0-story

18禁 BL小説です。主に拷問・凌辱等ハード系。 こういう小説に興味の無い方、嫌悪感がある方はご遠慮ください。サイトマップより一気読み出来ます
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華燭の城 - 17

そこもかなり広い部屋だったが 廊下と同じく電灯は点いておらず
明りは 暖炉の炎と、燭台に立てられた数多くの蝋燭だけだった

そのせいか ここも薄暗く、ひどく重苦しい



その暗い部屋の中央で、一点だけ 不気味な程不似合いな
真紅の大きなソファーにガルシアは座り こちらを見ていた
炎に照らされた大きな影が 壁にユラユラと揺れている





「ラウム、お前はそこで待っていろ」  
シュリの後ろに立つラウにそう顎で指示すると

「シュリ、こっちへ来い」  とゆっくり手招きをする






「シュリ様、陛下のお側へ」

ラウはそれだけ言うと頭を下げ そのまま入口の脇に立った








シュリは無言のまま、ガルシアの数メートル手前まで進んだが
そこでピタリと足を止めた 



「もっと側に来い」
ガルシアは手に空のグラスを取ると、シュリの方へと向ける


「酌をしろ」






自分の父よりも年上と思われるガルシア
妃も亡くなったばかりで、世継ぎの子も居ないという

家族と言える者が誰も居ないこの巨大な石の城で たった独り・・・ 


ラウの話を聞いた時は、このガルシアにわずかな哀れみさえ感じた



だが、再びこうして その顔を見、その声を聞くと
この男が 自分の国に、そして自分の家族に、民に、
銃を向けたという事実が どうしても許せなかった



それ以上 側に寄る気になれず、シュリは立ち止まったまま
じっとガルシアを睨み続けた







「シュリ、聞こえないのか! さっさとしろ!」

黙ったまま動こうとしないシュリに、ガルシアは苛立ちの声を上げる




「今日からワシがお前の父王だ
 父に逆らう事は絶対に許さん!
 さあ、跪き(ひざまづき) 酒をつげ

 逆らえば、どうなるか・・・ わかっているのだろうな?!
 出来ぬと言うなら お前の弟をここへ連れて来て
 代わりに酌をさせてもよいのだぞ!」



それだけ怒鳴ると、ガルシアは 側にあった酒瓶を握り
グイと差し出した






「クッ・・・・ 卑劣な・・・・・」
 

だが従うしかなかった






シュリはガルシアの前まで行くと ゆっくりとその足元に跪き、
差し出された酒瓶を受け取った



唇を噛んで、それをガルシアの持つグラスへと傾ける



朱の酒が静かにグラスを満たしていく






「そうだ、それで良いんだ
 最初から大人しくそうしていろ、いちいち言わせるな」

ガルシアは薄く嗤う(わらう)と注がれた酒を一気に煽り(あおり) 
空になったグラスを トンとテーブルに置いた


そして今度は自らが そのグラスへ 酒をなみなみと注ぎ
「今度は お前が飲め」  と、シュリに差し出した






華燭の城 - 18 に続く
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華燭の城 - 16

「ラウ・・・? 
 ガルシアの部屋へ行くんじゃないのか?
 居室は真っ直ぐだと・・・・」


「いえ、こちらへ」



振り向きもせず先を進むラウを 不思議に思いながらも後を追い
しばらく進むと、正面にはまた 大きな両開きの黒い鉄扉が見えていた



縁には見事な銀細工が施されてはいるが
ひどく頑丈で重そうなその鉄製の漆黒の扉は
今までのきらびやかさとは正反対の
ズッシリと重く暗い、陰鬱とする雰囲気を漂わせていた


その扉の放つ気の暗さに、シュリは思わず眉をひそめ 足を止める

自身の心臓を否応(いやおう)なしに押さえ付けられるような嫌な圧迫感
その感覚に無意識の防衛本能が働き
シュリは自分の胸に手を当て、拳を握り締めていた





だがラウは、慣れているのかそんなシュリに構う事なく
扉をノックし、声を掛ける
するとそれは、中からゆっくりと押し開けられていった



奥に続くのは電灯ではなく 
蝋燭が壁にポツポツと並ぶ ほの暗い廊下
真紅の絨毯も無くなり、石畳様の床になる

その先は まだ数十メートルも続き、正面にはまた 次の扉が見えていた




「また扉・・・・
 どうしてこんなに扉ばかり・・・」




怪訝そうなシュリの問いを余所に ラウが口を開いた



「シュリ様、あの突き当たりの部屋で 陛下がお待ちです
 これからは度々・・・・
 陛下がシュリ様を あちらへお呼びになられると思いますが
 この扉だけは 今の様に扉番によって開けられます

 普段は私がこうやってお供致しますが
 もし、私が居ない時は ご自分で声を掛けてください
 深夜、ここは少し暗くなりますので迷われない様に」
 


「深夜・・・?」

聞き返したが シンと静まり返る薄暗い廊下で
その返事は戻って来なかった







たった今、黒い扉を内側から押し開けた二人の若い男は
それぞれが廊下の左右に分かれて立ち、
ただ黙って真っ直ぐに、その鼻先10センチ程の距離で何もない扉に
直立不動に向かっている

服装も 二人揃って全身が黒づくめで
その息づかいさえも聞こえはしない


まるで黒い扉に・・・・ 漆黒の暗闇に、
自ら溶け込もうとしているかの様で、
シュリ達の存在さえ、意識に置いている様子はない



その二人の余りにも異様な雰囲気から目が離せなくなり、
シュリは立ち止まったまま動けずにいた






「シュリ様、その二人は何も見ない、何も聞かない、何も話さない
 ただの人形とでも思ってください」


それだけ言うと、シュリを促す様に
ラウは再び奥の扉に向かって歩き始めた




「人形・・・・?  って・・・・・」

その答えも 勿論返っては来なかった






「こちらでございます」

ラウが扉をノックすると中から 「入れ」 と、あのガルシアの声がした






華燭の城 - 17 に続く
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華燭の城 - 15

コツコツと足音の響く廊下を二人は並んで歩いていた

杖をついてはいるが、ラウの歩みは遅くはなく
この城は戦の為に、ガルシアが中世の頑強な古城を移設させたのだと
ラウが説明をする



そう言われてみれば、丘を丸ごと使い 周囲を堀で固めたこの城は
まさに戦の為にある様な造りだ
古めかしく冷たいという印象も 中世の石城と言うならば納得がいく

だが、あの外壁の素晴らしい彫刻は近代の技術でしか成し得ない
あれはガルシアが彫らせたのだろうな・・・





「ですが、中の設備は移設時に 現代の物に取り変えられていますから
 電気も水道も、ちゃんと使えますよ」  

そんな事を漠然と考えていると、
黙ったままのシュリを心配したのだろうか・・・
ラウが 僅かに首を傾げて目線を合わせ、優しく微笑んだ








すれ違う臣下の者達はシュリの為に道を開け、
廊下の端に寄って片膝を付き、右手を左胸に当てるという
最上位の礼を尽くした


使用人も、ラウと一緒に居るのがシュリだとわかっているのか
作法が判らぬなりにも喜びの表情で
何度も繰り返し 深々と頭を下げて行く


中には本当の神にでも祈る様に
「・・・・ありがとうございます。 ありがとうございます。」と
唱える様に手を組む者さえいる

その顔は皆、嬉しそうだった






「本当に皆・・・・ 私が望んで ここへ来たと思っているんだな・・・」

そんな臣下の顔を見ながらシュリが呟いた


「はい」

ラウが小さく頭を下げて返事をする
  








そして突き当たりにある扉の前で立ち止まった


「この向こうが 陛下の居られる主棟になります
 ここからは 何人(なんびと)であっても
 陛下の許可が無ければ立ち入る事はできません」



扉を開けると そこは廊下にも真紅の絨毯が敷き詰められ
凝った柱や天井など、造りは一段ときらびやかになる






「ラウ・・・ 
 この城に侍女やメイド・・・ 女性は居ないのか?」


許可のある者しか入れない、というだけあって
すれ違う人間の数は一気に少なくなったが
それよりも・・・
今日 城へ入ってから見た者が全て男だった事を
シュリは不思議に思っていた


