0-story

18禁 BL小説です。主に拷問・凌辱等ハード系。 こういう小説に興味の無い方、嫌悪感がある方はご遠慮ください。サイトマップより一気読み出来ます
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刻印 -178

深月は焦っていた
忙しく手を動かしながらも、考えるのは匠の事だけだった・・


一人で会場から連れ出されて行った匠の後ろ姿と
あの薄暗い地下室の台の上で 傷だらけで小さくうずくまっていた姿・・・

その2つの映像が脳裏に焼き付き、離れようとしなかった



またあんな事になったら・・・・
いや・・ もう2度と、あんな辛い目には遭わせない・・・・!
それだけは絶対に・・・・!



嫌な想像を打ち砕く様に 深月は何度も首を振ると
自分自身に気合を入れる為に、両手で頬をパンパンと叩く



今、匠さんを助けられるのは 自分だけなんだ・・
全てがこの作業にかかっている

大きく深呼吸をし意識をハッキリさると
またその頭脳と指先とをフル稼働させ始めた







監視カメラのハッキングに成功したのは それからすぐだった


そのカメラに映ったのは
下層階で 異変に気が付き、何事かと騒ぎ始め 右往左往する人々の姿

閉じ込められたのではないかという恐怖から、職員に詰め寄り大声を上げる者や
開かない扉や窓を 力で破ろうと ガラスを何かで殴り付ける者
その音や声で 引き攣った様に泣く子供の声・・
それは 暴動寸前の光景だった




そんな中、深月は必死に匠を探し続けた

どこだ・・  匠さんはどこにいる・・・

が、いくら画面を切り替え ライブチェックをしても
匠の姿を確認することは出来ない


・・・・・匠さんっ・・・・


このカメラで捉えきれていないのは 31階以上・・・
しかも行政局や会議室といった公共のスペースではなく
トップシークレット扱いとされている個人が所有する部屋・・・

そこへ連れ込まれてしまったのか・・・
いや・・・ もしかすると、もう外へ出たのか・・・

どちらにしても、もうカメラで匠さんを追う事は不可能・・
完全に・・・ 見失った・・



「浅葱さん!!
 ・・・匠さんが・・・匠さんの姿が・・・・・
 ・・・・もう・・・もうどこにも無いです・・!!!
 建物の外なんて事になったら・・・・また最初から探さないと・・・・・!!!
 匠さんがまた・・・・!!」


「深月! 落ち着け!
 今は一般人を逃がすのが先だ!
 1階の扉だ! 
 外に機動隊が来ている、扉さえ開放できれば みんな治まる!
 匠だって それを望んだはずだ!
 匠を・・・・・  匠を助けるのは その後だ深月!」



取り乱す深月に 浅葱の喝が飛ぶ
確かに1階の 正面入り口の外には
外の人間が通報したのか、既に警察や機動隊らしき姿が確認できる



その画面を見ながら  ・・・・匠さんの望み・・?
深月は 匠の指文字を思い出していた

コドモ・・・

そうだ・・・ 匠さんは子供を救ってくれと・・ そう僕に伝えた・・・
それが匠さんの望みなら・・

一般の人・・・・
まず、この人達をなんとかしなければ・・・・


「・・・・・は・・・はい・・!!」
深月は 胸を締め付けられる思いで 浅葱に返事を返した


病院の機器の確保と 一般階の解放・・・・
病院の機器の確保と・・・・
深月は自分に言い聞かせるように何度も呟くと また指を動かし始めた






部屋に深月の作業の音だけが小さく響く
刻々と時間だけが過ぎる中 保管庫から出し、テーブルに置いていたオヤジの携帯が鳴った
それは 透からだった

「先生、深月君が取り返してくれたカメラ映像、今チェックしていますが
 どの扉も窓も、まだ開いた形跡がありません
 一ノ瀬君はまだこの建物内だと思います・・
 引き続き細部もチェックしますが・・・・・」


「ああ・・システムさえ動けば、俺達より お前の方が扱いは慣れてる
 頼んだぞ、透・・・・・・・・」



その時、オヤジの話しを遮って深月の声がした


「・・・・1階の扉、開放・・・できます」

「よっしゃ! 流!
 透! そういう事だ、あとはお前に任せる!
 くれぐれも パニックにならない様に、みんなを安全に誘導してやってくれ!」

「任せてください、先生」



透の携帯が切れ暫くすると
低層階のカメラ映像では 人々が何か職員から説明を受けている様子が見えていた
窓を割ろうとしていた人もその手を止め、黙って説明を聞いている


「ん・・・大丈夫そうだな・・・
 次ぎは匠だ、流! ・・・匠を助けに行くぞ」

「・・・はい!」 深月は目を輝かせた


ここの扉・・・ ここさえ開けば助けに行ける!




刻印 -179へ続く
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刻印 -177

「・・・・・・ッ・・!!・・・・・・・・・・・」

そのハルの唇の感覚に 匠の呼吸が一瞬止まる・・


地下室での記憶が蘇る
この唇・・・この手・・・・・この痛み・・・


上を向くように顔を上げ、掴まれた自分の腕を睨むと
まだ見えない天井が あの地下室の天井へと幻覚の様に変わっていく
手首を縛る鎖・・・ 冷たい床・・・

匠は痛みの限界に達しようとしていた
脚に力が入らなくなり、今にも膝から崩れ落ちそうになる


・・ハァ・・ハァ・・

・・ハァ・・ハァ・・・・・


荒く息をしながら、小刻みに震え上下する匠の背中を
ハルの唇は 自分の印を愛おしむようにゆっくりと這い、指でなぞる



「・・・私の 刻印・・・    私の・・モノ・・・・・」

そして その印に深く爪を立てた


「・・・んっぁっ!・・・・っぁぁぁああああアア!!!」





匠の叫びが響く室内で

「おい・・・」
ハルが やっと立ち上がってきた秘書の男に声を掛ける


「立ち上がれる所を見ると、毒物ではなかったようだな・・
 まだ生きているなら、こっちへ来て代われ・・」

「あ・・・はい・・」


秘書の男は まだ違和感があるのか
刺された右腕をさすりながら 匠の後ろへ立つと
上げられた匠の両腕を ハルから受け取る


「気をつけろよ・・・
 こんな顔をしていても、タクミは怖いぞ・・・・」


ハルは正面に回り、匠の顎を指で持ち上げながら顔を見つめ
クスリと笑う様に言った




「どうした? ・・・・体が痛むのか・・・・?」

指で匠の唇をなぞると その後を追うように自分の唇を合わせる
そのまま顎を下に引かれ、無理矢理に開けられた口に
ハルの舌が挿し込まれた・・・



「・・クンッ・・・・!」

匠は首を振って抵抗するが、秘書の男に捻り上げられた両腕の痛みが
意識を遠のかせる・・


「・・ん・・・ ・・タクミ・・・・ん・・・」
ハルは匠の精一杯の抵抗を喜ぶ様に 口中を執拗にまさぐった
浅葱とは違う威圧的な舌・・・匠の体が拒否反応を起し 更に呼吸が苦しくなる


「やめ・・ろ・・・・・」
匠は 必死の思いで言葉を吐き出すと
挿し込まれたハルの舌に思い切り歯を立てた



「・・・ンッッ!・・」

舌の端を噛み切られ ハルは思わず唇を離していた
手の甲で唇を拭いながら その冷たい目で匠の顔を見つめると
噛まれた舌を 小さく出す・・

血の味がする場所を自分の親指で触れ、じっと匠と視線を合わせたまま
その指を・・・ペロリと舐めてみせる・・・


そしてまたクスリと笑うと まだ血が滲むその舌で
もう一度 匠の唇を ・・・ツ・・・と舐めた
匠の唇が ハルの血で赤く染まっていく・・



「おい・・・タクミをベッドまで連れて行け」


ハルが秘書の男にそう言うと
老人はニヤリと笑い
そそくさと、続き間になっているベッドルームへと移動する



「や・・・やめろ・・・」  匠の赤い唇が動く
秘書の男が 抵抗する匠を引き摺る様にベッドの脇まで連れて来ると
ハルは匠の体を押し倒した



「・・ンッ!」
乱暴にベッドに倒された匠は その体の痛みで小さく呻き声をあげる

ハルはその匠の体の上に馬乗りになるように覆いかぶさり
両手を匠の顔の両側へ付く・・

「さあ、タクミ・・・あの楽しかった地下室の続きをしよう・・・・」




刻印 -178へ続く
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刻印 -176

老人の あのペタペタという足音・・
何度も聞いたあの嫌な音が匠の耳に響く

気配も確かにある

それは一般人と何ら変わりない・・
・・いや、それ以上に無防備でお粗末・・

ライオンの檻の中に飛び込んでしまった 飛べない鳥が
バタバタと羽音をさせている様なモノだった


だが、そんな飛べない鳥の老人の気配さえ 匠は満足に追う事が出来ずにいた




密着するほどに体を付け、右腕一本で捕らえているハルの気勢が
あまりにも大き過ぎるのである

しかも 足元にはもう一人、只ならぬ気配の男が うずくまっている・・




体の痛みも 匠の集中力を妨げ 邪魔をしていた
ほんのわずかでも こちらが先に気を乱せば
この二人のうちのどちらかに・・・  殺られる・・・・




そんな匠の緊張感と焦りを全て見抜くかの様に
ハルの楽しそうな声がした


「・・・・この距離も まだ見えないのか・・・
 先生はもうかなり近いが・・・・ どうするつもりだ?・・・・タクミ・・
 このまま じっとしていていいのか・・?」

からかう様な声だった



「先生・・・
 先生の作った薬の効果は素晴らしいですよ・・
 それに ・・・こちらの方もまだ効力はあるらしい・・・・・・・」



ハルは いきなり匠の下がったままの左腕を掴むと
グッ! と自分の脇に挟む格好で体の前方へと引き寄せた

「・・・ンッッ・・! ・・ァアッ・・!!」
痛みで思わず声を上げた

「この左腕はまだ治っていない様だな・・・・・・・」





背後からハルの首をとっている匠の方が 有利な状況に見える
だが、精神的な優位にあるのはハル・・ それは明らかだった・・



それでも匠はハルを捕らえた右腕を外そうとはしなかった
ギリギリと 徐々に強く左腕を締め付けるハルの力で
叫びそうになる程の激痛が襲う



「ほお・・・・まだ耐えるか・・・・・・これならどうかな?」
ハルは握った匠の手首を 頭上近くまで高く持ち上げると
逆手になるように捻り上げた




「ンッッ!!!・・・・んっっっぁあああッ・・・・!!」

「ん・・・ 相変わらず いい声で鳴くな・・・・タクミは・・・・・」


羽交い絞めにされたまま、ハルは喜んでいるかのようにさえ見えた

痛みで意識が遠くなる・・




「タクミ・・・・ そろそろ私に その印を見せてくれないか?
 ずっとこの日を待っていたんだ
 とりあえず、 お遊びはこれぐらいにして・・・・
 ・・・・続きはまた後だ・・・・・」


ハルは 苦痛に顔を歪める匠の左腕を掴んだまま
まるでダンスでも踊るかの様に易々とその身をかわすと
スルリと匠の背後へと回り込んだ


そのまま両腕を後ろで一緒にし、捻り上げる・・


「んんんっっぐ・っ・・・・っぁああああ・・・!!!」


匠は頭上に両腕を持ち上げられ
裸の背中を・・・ その刻印を ハルの目の前に曝け出した





腕を上げられた痛みで 益々、蛇と龍の躍動感は増していく



「・・・・・タクミ・・・・美しいよ・・・・・
 先生・・・これならご自身の最高傑作になるのではありませんか?」


老人は 二人の形勢が逆転したのを見ると
嬉しそうに匠の体に摺り寄り、背中の刻印に手を這わせた


「ええ・・ええ・・・・本当に良い出来です・・・・
 この美しい体にピッタリだ・・・
 この体で また実験できるとは、最高の幸せでございます・・・・」



「そうか ・・・それはよかった
 さて・・
 この部屋には拷問用の鎖もフックも無い・・・・
 この腕をどうしてやろうか・・・・
 ねぇ・・? タクミ・・・・・」


ハルは匠の腕を捩じ上げたまま
その背中の刻印に ゆっくりと唇をつけた・・




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刻印 -175

長い廊下・・  大きく重厚な扉の前で
イヤホンからではなく、 直に聞えるハルの声に 匠は体を硬くした



あの男が・・・この扉の向こうに居る・・・・



右手で持っていた上着を そっと痛む左手に持ち替え
内ポケットの中の注射器を握り締めた・・




扉が静かに開く音がして、落ち着いた雰囲気の上品な部屋が開かれる
だが、匠の視界には まだ両隣にいる 老人と秘書の姿しか入っていない


どこだ・・・ヤツは何処に居る・・・・
初めての場所の感覚を掴もうと
匠は五感全てを総動員させ 神経を尖らせた

上着で隠した右手にも力が入る


だが あの男、ハルは完全に気配を消し
わずかな気さえ 感じ取ることが出来ない・・・・


そう思った時だった・・
まるでわざと響かせる様に、コツコツと床を踏む足音をさせ
暗い視界に、いきなりスッと腕が伸びる


・・・・!!・・・・


次の瞬間には 匠は顎を捕まれて上を向かせられていた
目の前に・・ 真正面にあの男の顔があった

それは地下室で 視界を奪われる前・・・
あの時、最後に見た笑う様な男の顔に間違いなかった



「・・・・タクミ・・・・・」

その顔が自分を呼んだ・・・・

背筋にビリ...と電気が走る感覚がし、全身の神経が逆立つ
その途端 反射的に体が動き 目の前の男の首筋へ向けて
右手に握った注射器を思い切り振り下ろしていた・・・・




・・ズンッ!!・・・刺さる感触・・・




一瞬の間を置いて 「ぅっ・・・・・・」 と小さく呻く声・・・




そして 「ヒィィィ・・」 と叫ぶ老人の高い声・・







匠の視界の端に 床に崩れ落ち 膝をつく男の姿が見えた
それは・・・ あの秘書の男だった



秘書の男は匠が動くと同時に自らの右腕を差し出し、ハルを守っていた

男は腕に刺さった注射器を引き抜くと、床に放り投げる
カラカラと音を立てて注射器が床に転がった



「・・・クソッ・・!!」
腕を押さえ呻く秘書・・ 匠はその前に出ると
そのままハルの背後に回り込み、右腕を 首を絞める様に回す



秘書は足元でまだ呻いているのが見えたが
その時 老人はすでに 入ってきた扉の前まで逃げ
匠は その姿を目で見る事は出来なくなっていた

どこだ・・・・
ハルを絞め上げたまま、匠はその気配を探る




「・・・・タクミ・・・動ける様になったとたんに威勢のいい事だな・・」
恐怖で震え逃げる老人とは正反対に ハルは何故かクスリと笑う


「黙って・・・・・このビルの制御を解除しろ・・・・」
審議会の途中から、ずっと発作を堪えてきた体は
痛む腕と背中で 普通に呼吸するのさえ苦しい

動けるうちに、ビルの制御だけでも・・・そう思っていた



「いいだろう・・久しぶりに会ったタクミの願いだからな・・
 このままPCまで連れて行け」
ハルが笑いながら言う


PC・・・・


「どうした? 見えていないのか?
 今はどれくらい見えるんだ? 
 もう先生の姿は追いきれていないのだろう・・?
 
