまま ラウの手で動かされながら
その苦しさにシュリは思わず首を振った



・・んっ・・・・ 苦し・・・・・・・・
・・・・・やっ・・・ やめ ・・・・・ ラウ・・・・・

だがそれは言葉にならない声だった 





「それではダメです・・・ 歯が当ります・・・・・
 もっと舌を使って・・・・」

喘ぐシュリの頭を持ったまま
ラウは肩で息をするシュリを動かし続ける




シュリの額に大粒の汗が滲んでいく
ただただ早く終われと、それだけを祈っていた



その行為が シュリには永遠に続くように思われたその時
「シュリ様・・・・・  口に出しますよ」
ラウの声がした



「・・・!」

驚いてラウを上目見た
思わず首を振り、口内から抜き出そうとしたが
ラウの手は 否応無しにグイとシュリの頭を抑え込む



「・・・・・・・・んっっっっ!!!!!」

もう一度首を振って拒否の意思を見せたが、既に遅い
もう引く事は出来なかった

同時に口の中で硬くなったラウのモノがビクンと震える・・・




・・・・ンッ・・・!
何かが口の中に吐き出される
しかもそれは一度では無かった
ビクビクと波打ちながら どんどんと放出されていく

その感覚に思わず吐き気を催した





ゴホッゴホッっ・・・・!