普通ならば、食事の支度や身の回りの世話など
城には多くの女性達が働いているものだ






「女性ですか・・・ そうですね
 城の最下層・・・・ 下働きにはわずかに老女もおりますが
 城内のほぼ全てが男子です
 この主棟に限っては 出入り出来るのも男子のみ
 陛下は女性がお嫌いなのです」


「嫌いって・・・・ では、妃はどこに?」



自分より少し背の高いラウを見上げる様にして 
シュリが顔を上げる




「妃様は 先日お亡くなりになりました」

「亡くなった・・・・?」

「はい、 ですから、シュリ様
 陛下の前では、妃様のお話は されない方がよろしいかと」


「そうか・・・ 妃が・・・・・・」

目を伏せるシュリに 

「このまま真っ直ぐ行くと陛下の居室があります」




今居る廊下を、真っ直ぐに続き伸びる廊下と、右手に折れる道・・・
├ 型になり、二手に分かれた廊下で足を止めたラウが
それぞれの廊下を示して見せる

シュリがそれに頷くと、
ラウは そのまま角を右に曲がって歩き始めた






華燭の城 - 16 に続く
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華燭の城 - 14

「本当に・・・ 私がここに、おとなしく居れば・・・・
 両国の民と、私の父や母、弟は
 これからも今まで通りに暮らせるのだな?」


「勿論です
 シュリ様がここに居られる限り、我が国も
 そして神国の安全も保障される・・・ それが陛下の御意向です」



長い沈黙など無かったように
シュリの問い掛けに ラウは即答した






「・・・・ ならば・・・・ それでいい・・・・・
 その為に来たのだ・・・・  
 ・・・・そちらが約束さえ守れば、他言はしない
 ・・・・何も心配することはない」


「ありがとうございます」


ラウは深く腰を折った





「この秘密だけを守って頂けるなら この城内での行動は自由
 皆、シュリ様をお迎え出来て喜んでおります
 もちろん いつも私がお側におりますのでご安心を・・・

 ただ、城の外にお出になりたい時だけは
 陛下にお許しを頂いた後に 必ず私がご一緒に・・・・」



「・・・ そういう事か・・・・」

「・・・?」

「ラウも・・・・ 世話役も 所詮、見張り・・・ ということだ」




ほんの少し前、このラウの見せた優しい笑みに
わずかでも安堵した自分がいた
だが・・・・ やはり ここに味方はいないのだ



そのシュリの言葉に ラウは目を伏せた



「確かに・・・ 私は陛下から、シュリ様の行動を見張る様
 仰せ付かっております
 その様な私の事を、すぐに信用して頂けない事も承知
 そして、陛下の行った事を思えば・・・・
 陛下を・・・・この国を憎まれても仕方ありません
 ですが、私は・・・
 何があってもシュリ様の味方です・・・・ そう思っております」




シュリは黙った
この理不尽極まりない勝手な話
だがその理不尽に抗う(あらがう)ことが出来ない自分と
会ったばかりだというのに 信じろと、味方だと言い切る男


いったい何をどう信じればいいのか・・・・




得体の知れない困惑の中で、膝の上で組んだ両手に額を乗せると、
見たくないモノが現実として視界に入り、
シュリは思わず目を閉じた 





「・・・大丈夫でございますか?
 これから暫くは 国内外へのお披露目の宴も続きますし
 少しでも時間があれば 休まれた方がよろしいかと」


「・・・・シャワーを・・・」


そう呟くシュリの右手は 左手首の固まった血を隠す様に握られていた



「・・・これは気が付かず、申し訳ありません
 浴室は向こうの扉です
 その間に 着替えの準備をしておきます」


ラウは部屋の端に並ぶ扉の1つを示して頭を下げた








シュリが入浴を済ませて戻ると
ラウはきちんと着替えを一揃え 用意して待っていた


「お食事は どうなされますか?
 準備はできておりますが」



ラウの視線の先、
部屋の大きなテーブルに 一人分の食事が並べられている


いくつも並ぶ皿に、色取りどりの料理が美しく盛り付けられ
それは一人分とはいえ、全く見劣りするものではなかった



「・・・・これはラウが?」


「いえ、私は運ばれた物をご用意しただけ、
 シュリ様や陛下の召し上がる物は、
 専属の料理人が厳しい監視の中で作っております」



その答えにシュリはふと苦笑いを浮かべた


神国では侍女達がいつも賑やかな声を上げながら
城の厨房で皆の食事を作っていた

その楽しそうな声に誘われ、幼いシュリもよく厨房に入ったものだった
すると必ず誰かが味見と称して、摘まみ食いをさせてくれる
それは遠い昔の幸せな記憶・・・・

だがあのガルシアだ、敵は少なくはないはず
万が一、毒でも盛られては・・・と考えるのは当たり前で
専属の料理人と 監視いう言葉は至極当然の事といえた

あの非情な男に、家族の団欒等という言葉は似合わない





「・・・ 何か?」

苦笑いとはいえ、笑みをこぼしたシュリを
ラウが不思議に思うのも無理はない


「いや・・・何でもない
 悪いが、今は要らない」

「何か失礼でもありましたでしょうか?」


テーブルに並べられた物は フォーク1本、スプーン1つに至るまで
全てマナーに適って(かなって)いて、落ち度など無い程に完璧だった



「そうじゃない・・・・ ただ食欲がないだけだ」


差し出された衣服を身に着けながら答え
着替え終わると、ゆっくりと中央のソファーに腰を下ろした



「承知いたしました」

手際よくテーブルを片づけるラウを見ながら
シュリはソファーに座ったまま動く気になれなかった

ただただぼんやりと 動くラウの姿を見ていた







その時、トントンと小さく部屋がノックされた


応対に出たラウが
何か一言二言、廊下の人物を会話を交わしている

扉の間から わずかに黒い袖が見え隠れしていることから
ノックしたのは あの車で一緒だった男・・・・ オーバストという男らしい




「シュリ様、 急ですが・・・ 陛下がお呼びでございます」

扉を閉めてシュリの元へ戻ったラウがそう告げた




「・・・・ わかった・・・・ 案内頼む・・・・」






華燭の城 - 15 に続く
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華燭の城 - 13

「シュリ様、
 まだ状況が判らず、戸惑っておいでだとは思いますが
 先ほど下で出迎えた官吏・・・・
 
 この国では、国政を執る役人の方々を
 そう呼んでおりますが・・・
 
 その官吏様達、兵士、使用人達はもとより
 この国の民、ほぼ全ての者が、
 シュリ様は・・・・ ”ご自分から望んでこの国に来られた。” ・・・と、
 そう思っております」




「・・・・・望んで・・?
 ・・・・・そう思っている・・・・ 
 ・・・・・とはどういう事だ・・・・?」


隣に立つ背の高いラウを見上げる様にして 
シュリが顔を上げた






「はい、今回のこの件は・・・・・」

一度言葉を切った後、
改めてシュリの目を見つめ直してラウが続けた




「神国の方から、我が国に持ち掛けられた話。 と言う事です
 シュリ様を是非、跡継ぎとして、
 この国に、貰って 欲しいと・・・」


「なっ・・・! 何を・・・・!
 そんな、馬鹿な話が・・・・!!!
 貰ってくれなど・・・
 誰が自ら望んでなど 来るものか・・・!!」



その余りにも無茶苦茶な話に シュリが思わず立ち上がる

足にぶつかった重厚なテーブルがガタンと動き
上に置かれていた水差しもカタカタと揺れる
繊細なカットが施されたグラスも その振動に共鳴するかのように
高い音を鳴らした