 先生・・・そんなに恐れずとも、タクミには見えていませんよ
 ゆっくりこちらに・・」


「あ・・・あああ・・・・そうだったな・・・」
老人は それでも匠を警戒しながら 恐る恐る近付いてくる




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刻印 -174

その瞬間、深月は大きく静かに
ふぅーーーーーー と息をした





「保管庫、開きました」  深月が告げる




「よし!でかしたぞーー!! 流!!!」
「ん、よくやった」
浅葱も深月の肩をポンと叩く


「はい・・・
 解除パターンは だいたい掴みました
 あとはこれさえあれば、なんとか・・・・・・」

深月はそう言って 保管庫から愛用のタブレットを取り出し
受話器を片手に持ったまま すぐに何かを打ち込みはじめた


「とりあえず、透さん
 僕のタブレットとそちらのPC、繋ぎます
 許可して、僕に全権を渡してください  ・・ 後はこっちで・・・」



深月は受話器をオヤジに差し出すと、プログラムを組み始めた


「おやっさん、 まず・・・
 病院の機器の確保、30階までの一般階の解放・・・・ここの開錠・・・・
 っと・・ その前に・・・・
 監視カメラの 逆ハッキング・・・・・・・と・・・これででいいですね
 
 監視カメラが手に入れば
 匠さんの行方も 他の階の状況も見られますよね・・・・・」


「ああ、それでいい、早いとこ頼む」
オヤジは深月の その堂々とした態度と判断を 満足そうに聞き、大きく頷いた
 


「30階までの一般階は 割と楽勝だと思います
 問題はその上・・・・・31階以上・・・・
 まだ プログラムの改ざんは続いてますから・・・・・・
 追いついて・・・・ 追い越せるか・・・・
 
 ・・・・少しでも早く、匠さんを見つけないと・・・・・」

独り言の様に言いながら 深月は手を動かし続けた





オヤジは繋がったままの受話器を耳にあてる

「透、ご苦労だったな・・」
「いえ、私は言われた通りにしただけです
 先生・・ 良い弟子をお持ちですね・・・」

透の声に 「・・ああ」 とオヤジも嬉しそうに答えたが
すぐに 「今回の黒幕、・・・あの委員長の男だろうが・・
思い当たるヤツはいないのか?」 と切り出した



「それですが、今回の審議会・・
 組織からは誰も審議委員として出席していません
 
 数人に出席要請があった様ですが
 私同様、 あの資料の 胡散 (うさん) 臭さに不信感を持った者
 それに、組織NO.1と言われる 先生のチームを審議に掛けるという事への躊躇・・
 それで全員が辞退したようです
 まともな判断が出来る人間なら、当然ですが・・」


「そういやぁ・・・・
 あの気に食わねぇ委員長以外は みんな一般人だった・・」


「やはり、そうですか・・・
 審議会は 元々、審議する側の名前は公表されませんし
 その内部の映像を見る事もできません

 本部の上層部だけでも、様々な部署の者を入れれば 百名近い者がいる
 しかも、個人の情報はお互いに知らされる事がない極秘扱い
 その中から 顔も名前もわからないたった一人を探すのは
 容易ではありません・・・・」


「ん・・・そうだな・・・・・・・・」





そのままシンと静まり返り 重い空気が漂い始める室内で 
「ホシと数字の5・・・・・・・」
無言でタブレットを操作していた深月がふと顔を上げ ポツリと呟いた


「ん? なんだ? ・・流」
オヤジが振り返る

「匠さんが部屋を出る前に、最後に伝えてきた指文字です
 ”ホシ” と ”5” ・・・」



「ホシと5・・・・・・・
 おい・・・・ それってまさか・・・・・五つ星の階級章・・」
「NO.2・・・・」
オヤジと浅葱が同時に声を上げた




「もし・・・・それが本当なら・・・・・・」  
受話器越しに二人の声を聞いた透の 無念そうな声がした



「百人は調べられなくても四人なら、私に任せてください
 それに、もしこれが事実なら・・
 本当に身内の恥だ・・・ 面汚し以外の何モノでもない
 先生・・・・・
 その男の身元が判明したら その処分、こちらに任せて頂けませんか?」



「ああ・・・その方が助かる・・
 正直なとこ・・・
 俺達は一刻も早く あのリーダーの男を捜し、匠を助けたい」


「では私もこの部屋で出来る限りやってみます
 あ・・ 一般市民の避難・誘導も 開錠出来次第こちらでやります
 先生は一ノ瀬君と、そのリーダーの男の方に専念して下さい」


「ん・・ 恩に着るよ、透」




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刻印 -173

深月と透が 電話でやり取りを始めてから
随分と時間が経とうとしていた



「オヤジ・・・・・・今、建物内に ガスの様なものが充満したら・・・・・・」
「ああ・・・ 出口は1つもねぇ・・ 俺達も匠も・・ そこの一般人も・・・
 確実に全員が死ぬ・・・・だろうな・・・・」


浅葱とオヤジは 匠が居なくなった会場を 並んで見つめていた


傍聴人達は 司会も主役も居なくなり
静まり返った舞台を前に どう対処していいのかさえ判らないまま
ただザワザワと 落ち着き無く座っている




「ああやってまだ何も知らず、座っているうちはいい・・・
 知れば大パニックだ・・・」

暇そうに 椅子に座ったままの人々を見ながらオヤジが呟いた・・


「他はもうパニックになってるかもしれねぇな・・
 なにしろ、扉が全部開かねぇんじゃ・・・
 電気系統のトラブル・・  ぐらいに思っててくれりゃあいいが
 それでも いつまで誤魔化せるか・・

 たぶん・・ この建物から外へは携帯も繋がらんだろう・・
 匠が居た、あの医療施設と同レベルの妨害ぐらいはしてあるはずだ・・
 そうなると、ただの電気系トラブルでは説明がつかん・・・・」



「そうだな・・ 
 唯一の望みは、外からこのビルへ来た人間・・・・
 こんな平日の昼間に役所が閉まっていれば、少なからず不振に思う
 警察にでも連絡をしてくれれば・・・・」
 


「ああ・・まったくだ・・・ここはただの役所とは訳が違う
 国家の中枢が入ってるビルだ
 ビルの設計者でも呼んで、外からでも開けてくれれば
 こっちの手間も省けるってもんだが・・・」




オヤジはまだ電話の前で 奮闘する深月を振り返った
深月はそんな視線さえも気付かない程、頭の中のノートに没頭し続けている




「もし パニックになった場合でも
 こちらに機動隊でも何でも、動ける人数さえいれば 一般人を非難させられる
 それが最優先だ・・・・・
 ・・・・匠の救出は・・・・・・・・・・・・・」


そう言う浅葱の言葉が続かない
握った拳が怒りと焦りで震えていた



「ん・・・ 俺達の仕事は 一般市民を守るのが大前提だ
 だからこそ 裏であっても ちゃんとした組織だ
 そのヘンで粋がってるだけの ただの暗殺集団とはワケが違う

 まぁ・・今回みてぇに オカシなヤツもいるがな・・・・・
 だから 匠を・・・・」


オヤジも悔しそうに 一度言葉を切った後
自分自身の何かの決意の様に、浅葱の顔を見た


「だから、匠を助けるのは 一般人の安全の確保が出来てからだ
 匠一人を救出した前回とは話が違う」


「・・・わかってる、オヤジ
 それは、匠だってわかってるはずだ」



 
浅葱は 目を閉じた
焦る気持ちを抑えるように 左の胸に手を当て
上着を掴む様に握ると 一つ、大きく深呼吸をする・・・

そして最後の吐気だけは 強く、短く・・・
自らに 喝を入れる様に 腹の底から一気に吐き出した


そして 真っ直ぐに目を開く
そこにはいつもの 冷静な浅葱がいた








その時だった・・
二人の背後で微かな音がした

それは小さな小さな カチカチという電子音・・・




「・・・おい! 流!」
オヤジのデカイ声が響く


その声に深月は 待て! という様に
静かに目を閉じたまま オヤジを、左手で静止する

そのまま静かに 透にパスの羅列を伝え続けた・・・・







そして・・・



・・・・カチッ。

今までより わずかに大きな音がした




刻印 -174へ続く
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刻印 -172

「・・・本当に馬鹿なヤツだ・・・」


・・・・・!!??・・・・・・


ハルの声がイヤホンから聞え 委員長の男はビクンと体を震わせた

今までとはまるで違うその冷淡で無表情な声に
男は慌てて深々と座っていたソファから身を起こし、後ろを振り返る
が、そこに三人の姿は既に無い・・・




思わず廊下へと通じる扉に 飛びついていた

「おい!!  ハル!!!  貴様ーーー!  なにをしている!!!
 ・・・・・開けろ!!  ここを開けろっっ!!!」

ドンドンと力任せに扉を叩いても
壁と扉とのわずかな隙間に無骨な指を差し入れようとしても
その頑丈な扉はビクともしない





・・キミの主はその部屋からは出られない・・
・・私の手の中・・
・・全くの 無能・・・・


「うるさい!!!  やめろ!!!!!  私を誰だと思っている!!!
 こんな事をして、タダで済むと思うな!!!」

ハルの冷たい声に、男は思わず耳を塞ぎ叫んでいた



「委員長・・・・暫くそこでおとなしくしている事だ
 心配しなくてもいい
 お前の望みもちゃんと叶えてやるから、安心して待っていろ
 
 同じ目的を持つ者同士だ・・仲良くやろう・・」



「仲良く・・・? ほ・・本当だな・・・?
 ・・・私には何もしないんだな・・・・?
 ・・な・・・・ならばいいんだ・・・・・・・
 
 あ・・ああ・・・そうだな・・・仲良くやろうじゃないか・・・・・
 仲間なんだからな・・・
 まぁ それが当然だな・・・・・
 今まで私がどれだけ、お前に協力してきたか忘れてもらっては困る
 ・・・ハハハハハハ・・・・・
 
 まったく・・・お前のやり方はいつも少々乱暴で驚かされる
 私の言う通りにしていれば、こんなことをせずとも・・・・・」



「・・ウ ル サ イ・・」
ハルの声が男の話を遮った

「誤解するな
 対等だなどと思うな
 お前のお喋りには殺意を抱く・・ 黙っていろ」

頭の中で響くハルの殺気に満ちた声に 男は蒼白になる
ガックリと膝を付き、そのまま床に座り込んだ






同じ目的・・・???
あの委員長にも何か別の目的があるのか・・?


あの男は 組織のNO.2・・・
あいつが裏切ったのは間違いない

だが・・ 今回の事件・・
ハルという男が 浅葱さんをヤる為に こちらの上層部の人間を丸め込んだ・・
そう思っていた・・


違うのか・・・?
そうでは無いのか??
委員長の目的って・・・・
金・・・?
権力・・・?
そんなモノは既にいくらでも・・・

どういう事だ・・・・
何をしようとしている・・


匠は イヤホンから聞えるハルの声に 理解が出来ずにいた
心臓が爆発しそうな程 激しく鼓動する
何か、何か・・・重大な事が・・・





「さっさと歩くんだよ・・ ボサっとするな」
老人の声と同時に 秘書の男に 痛む背中をグッと押さえられ
痛みで現実へと戻される



ゆっくりと廊下を歩きエレベーターの前まで来ると
ここのドアもスッと開く

三人が乗り込むと、その重厚なエレベーターは音も無く上昇し始めた



上・・・? か・・・・
この建物から外へ出るつもりはないのか・・・?
それとも屋上からヘリ・・・



ほんのわずかな振動と共にエレベーターのドアが開いても
そこは 乗り込んだ32階の廊下と全く同じ空気だった
たった今、確かに上昇して来たという あの感覚さえも疑わしく思える程だ

誰の気配もない廊下には、何の目印も 階数表示もなく
匠の視界では 今まで居た階との差を見分けることさえ出来なかった






ここに・・ すぐ近くにあの男が・・・・・・・




そのまま廊下を歩き 老人はある扉の前で立ち止まった
「連れて来ました」



「・・・・入れ・・・」
ハルの声がした




刻印 -173へ続く
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刻印 -171

委員長席の左下にある扉が開いたそこは 後ろと同じ造りの控え室だった
四人が入ると、後ろで静かに扉が閉まる



これで完全に 浅葱さん達とは隔離された


・・・ここからは自分一人・・・


自分のメッセージは 気が付いてもらえたのだろうか・・
少しでも伝わったのだろうか・・・・



背中も腕も 激しく痛む

背中は熱を持ち、ドクドクと脈打つ。 左腕は全く力が入らなかった
それでも・・
朝の、あの可愛い子供達を 危険にさらす様な真似は出来ない 

・・・絶対に

その為には 一人でも戦う・・・



武器になりそうな物は・・・
匠は上着の内ポケットにある注射器をそっと手で確認した
使えそうな物はこれぐらいしかない


だが、今 セットされているカートリッジは鎮痛剤だ
いくら強い薬とはいえ まず効力はないだろう

ただ わずかな望みがあるとすれば・・・
おやっさんが言った 
” 打ってすぐにショック症状が出るかもしれない ” という言葉
それがどれほどの物か・・  どこまで通用するのか・・・


あの赤い薬をセットできれば・・・・・・・






その時だった
匠の耳の側・・ 正確には耳の中で あの男・・ ハルの声がして
匠は ハッと、現実へと引き戻される

「委員長・・・ちょっと、タクミとだけで・・・話がしたいのだが・・・」




その声に 委員長の表情は 露骨に不快感を表す

が、 またか・・・とでも言う様に何一つ言い返そうともせず 
「勝手にしろ」 とだけ答え
そのまま ドカリと匠達に背を向けてソファーに腰を下ろした




「ありがとう、、 委員長・・・・ ではタクミは廊下へ出るんだ・・・
 お目付け役の先生も、もちろん一緒に・・・
 おぉっーーーー! っとイケナイ・・
 そういえば先生は以前、タクミに捕まるという失態を演じたんでした」

「えっ・・・あ・・・あれは・・・・・・・」
いきなりの話の展開に 老人は焦り言葉に詰まった



そんな老人の言葉など端から聞く気も無い様子で ハルは勝手に話を進める

「んー・・ どうしましょうかー
 そうだ・・! そこの秘書のキミ・・
 キミは凄く強そうだ、ちゃんとした訓練を受けている・・・・だろう?