ようやくラウの手が緩み 口からそれが抜き取られると
シュリは両手を床に付き、激しく咳き込んだ
 

口端から白濁したモノが垂れ、床にポツポツと滴る


ハァハァ・・・ ハァハァ・・・・・






「・・・・大丈夫ですか?」

上下するシュリの背中をさする様にラウが手を添える

そのまま覗き込む様にして顔を見られそうになり、
シュリは反射的に嫌がり、首を振った



口内にはまだ粘液の嫌な感覚があり、話すことなど出来はしなかった






「初めてですからね・・・・
 でも、本当は一滴も零さず飲むのですよ
 そうしなければ陛下はお許しになりません」

静かな冷たい声だった




その声にシュリは唇を噛んだ
あの時見た光景・・・ それはまさにその通りだった
あの時のラウは・・・
ガルシアの吐き出したモノを全て呑み込んでいたのだから・・・






「・・・・・わかっている・・・・」

言い様のない、訳の分からない敗北感に圧し潰されそうになりながら
やっとそれだけを言い返し、俯いたまま顔を逸らした


その視界に・・・・ベッド横のテーブルに
鞭でボロボロにされた自分の衣服が置かれているのが目に入る
その上には 鈍く光るあの牢の鍵



ガルシアに ここまでさせられるのか・・・・・・
どうしてこんな・・・・・
悔しさと惨めさを握り締めた拳で、グッと口元を拭った










「今日はもう休みましょう
 お疲れになったでしょう
 傷にも障ります」


ラウは自分の衣服を整え
シュリをベッドへと座らせると薬湯を差し出した

無言のままカップを受け取ったシュリは
躊躇なくそれを一気に喉の奥へと流し込んだ

何でもよかった
何かでこの感覚を流してしまいたかった




「大丈夫ですか? 傷は・・・」

「・・・いい・・・  少し・・・ 放っておいてくれ・・・」


カップを返すと、心配するラウの声を無視し
そのまま背を向けて横になった



八つ当たりだと判っている
教えろと言ったのは自分なのだ
そんな事は判っている・・・・

だが、これほどの屈辱・・・
そしてこんな行為1つ満足に出来ない自分・・・
これではラウ一人救えない

酷い無力感に襲われ、自分が情けなかった
薬湯の副作用が その苦しさに拍車を掛ける 




震えの止まらない体で必死に耐え、唇を噛んだ


そんなシュリの背中を静かに見下ろし

「では 今夜は外に控えております
 御用があればお呼びください」

それだけ告げると ラウは背を向けた


ラウ・・・
違う・・・
ラウを拒否した訳ではない・・・・・・
ラウが嫌な訳ではない・・・・・・
ラウ・・・

そう心で呟きながら 苦しさの中でシュリは薬の眠りに落ちて行った






華燭の城 - 57 に続く
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華燭の城 - 55

ラウは背の高い細身ではあったが
その身体は美しい筋肉で構成されていた


長い黒髪が掛かるその姿に シュリは思わず息を呑む


寄宿生活をしていたシュリは 
同じ学生達とシャワーを共にすることも日常だった
もちろん男同士であり、裸を見たからと言って他意を持った事はない


だが今、暖炉の炎に照らされて立つラウは・・・・


先の 剣の手合せの時にみせた動き・・・・
あれはラウの不自由な脚を補ってもまだ余る程の
この美しい肉体の成せる術だったのだ



そしてその身体にうっすらと残る数多くの傷跡らしきもの・・・・



自分にもある、付けられたばかりの同じ傷
だがシュリは、その自分の傷よりも
ラウの傷の方が痛ましく、悔しく思えた


胸が締め付けられる様な苦しさを覚え、
シュリは引き寄せられるようにゆっくりとベッドから降りた
そしてラウを、無言のまま 正面からしっかりと抱き締めていた


全裸で抱き合うと体の温もりが直に感じられる
何故そんな行動にでたのか、シュリ自身判らなかった
だたただ、親が子を抱く様に、
傷付いた幼子を慰める様に、そうしたかった