が、そんな物はシュリの眼中には入っていなかった

目の前に立つラウに向かい、
「あり得ない!」
と顔を小さく横に振りながら抗議の声を上げ
その手はラウの上着の胸元を掴む様に握り締めた







「ええ、私はシュリ様の世話役に選ばれた時
 陛下から 直にお話を伺いました
 ですから、事の真実を存じております」

ラウがそのシュリの手に 自分の空いている右手を優しくそっと重ねる




「・・・ですが、
 その真実を知る者はこの城でもほんのわずかなのです
 そしてこれは、絶対に他言無用 
 もしこれを誰かに、ほんの少しでも漏らされた場合は・・・・」


「・・・・その時はまた私の国に攻め込むと・・・・・
 ・・・・そう言うのか!」
 

「私には わかりません
 ですが、陛下はそうされるおつもりなのではないかと・・・・・」


「自国の・・・・ 全ての国民や役人にまで嘘を・・・・ 
 皆をずっと騙す事になるんだぞ! そんな事が・・・・」


「・・・・・嘘にもいろいろあります
 絶対についてはいけない嘘
 つかなければならない嘘
 ついた方が良い嘘・・・・・ 
 そしてこれは、ついた方が良い嘘・・・・・
 両国民の為でもあると、陛下は仰られました
 一歩間違えば 戦になっていたかもしれない。
 ・・・などと言う恐ろしい話は
 何も知らず、平和に暮らす国民には ショックが大きいのです
 
 しかも攻めた相手が神国となると、これはもう神への冒涜・・・
 我が国の民も動揺するでしょう
 正直、私がそうでしたから・・・・

 それに・・・・
 自分達を守る為に、シュリ様お一人が犠牲になられたと知れば
 神国の民も悲しみます

 シュリ様は 世継ぎの居ないこの国の行く末を案じられ、
 両国の恒久の平和を願い、自ら望まれてこの国へ来られたのです」



「・・・・・なんて・・・
 なんて都合のいい、勝手な筋書きだ・・・!」


話を聞いていたシュリの拳が
再び強くラウの上着を握り締め、唇を噛んだ



「・・・はい」

一瞬、目を伏せながらも小さな頷きと共に返されたその強く短い一言は
それでも全てを呑み込めと、そう言っていた





「・・・・ くそっ・・!」



シュリの頭の中を、また ”何も知らなければ・・・・” と言うガルシアの声が
グルグルと渦巻く


突き放す様にラウの体から手を放したシュリは
ドサリとソファーに体を沈め、俯き(うつむき)
そのまま長い時間、じっと何かを考えていた



ラウも黙ったままシュリの横に立ち 微動だにしない




徐々に暗さを増す室内・・・・
窓の外は既に漆黒となっていた




強くなった風音がガラス窓を叩き始めた頃
シュリは ようやく小さく息を吐き、
ポツリ・・・ と溜息混じりに口を開いた






華燭の城 - 14 に続く
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華燭の城 - 12

「・・・・・名前は? なんて呼べばいい?」

暫くの沈黙の後、シュリが口を開いた




「私はラウムと申します
 ラウ、とお呼び下されば・・・・・・」

「ラウム・・・?!」

男が頭を下げたまま答える中
窓の方に歩みを進めていたシュリが驚き 振り返った

 



「”ラウム”って・・・・
 まさか、あの悪名 ”悪魔鴉(カラス)” の”Raum” なのか?!
 その様な忌名・・・・ 
 それは本名なのか?!
 ファミリーネームは・・・・?!」


名乗る男の言葉を遮り、矢継ぎ早に質問を投げる声も思わず大きくなる







だがラウムと名乗った男は、顔色一つ変える事はなかった


「私はただの使用人
 私の様な身分の者に ファミリーネームはございません
 
 陛下は 周りの者に御自身で名前を付けられます
 今日、陛下とご一緒に神国から戻られた側近長の方・・・・
 あの方はオーバスト、 ”Oberst”・・・・ ”大佐” という意味で
 そう呼ばれていると伺った事があります

 陛下が私を呼ばれる名がラウム・・・ ”カラス” と呼ばれるのなら
 きっと この辺りでは珍しい この黒髪のせいでしょう」


思いがけないその静かな答えに シュリの方が言葉に詰まった




いくら驚いたとはいえ、そして いくら相手が使用人であるとはいえ、
初対面の者にいきなり
『お前の名は悪名だ、悪魔だ』 とは、あまりにも非礼である
 



「・・・そう、 か・・・・・悪かった
 ・・・・余計な事を言った・・・・すまない」

そう謝るシュリに 



「いいえ、お気になさらず」 

頭を下げたままのラウの声が優しくなる
その澄んだ声に シュリもわずかに緊張の糸を解いた




「ありがとう・・・・ これからよろしく頼む、ラウ」

「はい、シュリ様」

ラウは顔を上げると 真っ直ぐにシュリを見つめ優しく微笑んだ







本来、皇子の世話をするのは侍従と言われる身分の者だ
一般の使用人が側に付くということはあり得ない

だが、シュリはこの期に及んで そんな事に頓着する気も
文句を言う気も 更々ありはしなかった

いや、それどころか 捕虜同然の自分に
世話人が付けられるという事だけでも驚きを持っていた



そしてもう一つ シュリの目を奪ったのは、そのラウ本人だった


年は20代後半ぐらい・・・ だろうか
使用人とはいえ皇太子の側で身の回りの世話をするのである
長身で細身の体にきっちりとスリーピースのダークスーツを着こなし
整った顔立ちに長い黒髪が良く似合う

暖炉の炎に映されたその姿・・・
左手に金属の杖をついて立つその姿に
シュリは何故か目が離せなくなり、暫く見つめ続けていた








「・・・どうされました?」

「あ・・・・ いや・・・・・・・・」


問いかけるラウから照れ隠しの様に視線を外し
目の前の窓に掛けられていた重厚なカーテンを引き開けた


そこにはあったのは・・・・


腰の高さ辺りから 高い天井まで届く大きな窓いっぱいに
頑丈に はめ込まれた鉄格子だった




 
思わず絶句した
囚われ人・・・・ やはり、そういう事なのだ


カーテンを握った拳に力が入る




黙ってうつむき、唇を噛むシュリにラウが近付き 

「シュリ様・・・
 ここでの生活について、
 少しお話しておかなければならない事がございます」

その手からそっとカーテンを取ると、ゆっくりと引き閉じていく






シュリは目を伏せたまま黙って頷き、
促されるままソファーに腰を下ろすと
ラウは右足を引きずるようにコツコツと杖をつき その側へ立った


「脚・・・・・ 悪いなら構わない、座ればいい」

シュリが向かいのソファーを勧めたが

「この脚は 子供の頃から・・・・
 多少、不自由はしますが 
 今はもう痛む事もありませんので、ご心配なく・・・・」

そう言ってラウは立ったまま話し始めた






華燭の城 - 13 に続く
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華燭の城 - 11

シュリは無言のままその男の後に付き、ある一室へと案内された


そこは華美では無かったが、
きちんと整えられた広間程はありそうな大きな部屋だった




左側は一面に窓があるのだろう

金房飾りの付いたビロードの・・・
それでいて落ち着いた濃紺色の重厚なカーテンがいくつも並び、
壁のほぼ中央に大きな暖炉、
そしてまたカーテンが続いた先、
部屋の一番奥に天蓋付きの大きなベッドがあった