 先生だけだと心配だから
 これからは タクミの事は キミにお願いしよう・・
 腕には自信ありそうだし・・・ どうかな?」



秘書の男が 自分の主である委員長の方に 確認の視線を向けるのだが
男は面倒臭そうに振り返りもせず
ただ 手の掌をヒラヒラさせてみせるだけだった

その手に秘書の男は深々と頭を下げる




匠は ハルの話しに、なんとも言い様のない嫌悪を抱いていた

今までも このハルの声には 苦しめられてきた
クスクスと一人で遊びに興じるような話し方にも・・


だが、今のこの男は・・・

その芝居染みた嫌な話の仕方が 匠を強い不快感で襲い眉をひそめさせた

いったい 何を考えている・・・・





「ではタクミ・・ 廊下へ出ろ・・・」
廊下へと繋がる扉が音も無くスライドする

「ほれ・・ 行くんだよ」
老人の湿った声に促され、匠は廊下へと出る
後ろにはピタリとあの秘書がついている



その控え室と廊下を仕切る扉が閉まった途端だった

「・・・・・・・本当に馬鹿なヤツだ・・・・・・」
聞き慣れた、あの いつものハル の冷たい声がした・・



「秘書のキミ・・・ キミの主はもうその部屋からは出られない
 キミに指示を出す人間は 私の手の中・・
 おとなしく私の言う事に従った方がいい・・・」


「はい・・」
秘書の男はまるでこうなる事がわかっていたかの様に
見えないハルの声に対して、先程と同じ様に頭を下げた


その姿を 部屋のモニターで見ながらハルは 満足そうに微笑む


「あの委員長、どんな手を使って 今の地位を手に入れたか知らないが
 全くの 無能・・・・
 秘書のキミの方がよっぽど頭も腕もキレるとみえる
 タクミ・・・・廊下を歩いてエレベーターに乗るんだ
 もうすぐ会えるな・・・楽しみにしているよ」 




刻印 -172へ続く
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刻印 -170

「もうちょい待て・・・!」
オヤジも焦った様に 浅葱に返事を返す



受話器に向かって話す声が一段と大きくなった

「いいから! 
 早くこの部屋の 保管庫だけでも開けろ! 武器がいる!!
 いや・・・ちょっと待て!!
 ビルって事たぁ・・・・中にある病院もだ!
 全てがヤツに制御されているとなると
 病院の機器も使えなくなるかもしれねぇ・・・・・・・ 
 そっちも最優先だ!」


「わかっています、先生・・ 今必死で・・」


「わかってんだったら、早くしろーーー 透!!
 ここの保管庫と部屋の扉! あと病院!
 その制御だけでもいい、早く解除してくれ!!」




そのオヤジの声に深月は驚いた表情になる

「浅葱さん!? おやっさんは誰と・・・?」

「あのオヤジの教え子・・ 透って人だろう」

「でも・・あの人はこの前、何も手伝わないって・・・・・・
 そう言ってましたよね・・・ 
 それに・・ 全てが向こうに制御されたなら・・
 どうしてあの電話は勝手に使えるんですか・・・・・」



「あれはアナログもアナログ・・
 有線で繋がる電気を使わない昔の電話機だ

 ここの最新システムが 何らかの事故で堕ちた場合の非常用だろう・・
 だから、制御だのなんだのってモノには 一切 影響されない」



「それで おやっさんはさっきからずっと・・・連絡を取ろうと・・
 でも、あの透って人は・・・」


「あの人はここの人間だ
 ここの上階は 全て ”内部の人間” でなければ
 何一つ動かす事が出来ないことを知っている

 だから、あえてこの審議会への出席を拒否した

 自分まで この会場内に閉じ込められたのでは何も出来ないからな・・・
 だが・・ 建物全てを乗っ取るとまでは・・・
 そこまで大掛かりな事は、考えてなかったのかもしれない・・・・」

浅葱が悔しそうに唇を噛む・・

「じゃあ・・今、あの人がここのシステムの解除を・・・」






「ああーーーもう! 早くしろ~~~~~!!」
オヤジは 有線で繋がった受話器を持ったまま 身動き出来ず
ただウロウロと同じ場所を歩き回っていた


そのオヤジに深月が声を掛ける
「あの・・・おやっさん・・・
 システムの詳しい説明をしてもらえれば、僕も何か手伝えるかもしれません
 電話を・・  僕に代わってもらえませんか・・」



深月がオヤジの前で頼み込んだ

「・・・できるのか? 流・・・・」
「・・はい、やってみます!」

その強い声にオヤジは頷くと

「透! 今電話を代わる! 俺の一番弟子だ!
 お前の役に立つはずだ! 二人でやってみてくれ!!」

そう告げ オヤジは深月に受話器を渡す


「頼んだぞ、流・・」
そのまま肩をポンと叩くと、深月は 「はい!」 と頷いた





「すみません、深月です! 今の状況を教えてください!」


「頼む、深月君・・
 今このビルは 1階から80階まで、全ての出入り口・扉・防火扉が閉じられ
 エレベーターも動かない

 この建物内の数百という人々が 現在居る部屋から、一歩も出られず
 完全に閉じ込められた状態だ

 私も、君達と同じく自分の部屋に閉じ込められ 
 システム解除の為の応援も呼べない・・
 まさか建物全てを乗っ取るとまでは、想定していなかった・・・

 我々四人以外は、何が起きているのかさえきっと把握していないだろう・・
 一般人のいる1階から30階までは 相当なパニックだろうが
 その監視映像さえ、見る事ができない状況だ・・」


「普段、ここのシステムを動かすのはPCですか?
 それは起動できるのですね!?」


「起動はしているが、システムを動かす為のパスワードが通らないんだ」


「状況は わかりました
 かなり短い周期で 自動的にパスが改ざんされ続けているんだと思います・・・」




深月は暫くじっと目を閉じていたが
「おやっさん! メモかノート・・・筆記用具があれば・・・・」

オヤジが慌てて パタパタと自分の服のポケットを探るが、使えそうな物は何もない
それは浅葱も同じだった



「ですよね・・・・今時、筆記用具なんて持ち歩きませんよね・・・・・
 じゃあー・・ 透さん!  ・・あ・・こんな呼び方ですみません・・・
 僕の言う通りにPCを操作してください・・・」



深月はゆっくりと目を閉じると、
まるで頭の中に開いたノートに記入するように 小さく指先だけを動かし始め
そのまま 数字や記号の羅列を透に伝え始めた・・・




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刻印 -169

「匠さんが・・・ 出て行く・・・」
深月が思わずガラスに両手を張り付けた

「匠っ・・  一人で行くんじゃない・・・・!」



二人の声も届かないまま
匠は 両脇を老人とあの秘書にピタリと付けられ
無言で委員長席の方へとゆっくり歩いていく



その匠の行動に驚いたのは、二人だけではなかった
委員長席の下に座る傍聴人達だ

この部屋の中では 何をしても絶対に抵抗しない・・・
完全に自分達の言いなりになる・・・
権力というのは そういうモノであり、絶対なのだ・・

今までそう思い、好き勝手に言い扱った若い男が
脱がされた服を右手に握り、上半身裸のまま・・
静かに自分達の方へ向かって来ている・・・



その背中には・・ 牙を剝く蛇と龍・・

・・・な・・・何をする気だ・・・・



傍聴人達は その時初めて、
自分達は何の権力もない、単なる一般人でしかなかったのだと気付く・・

そして この事態に、形容し難い恐怖と焦りで
ただじっと 匠の行動を見ている事しか出来なかった



「な・・・・なんだ・・・? どうしてこっちへ・・・・・」
「何かあったのか・・・・?」
「何をするつもりなんだ・・・・」
「まさかオレ達に報復とか・・ ないよな・・」

ヒソヒソと声はするが、
自分達が行った事への罪の意識なのか、
それとも 今ここで、一人目立つ事を恐れてなのか
ハッキリとその顔を上げ、匠の行動の意味を問おうとする者は 誰もいない


何が起こるんだ・・・・
皆がそう思い、黙って見ぬ振りをしながら・・事の成り行きに息を呑む




匠が席の下まで来ると、委員長の男は 自分も席を立ち上がり
大きな机を グルリと迂回して階段を下りてくる



「行こうか」
匠の 数メートル手前まで来ると
傍聴人には聞えない程の小さな声でそう言った





その声に 匠は思わず拳を握り締める
途端に、隣に居た秘書の男に 上着を持った右腕を強く掴まれた

「・・ンッ・・・!」
「無駄な抵抗はするな・・ そうハルに言われただろう・・?
 だったら、おとなしく付いて来い」

男は 匠が反抗する事は絶対にないと高を括っているのか
余裕の笑顔を見せた




・・・ハル・・・・   それがあの男の名前なのか・・・・




「委員長・・・お前も、余計な事は喋るな」
匠の耳の中でいきなりあの男・・ ハルの声がした
反射的に首を振り、目を閉じた


このイヤホンは、男も、俺も
みんな同じ物を使っているのか・・・・・



男がクルリと背を向け、匠達 三人の前を歩き始めると
秘書は 行け。 とでも言うように 無言のまま無理矢理 匠の腕を引いた


キッ・・と睨むように 匠が目を開ける・・

視界ギリギリの所で
前を歩く男の姿が・・・自分達と同じ軍服を着ている事は見てとれたが
闇と漆黒とが混ざり合い、その顔はおろか、映像としてもハッキリとしない・・


ただ、その闇の中に 肩から下げたキラキラと輝く鎖緒と
五つ並んだ星印の 階級章が見えた



五つ星・・・・あれはNO.2の階級章・・・


こいつは NO.2のうちの一人・・・・
そのNO.2を 「お前」 と呼ぶ あの男・・・・

ハル・・・・・ 



男が正面左の扉の前まで来ると、その扉が音も無くスッと開く


何の説明もなく部屋を出て行く四人の姿を
何が起きているのか 全くわからないまま、傍聴人達は半ば呆気にとられ見ていた





「浅葱さん! 匠さんが・・・・ 行ってしまう・・」
深月が悲鳴に近い声をあげた

「お前は最後まで、匠の手を見ていろ! 何一つ見落とすな!」

「は・・・はぃっ・・」
深月は 匠が扉を出る最後の瞬間までその手を見つめた

「ホシ・・数字の5・・・・・・・」




「オヤジ!! ・・・まだか! まだ連絡は付かないのか!!」
浅葱が後ろのオヤジに叫んでいた



刻印 -170へ続く
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刻印 -168

「・・・・・・オ・・ト・・・・・コ・・・・・・
 ・・・オトコ・・!!!
 そ、そうです! 浅葱さん! あれ・・・指文字です!」

「・・! ・・・匠は・・・匠は何と言ってる! 深月!」

「あ・・・は・・・・・はいっ!!!!」





深月は両手でガラスに張り付く様にしながら、必死に匠の指を読む


「ああ・・・もう!! 人が・・・・・邪魔っ・・・・!! 退けてっ・・!
 えっと・・・えっ・・・・と・・・・・・

 オ・・・ト・・・・・コ・・ 
 セ・・イ・・・・制圧・・・・・・・」

 

「男、制圧・・・・・・
 やはり もう匠に接触しているのか・・・ クソッ!! いつの間に・・・!!!
 ・・ヤツはどこに居やがる!・・・・・ オヤジ!!!」
浅葱は 後ろの壁に立っているオヤジを振り返る



オヤジは 秘書の男が控え室を出てからずっと
壁にかかった あの旧式の電話で、どこかへ連絡をしていた



浅葱の声に オヤジはまだ受話器を持ったまま
わかった! とでもいう風に うんうんと大きく頷く





「浅葱さん・・・  ・・・ワナ・・・ビル・・・ガスカドク・・・
 ・・・コドモ・・・・イシャ・・・ 」
深月は読み取れた言葉を 浅葱に次々と伝える




制圧 は このビルのセキュリティーや 最新システムの事だろう・・
罠・ビル・ガス・毒 は文字通り、このビルに仕掛けられたモノだとして
子供・医者は何だ・・・・・?


・・・・朝の子供の事か・・・??

そう言えば、ここには保育園や病院もあると言っていた・・
ガス・毒はそこに仕掛けられた・・ と言う事なのか・・・?




「・・ああーーー! 人が邪魔で、匠さんの手が・・・・・・・」
短いワードを繋ぐ浅葱の横で 匠の指を必死に読もうとしている深月が呟く


「あの小さい爺さん、ずっと匠さんの横で・・・・・・邪魔だ・・・
 ・・・・除けてくれればもっと 見えるのに・・・!」





深月の声で何気なく顔をあげた浅葱が ガラスの向こうの匠を見た
大勢が動く中、 深月の言う通り 一人の背の低い白髪の老人だけは
ずっと匠の斜め後ろに立っている



・・・・・・白髪の・・・老人・・・・・・背の低い・・・・・



その言葉で形容される男に 浅葱は覚えがあった
オヤジのファイルで見た 背の低い男・・
あの日、燃える屋上で会った 白髪の白衣を着た老人・・


・・・!!!・・・あの医者・・・・!!??





匠の伝えた 医者 は病院の事ではなく・・・
まさしく、今 側にいるのが あの医者と言う事なのか!?