「・・・幼い日に・・・・・・ こんなにも・・・・
 どれほど辛かったか・・・・・・」


「もう大丈夫ですから・・・」


「これは・・・・」

左上腕の、他の傷とは明らかに違うもの・・・
それは痣だろうか・・・ 異形の薄赤いモノがあった
それに触れながらシュリが小さく呟く



「ああ・・・ それは生まれ付いてのもの
 傷付けられたわけではありませんし、痛みもありません
 御心配なさらず・・・」


「そうか・・・・ よかった」








一つ一つの傷を労わる(いたわる)様に指でなぞり続けるシュリを
ラウは静かに見下ろしながら その肩に手を置いた


「シュリ様・・・・・」
促され、シュリがラウの足元に跪く・・・




一国の皇太子が 使用人の前に跪くなどあり得ない事だったが
その姿をラウは冷静に、黙ったまま静かに見ていた




ラウに見つめられながら、両膝を付き 
シュリはラウのモノに、わずかに震える手を添えた


そしてラウの行為を思い出し 口を少しだけ開け、舌を出してみる

たった今された事
ラウが自分にしてくれた事・・・・ 同じようにすればいい・・・

判ってはいる
が、どうしても舌で触れる事ができなかった



皇子と使用人・・・ 
いや、そんな身分以前に・・・・ 同じ男のモノ・・・・
同じ男の生殖器官であり排泄器官・・・・ そんなモノを口に・・・・




ラウは躊躇するシュリを暫く見下ろしていたが

「シュリ様・・・・・ 無理されなくてよろしいのですよ」
静かに言った





その言葉にシュリは小さく首を振る


もうラウを身代わりにはできない・・・
絶対にさせない・・・・

意を決したシュリの舌先がラウのモノにわずかに触れた



「んっ」 

ラウの小さな声がした・・・

その声にシュリが顔を上げる
そこには自分を見つめるラウの姿があった



ラウも・・・・ 私のこの行為で・・・
自分と同じ様に感じてくれているのだろうか・・・
そう思うと何故か胸が熱くなった


もう一度 今度は少し長めに舌を這わせた
自分の肩に置かれたラウの指先に わずかに力が入るのが判る




「これで・・・ いい・・・ のか?」
何度かその行為を繰り返したあとシュリが尋ねた


「ええ・・・  次は口に含んで」

「口に・・・」

シュリは一度目を閉じたあと 深呼吸をすると
そのままゆっくり自分の口内へと運び入れた



柔らかな男のモノが 今、自分の口内にある
生々しい感覚にそのまま動けずにいた
どうしていいのか わからなかった・・・

初めての経験に戸惑い動けずにいると 段々と息は苦しくなる


それを察したかのようにラウの手が動いた



「ゆっくりと頭を動かして・・・・・ 歯を立てない様に」

そう言いながらシュリの頭と顎に手を添えると
前後に動きを先導し始めた





「んっ・・・・ っっ・・・」

自分の口から抽挿される男のモノ・・・
思わず体中に力が入り、ラウの脚にしがみついた



「体の力を抜いてください
 それでは動かせません」



そこからはもう何も考えられなかった
ただされるがままに頭を動かした






華燭の城 - 56 に続く
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華燭の城 - 54

一瞬の空白の後
戸惑いながらもシュリがゆっくりと自らの脚を開く

ラウはその脚間に入り そっとシュリのモノを手に取り顔を寄せた

そしてガルシアに奉仕した時と同じ様に 小さく口を開け
シュリの先端に舌を付ける




「んっ・・」

座らされているシュリには全てが見えていた

自分の脚間に顔を埋め、ましてそれを舐めようとしている男がいる・・・・
恥かしさで直視できず 思わず目を伏せた





「シュリ様、目を開けて・・・見て覚えるのです」

その静かな声にシュリは 仕方なくまた目を開ける


ラウはそのまま、手に取ったシュリの根元から順に舌を這わせ始めた
ゆっくりと、そして丁寧に舐め上げる温かく柔らかい舌が
自身のモノの感覚を研ぎ澄ましていく


先端まで這い上がった舌先が先の穴を探ると
「ぁ・・・・」
シュリは思わず声を上げた



それは何度となく そして丁寧に繰り返された
その度にラウの舌は シュリを翻弄する




「・・ぁ・・・ぁっ・・・・んっ・・・・」

羞恥より優しい快感に支配され
時折 ピクンと跳ねるシュリの反応を見ながら
それと同調するようにラウの舌は這い続けた



シュリの息遣いが早くなるのを見届けると
ラウはその口にシュリを咥え込む



「・・っぁ・・・!」



口内の温かな粘膜が 自身の全てを包み込んでいた

小さな声で喘ぎ、シーツを握り締めるシュリの指に
ラウの空いた右手が添えられる






そのままラウは動き続けた

自分の喉の奥の 一番柔らかな粘膜でシュリのモノを擦り
舌はゆっくりと絡むように動いていた

唇が先端の穴を押し広げ、吸い上げる



シュリのほんのわずかな声の変化も
小さく跳ねる体の動きも、握られる指も・・・・
何一つ見落とす事なく
ラウは一番敏感な部分を探り当て、そこを執拗なまでに責め上げた