大理石の床の中央には絨毯が敷かれ
天井にはシンプルだがガラス細工の美しいシャンデリアが
いくつも下がっている




食事用なのか、光沢も美しい大きなテーブルに
足を投げ出して座ってもまだ余る程の 
ゆったりと寛げ(くつろげ)そうな大きなソファーセット

右側の壁に掛けられた絵画の数々、調度品、寝具・・・・


どれも嫌味なく品良くまとめられ、好感が持てる物ばかりだった


暖炉には 既にあたたかな火が入り
この大きな部屋でも 寒かった外の冷気など、一切感じさせることがない








「ここがシュリ様のお部屋になります
 拝命が急でしたので、
 お好みがわからず、勝手に準備させて頂きました
 気に入って頂けると嬉しいのですが」

案内してきた杖の男が 頭を下げた





「・・・・ ここが私の?」


「はい、足らない物、欲しい物があれば何でも仰って下さい
 これからは私が シュリ様のお世話をさせて頂きます
 何かあれば、すべて私に お言いつけ下さい」




長く美しい黒髪を 背中の中央辺りで一つに束ねた背の高い男は
静かだが よく透る声でそう言うと、もう一度 深々と頭を下げた




「・・・・ ああ・・・・・」

未だ状況が呑みこめず、シュリはそれだけ答えるのが精一杯だった






皇太子・・・・ 
新しいこの国の世継ぎとは名ばかりで、現実は捕虜同然

薬を打たれ眠らされ
自国の民の命、そして家族の命と引き換えに
いきなり、拉致の様に連れて来られた



これからは この冷たい異国の城でたった一人
どんな生活を送るのか・・・・



牢に幽閉され 一生、陽を見る事さえ出来ないかもしれない
そう覚悟していたのも事実だった





だが、ここは・・・・・

この暖かい部屋は・・・・・?

そしてあの純粋に喜ぶ人々は・・・・・・?






シュリは自らが置かれた状況が 何一つとして理解出来ぬまま
ただただ困惑の中に居た


だが、整った暖かな部屋と 落ち着きのあるこの静かな男の態度に
少しだけ安堵したのも、また事実だった






華燭の城 - 12 に続く
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華燭の城 - 10

外見は、まるで人の温かみなど感じられない冷たい石造りの城だったが
その城内では 官吏や臣下、使用人達が慌ただしく行き来し
今日、世継ぎとしてやってくる あの神国の皇子を歓迎すべく、
その準備に追われていた





「あの神の子が 我が国の世継ぎ様になられるぞ!」

「なんと めでたい事だ!」

「それはそれは美しい方だぞ! 私は一度 その舞を見たことがあるのだ」

「先方より我が国に 是非とも皇子を・・・・ と、打診があったそうだ」

「それもこれも、全て陛下のお力あっての事! 
 さすが、我が陛下 ガルシア様だ!」




行き交う人々が あちらこちらでそんな会話を交わし、
城内は活気と喜びに溢れていた







皇子を迎えに行った王一行が戻ったとの連絡が入ると
誰言うとなく、官吏以下・・・・ 手の空いている使用人までもが
城正面の大ホールに続々と集まって来る



初めのうちこそ、輪になり、塊になりし 祝話に興じていたが
いつしか扉前に自然と整列し
今か今かと その時が来るのを待っていた



そしてやっと  「陛下のお帰りでございます!」  と声がし
その重厚な扉が開かれると
臣下の兵は一斉に片膝を地に付き礼を示し、
官吏達は深々と首を垂れる







その迎列の中央へ 多くの黒服に守られる様にして
満足気に、ゆっくりと歩み入って来る国王ガルシア
と、その後に続く 一人の青年・・・・





「ほ・・・ 本当にシュリ様だ・・・!」

その姿を一目見ようと 
恐る恐るに顔を上げた1人の男が思わず声をあげた

それは過去に舞を見たことがある と言っていた あの官吏だった




「おお・・・・!」 
その声に場内が一斉にどよめいた




ガルシアは右手を軽く挙げ、それを制すると

「皆、出迎えご苦労
 既に話は聞いている事だろう
 
 本日、我が国は・・・・  神国、シュリ皇子を世継ぎとして迎えた!
 早速、披露目もしたいところだが 長旅だ
 まずは一休みし、準備を整えた後に、改めて宴を開く事にする
 これからは祝宴が続くぞ! 存分に楽しむがいい!」


「おおっーーーーーーー!!!」


そのガルシアの言葉に 大きな歓声が上がった






「シュリ様ーー!」

「シュリ様ようこそーーーーー!」



諸所で歓迎の声が上がり、大拍手が沸き起こった
皆 隣の者と手を取り合って頷き、笑い合っている・・・・


外の冷たい空気から一変、
熱いほどの歓喜に包まれたその空間で
シュリはただ一人、その光景を理解出来ずに居た

黙ったまま、ただただ茫然と 喜ぶ人々を見つめ続けていた






「シュリを部屋へ連れて行け」

人々の中へガルシアが声を掛けると
出迎えの列の最後尾にいた一人の若い男が

「シュリ様、こちらへ・・・・ 」   と杖をつきながら歩み出た






華燭の城 - 11 に続く
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華燭の城 - 9

泣いて引き留める母と弟の手を握り
悔しさに顔を歪ませる父王に跪き(ひざまづき)
その指に最後の口づけをしてから、どれほどの時間が経ったのか・・・


シュリは揺れる車の中で 目を覚ました






頭が重く、初めは自分の置かれた状況さえ のみ込めなかった


” ここは・・・・ ”


徐々に覚醒していく意識の中で
「・・・・・ っ!・・・」
慌てて腰に手をやった
が、持っていたはずの神儀の双剣は 既にそこには無い





国を出たあの日、
幼い頃から自らの分身として大切に持っていた剣を差し出せと言われた

それを拒否し、かなり抵抗したのを覚えている・・・・


自分の左手首に残る赤い血の跡を指でなぞった
あの時、ふいに何かの薬を打たれ眠らされたのだ






チラと顔を上げたシュリの視線の先
その正面に 向かい合う様にして1人の男が座っていた

・・・・ガルシアではない



その男もシュリが目を覚ました気配に気付いたのか
腕を組んだまま 伏せていた顔を上げる事もせず
ただ、ジロリと 目だけを静かに向けた



黒い上下のスーツをきちんと着ている所を見ると
ただの兵士では無さそうだった



あれから何日・・・・
自分の剣は・・・・・
そう聞いてみた所で、この男が何も話しはしない事は
その鋭い眼光と 微動だにしないその態度から明らかだ


くそっ・・・・・・・!








唇を噛むシュリの視線の先
車窓には、自国よりも遥かに大きな街が広がっていた
綺麗に連なるオレンジの屋根、馬と車とが行き交う石畳の道

その道を行く車列・・・・ 
車の前部中央に小さな黒旗をなびかせ進む車は ガルシアの物だと判るのか
前を行く馬は道を譲り、街行く人は足を止め、車に向かって笑顔で頭を下げる
ジーナと同じぐらいの男の子は 
母親に手を引かれたまま 元気に手を振っていた


穏やかで、幸せそうな街


この国の王が 他国に戦を仕掛けたという事など知らない人々
自分の返事次第で、戦火に巻き込まれたかもしれない人々・・・

”何も知らなければ幸せに暮らせる” そう言ったガルシアの言葉を
シュリは思い出していた




街の大通りを抜けると
雨上がりの霧に包まれた 巨大なガルシアの城の門が遠くに見え始める




その城は小高い丘の地形を丸ごと利用して建てられていた

丘全体をぐるりと取り囲む様に造られた大きな堀
その掘の直上、見上げる程に切り立つ高い石の城塀には
砲を据える為の窓がいくつもあり
門の両脇には 見張りを置くための門塔がある