イヤ・・・だが会場に入ってすぐに、傍聴席は確認した・・・
見覚えのある顔は無かったは・・・・ず・・・・・



・・・整形・・・


そうだ・・・
オヤジの資料にあった写真は もう数十年も前の物
しかもその医者は、替え玉を仕立ててまで 一度は死亡した事になっている
表社会を追われた人間が 整形したとしても、何も不思議はない・・・




自分の背中を灼き、メスを入れた男が、側に立っている・・・
しかも たった一人で・・
まだ良く見えない視界に、その顔があったとしたら・・・
匠の恐怖と苦しさは・・・・・・・・・


「・・・・・匠っ!!!! 匠っっ!!!!!!」
浅葱は叫んでいた




それは気配だったのか・・ 匠はふと、浅葱の声を聞いた気がした・・
「浅葱さん・・・・」
思わず振り返ろうとした時、隣の老人が匠の背中をグッと押さえつける

「・・ンッ・・!!」
「振り返るんじゃないよ・・・・」





「皆様、そろそろお席へ・・・」
委員長の男の声で、匠に纏わり付いていた傍聴人達が
名残惜しそうに元の席へと引き上げていく


「さあ、行くんだよ・・」
再び老人に背中を押され、匠は台の上のシャツと上着を掴む

そのまま 席へと戻る群集に紛れ、一緒に前へと歩き出した




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刻印 -167

それは今まで何度も、何度も、幻聴の様に聞こえ
ずっと自分を苦しめてきたあの声・・・


だが今は、幻聴ではない
実際に あの男が自分を呼んでいた・・・・


「タクミ・・・・これにはイヤホンと集音マイクがついている
 絶対に外すな、 他のヤツにも悟られるな・・・
 余計な事を話したり、おかしな行動をとったりすれば
 あの4人は即座に死ぬぞ・・・
 
 いや・・・4人だけではない・・・
 今、この建物は全て私の意のまま・・・
 完全に制御し、いたる所に楽しい遊びを仕掛けてある 
 
 あの可愛い子供達も、そこの一般人も・・・みんな私の手の中だ
 ずっと見ている 
 判ったらその声を聞かせろ・・・また私に従うと、そう言うんだ・・タクミ・・・」





子供・・・・
朝、ロビーで会ったあの子達・・・・
建物全部に罠・・・・・・・



匠は目を閉じると、わずかに震える唇で
小さく 「わかった・・・言う事を聞く・・」 と呟いた




「いい子だ・・・タクミ・・・
 やはり、タクミは 身も心も私のモノだ・・・・・

 そのまま 正面左の扉から出ろ
 ・・まだ見えない様だが、先生がいる
 黙って誰とも、何も話すな
 私の指示に従い ここまで来い・・・
 待っているよ・・・・  タクミ・・・」



ひどく呼吸が苦しかった
無数の手で体に触れられた痛みと
そして何より あの男の声・・・・・・・・罠・・・



痛む腕で 秘書の手を振り切って台に右手をつき
発作を起こしかける体を支えた・・・

左腕は 激しく痛み、台に上げることさえ出来ず
ブランと下がったままだった




ハァ・・ハァ・・・

ハァ・・ハァ・・・



伝えなければ・・・
あの男が接触してきた事を・・・
ここを出る前に・・
この建物の罠を・・・・
でなければ、子供達まで・・・・・・・・

浅葱さんや・・みんなに・・・一刻でも早く・・・









群集に囲まれ、その今にも倒れそうな匠の様子を
後ろのマジックミラーから浅葱が見ていた

「匠・・・大丈夫か! 匠っ!!」
聞えるはずが無いのはわかっていて、浅葱は呼び続けた






そして・・・ ふと何かに気付く・・・



「おい! 深月!!!」
まだ浅葱に殴られたままの恰好で壁に体を預け
放心した様に座り込む深月を、浅葱が無理矢理 ミラーの前に引き摺り立たせた

「深月! しっかりしろ!! あれだ! 見ろ!! 匠の左手だ!!!」
「・・・・・・・・・・ぇっ・・・」

押さえ付けられる様にして、深月は ガラスに張り付かされる



既に痛みで台の上まで上がらない匠の左手が・・・
ブランと下げられたままの 左手の指が
台の死角で奇妙な動きをしていた・・


「・・・あ・・・あれは・・・・   
 


 ・・・・もしかして・・・・
 僕が教えた・・・ 指・・・文字・・・・・・?」

大勢の人間の隙間から わずかに見え隠れするその指の動き
その動きに深月は目を凝らした・・




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刻印 -166

今の声・・・・
その声は確かに聞き覚えのある声だった・・・
あれは・・・・

匠の中で、急速に嫌悪感が広がっていく・・・






「そうだ!こんな事ができるはずが無い! 何か作り物かもしれん!」
また あちこちで声が上がる

「では・・・ その真偽を確かめたい方には確認していただこう
 段を下りて、実際にその手で確かめられるといい」



その あらかじめ決められた言葉を待っていたかの様に
ハルが キーを押し呟いた

「・・・やっと出番ですよ」
「はい・・ わかっております・・・」
湿った声がハルに返される・・




既に傍聴席からは 何人もの人間がゾロゾロと匠の方へ歩み寄って来ていた
無意識に後ろへ下がろうとした匠の体を あの秘書の男が捕まえ
両腕を後ろ手に押さえ込む

その動きは秘書などという人間の域を超え
かなり訓練をされた、プロだとしか思えなかった


「ッンッ・・・・・!!」

思わず腕の痛みに匠が呻く・・
が、そんな事はお構い無しにアッと言う間に 匠は傍聴人に囲まれていた




・・・クソッ!!
たった一人で群集に呑み込まれていく匠を目の前にして
浅葱は何も出来ずに 悔しさを滲ませる

必死で目の前の扉をこじ開けようとするが
取っ手も何も無い ただの平らな重い板でしかないそれはビクともしなかった





大勢の人間の気配に取り囲まれ、暗かった視界に無数の顔が見える
そのどれもが いやらしく興奮した顔をしていた

そして そこから何本もの手が触手の様に伸び、体中を触り始める・・



腕を捻り上げられ身動き出来ないまま 匠はその感覚に思わず首を振った
「・・止めろ・・・・・・・触るな・・・・」


だが背中の傷には誰もが容赦なく触れた
痛み始めていた傷が ドクドクと脈打ち それは激痛に変わっていく・・


「ンッ・・・! やめろ! ・・俺に・・・さわるな・・!」







その時だった
匠の耳のすぐ側で、不快な声がした・・

「久しぶりだな・・・・・・
 これだけ近寄っても判らないとは・・・ まだ目が見えなくて良かった・・・
 私の薬も満更でもないな・・・ いい実験データがとれたよ・・」



耳に触れそうな程近くで聞えるその声に 匠の体がわずかに震えた
聞き覚えのある、湿ったしわがれた声・・・・・
ねっとりとした不快感・・・

心臓がドキドキと暴れ出す



「私の傑作品も美しく出来上がったようでよかった・・・
 これなら あの方も満足頂けるだろう
 最後まで手を掛けられなかったからな・・・ 心配していたんだ・・・
 随分と 手を尽くした跡はあるが・・ 
 無駄だった様だな・・・・・・・」


そう言いながら その声の男は満足そうに匠の背中に触れ、傷を撫で回した

湿った手の感触・・
それは忘れもしないあの老人の医者だった


「さっきは 私の事も話していたな・・・
 この口で私のモノを咥えてくれた事を思い出して
 年甲斐も無く、また興奮してしまった・・・」
湿った手が匠の喉元から首筋へと触れる


「どうして・・・・・」
言いかけた匠の耳に何か小さなモノが押し込まれた

「・・・ンッ・・・・・・!」
腕を押さえ込まれて抵抗できない匠に 老人の声がした

「これを絶対に外すなよ・・」
そう老人が言った途端だった



その耳に押し込まれたモノから 声が聞えた


「・・・・タクミ・・・・
 ・・タクミ・・・・・・・・・やっと話ができる・・・・・・」





・・・・・!!!!・・・・・


匠の体がピクンとはねた・・・
無意識に強く首を振る


あの男の声・・・・・


あの男の声が ハッキリと聞えていた




刻印 -167へ続く
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刻印 -165

匠がボタンに手を掛けると、途端に会場は静まり返り
全員の目が その匠の動き一つ一つに注がれた


中にはあからさまに不快感を示し
ハンカチで口元を押さえ 睨むように匠を見る議員風の女性の姿もあったが
ほとんどが 欲望と好奇心を曝け出し、隠そうとはしない

シンと静まり返ったそこはすでに 異様な雰囲気に包まれていた



それを見つめていたのは会場の外にいるハルも同じだった
ハルはそのまま 分割されていたモニターを1つにだけに戻し
自ら服を脱ごうとする匠を 画面いっぱいに映し出す




だが・・・ ボタンを全て外し終えても、匠はその上着を下ろす事が出来なかった
痛む腕が全く自由にならない・・
右手だけで、重い鎧を脱ぐことが出来ずにいた




「どうした・・?」  男が急かす様に尋ねる

「まだ腕が上がらない・・・・・一人では・・・」

「フンッ・・  介助がいるのか・・・服も脱げないとは・・・ まるで子供だな
 いつもそうやって 誰か他の男に脱がしてもらうのか・・・?」



嘲笑する様に男が言うと、控え室にいたあの秘書が 後ろの扉から入ってくる

「手伝ってやれ」 
秘書の男は軽く頷くと 匠の背後へ回り
いつも浅葱がするようにして 重い上着を脱がせた


その上着が台の脇へ置かれると
匠はスルリとネクタイを解き、シャツのボタンも外していく・・・




そこで一度 手を止める・・




ガラスを隔てた控え室で浅葱と深月が 悔しそうに匠を見つめていた
「クソッ・・・!」
浅葱の小さな声がした


オヤジは・・・
控え室から秘書の男が居なくなると、静かに後ろの壁まで後ずさる・・・・




匠は 発作を起こしそうな体を鎮める様に、フゥッ・・・・と息を吐いた後
チラリと側に立つ秘書の男に目をやった


男が匠のシャツに手をかけ・・・・・  その体が露にされる・・




好奇の目に曝け出されたそのしなやかな上体・・・
その胸に、真っ直ぐに伸びる深い傷がある
それだけではない・・ それは腕にも脇腹にも・・・・
上半身、いたる所に無残な疵痕が 残っていた  


会場がざわつく
これがあの美しかった男の体・・・・・
会場は妖しい興奮に呑まれていた



「背中は・・・? 後ろも見せろ」


男の声に 匠は静かに目を閉じた
この体が・・・ 大勢の前に曝される・・・・



匠がゆっくりと背中を傍聴席に向けると
重い軍服で熱を持ち、痛みと共に高揚した激しい龍と蛇がそこにいた



会場全体がどよめきに包まれる


匠はうつむき、目を閉じたまま その会場の好奇の目にじっと耐え続けた
胸が苦しかった
息が上手く吸えず、酸欠になった体の中を虫が這い回る感覚がする・・・・





自分がつけた刻印を持つ男・・ 匠が目の前に映っていた

「・・タクミ・・・・・・美しくなった・・・・
 ・・早くここへ来い・・・・・・ お前は私のモノだ・・・・」

画面一杯に大きく映し出された自分の蛇と匠の龍を
ハルはゆっくりと指でなぞった





それはどのくらいの時間だったのか・・・

匠にはひどく長く感じたが
暫くしてやっと男の声で 「前を向け」 と言われた


匠は再び正面を向くと 目の前にあった台に手を付き、体を支える・・・
呼吸が苦しい・・・
だが、こんな所で一人倒れる訳にはいかない・・・・

あの控え室の 扉の横にあった大きな窓・・・あれは間違いなくマジックミラーだった
だとすれば・・ きっと、後ろから浅葱さんが見ている・・
「大丈夫だ、匠・・」 そう言った浅葱の声が響いていた



必死で体を支える匠の耳に
「その傷は ホンモノなのか?! 触ってみないとわからんぞ!!!」
会場の空気を 更に焚き付ける様に何処からとも無く声がした




その声に匠は驚いた様に顔を上げる・・・




刻印 -166へ続く
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刻印 -164

3人の気配と足音が消えると
早く続きを聞かせろと 部屋中の空気が匠を追い立てる

呼吸が苦しくなりそうな・・ あの発作の前兆の様な感覚が体を包む
腕も背中も痛み始めていた・・



・・あの4人をなんとかしなければ・・・



「・・・・・・質問に答えろ」 男の声がした


ハッと我に返ると 
匠は見えない目で委員長の男の声をする方へ顔を上げた


「もっと・・・・・何度もだ・・・回数は・・数えてない・・・・」

「何度も、自分でも感じたのか・・相手は? その男だけか?」

「・・・・・・」


浅葱が唇を噛んでその様子をガラス越しに見ていた・・
強く目を閉じ、拳が震える・・



「・・・・その男と・・・・医者と・・・・・・
 ・・・あと助手の男が・・・・たぶん二人・・・」



その匠の声に、浅葱の握り締めた拳が 窓枠を叩き付ける・・



「これはこれは・・・・まるで乱交だな・・・
 その度に感じ、イったとなると・・・
 もう薬だけのせいだけでも無い印象を受けるが?
 
 そんな状況で抵抗はしなかったのか?
 逆に・・・ 自分から求める事もあったんじゃないか?」

「まさか・・・!  そんな事がある訳がない!」
匠は見えない目で、相手を睨み付けた


「そうかな・・・?  
 求めないまでも・・自ら体を開いた事は、一度も無い・・・と?
 正直に答えた方が、 ”みんな” の為だぞ」
そう言って 男はニヤリと笑う


その質問の仕方は、全てを知っている聞き方だった・・



「知っているなら・・・・・何故わざわざ聞く・・・」

「最初に言ったはずだ
 話を聞いてやると・・  それが、この審議会の理由の一つでもある
 ・・さあ、答えるんだ、みんなの為にな・・」




「背中を・・・・背中を灼かれて・・・・・目に・・・針を・・・・・
 その恐怖で・・・・自分がわからなくなっていた・・・・・・・
 ・・・開けと言われ・・・・抵抗できなかったのは 確かだ・・・」
匠の声も震え始めていた


「背中を灼かれ、目に針・・・  これはまたショッキングなワードだ
 灼かれたというのは、この写真で間違い無いな?」


男は会場の雰囲気をあおるかのように
例の添付写真を全員に見えるように掲げた

会場内では またあの資料を捲り、これだ・・と囁く声がする




「視力が戻っていないので、これと言われても見えない・・・・」


その時だった
「しかし、これはホンモノなのか? こんな事が本当にできるのか確かめるべきだ・・」
会場から声がした

その声をキッカケに あちこちで声が上がり始める

「そうだ・・・ こんな事ができるはずかない・・・・」
「作り物じゃないのか?」
「実際に・・・見ない事には・・」


傍聴席からの声はどんどんと増えていく・・




その声を抑え、男の 大きな声が響く

「どうする? みんなはこれを 同情を買う為のフェイクだと思っている様だ
 真偽を確かめる為に、ここで見せてみるのはどうだ?
 