思わず引いてしまうシュリの腰を
ラウの左腕が抱き、引き寄せる





「ぁ・・・!  ・・・ラ・・・・・・ウ・・・・ そこ・・・・・
 ・・・・・ぁあ・・・
 ・・・・だめ・・・・・・・・・・・やめ・・・・・」



指と指を絡ませたまま 小さく首を振り懇願するシュリの声を聞きながら
ラウはその動きを早めた



「だめだ・・ ラウ・・・・・・・・・・ 口を離せ・・・・・
 それ以上・・・・・   やめ・・・・ もう・・・・ 

 ・・・・・・・・・っ・・・
 ・・・・・ ぁぁあっ・・!」



絡めたシュリの指に力が入り、天を仰ぐと同時に身体が仰け反り
自身ががピクンと跳ねた





ラウは手を握ったまま 肩で息をするシュリを上目で見ながら
その口内に吐き出された精を コクリと喉の奥へ流し込む

そしてまたゆっくりと 周囲に溢れた粘液を舌で舐め取っていった
 
一連の行為が終わると ようやくラウはシュリを自らの口から解放した



「大丈夫ですか? シュリ様」

いつもと何も変わらない静かな声
その声にまだ整わない息の中で
シュリが目を閉じたまま小さく首を振った




しばらくして息が整い始めると 現実が覆い被さってくる

これを自分が・・・するのだと・・・

自分が同じ事を・・・・

ガルシアに奉仕するのだ・・・・





シュリは ラウと絡めた指を解いた

「・・ ラウ・・ ここへ・・・・」 


「今日はもうこれぐらいに致しましょう
 少し休すまれた方がよろしいかと・・・・
 傷口が開いてしまいます」



だがラウの言葉に シュリは無言で首を振る



「・・・わかりました」

ラウは諦めた様に小さく息を吐くと、
ベッドから降り 自らその衣服を脱いでいった






華燭の城 - 55 に続く
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華燭の城 - 53

部屋に戻りシュリをベッドに横たえると
「すまない・・」
薄く目を開けたシュリが小さく呟いた


シュリの脳裏には、あの ラウとガルシアの行為が焼き付いていた




「私の身代わりに・・・・・・・ 
 ・・・・あんなおぞましい事を・・・・」

閉じた瞳の端から 後悔と謝罪の涙が零れ落ちる



「シュり様・・・・ あれは・・・・ 
 あれはもうずっと昔・・・・・ 15年も前からの事
 シュリ様のせいではありません
 私の様な者の為に、涙など・・・・・」

「ラウ・・・・」



やはり自分の思った通りだった・・・・
ラウは子供の頃から、ああやってガルシアに・・・・
そして、その脚までも・・・・




シュリは悔しさで何も言えなくなった


何を言っても、どんなに多くの慰めの言葉を連ねても
それはあまりにも軽過ぎる気がした




「シュリ様・・・ 
私の事はお気になさらず・・・と申し上げたはず」

そう言いながらラウは
鞭とナイフで裂かれたシュリの体の消毒と手当を始める





シュリはその痛みに黙ったまま唇を噛んだ





自分にはラウがいる
こうして手当ても・・・・
だが幼かったラウは・・・・
今までどうやってこの痛みを凌いで(しのいで)きたのか・・・
ずっと一人で耐えてきたのか・・・・・