先端には国旗だろうか、鳥の様に見える紋章を白抜いた・・・・
この車にあるのと同じ黒旗がはためいていた



シュリを乗せたガルシア達の車列が 門の前に止まると
その城門が ギシギシと重い音を立てゆっくりと開く






そこは、寂寞(せきばく)とした風景だった

美しい庭園に囲まれた自分の城とは違い、
緑の木 一本、花一輪さえも無い

ただ何処までも 暗い石の道が続き
丘の裾から頂上に向かい立ち並ぶいくつもの館棟


そしてそのずっと奥・・・・
丘の頂に同じ石造りの巨大な城が、薄い夕陽を背にして立っていた







車が近づくに連れ、
霧を掻き分け 次第にハッキリと姿を現し始めた城塀の内部


一見 無機質にそびえる壁には
細やかな幾何学模様に似た精密細工が
折り重なるようにして びっしりと施されている


黒一色の石でありながら
その陰影だけでこれほど見事に・・・ と思わせる贅の産物だ


それは塀だけではなかった
連なる館棟の壁の上部にも屋根にも 様々な紋様、彫刻が刻み込まれ
雨露に濡れたそれは夕陽を受け輝き、一級の芸術作品にも劣らない



王族として生まれ、芸術・美術品の類には慣れ親しんでいたシュリも
その光景には思わず車窓を開けずにはいられなかった


雨上がりの冷たく重い湿気を含んだ風が流れ込み頬を打つ
それは暖かく温暖な神国とは正反対の 寒い冬の国の空気だった



これからは ここで・・・

石畳の上を進みながら シュリは思わず目を伏せていた






華燭の城 - 10 に続く
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華燭の城 - 8

「お前に拒否権など無い!」

シュリがまだ何か言いかけるのを ガルシアの強い声が遮った

 



「お前が拒否すれば この国はどうなる・・・・?
 この程度の国、我が軍ならば・・・・そう・・・ 1日

 明日には この国は地図から消えておるだろう

 ああ・・・ 働ける男は連れ帰り、捕虜として使ってやってもよいが
 女、子供はいらぬ・・・」




「国を・・・・ 滅ぼすと言うのか・・・・・・・・」




「有無を言わさず、欲しい物は手に入れる。それがワシのやり方だ
 お前が嫌だと言うなら・・・・ そうなるだろうな
 
 今も一気に攻め込み 国を滅ぼし、お前を奪っても良かったのだ
 それを こうしてわざわざ出向き、
 順立てて話をしてやっているだけでも恩情だ

 ああ、そうだ、言っておくが・・・・・
 
 1対1で始まった国同士の争いに、余所の国は ”不戦不介入”
 誰も手出しならぬのは、お前も知っておるはず」









この時代、世界中で次々と国同士の戦が勃発していた
そのほとんどが自国の領土拡大と労働力を狙うものだ


農業を主とする国を手に入れれば、農地と、働き手となる民が増える
それは自国の食料の自給に大きな役割を果たす


工業を主とする国ならば、その技術力も施設・工場も
全てが労せずに手に入る


地下資源豊かな国ならば、それは誰もが欲して止まない事となる




そんな終わりなき戦いが続く中、
各地の小さな争いが次々と隣国を巻き込み、
世界の大戦にまで発展させぬ様にと
自然発生的に決まっていたのがこの ”不戦不介入” の暗黙の掟

言わば不文律だった



 






「この戦、誰も助けてはくれぬぞ?
 まぁそれ以前に、我が大国が相手と知って、
 刃向かおうと言う馬鹿な国も無いだろうがな

 なぁ・・・ シュリよ、利口になれ

 大人しくワシに付いて来れば、この国も、家族である国王一家も
 そして 自国の民も、全て今まで通り・・・・

 いや、今まで以上に平和に暮らせる

 包囲され、大砲を向けられた事さえも、今なら何も知らずに済むのだ
 だが、お前が自分可愛さに拒否すれば・・・・」



 


ガルシアは感情の冷めた薄い目で
床に散らばる砕けたガラスの破片を見つめ
そして侍従達の後ろ・・・・
かばわれる様に隠されるジーナをジロリと見た
 




「見たところ この国にはもう一人 皇子がいるではないか
 お前がどうしても嫌だと言うなら、そこの弟皇子でも構わんぞ?
 さぁ、どうする
 お前の気持ち一つだ」


自分の事を呼ばれ
驚いた様に顔を上げたジーナは、無意識に小さく首を振る
その幼い手は、しっかりと母親のドレスの端を握り締めていた



「ジーナ様! ヤツを見てはなりません!」

ジルが自らの背で、ガルシアの視線からジーナを遮る





「やめろ・・・・弟は病気だ! 絶対に手を出すな・・・!」


「そうか、ならば 話は決まりだ
 すぐに出発する、用意をして来い
 見送りは要らん
 全員ここで おとなしくしていろ」






華燭の城 - 9 に続く
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華燭の城 - 7

「貰う・・・  だと・・・?」

名を名乗られれば、それに応えるのが礼儀
だが、父王はそれを意図して放下した



「何を馬鹿な事を・・・・
 ガルシアと言えば、あの帝国一の大国の王
 そのアナタが・・・・ ふざけられるのもいい加減にして頂きたい」


シュリの手を押さえたまま、静かだが強い父王の声が響く






ガルシアはその大きな体を、
今しがたまでシュリが座っていたソファーの中央へ ドサリと沈めると
細い目で 静かに二人を見つめた




「知っているなら話が早い
 いかにも、ワシはあの大国の9代国王、ガルシア・アシュリー
 だが、別にふざけているわけではない

 現にわざわざこうして こんな辺境の地まで足を運んだのだ
 いきなりで驚くのも無理はないが、 ワシは本気だ

 いくら戦をしないとはいえ・・・
 国境に警備兵ぐらいは置いているのだろう?
 連絡を取って聞いてみるがよい
 今、国境がどうなっているか、をな・・・」
 



「国境・・・・? まさか・・・・」



王が 入口の近衛に視線を送ると
近衛は無言で頷き 部屋を走り出て行った













暫くして部屋に戻ってきた近衛は 額に大きな汗を浮かべていた
その顔は明らかに青ざめている

そしてそのまま睨む様にガルシアを牽制しながら
王の下へと走り寄り跪いた(ひざまずいた)




「大変です・・・・
 国境は・・・・ 
 ・・・そのガルシアの国のものと思われる軍に既に包囲されている模様・・・
 境に一番近い町までは すでに十数キロ・・・・・
 ・・・砲がこちらを向いていると・・・」


「なんだと・・・!」

シュリが思わず声を上げた






「どうだ? これでワシの本気がわかっただろう
 これでもまだ 大ごとにせずとも済むよう
 距離を置いてやっているのだぞ? 有難く思え」



「我が国を、どうしようというのだ」

父王は鋭い目でガルシアを見る






 
「国? おいおい・・・
 こんな辺境の小国、奪った所でワシに何の得がある?
 勘違いするな
 ワシはこの国に 戦を仕掛けるつもりも無ければ、
 領地を頂こうと言うのでもない

 無論、そこの皇子を殺そうと言うのでもない
 言わば・・・・・ 両国の婚儀を望んでいるのだ」



「婚儀・・・・?」
  
父王が懐疑の表情を浮かべる

 



「ああ そうだ
 簡単に言えばーー・・・ 政略結婚というやつか?