 全裸の写真もここにある
 そして何より・・・もう何人もの男に抱かれたのだろう・・
 今更 体を見せる事など 造作もないはずだ」





ハルはテーブルの上に両足を乗せ
胸の上で両手を組むと 嬉しそうにクスクスと笑い続けていた
「上手いものだな・・・・文句を言っていた割には
 結構 楽しんでるじゃないか、委員長・・・・・」





匠は大きく息を吸うと
左肩から下げた細い鎖の飾緒を外した
そのまま 軍服のボタンを1つずつ外し始める・・




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刻印 -163

「またか・・・・ いちいち うるさいぞ・・
 黙れないなら 聴聞は1人ずつだ 後ろの3人は出て行って貰おう」

「何をふざけた事を・・・!」
オヤジが怒鳴った時だった


「そうだ、審議を、話しを続けさせろ・・! 後ろは黙ってろ!」
傍聴席からも声が飛んだ
それはもう 有識者・・・傍聴人などと言うものではなく
ただの欲望を丸出しにした 野次馬の声でしかなかった




「・・わかった・・・やめろ!! 俺一人でいい!!・・・みんなは外へ・・・」

「匠っ!!」
浅葱の声に匠は思わず振り返った

だが、そこは闇でしかなく・・・浅葱の姿は見えなかった・・・
匠がゆっくりと首を振る



何らかの策を講じるまでは・・・
今ここで この男を・・・  
いや・・もう既に会場全部を敵に回すわけにはいかない
これを拒否すれば あの4人はすぐにでも・・・・







3人は 秘書の男に追われる様に会場を出され、また控え室へと戻された
浅葱は その閉められた扉を いきなり殴りつける

「恭介!」  浅葱を止めるオヤジの声も怒りに満ちていたが
「今はまだだ・・・」  オヤジも自らを収めるように呟いた



そんな3人の前・・・
扉の横にはあの秘書が 黙ったまま無表情で立っている





控え室の画像だけを 匠が映る画面の端で小さくモニターしながら
ハルは満足そうだった
「悔しいか? 恭介・・・・ では続きを見せてやろう 
 もっと悔しがれ・・・ 己の無力さを感じろ・・・」



浅葱が殴りつけた扉のすぐ横
あの真っ暗で何も映さなかった窓が いきなり明るくなる
驚いた様に3人が顔を上げると ガラスの向こうに審議会の様子が見えていた
マジックミラーが機能し始めていた・・・



そこには大勢の傍聴人を前に たった一人で立つ匠の後ろ姿があった
控え室からは 中の音声も、様子もハッキリと見る事ができる


深月が思わず 「匠さんっ!」 そう叫んで ガラスの窓をドンドンと叩いた
が、それは どれほど強固なのか・・
匠は全く気が付かない様子で 前を向いている


「やめろ、流、これはマジックミラーだ
 向こうからは その存在さえ気が付きゃしねぇ・・
 まして 声も姿も・・ 届かん・・・・・」


深月はガックリと床に膝を付いた


たった今、見て聞いてきた匠の姿が目に浮かぶ

「本当・・・・・・なんですか・・・・ 匠さんの・・・・・言った事・・・・・」
うなだれ床を見つめたまま 深月がポツリと呟く


「ああ・・」
オヤジがガラスの向こうの匠をみつめたまま答えた



「・・・・嘘だ・・・・嫌だ・・・・・
 そんな・・・・僕は・・・・・・・・なんて事を・・・・・」

言いかけた深月の言葉に浅葱が眉をひそめた
そのまま膝を付いている深月の胸ぐらを掴むと 立ち上がらせる

「深月・・・お前、いったい匠に何をしたっ!」


その声に深月がビクンと震え 顔を上げた

「・・・・た・・・匠さんを・・・・押し・・倒して・・・・・唇を・・・・
 それで・・・・体にも触れようとしたら・・・・
 匠さんが・・・苦しみ出して・・・・・それで・・・逃げて・・・」




・・・・クソッ・・・・!!!!



胸ぐらを掴んだまま、浅葱の右拳が深月を殴っていた
そのまま深月はテーブルにぶつかり床に転がる・・


「恭介!やめろ! 今ここで仲間割れをしてどうする!」

オヤジが慌てて二人の間に割って入るが 浅葱にはその声は聞えていない・・

「匠が・・・・
 匠がどれだけの思いをして ここまで立ち直ったと思っているんだ!!
 それを・・・その恐怖を・・・ お前が思い出させてどうする!!!」
オヤジに押さえられた体越しに深月へ怒鳴っていた



深月は倒れた体のまま 茫然と床を見つめるしかなかった

「知らなかった・・・・そんな事があったなんて・・・・・・
 何も・・・知らなくて・・・・・・・・   すみませんっっ!!!!!」

口の中で 切れた血の味がしていた



「恭介、もうやめろ・・・・・・」
オヤジにグッと腕を押さえられ 浅葱は拳を握り締める


「ああ・・・わかってる・・・  今更 こんな事を言っても無駄だ・・」
握った拳の そのどうしようも行き場の無い力を
そのままガラスにぶつけ 殴りつけた


ドンッ・・・!!


低い鈍い音がしたが ガラスの向こうの匠には何も聞えないのか
振り返る素振りもない

「・・・・匠・・・・・・・・・」

たったガラス1枚隔てただけの匠が ひどく遠かった




刻印 -164へ続く
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刻印 -162

「匠・・・・こんな茶番、答える必要はねぇ・・・」
オヤジの絞り出す様な声がする

深月は まだ茫然としたまま匠の声を聞き
浅葱は必死に何かをこらえる様に、ただじっと目を閉じていた・・




「後ろは黙れ、・・・わかっているな?」

念を押すような男の声で、匠は咄嗟に台のモニターに目をやった
画面に映る4人が、胸や喉を押さえ 苦しみ出していた・・


「やめろっ・・・・!  何度も言われなくてもわかってる!
 そんなに聞きたければ・・・ 話しぐらい・・・・
 ・・・・  いくらでもしてやる!」


「よろしい・・では続けよう・・・ 後ろもそういう事だ、黙っていろ」



すると画面の4人は、何かから解き放たれたように 肩で息をし始める
画面に映る部屋自体には 目立った変化は見られない
ガスか・・・薬か・・・・空気か・・・・
その類の物が この4人のいる部屋で 操作されているのは間違い無さそうだった




「催淫剤を打たれ、それから?」   再び男の声がした


匠は4人が無事なのを確認すると
真っ直ぐに正面にいるはずの男を睨む様に・・・ 顔を上げた


「・・・・・そのまま、全裸にされて・・ 
 手を鎖で縛られたまま 地面に四つん這いにさせられ・・・
 リーダーの男に・・・・    ・・陵辱・・された・・」

「陵辱・・・・ というのは? どういう事だ?」

「・・・・その男に・・・・無理矢理・・・犯されたんだ・・・・」



一斉に会場がざわつき始めた
モニターを眺めるハルがクスリと笑う・・




が、その言葉に一番驚いたのは深月だった・・・


・・・何・・・・?

匠さんは・・・何を言って・・・・??



思わず両隣のオヤジと浅葱を交互に見た
が、二人共が睨むように前を向いたまま、黙っている

本当の・・・・事・・・??

ウソだ・・

信じられない・・
信じたくない・・ 

イヤだ・・・やめろ・・・・



「嘘だ!! そんなデタラメ・・・・もう・・  もうやめてください!!! 匠さん!! 
 もう嫌だ!! そんなの・・ 聞きたくないっ!!!」


体の奥から込み上げる、 爆発しそうな・・訳のわからない感情
深月自信もそれをコントロールで出来ずにいた





「・・・・・・やめろ!深月! お前が取り乱してどうする!」
黙っていた浅葱の叱責が飛ぶ

「あ・・・浅葱・・さん?
 ・・・・・何を言って・・・  じゃあ・・・ホントって事なんですか・・・・・」
深月の視線が匠を見ていられなくなり、宙を泳ぐ・・



その声に匠は目を閉じ、唇を嚙み締めてうつむくだけだった




会場も異様な雰囲気に包まれていた
目の前に居る若く美しい男が、同じ同性の男に無理矢理犯されたと
自ら話しているのだ 
ざわついていた会場が 興味本位の目でギラつき始める・・



その光景をモニターで見ていたハルは 
まるでその時の事を思い出すかのように 嬉しそうに微笑み
大きく映した画面の匠の顔を まるで実像の様に触れた



「・・犯された・・・・」
そう繰り返す委員長の男の声もまた、陰湿さを纏い始めていた


「これが通常の女性のレイプ事件なら
 そこに同意があったのかどうかが 焦点になる・・お前は?」



同意・・・・?
匠はその真意がわからずに 目を細め、見えない相手を睨み付けた

「・・どういう・・・・意味だ・・・・」

「感じたのか・・・? と言っている
 女性と違い、我々男の体は実に正直で判り易い・・・
 感じればそれなりの結果になる ・・・・ 射精はしたのか?」

「・・・・・薬を・・・・・入れられていて・・・・・・」

「入れられていたから・・・?」

「・・・・・・・した・・・・・でも薬で・・・・」

「したのか・・・・
 薬ねぇ・・・ それは何回?
 拉致されている間に 同じ様な事が何回あった?」

「覚えてない・・・・・何日経っていたかもわからないのに・・」

「では・・何日にも渡り・・1度?2度? もっとか? 10回?もっと?」




初めは面倒臭そうに尋問していた委員長が
今は 自ら率先して話を聞きだそうとしていた・・・


ハルもその変わり様に 思わず フンッ・・・と鼻で笑う



「匠、・・もう・・やめろ・・!!」 
浅葱の声が聞えていた




刻印 -163へ続く
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刻印 -161

「これは・・・・・」 

「その仲間だ・・ この4人も後で審議会にかける
 一緒に行動したのだから当然だ
 ただ・・・現在のこの4人の待遇は見ての通りだ
 今すぐにでも・・・・・ この意味はわかるな?
 それを良く覚えておく事だ」



人質・・・・・という事か・・・
それも・・ 俺の出方次第・・・・


「わかった・・・・」  匠は拳を握り締めて小さく返事をした




モニターに映る画像は 他の傍聴人には見えないらしく
男が何の話しをしているのかさえわからない様子だった

中には数人 不思議そうな顔をする者もいたが
ほとんどの者は この匠の背中の写真についての興味で一杯だった

写真の・・・ 全裸で横たわるこの男が 今 目の前にいる男、本人なのだ
そして、軍服を美しく着たこの男の体に こんな傷があるのだという・・・・
この傷がホンモノなのか、なぜそんな事になったのか
好奇心で一杯になった野次馬の目が匠を見つめていた

 



匠の前の、 その小さな画面に何が映っているのかが わからないのは
後ろにいる浅葱達も同じだった


「匠!! どうした? 4人って・・・あいつらなのか!?
 そこに何か映ってるんだ!?  匠っ!」  オヤジが叫んだ


「うるさいと言ったはずだ
 一ノ瀬は 審議を続けてもいいと言っている
 後ろは黙っていろと、 君からも言え」


「・・・・・大丈夫です、 おやっさん・・・・」
匠は顔を上げ
正面に居るはずの男の方を睨みながら 唇を噛んでそう言った




その様子をモニターで見ながら ハルは満足そうに笑っていた
「そうだ・・ タクミ・・・・・・ 忘れさせはしない・・・
 全てを思い出し、私との事をみんなに教えてやれ・・・・
 自分は身も心も この私のモノになったのだと、 な・・・」






匠の前の画面にあの4人が映っているのは間違いなかった
しかも 彼らはかなりマズイ状態にある・・・

それを見た上で、大人しく言う事を聞くと匠は判断した・・・
ならば・・・オヤジも浅葱も今は黙って見ているしか方法がなかった

オヤジが クソッ・・と小さく呟き、そのまま黙って元の位置まで下がると
委員長の男が話を始めた


「後ろは 大人しくする気になった様だな
 では、まず・・  拉致された直後だ、どうされた?」

「どう・・・・・」



匠は 二度と思い出したくなかったあの地下室での光景を
一つずつ 記憶の中から引き摺り出そうとしていた



「気が付いた時には、鎖で両手首を縛られて、天井から吊るされていた・・・
 それから・・・リーダーの男が現れて・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・」

「・・・続けろ」

「リーダーの男に・・・いきなり唇を奪われて・・・」



その途端に会場からザワ・・とわずかな声が上がる



「えっ・・・・」
深月も思わず うつむいていた顔を上げた
背中を灼かれ、目を・・  匠が激しい拷問を受けていたのは知っていた
だが それ以上は考えもしていなかった・・・・

・・・それはいったいどういう事・・・・・??
深月は目の前に立つ匠の後ろ姿をただ見つめるしかなかった





「ほお・・・
 普通は敵を拉致し 縛り上げれば、 何かを聞き出そうと拷問するのが普通だが・・
 君は唇を奪われたと言うのか・・・・?
 しかも男同士・・・・なのにだ・・・
 君はそういう趣味なのか?」


匠はグッと唇を嚙み締めて 「いいえ・・・」 と小さく答えた




また会場中がシンと静まり返っていた
これからこの男の話す言葉を 一言一句聞き逃すまい・・・
そんな雰囲気だった




「それで? 続けろ」

「・・・上半身を裸にされ・・・・・・ナイフで胸を切られ・・・
 その後は、無数に・・・・
 抵抗すると、 殴られて・・・・・肋骨が折れた様だった・・・
 
 出血が酷くなると・・・男が、先生と呼ぶ医者が現れて・・・
 衰弱死しない様にと薬を・・・・」



「衰弱死しない様に薬・・・・ ただの捕虜としての君に やけに丁寧な扱いだな
 それは何か特別な薬でも? 麻薬でも打たれたか?」

「催淫剤だと・・ 言っていた・・・あとは輸血・・・」

「催淫剤・・・・・・普通、こういう場合は自白剤だと思うのだが
 催淫剤ねぇ・・・・・・何の為に・・? それからどうした?」



「・・・・・」
匠は目を閉じた・・・
あの光景を思い出し、多くの人の前で話さなくてはいけないのか・・・・・




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刻印 -160

審議会場で
委員長の男が自分の耳に収まっている超小型のイヤホンに 手をあてた

” タクミから離せ・・・近づけるな・・・ ”   ハルの声が聞えていた



・・・・嫉妬してるのか? 全く小五月蝿いヤツだ・・・・

男は面倒臭そうに
「浅葱、ここでは私語厳禁だ。 証言の口裏を合わせられても困る
 4人はもっと離れていろ」 そう告げた


男が顎で合図すると 後ろでずっと扉の前に立っていたあの秘書が
次々と4人の立ち位置を修正していく
その間隔は 2m 以上にもなった


まだ 1m ほどの視界しかない匠には 浅葱の姿はもちろん
周囲は何もないただの闇になる



「一ノ瀬はまだ視力が回復していない、もう少し側に・・・・」
浅葱が言いかけたが

「ここは事情を聴聞する場だ、口がきければいい、視力は不要だ」
そう言い捨てられた






「・・・委員長、なかなかやるじゃないか・・・・」
中継されるリアルタイムの音声と映像を見ながら ハルは呟いた

「それに・・  タクミ・・・  まだ 目が戻っていないのか・・・・」
フッ・・と満足そうな笑みを浮かべる・・






「では、今回の事件の経緯を初めから本人の一ノ瀬、話してもらおう」

「初めからって、もう資料はあるんだろうがーー・・
 そんなのは時間の無駄だ、イチイチ・・・」
会場では イラつくオヤジが声を荒げていたが その言葉は途中で遮られた

「発言は指名された者のみだ
 他は黙っていろ
 一ノ瀬、そのまま真っ直ぐ前に出ろ、マイクがある」



本当に、クソ真面目に 審議会を開くつもりなのか・・・
いったい何がしたいんだ・・
浅葱もオヤジも苛立っていた




匠は台まで進むと 自分が拉致され
それを助けるために 仲間が組織に無断で動いたのだと、簡単に答えた




だが男の反応は違うものだった

「一ノ瀬、 それぐらいの事は それこそ、この報告書に書いてある
 今、君がすべきことは、その仲間が組織を無視してまで動いた理由・・
 それがどれだけ正当な理由であったか・・ という事だ」