それなのに・・・・・
そのラウに、自分の身代わりをさせた
それを思うと居た堪れなくなった



もうあんな事は2度と・・・







「ラウ・・・」

消毒を続けるラウの手に 自分の手を重ねた



「痛みますか? もう少しです
 辛抱して下さい
 あとは包帯を・・・・」


「・・・・・・教えて欲しい」

その言葉にラウが不思議そうにシュリの顔を見た




「何を・・・・ですか?」

「二度とお前を 私の身代わりになど、させない・・・・・」
ラウの手がピタリと止まった




「シュリ様、私に出来る事は何でも致します
 ですから先程の事は・・・・ もうお忘れに」


「ダメだ
 私がやらなければ お前はまた・・・・・ガルシアに・・・
 頼む教えてくれ
 いや・・ 教えろ、これは皇子としての命令だ」


「・・・・ 命令・・・・・」




その言葉に少し驚いた表情を見せたラウは
そのまま何も言わず、シュリの手当てを続けていたが
暫くすると溜息の様にフッと小さく息を吐いた





「・・・・ 今までにあの様なご経験は?」

「まさか・・・  あるわけがない・・・・・・・」
シュリが目を逸らす



包帯を巻き終え、残った薬を片付けながら
「ですね・・・・」
と、ラウは一瞬 考えるように言葉を切った




「それでは・・・ 失礼します・・・・」

そう言うとラウは シュリのベッドへと上がり
横たえていたシュリの身体をそっと抱き起こした
包帯の巻かれた背中にクッションを挟み座らせる



「傷は痛みませんか?」

正面からラウに見つめられた


少し蒼いラウの頬に一筋、ガルシアの鞭痕が赤を引き
それは ゾクリとするほど美しかった



「大・・・丈夫・・・・・・」 

その声にラウは小さく頷くと
「何も知らなければ 真似さえできません」


シュリの腰まで掛かっていた上掛けをゆっくりと剥いでいった




「ラウ・・・・ なにを・・・・・」

「これから私がすることをよく見て 覚えてください
 恥かしがらず 言う通りに・・・」


その言葉に シュリが引き下げられる上掛けを引き留め、視線を外す




「・・ でも・・・・・・せめて 灯りを・・・・・・・」

「いけません、見ていなければ」



上掛けを全て奪うと ラウは自身の身体をシュリの足元に置く
一糸纏わぬシュリの体
そこに巻かれた包帯が透き通る肌に痛々しい




「脚を開いて」
ラウの静かな声が告げた





華燭の城 - 54 に続く
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華燭の城 - 52

ラウの視線の先に うな垂れたまま肩で激しく息をし
身体中から血を流すシュリが居た

床には 暴れ、飛び散った血が 
まるで絵画の様に暗い部屋に色を添えている




「クソッ・・! この役立たずめがっ!」

ガルシアはラウに腕を押さえられ
自身の体の火照りの行き場を無くし 怒りの声をあげた




「よーし! いいだろう!
 シュリ! 今は勘弁してやる!
 だが、代わりをラウムにさせる!
 今夜はお前がワシを満足させろ!ラウム!」


ラウは一瞬ガルシアを見上げたが クッと唇を噛んで目を伏せた


そして片足で跪いたまま、右手を左胸に当てる最礼を示し
「・・・・わかりました」
そのまま小さく頭を下げた





「シュリ! お前が言う事を聞かぬ役立たずだからだ!
 ラウムはお前の身代わりだ! よく見ておけ!」


その声に シュリが薄っすらと目を開けた
ガルシアが シュリに見せつける様にラウの頭をグイと掴む




「・・・・・・ ラウ・・・・ 何を・・・・・  
 ・・・・やめ・・・ ろ・・・・・!」



ぼんやりと霞む視界 
そこに ガルシアの前に押さえ付けられる様に跪く
ラウの姿が見えていた






自分の目の前で、ラウは目を伏せたまま、
あの細い指にガルシアのモノをとっている

そして口を開け、舌を差し出し・・・・・ それを舐め始めていた




自分の・・・ 身代わり・・・・


シュリは小さく首を振った




「やめろ・・・  やめろっ!!!」




ラウはゆっくりと舌を這わせた後、丁寧に舐め擦っていく
ガルシアは半眼でその様子を見降ろしながら
薄く笑い唇端を上げた


ガルシアのモノが更に大きく猛り始めると、
ラウはその繊細な指で自らの口奥へと運び入れる

柔らかな粘膜で包み込んだまま頭を前後に動かすと
ガルシアは 呻く様に小さく声を出した





「そうだ、そこだ・・・・
 もっとだ・・・・・・・・・・」

ガルシアの手が自分を掴んだ時と同じ様に ラウの頭を掴み
その手でラウの動きを欲しいままに操っていく




「グンッ・・・・ ンッ・・・・・・・・」


徐々にガルシアの手が激しくラウの頭を動かし
自らも腰を打ち付け始めると
ラウの喉から苦し気な くぐもった声が漏れ始める

解けた黒髪のかかる背中が 小さく震えていた





今、ラウの喉の奥に
ガルシアのモノが突き込まれ、動いているのだ・・・・
自分の身代わりで・・・
こんな・・・・・・
やめろ・・・ ラウ・・・・
かすれ、既に満足に出ない声でシュリは何度も叫んでいた







湿った音が続いていた
ラウの引き攣った呻きが何度も聞こえる
ガルシアの荒い息遣いが響く 長い長い時間だった



やがてガルシアの動きが一気に大きくなり
掴んだラウの頭に腰を打ち付けたかと思うと


「んっ・・・! でる・・・っ・・・」

その声の直後、震えていたラウの背中が ピクンと跳ねた
それでもまだガルシアの手は ラウの頭を離そうとはしなかった

その後も何度かゆっくりと抽挿を繰り返したあと 
小さくコクンと、ラウの喉が2度3度動く




そしてやっとその口から
細い糸を引きながらガルシアのモノが引き抜かれた



ハァ・・ ハァ・・
ラウは片手を床に付き、激しく肩で息をしてから
ゆっくりとガルシアに頭を下げた




「やはり上手いな・・・・ お前は」

ガルシアは フゥと息を吐き
満足がいったようにそのラウの黒髪へ手を置き見下ろした






「そうだ、ラウム・・・・・ お前がシュリを教育しろ
 ワシが満足できるように教え込め
 今のままでは 使い物にならん、いいな!?」



ラウが驚き顔を上げる



「陛下・・・・ それは・・・・・」

「これは命令だ、逆らう事は許さん」




ガルシアはそのまま 茫然とするシュリの側へ行き

「今夜はラウムに救われたな・・・・・」
そう言って顎をグイッと掴み上げ、じっとシュリを睨みつけた






「今日はもういい、終わりだ
 シュリを部屋へ連れて行け」



ガルシアはそれだけ言い捨てると、二人を残し部屋を出た
いつもの部屋でグラスに酒を注ぎ、一気に煽る
その顔には ”使用人に弄ばれる神” を想像しているのか
満足気な嘲笑が浮かんでいた