 だが残念ながらワシには、相手となる子がおらん
 そこでワシの跡継ぎとして そのシュリを連れ帰り
 我が国の皇子として大事に育ててやろうと言うのだ
 一緒に来れば 贅沢三昧・・・・ そしてゆくゆくは大国の王
 
 それに 我が大国と縁続きともなれば、
 この国にとっても大きな後ろ盾

 もう二度と他国に攻め入られる様な事もなく 民は皆、救われる
 
 どうだ? 
 悪い話どころか、お前達にとっても願ってもない話だろう」




ガルシアは いかにも、と言う様に 両手を広げ、嬉しそうに熱弁をみせるが
その瞳は細く、喜などという感情とは全くの対極だった






「空々しい。
 そんな馬鹿げた話、私が受けるはずが・・・・・・」

ガルシアの言葉を黙って聞いていたシュリが
グッと拳を握り締め、睨みつけた






華燭の城 - 8 に続く
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華燭の城 - 6

「・・・ キャッ!」

入口近くに居た侍女が 小さく悲鳴をあげる





「・・・!! 皆、こっちへ・・・・!」

シュリは咄嗟に神儀の双剣を握り
困惑する母や弟、侍女達を背後にかばう様に父王の横に並び立った





儀式に使う剣と言えども、それは紛れもなく両刃の真剣

その剣は、既に鞘からわずかに引き抜かれ、
銀に輝く剣身をのぞかせている







そのシュリの後ろで一塊になった侍従・侍女達は
皇后と弟皇子を守り、 
向けられた銃口から ジリジリと身を引こうとしていた




睨み合う両者
室内に緊迫した空気が張り詰める






「ジル・・ 早く・・・二人を部屋の外へ・・・・」  

視線は男と銃兵を睨み付けたまま、肩越しに指示するシュリの声に


「はっ、すぐに!」
侍従長が一礼し、二人を外へと促そうとした時だった







「話があるのは国王一家・・・・ 全員にだ
 皇后も・・・ それは弟君かな・・・・? ここに居てもらおう
 他の者には用はない
 さっさと出て行ってもらって結構」



突然の来訪者は
凍りついた部屋の空気を楽しむかの様に銃兵の前に出ると
棚の調度品を1つずつ手に取り眺めながら 悠然と近付いてくる


そして1つの ガラス細工も見事な杯を取りあげた
繊細なカットを施したガラスに テラスからの日差しが反射し
まるで1個の宝石の様な美しさを見せる




だが、男は そこに聖母の姿を見ると

「・・ふん・・・ これは要らぬ」

そう呟くと同時
取り上げたその腕の形のまま、スッと掌(てのひら)を開いた




重力に逆らえず落ちていく杯は
・・・・パリンッ!
数秒で高い音と共に床で砕け散っていた



ガラスの破片となった聖母を分厚い靴底でグシャリと踏み
男は薄い笑みを浮かべる






「・・・!!」


その無礼無作法 極まりない姿をグッと睨みながら
今にも剣を引き抜こうとするシュリの手を、父王が押さえた





「シュリ・・・・・ 逸る(はやる)な・・・・・」

横に立つ我が子の怒気を鎮める様に、静かな声で名を呼んだ




「しかし・・・・ 父上っ・・・!」


「だめだ、外にはまだ多くの客人が居る・・・・
 今、ここで銃戦など起こす訳にはいかぬ
 皆の安全が最優先だ」

 
「くっ・・・・」


シュリは剣柄を一度、強く握りしめた後、
そのままゆっくりと鞘に納め入れた









「シュリと言うのか
 ワシの名はガルシアだ
 辺境の小国とはいえ、この名ぐらい聞いた事があるだろう
 お前が神の子か・・・・・」



ガルシアと名乗った男は 父王の横に立つシュリの前まで来ると
調度品と同じように・・・
まるで品定めの様に 上から下まで何度も舐めるような視線で
ジロジロと見返した



「ほう・・・ 美しい皇子と聞いてはいたが
 たしかにこれは噂に違わず素晴らしい・・・
 さすが、神と呼ばれ崇拝されるだけの事はある
 直々に見に来た甲斐があったというものよ

 ・・・今日は、お前を貰いに来たのだ」




薄い唇がニヤリと動いた
それはあの葬儀の日、官吏達を𠮟責した王だった






華燭の城 -7 に続く
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華燭の城 - 5

「神儀が終わったばかりだというのに、これはまた賑やかな事だな
 シュリ、素晴らしい良い舞だったぞ」


そう声を掛けながら満面の笑みで部屋に入って来たのは
シュリの実父であり現国王だった
横には母である皇后と 弟皇子のジーナもいる






「父上、ありがとうございます」

シュリが横たえた体を起こしながら頭を下げると



「兄様! 本当に美しかった!」

ジーナが飛び付くように足元に駆け寄り 抱き付き、ニコニコと微笑んだ





「そうか、それはよかった
 今日は調子が良さそうだね、ジーナ
 お前が早く元気になるようにと その祈りも込めて舞ったんだよ」


「うん、大丈夫! こんな病気、すぐに治るよ!」

シュリが足にすがる弟の頭を優しく撫でると
まだ幼い 年の離れた弟は、嬉しそうに目を細め兄の顔を見上げた












「あの・・・ 申し訳ございませんが・・・・」

その和やかな場に 言い難そうに入ってきたのは、近衛の兵だった




「どうした?」 
国王がその近衛の様子に わずかな異変を感じ取る 



「はい・・ それが・・・
 シュリ様と・・・・ 皇子と国王にどうしても謁見したいと言う者が・・・・」


「今、神儀が終わったばかりだ
 各国の来賓の方々には しばらく後に順にお目にかかる
 そうお伝えして、少しの間 待って頂く様に・・・・・」





「あいにくだが、ワシは待たされるのが好きではない」

王の声を遮り、低い声が響いた






入口横に立っていた近衛が、その声の主を圧し留め様と入口を塞ぐ

が、その制止も聞かず・・・
それどころか手で振り払う様にして脇に押し退け
ズカズカと入って来る大きな男の影は、国王よりも年上に見える



その顔は50代だろうか
年相応にシワは刻まれているものの、
色は浅黒く一見しただけでもわかる程の広い肩幅に太い腕、
ずっしりと重い筋肉を持った強健そのものと言えるその男は
後ろに、銃を持った兵を数人従えていた




その姿に 和やかだった部屋の空気が一変する





「お客人、申し訳ないが 我が国は戦を放棄した中立の国
 銃を・・・ しかも この神聖な神儀の日に
 ここへ持ち込むなど許可した覚えは無い

 お話ならば、相応の場所で伺いましょう
 時と場をわきまえ、今すぐ ここから退去願いたい」


いつになく厳しい口調で父の国王が戒め(いましめ)た








 ザッ・・!

途端に 銃兵達が動いた



男の前に歩み出ると
無言のまま 鋭い眼つきで、持っていた銃を一斉に構え上げた



それは統制のとれた軍隊の動き
合図など無い


いや、初めから決められていたのかもしれない
銃での威嚇・発砲も構わないと・・・・


そう思わせる程に 何の迷いも無く、一切表情を変えることも無く
一国の王家に どこの国の者かも知れぬ一兵卒が
躊躇なく銃を向けたのだ








いきなりの出来事だった
一瞬で全ての銃口がシュリ達に向っていた






華燭の城 - 6 に続く
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華燭の城 - 4

豊かな木々と花々に囲まれ 蒼い芝が風に揺れる
大理石の噴水を持った大きな池を取り囲む様に白い彫像が立ち並び
美しく手入れの行き届いた広大な庭園

高い城壁も、堀さえも持たないそこは
城と言うより宮殿と呼ぶに相応しかった





今、その庭園の中央に設けられた朱舞台の上で
一人の青年が 一奏の笛の音と共に舞っていた




着衣は純白の下衣
衿元には、濃紺の刺繍が施され
その上に薄桃から、蒼、紫へと段々に色調を連ねた薄いシルクの上衣を
幾重にも纏って(はおって)いる

透かしに似た模様が ふうわりと舞風に揺れる様は
まるで天女の羽衣を思わせた



だがそれは、たおやかに美しいだけの舞ではない

腰に携えた双剣を振るい 百鬼悪魔を討ち倒す如く激しく
そして、神に祈れば神聖に満ちていた




それが神国皇子、シュリの舞う 神儀の舞





自身の躰を器として神をその身に移し
神々の化身として舞うその姿を一目見ようと集まった人々は
自国の民のみならず、近隣諸国からも多くの要人、首脳が集まり
その数はゆうに万人を超えた