理由・・・?
匠はその意味がわからずにいた・・
いったい 俺に何を言わせたいのか・・・




黙っている匠に 男は嘲笑するように続ける

「君の話しを聞いてあげようと言っているのだ
 自分がどんな目にあったのか、どんな事をされたのか
 どれほど辛く、どれほどの恥ずかし目を受けたか・・・・・
 それが悲惨で惨めなほど、
 ここに居らっしゃる有識者の方の心も動くと言うもの・・」



「・・・なんだと!!」  思わずオヤジが叫んでいた


「うるさいぞ、 今は一ノ瀬と話をしている
 一ノ瀬・・・ 君の判断一つで 大事な仲間の処遇が決まるんだ
 今更、恥ずかしいも何もないだろ?
 こんな資料まであるのだから・・」
 
そう言ってあの写真が添付された資料を掲げて見せる


その途端に 会場中でパラパラと資料をめくる音がし
あちこちでザワザワと話し声がし始める






その様子を ハルはクスクスと笑いながら見ていた
「さぁ、どうする?  タクミ・・・・・・
 私の手から 逃げた罰だよ・・・」




ハルがキーを叩く・・
と、匠の前にある小さなモニターに音も無く画像が映し出された


画面には 一緒に匠の救出に加わった他の4人が映っていたが
そこはまるで留置場の様な狭い場所だった

しかも4人はすでに 抵抗することさえ疲れた様子で
憮然とした表情で床に座り込んでいる・・




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刻印 -159

正面の大きな扉が開かれると
そこはまるで法廷の様な雰囲気の場所だった



大きな扇状の部屋
壁も机も 全てがダークブラウンで統一されている

扇の部屋の正面・・
法廷で言う 裁判長が座る正面のイスが一番高く広い位置にあり
3段ほど下がった所から多くの傍聴席がある

今、自分達4人が出てきた扉が 扇の要・・・根元部分にあたり一番低く狭い
緩やかな高低差が付けられ、上から見下ろさせる様な構造になっていた 




こちら側を向いた傍聴席はもうすでに多くの人間で埋まっている
20・・・ 30人以上は居るかもしれない

やはり一般人が多いのか、
始まったばかりの審議会という雰囲気に、部屋はまだ落ち着いておらず
4人が入った事で一層 ザワつきが増した



背後でまた、カタカタという小さな電子音がして その扉もロックされる
閉じ込められたか・・・
その小さな音に気が付いたのは
この部屋に居る多くの人の中で たった3人だけだった





正面の一番高い場所に座る男は照明の関係なのか、意図してなのか
その顔をハッキリと見る事は出来なくなっている

気配、雰囲気からいくと、それはオヤジも浅葱も 面識の無い人物らしかった





「時間だ、 始めよう」
その中央の男が口を開いた
その声にも まったく聞き覚えは無い



「私が今回の審議委員長を務める
 こちらは、ご意見を伺おうと特別にお願いした有識者の方々・・
 
 決まりによりこちらの・・ 
 私を含めここに居る全ての人物の名前は明かすことは出来ないが
 そちら4人は名前を・・」



「自分は顔も名前も明かさねぇーのかよ・・・・」

オヤジは気に食わなそうにブツブツ言っていたが 一歩前に出ると
「俺は一応このチームをまとめてる 工藤だ、 階級は少将
 こちら側から 隣が 深月少佐、一ノ瀬中佐、浅葱大佐だ」
それだけを ぶっきらぼうに答えた


目の前の台にマイクとモニターがあったが
声のデカいオヤジに マイクは必要なさそうだった

その迫力のある声で ザワついていた一般人達が一斉に静まり返る




オヤジが答えている間 浅葱は全員の顔を一人ずつ確認していた
中央の男の顔は見えないが、少し下にいる一般人の顔は確認できる

イスは何列にも重なりあっていたが、・・あの男・・ハルの姿は無い



視界がなく それを確認できない匠の為に 浅葱は小声で
「ざっと35人・・・ あの男は居ない」  耳元でそう囁いた 
その声に 匠が安堵したように小さく頷く









ロックされ出入り不可能となったその審議会の全ての動きを
モニター越しに じっと見つめる男が居た

スイートルームの様なビルの上階・・
大きな机の前に座り、顔の前で両手を組み
目の前のモニターを食い入る様に見つめる冷たい目・・・


ハルだった・・・


モニターには1階の入り口から、一般用エレベーターや 様々な各部署の部屋
31階からのエレベーターホール、廊下、控え室・・・・・・
その画面は何分割もされ、建物のありとあらゆる場所をライブで映し出している


そして今、この画面の中央で一番大きく映し出されているのが
この審議会会場に立つ4人の姿だった



ハルは組んだ指を解くと、机のキーボードを数回叩く
画面が切り替わり、4人を正面から映す映像に変わる


そこには漆黒の軍服を凛と着こなした匠の姿があった

「タクミ・・・・・久しぶりだな・・・・・・・もう歩けるか・・・・」

呟きながら ハルがキーボードを操作すると
匠の顔がモニター一杯に映し出され、かと思えば全身が映り・・
思うがままにその視点を変え ズームを変えていく


「やはりタクミはいい・・・・  早くこの手で・・・・・・・」




画面の中で オヤジが台の前に立ち、名前を言い始めると 
その後ろで 浅葱が匠に親しげに顔を寄せ、何かを耳打ちしている・・・
そしてそれに安心した様に頷く匠・・・




ハルが眉をひそめ、キーを一つ押した
「浅葱に話をさせるな、タクミから離せ・・・近づけるな」  




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刻印 -158

そのまま 4人は待たされ続けた

入って来た扉の前に ずっとあの秘書の男が立っている

たぶん・・・ いや、100%・・ ここでの会話もどこかへ筒抜けだ
それがわかっていて誰も言葉を発する者はいない




部屋の正面に大きな扉が見えていた
あの扉の向こうが審議会会場・・・・


扉の両側には ガラスの大きな窓
位置的にいえば、ガラスの向こうも会場なのだが
今、ガラスの向こうは何も見えていない


マジックミラー・・・か・・・・?
ならば、操作は・・?
部屋の明かりさえ反射させない 真っ暗で何も映さない窓を見ながら
浅葱は男に悟られないように 目だけで部屋を確認していく


が、この部屋のどこにも スイッチらしき類のものは見当たらない
それどころか、正面にある大きな扉も
今 自分達が入ってきた入り口にも 取っ手さえない

全てがあのエレベーターと同じく
”住人” による遠隔操作か、声・・ という事か・・・



ゆっくりと観察を続ける浅葱と 正面に座るオヤジの目が合った
オヤジも 浅葱が確認しきれない背後を見ていたのだろう・・
同じ事を考えているらしく、二人は無言のまま小さく首を振った