ラウは床に転がった杖を掴み 右手でグッと口元を拭った

ゆっくりと立ち上がると、滑車を下げ
その場に倒れ込んだシュリの冷え切った身体を
そっと抱き起こす


手枷を外し 石牢を出た時には
既にガルシアの姿はそこにはなかった






華燭の城 - 53 に続く
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華燭の城 - 51

「・・・ しか・・ し・・・・」

ラウは何かを言いかけたが、そのまま よろりと立ち上がり
シュリの側まで足を引き攣った



ゆっくりと滑車に手を掛け、引き上げた時とは逆に回すと
シュリの身体が徐々に下がってくる
そしてシュリが両膝を付いた頃、ガルシアはラウの手を止めさせた






ガルシアは自分の下半身の着衣を緩めながら シュリに近付き
両腕をまだ天井から吊るされたままで
膝立ちのシュリの顎をグイと持ち上げる



「おい、誰が寝てよいと言った・・・?
 ワシを満足させるのだ、起きろ」

そう言うと 意識も朦朧とするシュリの口に
取り出した自らのモノを押し込んだ






「・・ンッ!!・・グッ・・・・・・・!!!!」


苦しさにシュリが意識を取り戻す
自分の口に 男の猛ったモノが入っていた
驚き、目を見開いた・・・



「ンンンッ・・・・・・・ンっっーーーーー!!」

必死に顔を振り、逃れようとした
が、ガルシアの大きな両手が頭を押さえ込んでいた





「ンッ・・・・・・ンッッッンン・・・・・・・・・・!」

それでも 口からそのモノを引き抜こうと暴れ、首を振り、
ガシャガシャと鎖を鳴らした

その度に破れた皮膚は傷口を開き 床に鮮血を滴らせる




「クソッ・・・!!!  
 ・・・ 大人しくしろ!! 歯を立てるな!!!」

ガルシアがシュリの髪を掴み、更にその喉奥へ圧し込もうと
顔を引き上げる




その時だった




「痛ッ!!!!!!!!」

ガルシアが叫び、
その大きな体が シュリの前から数歩、後退った






「この下手くそがっ!!! 歯を立ておって!!」

ガルシアが思い切りシュリの肩口に 握っていた鞭を振り下ろす




「・・・ンァッ!!!」
シュリの悲鳴が響いた


2度・3度・・・と打ち据えてもガルシアの怒りは収まらなかった

鞭を床に投げ捨てると、緩めていた着衣のベルトのホルダーから
護身用のナイフを引き抜いた



「陛下っ!何を・・!」
ラウが咄嗟に叫ぶ

「うるさいっ!」

ガルシアはそれを一喝すると、左手でシュリの顎を鷲掴む
両腕を吊るされたまま、肩で息をするシュリの顔をグイと上げさせ
薄く開いたシュリの目を睨み付けた


そのまま右手に持ったナイフをシュリの胸にグッと圧し付ける
鋭い刃先は それだけでシュリの皮膚を裂き、胸に喰い込んだ



「・・ンッ!!!」

痛みでシュリの瞳が大きく開かれる




だがガルシアは、力を緩める事もなく
そのままの圧力で それを斜め上に勢いよく引き抜いた





「・・・ングッァっっっ・・!!」

鞭で裂かれた皮膚の上に 更に深い傷が口を開け
鮮血が真っ直ぐに湧き上がる




「このワシに歯を立てた罰だ!」

翻したナイフを再びシュリの体に圧し当てる

「ンッッ・・・!」 シュリが呻く





「陛下!!! お止め下さい!!
 今のシュリ様では・・・・!
 今、どれほどの痛みを与えても、
 陛下にご満足頂くのは無理です!!!
 もう・・・ お止め下さい!!」


怒りで叫ぶガルシアの横に ラウがすがるように跪き
その腕を押さえていた






華燭の城 - 52 に続く
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華燭の城 - 50

その時だった

----- ヒュンッッッ!!!