澄み切った空の下、たった一人のその舞は
もう数時間にも及ぼうとしている

が、息一つ 全く乱れる事のないその凛とした神々しい姿に皆は押し黙り
誰もが息を呑んで見つめ続けていた

中には涙を流し、跪き(ひざまずき)手を組み祈る者さえいる





そして天空へ吸い込まれる様に笛の音が消え シュリが舞台を降りると
会場は、やっと呼吸することを思い出したかのように
拍手と感嘆、崇拝と溜息の波に深く深く包み込まれていった

その声を聞きながら 舞台裏で シュリは膝から崩れ落ちた









「大丈夫ですか!
 シュリ様! お見事でございました!」

下で待っていた侍従達がその身体を支えながら 宮殿へと運び入れる




宮殿の一室、広間のソファーに体を横たえ ひとしきり喘いだあと
シュリはやっと口を開いた



「ああ、大丈夫・・・ 今日は気温が高い・・・・・」

それだけ言うと ぐったりと目を閉じる
だがその顔には満足の微笑が浮かぶ




「ええ、ええ。 本当にご立派で」

初老の侍従長も優しく微笑むと、
水を差し出しながら その熱い額の汗をぬぐった






「ありがとう、ジル・・・・
 でも、すぐに着替えないと・・・・
 この衣は 今年、この国で生まれる赤ん坊の産着になるのだし・・・・
 少し汗をかいてしまったけど・・・ 大丈夫かな・・・」


そう言って起き上がろうとするシュリに
周りで少しでもこの美しき皇子の世話をしようと集まっていた侍女達が
待ってました!と言わんばかりに 嬉しそうに次々と声を掛けた






「まだ無理をなさらなくて大丈夫ですよ!
 それに汗など、ご心配なさらずとも良いのです!」


「そうですよ!
 シュリ様が神として舞われる神儀の舞
 その衣を分けて頂けるのですから、これほど幸せな事はございません
 それに、シュリ様の汗でしたら・・・・・・
 多少 付いているぐらいの方が 喜ぶと言うもの・・!」


「そうでございます!
 赤子と言わず、私達にも分けて頂きたいぐらいです!
 シュリ様の御休暇はたったの10日間
 来週にはまた寄宿学校へ戻ってしまわれるのでしょう?
 私は寂しくて夜も眠れませんわ」


「私など、シュリ様の身の回りのお世話に
 学校までお供したいとまで思っておりますよ!
 お声さえ頂ければ、すぐにでも!」






「おいおい・・・」

ジルが額に乗せてくれた冷たい布を腕で押さえ、目を閉じたままのシュリが
楽しそうな、それでいてどんどんエスカレートしていく侍女達の声を聞きながら
呆れた様に微笑んでみせる



「学校では誰も皆、身分も地位も関係ないただの一学生だ
 侍女を連れている者など誰も居はしないぞ?」


「それはーーー わかっておりますぅー・・・」


ぷうと頬を膨らませた侍女の赤い顔を皆で眺めながら
広間に和やかな笑い声が広がった






華燭の城 - 5 に続く 
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華燭の城 - 3

「・・・・・
 ・・・・    ほぅ・・・・」

暫くの沈黙の後、
その雷鳴を合図にするかの様に王が口を開いた




歪んでいた薄い唇の端がわずかに持ち上がり
そこから長く細い息を吐きながら、
王はその大きな体を玉座から引き起こした




「神を手に入れた、王か・・・・」

「はい」

「神を足元に屈服させ、ワシはその背を踏み立つ・・・・
 ・・・・ それも面白いかもしれぬな・・・・
 だが、それほどの皇子ならば
 それこそ 易々と貰い受けは出来んだろうに」




引き起こした体を、今度は自らが男に近付けた




「貰い受けなど、陛下らしくない事を・・・
 その様な小国、我が国の兵力ならば 落とすのは いとも簡単
 しかもこの国は 神の国として戦を放棄していると聞いております
 
 今までは その信仰心から
 神を侵略しようとする国など無かったのでしょうが・・・・」



「フン・・・ 信仰など、馬鹿ばかしい
 そんな国は一捻り・・・・・」





そこまで言いかけると 王は急に口をつぐみ、
既に人の気配など無い広間を 二、三度見回し
グイと男の胸元を掴み側に引き寄せ、更に声をひそめた





「おい、落とすのはいいが・・・・
 我が国が属するこの帝国も
 その神国とやらを信仰しているのではないか?

 帝国の皇帝閣下は信心深いと聞いた事がある・・・
 だとすれば、閣下に・・・ こちら側が逆賊と敵視されるやも知れん

 この巨大帝国を敵に回したのでは
 いくら神の子を手に入れても 分が合わんぞ?
 そこはどうする気だ?」




王に掴まれ、引き寄せられたまま 
男はその問いに
造作もない・・・・と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべた



 
「そこは話の持って行き様・・・ 
 この戦の世、自国安泰の為に我が子を政略結婚させ
 人柱として敵国に差し出すのはよくある話

 うるさい官吏達にも皇帝閣下にも
 ”侵攻した” などと言わなければ良いのです
 
 世界中が政情不安な今、
 神国さえも いつか戦火に巻き込まれるのではないかという不安心から
 我が大国の庇護を求め、向こうから縁を結びたいと言って来た・・・・
 ・・・とでも言えば 官吏達も大喜びするでしょう

 ・・・陛下、もう つまらない葬儀には飽きられたのでしょう?

 でしたら 次は、両国の縁を結ぶ盛大な華燭の宴を・・・
 世界に陛下の力と、この国の安泰を見せつけるのです
 これで陛下の杞憂(きゆう)は 全て解消されると思いますが」



「盛大な華燭の宴か・・・ それは楽しそうだな・・・」
王の細い目がニヤリと笑った






華燭の城 - 4 に続く
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華燭の城 - 2

「フン・・・・・ もういい、皆 下がれ
 後はこちらでやっておく」
 

大きな溜息と共に王が発した「下がれ」の一言に安堵したのだろう
僅か(わずか)だか 弛緩した空気が広間に広がる

睨まれた二人も 退出の命を幸いにと
頭を下げたままゆっくりと後退った




そそくさと広間を出て行く官吏の姿に
集められていた使用人達も気まずそうに顔を見合わせると
小さく頷き合い、後に続く
そんな姿を視界の端で見下ろしながら

「・・・・ 葬儀などつまらん
 もっと楽しい事はないのか・・・・
 ・・・・ああ・・・・   お前達ももういい、今日は終わりだ」
 
座の後ろに控えた側近達にもそう声を掛けた





一同が一斉に頭を下げ、退出し始めると
王はそのまま 座の肘掛けに頬杖を突き
この世の全ての事象が気に食わぬ・・・・・ とでもいう風に 
煩(わずら)わしそうに首を振った