浅葱の横に座る匠は 背中の痛みと熱さ、左腕の鈍痛と戦っていた
その目は わずかな影程度でしか認識できない扉に向けられている

あの向こうに・・ もしかしたらあの男が・・・
あの扉が開いたら・・・・
すでにこちらに武器はない・・・
無意識に押さえた左腕に力が入る



「すみません・・・少し洗面所へ・・・・」  匠が立ち上がると
1拍 間をおいて  「俺もだ」  浅葱も続いた

「・・・こちらです」  秘書が言うと同時に 何もしない出入り口の扉がスッと開く






「おい、中まで一緒に入る気か?」
トイレの前まで来ると 先に匠を中へ行かせた浅葱が
挑発するように秘書に言った

「いいえ、私はここで」
そう言うと男は 形ばかりの一礼をし
入り口の壁にピタリと背を向けて立った




浅葱が洗面所へ入ると 鏡の前・・・ 洗面台に両手をつき 匠が立っていた


「大丈夫か・・・匠・・・・」
浅葱が匠の肩に後ろから手をのせる

「・・・はい・・・・・」
匠は目を閉じ、何度か自分を落ち着かせようと深呼吸をするが
まだ胸がキリキリと痛み、思わず軍服の胸元を掴んでいた・・





「匠・・・深月と何があった・・?」
その声に匠がハッとした様に顔を上げる
自分の後ろに立つ浅葱が 鏡に映っていた

「・・・・いいえ・・・何も・・」
「そうか・・・」


浅葱は匠の肩を掴むと 自分の方へ振り向かせる
匠の目の前に浅葱の顔があった・・


「・・・浅葱・・・さん・・・・・」
悲しそうな瞳で自分を見る匠を 浅葱はそのまま抱き締めていた
匠の腕にも力が入る・・・


昨夜の深月の件から また気持ちが不安定なのは確かだった

いきなり襲われ、組み伏される恐怖
服を剥がれ、陵辱される悔しさ
そして、その力にまだ抵抗出来ない自分の体・・・

記憶の奥底に捻じ伏せたはずのその恐怖が
匠の中に わずかだが蘇っていた・・




浅葱に抱き締められ 深い呼吸を繰り返すと
匠は自分から浅葱の唇へ顔を寄せる
浅葱は 匠をしっかりと抱いたまま それに応える様に唇で匠に触れた

「・・・・・・・」
優しい唇が自分を包む



暫く唇を合わせた後、浅葱は匠の前髪にそっと触れ 額と額をつけた・・
その頬を両手で包むと

「大丈夫だ、匠
 お前の体の痛みは、全て俺が付けた・・・・ 忘れるな・・・・」 
浅葱の真っ直ぐな目が 自分を見つめていた

「・・はい」




洗面所の外で秘書は微動だにせず立っていた
「ご苦労な事だな」  浅葱が皮肉っぽく言うと
男は鋭い視線で浅葱を睨むが その表情は全く変わらない

「お前も相当なタヌキだな・・・」 浅葱がフンッと鼻で笑った





控え室に戻ると その音で深月とオヤジが顔を上げた
浅葱と深月の目が合うと、深月は逃げる様に視線を逸らす・・


こんな時に、自ら唇を求めてきた匠・・
昨夜、自分が匠の部屋を出た後に 深月との間に何かがあったのは間違いない・・

視線を逸らした深月を 浅葱はずっと見ていた




「時間です」 秘書の声と同時に奥の扉が開く




刻印 -159へ続く
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刻印 -157

オヤジは 大きな花瓶に溢れる程の花が活けられた大理石の受け付けへ行き
そこの若い女性と話をしていた


戻ってくると
「とりあえず30階まであがって、奥のエレベーター前で待て、、だとよ」
そう言って30階まで上れる一般エレベーターに視線を向けた


匠は子供達に手を振ってバイバイをすると
オヤジ達の後に付いて歩き始める



30階で最初のエレベーターを降りると
さすがにそこは 1階のような騒がしさは無くなっていた



ここから上には 国の様々な機関が入っている
そのためか 30階は民間人よりも
色々な種類の制服を着た 職員や関係者の比率の方が多い様に見えた


本来なら、漆黒の軍服の4人は目立つのだろうが
周りには 陸・海・空・・・中には海外のさまざまな軍服姿も闊歩していて
4人もさほど違和感はない


ただ、その存在を知っている一部の者にだけは
「おい、あれは・・」  と羨望の眼差しで噂される場面はあった






廊下を進んで奥のエレベーターホールへ行く

4人がそこへ着くのとほぼ同時に
ボタンも何も無いエレベーターの扉が音も無く開いた


どうやら 先程の受付から連絡が入った  ” 31階以上の住人 ” が
自分の端末から操作しているらしい




「行動を全部 握られてるみてぇで、あまり気分のいいモンじゃねーなぁ」
オヤジが口を歪ませて呟く

「ああ・・ どうせ会話も全て拾われているだろう・・・・」



浅葱が周囲を見回すが 一見して、監視カメラの類などが何も見えないだけに
逆に 不愉快だった

どこで見てやがる・・・・・




4人が箱に乗り込むと 勝手に扉は閉まり、上昇を始める




エレベーターはすぐに32階で止まり 扉が開くと
正面に真っ直ぐ長い廊下がある


そのまま進むと 一人のスーツ姿の男が立っている
軍服姿で無いところを見ると、秘書か事務方の様だったが
その ただならない気配に 深月を除く3人が眉をひそめた




「こちらで暫く待機して下さい」
その身から放つ危険な気配とは反対に
その男は丁寧過ぎる程の身の振りで 頭を下げた




控え室らしき・・ テーブルと机だけの小部屋に通される


「ここで全ての武器等の銃火器・電子機器は預かりとさせて頂きます
 会場内には、何一つとして持ち込みは出来ません」
男は 大きな保管用の箱をテーブルに置いた


「タブレットも?」 尋ねる深月に
「はい」 とだけ答えが返る

「携帯は? 携帯まで取られると何一つ用事が出来ねぇんだがなぁーーー??」
ダメだと判りながらも オヤジは相手の反応を伺う様に
わざと大げさに聞いた


「携帯も全て出して頂きます。 急な連絡でしたら あちらを・・・」
そう言って 部屋の壁に掛けられたひどく旧式な固定電話を手で示す

「チッ・・・ また建物に似合わねぇ古風なモンを・・」  オヤジが舌打ちをした




その時、秘書の男が 匠の内ポケットから 小さな箱がのぞくのを見つける
「そちらは? 何のケースでしょうか?」

言葉は丁寧だが、やはりトゲの様な含みと 鋭さがある



「それはコイツの薬だ、医者の立場で言う
 それだけは 取り上げんでやってくれ」
オヤジは予備ケースを匠から受け取ると、その蓋を開け
中の薬をチラリと男に見せた



「・・・・・まぁ いいでしょう」
「助かるよ」
オヤジがケースを匠に返すと、匠はまた 内ポケットへとそれを仕舞う


・・・?   赤・・・?
一瞬だけ見えたそれを 浅葱は見逃さなかった・・





箱の中に 全員が全ての物を並べると
男はそのままそれを 後ろの保管庫に置き、バタンと扉を閉めた


扉の中でカチカチと何度も電子音がして 
この建物と同様の 最新システムの中に自分達の武器が取り込まれる




「これで丸腰か・・・・」 オヤジが呟いた




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刻印 -156

広大な駐車場に着くと 4人は車を降りる


ドアを開けると、残暑と言うにふさわしい暑さが襲ってきた
その気温が 一気に匠の体温を上げる


照りつける太陽の明るさも、頭の奥に突き刺さるような痛みを引き起こした
「ん・・っ・・!」
匠はその眩しさに 思わず目を閉じる


「目、痛てぇか? 傷が付いちまってるからな・・・・・・」
オヤジが 恨めしそうに太陽を見上げながら言う


立ち止まったまま動けない匠の肩を 浅葱が支えた
匠の上着も浅葱が持ち その手をゆっくりと引く

「中に入れば少しは楽なはずだ・・・ 行こう」
「・・はい」




4人は少し緊張した面持ちで 審議会の行われるビルへと足を踏み入れた


が・・ 1階のロビーへ入ると その緊張は一気に掻き消される


そこは官庁と言うよりも 普通の商業施設の様だった

仕事や所用で役所へ来ている者もいるのだろうが
食事の為、買い物の為といった目的の親子連れや 若い恋人同士の姿もあり
かなりの賑わいを見せている

平和・・・そのものだった


3人はいささか拍子抜けし、その様子を見渡す・・・
匠も その声や音に穏やかな日常を感じ取っていた



「とりあえず 匠、座ろうか」  オヤジが壁際のイスを指差す

涼しい屋内へ入り 匠が少し落ち着くと
オヤジは  「そろそろ着なきゃならんか・・」  と軍服の上着に袖を通し始めた


匠が上着を着るのには、いつもの様に 浅葱が後ろから手伝った
ネクタイもキチンと締めると、その重さと暑さは想像を遥かに超えていた

生地が分厚く、硬く重い軍服は まるで強固な鎧を着ているように
背中の傷に圧し掛かる

匠はその重さに目を閉じて呼吸を整える



「王子様・・・だそうだ」  いきなり浅葱の声が耳元でした
「・・え?」 
「向こうに 幼稚園児が大勢いる
 お前を見て騒いでいる・・」  そう言って微笑む


漆黒の制服に銀の鎖の飾りが付いた軍服は
子供には王子様に見えるのかもしれない


騒いでいた園児の一人が 匠に走り寄ってくると
「おーじさまー」 いきなりその脚に抱き付いた

「え・・」 脚元までくれば匠の視界にもはいる
可愛い女の子が足元にくっついていた


それを見た他の数人の子供達も走り寄ってきて
あっという間に 匠の足元は子供達で溢れた


この服の苦しさに 困惑していた匠の顔に笑顔が戻る
順番に子供達の頭を撫でていくと 次々と可愛い歓声があがった


以前マンションから逃げ出した時、
自分の指を握って歩いてくれた女の子の事を思い出していた

あの時は 汚れた自分の手で 触れてはいけないと思った
が、今は・・・・
少なくともあの時よりは、笑顔で子供達を見る事ができる・・・・・




そんな匠の様子を少し離れた場所から 深月はじっと見ていた
背の高い浅葱さんも 元々軍人っぽいおやっさんも 軍服姿は似合っている
でも、匠さんは特別に・・・・



「匠は・・・」
オヤジに 急にそう話し掛けられ、深月はビクンと反応する


「匠は 何を着てもサマになるな」

「えっ・・・あ・・・はい・・ 本当に・・・」

「男の俺が見ても、匠はキレイだと思うよ・・
 特にあんな格好をしているとな

 ・・・・・・・・・      ・・・・なんか・・・あったか?」


オヤジが深月にボソリと尋ねた


「・・・・・いえ・・・」
深月はそれだけしか言う事が出来なかった


「そうか・・・
 さっき、車から降りた時・・・・
 いつもなら真っ先に匠を気にするお前が 手も出さなかったからな・・

 こんな・・・  何が起こるかわからねぇ日だ
 まともな神経を保てと言うのも酷な話だがな・・・・

 流・・・今日は余計な事を考えてる暇はねぇぞ
 今は、、 今日の、これからの事だけ考えろ
 匠を無事にあの部屋へ連れて帰る事だけをな・・」




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刻印 -155

窓の下 走る車も歩く人間も どれもオモチャの様に小さく見える
朝日が入る大きな窓の前で 一人の男がじっとその風景を見下ろしていた


やっと・・・
やっと この日が来た・・
タクミ・・・




木目調の落ち着いた壁に 品のいい最低限の家具が揃ったリビング
続き間になっている隣のベッドルームには 大きなダブルベッド

高級ホテルのスイートルームを思わせるその部屋の扉が 音も無く開いた


漆黒の軍服を着た男がズカズカと入って来ると
その後ろにピッタリと付いて入ったスーツの男が 静かに扉を閉める




「ノックも無しとは不躾な・・・」
窓の前に立つ男が振り返りもせずに言った

「ここは私の部屋だ、いちいち断る必要は無い」

「まぁ・・確かに」
クスリと嘲笑する様に 窓際の男が振り返る




「今日でカタを付けるんだろうな? ハル」
軍服の男が 冷たい目で言う


「委員長役はお前がするのか?」
聞かれた事に答えもせず ハルは質問に質問で返した




「ああ、そのつもりだ」

「そうか・・・・ それは楽しそうだな
 楽しませてもらうよ、タクミをしっかり恥しめてやってくれ・・・・
 私の手から逃げ出したお仕置きだ・・・」


「また ”タクミ” か・・・・
 タクミ、タクミ、タクミ・・・・・
 あんな若造一人が何だと言うんだ
 放っておけ・・・・
 恨みを晴らすんだろ?   最初の目的を忘れるな」




その男の言葉に ハルの表情が一瞬険しくなり、その目で軍服の男を睨み返した

「放って・・・ おけ・・・・?
 調子に乗るな
 お前に命令される覚えはない

 私は私のしたい事をする
 お前は自分の手を汚さずに居たいのだろう

 だったら私の言う通りにしていろ
 そうすれば お前の望みも果たしてやる」



「・・・・・・・!!!

 ・・・な・・・・・何をいったい・・
 何を言ってるのか 意味が・・・・わからん・・・・・・・・・」


急に口ごもりながら、軍服の男の・・・ハルから逸らした視線は
キョロキョロと忙しなく宙を動く
  
と、その彷徨う視線とは 反対に
後ろに控えるスーツ姿の男の眼光は鋭くなる・・・
その体から放つものが 一気に殺気へと変わる






その挙動を見ながら ハルはクスクスと笑い始めた

「安心しろ・・
 私はどちらの望みも叶える
 浅葱を殺り、タクミを取り戻す・・

 ちゃんと私の欲求を満たしてくれさえすれば
 お前が何を考えていようが、私には関係の無い事だ・・」



ハルの言葉を聞き、男の肩から ホッと力が抜けたのか
軍服に付けられた多くの勲章が チャラ・・と音をたてて揺れた


「な・・・・ならば・・・いい
 お前の欲求とやらも・・・・まぁ・・・いいだろう・・・
 言う通りにしてやる
 あの若造も 好きにすればいい・・・・・・」





いつ ハルに飛びかかってもおかしくない程の殺気を放っていたスーツの男を
軍服の男の右手が制止する

スーツの男は そのまま一歩下がり 軽く一礼をした

 

「感謝しますよ・・・・
 本来なら私も審議会へ出て行って 一刻も早くタクミに逢いたいのだけど
 公衆の面前では それも出来ませんからね・・
 ”貴方” なら、 タクミを上手にいたぶって
 私を満足させてくれるはずだ
 楽しみにしていますよ、委員長・・・ ”様”・・」


ハルは クスクスと笑い続けていた・・




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刻印 -154

次の日の朝、4人はオヤジの車に乗り込んでいた


運転席に深月
助手席にはオヤジが乗り込み、本部までの道案内をすると言う
後部座席に 匠と浅葱が並んで座っていた


全員があの漆黒の制服姿であったが
まだ上着まで着ている者は誰も居ない
オヤジと浅葱は ネクタイさえまともに結んでいなかった



「匠・・・服装、今は楽にしてろ・・・こんなモノ、あまりキッチリ着ると傷に障る」
浅葱が そう声を掛ける


オヤジも振り返った
「そうだぞー こんな重てぇモン・・  余計に熱が上がらぁな」


そう言って生地の厚く硬い軍服の上着を パンパンと手で叩いて見せた


「・・・大丈夫・・ ネクタイも少し緩めてますから・・」
そう言って匠は笑ってみせた


「そういやぁ・・・匠、薬は持っただろうな?」   オヤジが真顔になる
「はい・・・・ 予備もちゃんと」
「・・・・ん、 ならいい・・」



オヤジは前を向くと 深月に道案内を始めた




匠は膝に置いた上着の 内ポケットの中にある薬のケースを
そっと手で押さえた

4本の予備カートリッジが収められたそのケースの中に
1本だけ 赤いタグが付いている物がある


赤いタグ・・

それは今朝、部屋を出る前に 
匠がオヤジに頼み込んで出してもらった薬だった


あの地下室へ 浅葱が持って来たケースに入っていた物と同じ赤いタグ・・・
・・自ら命を終らせる事が出来る薬・・・・


「いいな、匠・・わかってるな・・・・」
それを渡す時 オヤジは、 匠の左手首に残る疵痕を両手で握り
一言だけそう言った


匠は膝の上で そのケースを握り締める






車が走り出すと オヤジはこれから向う本部の説明を始めた



「本部がある建物は80階建て・・
 5年ほど前に新しく出来た最新鋭とやらの建物に入ってる
 
 新しくなってからは俺も行った事は無ぇが・・
 1階から30階までは、 普通の公官庁の施設

 特に1階から5階は 土産物屋だレストランだと、まるで普通の観光名所だ
 ああ・・ ホールみてぇなもんもあって コンサートもあったりするそうだ


 6階から30階に 関東広域の役所関係が全部入ってる
 中には職員用の保育園や 簡単な病院もあって
 ここまでなら民間、一般人も普通に出入り出来る」




オヤジはここまで喋って 一度話を止める

いつもなら 色々と話しに入ってくる深月が
今日は 朝からほとんど話そうとしないからだった


「おい、流? どした? 気分でも悪いのか? 緊張してるのか?」
オヤジが運転している深月を覗き込んだ

「あ・・いいえ・・・・・」
それだけ言って深月はまた黙り込む・・


チラリと後ろを気にした深月と オヤジの、深月を呼ぶ声で顔を上げた匠とが
ルームミラー越しで 目を合わせた・・

と、慌てて深月は目を逸らし、匠は困惑した表情になる


そんな二人を浅葱が見ていた
 
 


「んっ! ん”っっーーーー!!」

その妙な空気を読んでか、オヤジは咳払いをすると
「おーい、説明の続きだーー」  そう言ってまた話し始める



「でだ・・・・この建物の 31階からが まぁ・・国家レベルの機関てとこだ
 一般人は入れねぇし 1階からのエレベーターも30階止まりだ

 31階以上へ行くエレベーターや 扉は全て登録された声紋か
 もしくは建物内部からの指示でのみ動く
 
 うちの組織はそこの70階から78階までだ
 もちろん 詳しい見取り図なんてモンは テロに備えて公表されてない
 幹部の執務室に個室、寝泊りできる宿泊施設・・まぁそんなもんだな・・


 今日の審議会は32階のホールだ」



そこまで一気に話すが 相変わらず深月の反応は薄い


「やれやれ・・・・」 オヤジが肩をすくめて見せた




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刻印 -153

浅葱が部屋を出て行った後、匠は一人、腕を押さえた


鈍い痛みと言い様のない重さ・・
それは 浅葱が部屋に居る時からずっと続いていたが
その事を浅葱に告げる気にはならなかった
この程度ならまだ我慢できる・・ そう自分に言い聞かせていた

激痛ではない
ただの、重さと鈍い痛み・・

これ以上酷くなり・・ 激痛なら あのおやっさんの注射を試せばいい・・
そう思っていた

それでも・・・ 嫌な、、感覚・・・
思わず左腕を押さえ込む様にキツく握った






その時、部屋の扉が静かに開く気配がした

一瞬、浅葱が戻って来てくれたのかと思う
が、その気配は浅葱ではなかった・・


・・・・流さん・・?


いつもなら 声を掛けてから入ってくる深月だった

だが、今はただ静かに 扉だけが開いた
どんなに目を凝らしても 到底、扉までの距離は見えない
だが気配は確かに深月・・



「・・・・流・・・・さん? どうしたんですか・・・・こんな、夜中・・・・・・」
そう言いかけ、匠が体を起こそうとした時だった・・

その気配は部屋を進み、起き上がりかけていた匠の体を押し倒す・・


・・・・・・・んっっ!!!!・・・ 


一瞬 何が起きたのか わからなかった・・
深月は匠の両足の上に跨ると 顔の両脇に ドン! と腕を付き覆い被さる

いきなり体の上に乗られ 匠はその衝撃に体を硬直させる


「・・・・!!!!    ・な・・・・何・・!? ・・・流・・さ・・  いったい・・・」


すぐ目の前に 深月の顔があった

暗い室内、ハッキリしない視力・・
だがその深月の・・ 自分を見る目だけは、匠にも見えていた


そこに居るのは いつもの明るい深月ではなく
激しい感情を表に出した 一人の男だった


声を上げれば すぐに誰かが来てくれる・・
だが、匠は深月の真意が理解出来ず、、動けずにいた


「流・・・・さんっ・・・いったい・・・どうしたんですかっ・・・」
匠は深月を退かせようと、できるだけ声を小さくして名前を呼ぶ・・
押さえ付けられた背中の傷が トクトクと脈打ち始める




だが深月は匠の声に返事もせず
ただじっと匠を見つめていたかと思うと、その顔を近付ける・・


「・・!!・・・   や・・・いやだっ・・・・・  ・・流さんっっ・・・」
匠は顔を背け、
相手の胸を突っ張る様に、両手で のしかかる深月を押し返そうとした

深月は動きを止めると、自分の胸にあてられた匠の手を強く握り締め
再び顔を寄せる 


「いやっ・・・・いやだっっ ・・・流さん ・・・・やめっ・・・・」
匠が握られた手を振り解こうとすると その手は ベッドに押さえつけられる


「・・痛っ・・  ・・・流さん・・・どう・・・して・・・・・」
「どうして・・・・・・・・?」 深月がポツリと呟いた



その深月の唇が 強引に匠に触れた

「・・・んっ!!!」


口を塞がれ、声にならない
その攻撃的な感覚は あの男と似ていた・・


 ”・・・・いやだ・・・・やめて・・・・・・・”