先より 一段高い、鋭い風斬り音に
幼い”あの日” を思い出していたラウの身体は ビクンと跳ねた



「・・・ッンアッッッ!!!!」


響いたシュリの短い叫び声に現実へと引き戻される
と同時に、ガランと一度 滑車が音を立てた


たった一度で、 まるで鋭利な刃物で切ったかのように
シュリの肩口から胸元へ・・・ シャツが裂け白い肌が口を開けていた
ツ・・・と血が滲む





「ああ、この感触・・・・ やはりいい・・・
 これが一番 手に馴染む・・・・」

ガルシアは満足そうに言うと、長い鞭の先で
床の石をピシリと鳴らす





そしてまた、高く振り上げた・・・・・・




「・・・ンンンっ!!!

  ・・・・・・・ッッアアッ!!!」




ギシギシと滑車と鎖が揺れる度、シャツは裂け散り
シュリの白い肌に赤い模様が刻まれていく

ガルシアはその姿を眺めながら、シュリの周りをゆっくりと歩き
何度も鞭を振り下ろした




その動きは驚く程 正確だった
宣言通り 顔や手といった、衣服を身に着けても
外から見える場所には 一度も当る事はない

その分、胸や腹、背中、腿など
隠れる部位には重なる様に幾筋もの線が引かれていく

何度も打たれた場所は 既に皮膚が裂け、血が流れていた





「ンッ・・・!! グゥ・・・・・・ ァァァッ・・・・・・・・」


歯を食いしばり、柔らかな髪を乱したシュリが
まるで蛇に絡まれ弄ばれる様に その身体を仰け反らせる



噛み締めた唇端から一筋の血が流れ
裂かれた身体の血と一緒になって脚を伝い床へと落ちて行った







燭台の蝋燭がその身を削るのと同じくして
ガルシアの行為は、痛みであまり声をあげなくなったシュリに
苛立つように激しくなった




「どうした! もっと叫べ! 大声で泣き喚け!
 この部屋では いくら叫んでも、その声は外には漏れぬ
 ここに至るまでの多くの扉が 音も声も、完全に遮断するのだ
 誰にも知られる事は無い、安心して叫ぶがいい!
 さぁ、もっとだ!
 ・・・・・お前は神だろう?! 
 神がワシの前にかしづくのだ!
 さあ、泣き声を聞かせろ!
 もっとだ!もっと!!」



いつまでも終わる事のないその責めに、声だけでなく
力さえ失ったシュリの体は
グッタリと、ただ鞭に踊らされる人形の様になった


それでもガルシアは手を止めようとはせず
何かに憑りつかれた様に鞭を振るい続けた


既にシュリの呻く声さえ 聞き取れない程に小さくなっている
意識があるのかさえ定かではなかった




「陛下!!  もう・・・ それ以上は!」

後ろに居たラウが、見兼ねて叫んだ



「うるさいっ!!! お前は黙って見ていろ!」

ガルシアが振り返るのと同時に
その手の中の鞭が ラウの顔面を捉えていた





「・・ンッッ!」

カラン!と音を立て杖が転がり、ラウが片膝を付く

衝撃で 結んでいた長い黒髪が解け、ハラハラと顔にかかり
その頬には真っ直ぐに 赤い裂け目が筋を引き血が零れる



「ラ・・・ ラウ・・・! ガルシア!やめろ!!」

そのラウの呻きに
力なくダランと吊り下げられたままのシュリが声を上げた




鞭打たれたラウの姿を見た訳ではなく
それは本当に、ラウの声に反射的に反応し、上げた声だった




「ほう・・・ まだ声が出るではないか
 口は使えると見える」



「おい、シュリを下ろせ」






華燭の城 - 51 に続く
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華燭の城 - 49

「・・・どうだ? 
 この部屋がどういうものかわかったか?」


ガルシアは、吊るされたシュリの周りをゆっくりと歩きながら
上から下まで、その全身を舐め回すように眺めた
バランスの取れた、手足の長い体は、鎖で吊るされていても
その美しさを損なうことは無い