「まったく、世継ぎ世継ぎと・・・・
 ワシが死んだ後の 国の行く末の事など、どうなろうが知ったことか」
そう呟いた




「陛下、そのお言葉は公の場ではお控え下さい
 臣下の、陛下への忠誠心を殺ぐ(そぐ)ものです」

皆が 我先にと部屋を出て行く中、一人 部屋に残った男が口を開く





「・・・・・うるさいぞ」

ジロリと睨むその王の視線に全く怯む様子も無く
男が笑った



「では 陛下・・・・ こういう策はいかがでしょう?
 この国の世継ぎ人にふさわしい者を
 他国の皇子の中から選ぶ。  ・・・・というのは」



「フン・・・・・ 選ぶだと?
 何を言い出すのかと思えば・・・・
 お前まで馬鹿な事を言うな
 自国の皇子を ”どうぞ ”と差し出す国などあるものか
 
 それに我が国は この帝国の中でも最大領土を持つ一番の大国
 その我が国と、つり合うだけの国は 他には無い
 
 どの国も 遥かに格下
 皇子と名が付いていても このワシとは身分が違うのだ 
 どこの妃だろうが皇子だろうが、
 ワシにとっては皆、卑しく下等なのだ」




わずかに男の方に向けていた顔を再び逸らし(そらし)
王は嫌悪の表情を隠そうともせず舌打ちをした



「・・・・それが、陛下・・・」

他の官吏達ならば
それだけで逃げ出したくなるような王の態度を気にもせず
逆に耳打ちするように顔を寄せた男の声が わずかに小さくなる




「1つだけ ”神国” と呼ばれている特別な国があるのです」


「神国・・・・?
 特別な神の国・・・ だと?」


頬杖のまま、王は気だるそうにチラリと視線を返した




「はい、それはこの大陸の果てにある小さな国ですが
 大陸全土の神が在神すると言われ、
 他国からも神聖化され 一目置かれております
 
 中でも この国の皇子はひと際美しく、
 その穢れ(けがれ)無き身体に神を宿し
 現世の神の化身と信じられているとか・・・・」




男の言葉を聞くが否や、王はそれを鼻で一笑に付した



「神、神、神!! 神だと?! くだらん! 
 神など、戯言だ
 ワシがそういうモノの崇拝を嫌っているのは
 お前も知っておるはず!」


「勿論、百も承知
 ですが・・・・ 他国から見ればいかがでしょう?
 神ならば この国の世継ぎ人として、誰も文句は言いますまい
 いや、それどころか 神を手に入れたとなれば
 陛下の名声は益々天下に轟き、この国は恒久に安泰かと」


「・・・・・」




ザッと雨音が強くなる
いや、室内が静まり返った為にそう思えただけなのかもしれない

すっかり陽も落ち、薄暗くなった部屋に遠雷の音が低く腹に響いた






華燭の城 - 3 に続く
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華燭の城 - 1

「いったい、この事態をどう考えれば良いのだ・・・」

「この数年で、何人の妃様が亡くなった?
 この国は呪われているのか・・・」




窓の下・・・ 
小雨が降る中、石畳の庭を横切る様にして棺が運び出されていく

その葬列を見ながら、広間に集まったこの国の役人・・・ 官吏(かんり)達が
ヒソヒソと声を潜めていた






「6人か・・・・ いや・・ すでに7人・・・・・
 誰も世継ぎ様を産まないまま 皆が皆、相次いで病死されるとは・・・」


「我が陛下も もう50代だぞ
 早く世継ぎを決めて頂かなくては、国の行く末が危ぶまれる・・・」


「おい、あの噂は・・・ 聞いた事があるか・・?」


「噂と言うのは・・・ 例の、あの・・・・・」












「うるさいぞ、お前達」

広間に太く低く響くその声にビクンと身を震わせ、
その場に居た誰もが入口を振り返った


そこには 数人の側近を従えた大きな男が立ち
薄い唇を歪ませている


窓を打つ雨さえも凍り付かせようかという静寂が 一瞬で広間を支配し
皆、その危うい冷気に触れぬ様、
一斉に深々と頭を垂れ視線を床に這わせた






「こ・・・ これは陛下・・・!
 葬儀の方はよろしいのですか・・・?」

慌てて一人の官吏が声を掛けた




「こんな雨の日に、葬儀など面倒なだけだ
 死んだ女など見たくもない
 どうせ、この国の水が合わなかったのだ」


「しかし・・・・」

集まった官吏の中でも白髪の・・・ 長らしき老人が
誠に恐縮ですが・・・・ と一歩、前に歩み出た




「しかし、陛下・・・ 
 いくら我が国が大国とはいえ、 近隣諸国では戦火も絶えません
 今はまだ、大国ゆえに
 戦を仕掛けてくるような馬鹿な輩(やから)はおりませぬが
 世継ぎも無く、弱体化するだけの国などと噂が広まれば
 いつ攻め込まれても おかしくはございません・・・
 
 一刻も早く、世継ぎ様を決め
 この国は盤石であると皆に力を示さなければ・・・・」



長老が矢面に立った事で気を大きくしたのか
側に居た赤毛の官吏も声をあげた



「そ、その通りです! 陛下!
 今は何をおいても、世継ぎ様を決められる事が先決かと!
 ・・・・じ、実は我・・・・・」


「ほう・・・・ 
 では、お前達に聞こう」



話し続ける声を、王は途中でバッサリと断ち切った




「ワシにどうしろと言うのだ?
 どこかで泣いている子でも さらって来いというのか?
 その様な、どんな身分とも判らぬ卑しき者を 跡継ぎにしろと?」



赤毛の声の主を 細い視線で探るようにジロリと見ながら
王は、広間を一番奥まで歩き
玉座にドッカと腰を下ろしながら 改めて2人を鋭い目つきで睨みつけた





「そ・・・ それは・・・・」

「ですから・・・・その・・・・・」


その眼光に 老人と赤毛の2人は怯えた様に口を閉ざす





再び静まり返った広間に 本降りになった雨のガラス窓を叩く音だけが
一層大きく響き渡った






華燭の城 - 2 に続く
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華燭の城 story-0

遥か遠く、緩やかな山並みに囲まれた緑豊かな森の中を
一頭の馬が駆けていた




「シュリ様! おかえりまさいまし!
 早速 馬で湖ですか!
 この車というやつも、慣れてみればなかなか便利な物ですな!」

小さな農業用のトラックが ゆっくり前方から走ってくると
運転していた農夫が微笑みながら、すれ違う馬上の青年に声を掛けた




「でもこれだけお天気がいいと 馬も喜びますか!」


「ただいま!
 今日は天気も良いし、たまにはこの子も走らせてやらないとな
 今年の畑はどうだ?」




シュリと呼ばれた青年は馬を止めると農夫に微笑みかけた


「今年も上々の出来で、いつも通り平和に暮らせそうです
 これも全て 神の御加護と シュリ様のおかげです!」


農夫は穏やかな笑顔で 青年に頭を下げる




「私は何もしていない
 皆が頑張って働いてくれるから、この国も成り立っていける」


「そんな、勿体無い事を!
 後でこの野菜、お城へお届け致しますからね!
 召し上がってくださいな!」



そう言って農夫は 後ろの荷台を振り返り
そこに積まれた赤・緑・黄色と 色取り取りの新鮮な野菜達を
自慢そうにポンポンと叩いて見せた



「ありがとう!楽しみにしてる!」





シュリは愛馬に駈歩(かけあし)の合図をし、また走り出す

気持ちの良い、爽やかな風が吹いていた
温かい日差しの下、全てがまだ 平和で穏やかだった






華燭の城 -1 に続く
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プロフィール

凛

Author:凛
BL・MLを日々妄想してる腐女子

しかもかなりハード目が好きな壊れかけ

SM・拷問等の酷い描写が苦手な方は、ご遠慮ください

1作目 『刻印』
2作目 『華燭(かしょく)の城』 
完結しました。
ブログタイトル下のマップより全話読んで頂けます。
『刻印』の簡単な解説はこちら から


まだまだ初心者故、描写の至らない点
設定の矛盾は笑って見てください 

読みやすく・・と思っているので、長編小説ですが、各回短く、短文、1日1回UP予定です


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