体を捩り抵抗した時だった
深月に強く押さえ込まれた腕に、またズキリと鈍い痛みが襲う

「・・んっっ・・くっ・・!!!」
必死に首を振ってその唇を振り解く



唇を離されると、深月は 匠の胸まであった布団を いきなり剥ぎ取った

匠の裸の上半身が露になる
そのまま その体に唇で触れようと、体を下へとさげていく・・


「やめてくださいっ・・・・・・・・流さんっ・・・おねがいっ・・・」
抵抗する体に再び痛みが襲う・・

「くっ・・・・っっんっぁ・・!!」

深月に乗られている脚は全く動かせなかったが 
その痛みで反射的に体を仰け反らせた



匠の裸の胸が 目の前で仰け反る・・・・
痛みに耐え呻く匠の声・・・・



ハァ・・ハァ・・

ハァ・・ハァ・・・


自分の下で 組み伏せた匠が苦しそうに息をしながら こちらを見ていた・・・




「・・・ぁ・・・・・・・・・・」


深月はハッと我に返ると 慌てて匠の体を解放し 「 す・・・・すみま・・・・」
そう言って、走って部屋を出て行った



ハァ・・  ハァ・・・

ハァ・・  ハァ・・・


匠は茫然と ただ荒い呼吸を繰り返すだけだった
扉が閉まると一気に体から力が抜け落ちる
腕は痛んだまま、心臓はドキドキと震えていた



・・・流・・・さん・・・・・・・・






深月は部屋に走りかえった後
ひどい自己嫌悪と 自分への怒りに襲われていた

どうして・・・  どうしてあんな事を・・・・・・
自分でも理解できなかった・・

もう・・・匠さんに嫌われたに違いない・・
なんて事を・・・・・・・・・・





そのまま 一睡も出来ずに夜が明けた・・




刻印 -154へ続く
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刻印 -152

「匠・・・・愛してる」
耳元で浅葱が囁く・・


そのまま 悪戯をする様に 感じやすい匠の耳に唇で触れ
軽く歯を立て 柔らかな耳たぶを噛む

「・・・ぁ・・っんっ・・・・」

まだ甘い声を出し、体を震わせる匠を フッと微笑むように見ながら
浅葱は 匠を仰向けにさせ、その額に唇をつけた




「・・んっ・・・   今日の・・・浅葱さ・・・・意地・・悪い・・・・」
匠が浅葱の顔を見つめながら呟く

「ああ・・そうだな」
そう言われても浅葱は優しい目で匠を見ていた




「でも・・・・・・  ・・優しい・・・」  
匠が右腕を浅葱の首に回し、引き寄せる様にして・・ その唇に軽く触れる




浅葱は 自分の体を下へ移動させ、 匠の両足を開かせると
今 吐出したばかりの匠のモノを舐め始めた・・


「ぁ・・・あ・・・さぎさ・・・・ だめ・・・・そんなことまで・・・しなくて・・」
「いい・・・綺麗にしてやる・・・・」

「そんな・・・・・っん! ・・・・・・・・   ・・また・・・・・・」
「また欲しくなれば 言え・・・・・何度でも・・・」




押さえられた両脚を 匠は閉じる事が出来なかった

匠はただ、自分の体に顔を埋める浅葱の両肩に手を置き
その感覚で身を捩る・・


浅葱はそのまま優しく口と指を使い 匠の全身を愛し続けた
お互いが昂ぶり 求め合えば また何度も体を重ねた






二人には同じ思いがあった


明日は どうなるかわからない
審議会とはいえ、用意周到に張り巡らされたはずの罠
最後に・・ なるかもしれない 夜・・・・




だからこそ、今日の浅葱さんは とても優しい・・・







匠は浅葱に その体の全てを任せながら
シーツを握り締める・・・

じっと見えない天井を見つめると
その瞳から 涙が零れた・・・・




「浅葱・・・さん・・・約束・・・ 必ず、生きてまたここに・・・・・」

「ああ・・・お前もだ・・匠・・ 約束しろ・・」




「浅葱さん・・・愛しています・・・」



そのまま 二人で寄り添って眠りに堕ちた
浅葱の腕は ずっと匠を守るように抱き締め
匠の手は 浅葱を離すまいと指を絡めた






深夜、浅葱が目を覚ます・・


「匠・・ 部屋に戻るぞ・・ お前はそのまま寝てろ・・」 

2度ほど匠の頭を撫でると、その唇に触れ
浅葱がベッドから出て行く

匠は寂しそうにその指を離し、部屋を出る浅葱の後ろ姿を見送った







パタンと静かに扉の閉まる音・・


隣・・・・
匠さん・・・?
こんな時間に・・  匠さんも眠れないのだろうか・・・・


深月はそっと自室の扉を開ける
そこには 匠の部屋から出た浅葱が 自分の部屋へと戻って行く後ろ姿が見えた


・・・・・・浅葱さん・・


 



深月は 廊下から浅葱の姿が無くなるのを待って部屋を出た
そして、匠の部屋の扉の前で立ち止まった・・




刻印 -153へ続く
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刻印 -151

「匠・・・・あまり声を出すなよ・・・」
浅葱はそう言いながらも、匠の腰を押さえたまま
動きを緩めようとはしない・・

ゆっくりと、着実に、匠の体内へと 浅葱が入っていく


「・・・っぁんっ!!  ・・ぁぁっっ・・!」
押し込まれてくるその熱いモノの感覚に 思わず声が漏れた


浅葱の脚が匠の体と密着すると
それはゆっくりと動き、匠の体を突き上げ始める・・



振動で匠の体が前後に揺れる

「んっぁあぁあ・・っっっ!!!」
必死に手を噛んでも、その快感に抗うことが出来ず
また声を上げそうになった時だった


「声・・・大き過ぎだ・・」

後ろから被さるように回された浅葱の手が 匠の口を塞ぐ
顎を持ち上げられ ・・その中指が、匠の口に差し込まれた・・・


「んっ・・・・・・んんんっっ・・」
匠は口を押さえられ、思わず天を仰ぐ



指し込まれた指のせいで
口を閉じる事が出来ず、声も満足に出せない



「んっーー・・んっ・・・・・んっ!!!」


手で口を塞がれ、腰を上げたそのままの格好で
何度も奥まで突き上げられた
 
その感覚に・・その激しい程の浅葱の要求に
匠の体も 応え始める





「・・・んっ・・・!!!  んんんんんっー!!!!」


 ・・・・もう・・・・無理・・・・・いく・・・・・



首を大きく振り、もう無理だと訴える・・

「イケばいい・・・匠・・・・何度でも・・・・」



その浅葱の声を聞き 匠の理性が外れた・・・
自らも快感を求め 再び体を動かし始める



「ぁっ・・・ん・・・んっっ!! ・・・・・・・・も・・・だめ・・」
やっとの思いで それだけ言うと・・・匠の体がビクンと震えた


「んんっ・・・んっっぁあ!!!」



浅葱の指を噛みながら匠はその高みで身を任せ・・解放する



その直後だった
突き立てられた浅葱のモノも匠の中で動きを止めた
トクトクと動く浅葱を感じる・・
自分の中に浅葱が吐出したものが注がれる感覚・・



「・・・ぁっ。。・・・・・・ん・・・」


匠が安心した様に大きく息をつくと
やっとその口から浅葱の指が引きぬかれた




ハァ・・ハァ・・

うつ伏せで倒れこみ
まだ肩で息をする匠の背中に浅葱の唇が触れる



以前は匠の背中で激しく牙を剥き威嚇していた龍が
今はとても静かに 毅然とその姿を見せていた

匠は自分の背中に 浅葱の唇が這う事を
その龍と同じ様に・・・静かに受け止め、目を閉じる・・




繋がったまま浅葱は背中から順に唇を上げていく
うなじにかかる髪をそっと手で上げ
首から顎へ・・・そして振り向かせた匠の唇へ・・・

その想いに満ちた唇を受けながら
二人は重なり合ったまま じっとお互いを感じ続けていた




刻印 -152へ続く
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刻印 -150

匠のその声で 浅葱が顔を上げる
「・・・もう・・  無理なのか・・?」  耳元で囁かれた

 

その動いた浅葱の唇が 耳に触れ・・・
「・・ぁっ・・ ・・んっ・・・・・」
小さな甘い吐息と共に 匠が肩をすくめ、無意識に体を捩る



「耳も敏感だな・・・・・」
そう言われ、舌先で耳元に触れられると 匠の体がピクンと震えた


「ぁ・・・ぁあっ・・・んっ・・・・や・・・・・・あさ・・・・・」
抱かれた顔をわずかに振って抵抗するが
浅葱は止めようとはせず・・ 
何度も その柔らかい唇と舌で 匠を責めたてる・・




浅葱の息遣いまでもが すぐ側で聞え
匠の体は みるみる感度を増し・・
どこに触れても敏感に体を仰け反らせ、小さな甘い声をあげた

浅葱はそんな匠の反応を 愛おしそうに見つめていた・・




「膝を立てろ・・・・匠・・」
再び耳元で小さく言われ 膝下に手を入れられる
匠はその低く優しい声に 目を閉じ、素直に従った



「そうだ・・・・・・じっとしてるんだぞ・・・・・」
匠のこぼした粘液をまとった浅葱の指が、匠の後ろをまさぐると・・・
ゆっくりとその中央に分け入ってくる



「ぁああっ・・・っ!!」
思わず声を上げていた


「・・フッ・・・  こら、匠・・・静かにしろ・・・」  
呆れた様に浅葱は微笑み 自分の唇で 匠の口を塞ぐ




「んっっっーーー・・・・・!!」


浅葱の口の中へ 匠の声が消えていくと
指の動きが大きくなった・・・ 



「んっーーー!!  んんんんっっっ・・・・!!!!」

匠がつま先を立て、体を仰け反らせる
その抵抗の反応とは逆に 湿った音がし始めていた

何度も何度も・・指を出し入れされる度、その音は大きくなっていく


匠は指から逃れようと体を捩る・・・
だが皮肉にもそうする事で 自らの快感も増し
浅葱の指に翻弄されながら、匠はその感覚に飲み込まれ
更にその先を求めていた



匠の手が 浅葱の胸板を軽く叩く・・

「ん?・・・何だ?」

「・・・・・・浅葱・・・・さん・・・が・・・・・ほしい・・・」





浅葱は塞いでいた匠の唇をゆっくりと解放し、その指の動きも止まる
やっと息苦しさから解放され、匠は大きく息を吸う


ハァ・・・・ハァ・・・・

ハァ・・・・ハァ・・・・



両手で顔を覆うように隠し、肩で息をし
呼吸を整え終えようとしていた時だった

体を返され 四つん這いにさせられた



「・・・ぁ・・っん・・・」

「匠・・・腕が辛かったら・・・体を落としてもいいぞ・・」
そう言われて抵抗する間も無く腰を押さえられた



匠は言われたまま、左腕をかばう様に伸ばし、右肘で体を支えた



高く掲げられた匠の腰・・・
既に指で充分に濡らされた場所に・・・ 浅葱のモノが触れる

そのまま 腰を掴まれ、背中の傷を押さえられて
グッ・・ と押し付けられると 匠の体はゆっくりとその入り口を開く・・



「んんっ・・・!!! ぁああっっ!! ・・」


浅葱を迎え入れながら 思わず叫びそうになり
匠は自分の右手を噛む・・・
必死に声を押し殺していた・・・




刻印 -151へ続く
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刻印 -149

浅葱の背中に匠の体温が伝わる


暫くして 「 匠・・・」 浅葱の声が、背中を通して聞えた

「・・はい・・」

「そうやって、ずっと背中に居られると・・・   何も出来ない・・」
そう言われて匠は やっと詰めていた息を吐き・・ クスリと笑うと・・・


「・・はい・・」 そう素直に頷いた




匠は腕を緩めて浅葱の正面にまわると、もう一度 浅葱の体に腕を回し
恥ずかしそうに下を向いた


浅葱はそんな うつむいた匠を覗き込む様にして
自分の唇で・・ 匠の唇に触れる


最初は小さく軽く・・・・  少しずつ、何度も何度も匠の唇に触れ 
それはまるで 手を使わずに匠の顔を上げさせていくゲームの様で・・

「・・っ・・・ん・・・ん・・・・・んっ・・・・ん・・・・」
その度に匠は くすぐったそうに小さく声を出しながら、その唇を受けた



そして、匠の顔が上を向くと、浅葱は微笑んで匠の唇を塞いだ

「・・んっ・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・」

浅葱の両腕も 匠の腰に回され
匠は目を閉じ、浅葱に抱きついたまま その甘さに埋もれる
全身で 浅葱の優しさを感じていた





浅葱の右手が 匠のシャツにかかり、その指で器用にボタンを外すと
ベルトを緩め、ファスナーを開けていく・・



「・・っ・・んっ・・!」

体がピクンと震える

立ったままで ジーンズの中に入ってくる浅葱の手・・
まだ指先で わずかに触れられただけなのに 脚に力が入らなくなる・・


「ぁ・・・ぁさぎ・・・・・・・  んっ・・・ん・・・・」
話そうとする口を塞がれて、声は吐息になって漏れていく



浅葱の右手は 匠の反応を確かめる様に動いた後
しっかりと匠の頭と腰を支え、そのまま二人はゆっくりとベッドへ倒れ込んだ





「あ・・浅葱・・ ・・さん・・・・部屋に・・・・みんなが・・」
着ていた衣服を脱がされながら 匠が小さな声で呟いた


「・・ああ・・  だから、声を出すなよ・・」
浅葱は少し意地悪そうに微笑む


「そんな・・・・む・・・・り・・・・」
言い終わらないうちに またその唇は塞がれ
匠はそのしなやかな裸体を 浅葱の前に曝け出す




露出した匠の下半身に浅葱の手が這い始めると
匠は必死に声を押し殺し、苦悶の表情を浮かべる

「・・・・・んっ・・・・・・ぁぁっっ・・・」



匠に覆い被さり 浅葱は匠の苦しそうな・・・
それでいて頬を高潮させた顔を見つめながら、手を動かし続ける



匠は声を我慢しながらも体を捩らせ
それはやがて 確かな形となり、浅葱の手の掌を湿らせていった・・


「いい子だ・・  匠・・・」
耳元で囁かれて、匠は益々 体が熱くなる




浅葱の手は止まることを知らず、匠を高みへと引き上げていく・・


「ぁ・・ぁさぎさ・・・意地・・悪・・・・・・・・声・・・・でる・・・」

「もう少し我慢しろ・・・隣の深月に気付かれるぞ・・・」

「で・・も・・・ぁ・・・そんな・・・・ん・・・っ・・!! 」


浅葱の唇が 匠の胸の先を這い、軽く歯を立てられる
自分のモノを覆う浅葱の手は 波の様にうねる・・
我慢しようと思えば思う程 その快感は強くなっていく





「ぁぁぁっ・・・・も・・・・やめて・・・・・・」

こんな事が長く続けば 絶対に声を上げてしまう・・
ここで声を上げれば、流さんに・・・

「おね・・・・がい・・・もう・・・声・・・がまん・・  できない・・・・・・・・」




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プロフィール

凛

Author:凛
BL・MLを日々妄想してる腐女子

しかもかなりハード目が好きな壊れかけ

SM・拷問等の酷い描写が苦手な方は、ご遠慮ください

1作目 『刻印』
2作目 『華燭(かしょく)の城』 
完結しました。
ブログタイトル下のマップより全話読んで頂けます。
『刻印』の簡単な解説はこちら から


まだまだ初心者故、描写の至らない点
設定の矛盾は笑って見てください 

読みやすく・・と思っているので、長編小説ですが、各回短く、短文、1日1回UP予定です


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