ガルシアは満足の表情を浮かべた

そして、大きな肉厚の手で シュリの身体を抱き寄せ
衣服の上から撫で始める






「まだまだ披露目が続くからな・・・」

ガルシアはシュリの耳元でそう囁くと 
耳朶を舐め、舌を差し入れた



「顔や・・・・ 見える場所は勘弁しておいてやる」

耳の中で湿った声が響く

その不快感にシュリは強く目を閉じ首を振った
体を捩り、逃れようとするが 
吊るされ、揺れて不安定な身体は思うようには動かない




「どうあがいても、無駄だ
 ここからは逃れられん」

再びガルシアの囁くような小さな声が耳の中でした




ガルシアはシュリの耳から首筋に舌を這わせながら、
シャツの隙間から胸元へ手を差し入れる
指で胸の先端をつまみ、ギリッ!と捩じり上げた



「んっ・・クッ・・・・」

痛みでシュリが天井を仰ぐ
それでも声を上げまいと唇を噛み締めた





「ほう・・・・ 耐えるか・・・・・
 どこまで我慢できるか・・・

 言っておくが、この部屋での我慢は 身を滅ぼすぞ
 ラウムの様に脚一本・・・・ で、済めばいいがなあ・・・・」





その言葉にシュリが驚いた様に目を開けた




・・・ ラウ・・・・!!?






ガルシアの少し後ろ・・・・ 自分の正面にラウが居た
俯いたまま左手でグッと杖を握り
右手は小さく拳を握り締めている




ラウの・・・・ 脚・・・・

部屋の鍵を持っていたラウ・・・・・・・

でもあの脚は 子供の頃からだと・・・・・・




子供・・・・ 

まさか・・・・   

まさか ラウも・・・・・・ 

・・・・しかも・・・ 

・・・ そんな頃から・・・・?



シュリはラウの子供時代など何も知らない
だがその頭の中で 今の自分と、
そしてまだ子供の、小さなラウの姿が重なり合っていく

鎖で吊り下げられた男の子・・・・
泣き叫び、暴れ、やめてと懇願する声は既に絶叫・・・・
それは国に残してきた弟とも重なり、
想像を遥かに超えた恐ろしい映像だった




「・・・まさか・・・・・・
 ・・・・・・・  ガルシアっ!!!  貴様っ!! 
 ・・・・ ラウに・・   ラウに何をした!!!」

体の底から湧き上がる怒りで シュリが叫ぶ




ガルシアに掴みかかろうと 渾身の力で繋がれた腕を振り解こうとした
冷たい鉄輪が腕に、足首に食い込み、
ガシャガシャと鎖と滑車がぶつかり、うるさく音を立てる




「・・・お前だけは・・・・!
 お前だけは絶対に許さんっ!!!!
 何があっても、お前だけは・・・・・!!」



「・・・・・ いけませんっ!!!」

その叫びを遮ったのは ラウの声だった



「シュリ様、いけません!
 ここでは・・・ 抵抗してはなりません・・・
 大人しくしていてください・・・・・」


絞り出すような そのラウの声に、ガルシアの大きな笑い声が響いた




「さすがだ!ラウム!  お前はよく判っている
 それでこそ 幼い頃より躾けた甲斐があったというものよ
 縛った痕が見えぬ様に、手首を避け腕を縛る辺りは 手慣れたモノよなぁ

 シュリ、お前も口の聞き方に気をつけろ
 そして、このラウムの様に従順になれ
 ワシを存分に愉しませるのだ」






ガルシアの、鞭を握った右手が
見せつける様に大きく振り上げられた

細く黒い革製の影がしなやかにうねる 
その姿は 暴れる蛇が獲物に飛びかかろうとする様に似ていた




---- ビシッッ・・・・・!! 



床を叩く乾いた音にラウは思わず目を背ける





15年前・・・・ まだ12歳だったラウの記憶が蘇る
ここで起きた事・・・・・
ここで受けたガルシアの行為・・・・・・
歩けなくなった日の事・・・・・・



そして悟ったのだ
ガルシアには逆らうな、、、と・・・・・






華燭の城 - 50 に続く
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プロフィール

凛

Author:凛
BL・MLを日々妄想してる腐女子

しかもかなりハード目が好きな壊れかけ

SM・拷問等の酷い描写が苦手な方は、ご遠慮ください

1作目 『刻印』
2作目 『華燭(かしょく)の城』 
完結しました。
ブログタイトル下のマップより全話読んで頂けます。
『刻印』の簡単な解説はこちら から


まだまだ初心者故、描写の至らない点
設定の矛盾は笑って見てください 

読みやすく・・と思っているので、長編小説ですが、各回短く、短文、1日1回UP予定です


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