0-story

18禁 BL小説です。主に拷問・凌辱等ハード系。 こういう小説に興味の無い方、嫌悪感がある方はご遠慮ください。サイトマップより一気読み出来ます
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刻印 -148

「・・・匠・・・ちょっと 外へ行かないか・・?」


浅葱は部屋から匠を連れ出すと
リビングのオヤジに声をかけ、その机から何かを受け取る


そのまま匠を連れて玄関を出た



マンションからは夜景が見えていたが
その風景は、匠にはまだ 闇でしかない
それでも 久しぶりの外の風は気持ちが良かった

目を閉じて夜風に当たっていると
浅葱は黙ったまま匠の手を握り、通路を歩き始めた


「浅葱さん・・・どこへ?」




1階の駐車場まで降りると、浅葱は一台の車の前まで匠の手を引く

「匠、見えるか?」


薄暗い駐車場に止まる黒い車体は 闇に溶け込み、ハッキリとはしない
しかしそれは紛れもなく
あの日 浅葱が路地裏の駐車場から引き上げてきた匠の車だった


「俺の・・?」
「ああ・・・お前の車だ」
「持って帰ってくれたんですね! ありがとうございます!!」
匠の声が弾む



浅葱が 握っていた匠の手の中に、オヤジから受け取ってきた車のキーを渡すと
匠は笑みを浮かべ ドアを開ける
フワリと自分の車の匂いがした




運転席に乗り込むと
背中の傷が痛まない様に、ゆっくりとシートに体を埋める


まだフロントガラス程度までしか見えはしないが
そこは間違いなく、懐かしい自分だけの居場所だった


エンジンをスタートさせると、重低音のアイドリングを始め
オーディオからは音楽が流れ始める

戻ってきた・・
やっと、この場所へ・・

匠は初めてそう体で実感していた


マンションの自室も、自分の部屋には間違いなかったが
就任当日に拉致された匠に、あの部屋での思い出はない


だが、ここは・・
本当に懐かしい 俺の場所・・




「まだ運転はダメだぞ・・・  乗ってもいいか?」
笑う様な優しい声がして、助手席のドアが開き、浅葱が乗り込んでくる


シートを少しだけ倒して目を閉じ
ゆっくりと 安心した表情で音楽を聴いている匠の横顔を
浅葱は隣で嬉しそうに見ていた



手を伸ばし、ミラーの陰に下げられた仮面ライダーのキーホルダーを手に取る


「・・・・まるで、ガキだな・・」

「・・・・?・・」




匠が目を開けると、浅葱の手に握られたキーホルダーが見えた

「あ・・浅葱さん! ・・・それ、見たんですか!?」 
慌てて、奪う様に浅葱の手から取り返す




「見たんじゃなくて、見えたんだ」

「もう・・  恥ずかしいなぁ・・・・・」
そう言って匠は照れくさそうに笑い ポケットに仕舞い込んだ







「正義のヒーローは 何があってもくじけない、諦めない・・」
今まで嬉しそうに話していた浅葱の声のトーンが真剣になっていた


「・・・・・そう・・・ですね・・・・・・

 あの男と向かい合う事に、全く恐怖が無いと言えば嘘になります・・
 でもそれは・・きっと・・・大丈夫・・
 
 いつか決着をつけなければいけないのなら・・
 俺は・・・  逃げない。 負けない」



「・・・匠・・・・・その事だが・・・・・
 もし、明日・・あの男と決着をつける時が来たら・・俺に任せてくれないか・・」

「・・・浅葱さんに?」

「ああ・・お前がその手でケリをつけたいのもわかる・・・・ だが・・・・」



匠は 浅葱とオヤジがもう何年も
あの男の組織をやりあってきたという話を思い出していた
ずっとずっと、追ってきた相手なのだ・・



「・・・わかりました・・・・浅葱さんにお任せします・・・」






匠はエンジンを切ると 「ありがとうございました」 とキーを浅葱に返す

「もう落ち着いたか?」

「・・はい」





二人は家に戻ると、浅葱は匠を部屋まで送り 出て行こうとする

・・・後ろから 匠の両腕が引きとめた
匠の腕が浅葱の体に回される


「暫く・・・このまま居させてください」

浅葱は 自分の体に回された匠の手に自分の手を重ね、目を閉じた




浅葱の背中は、わずかに自分の愛車の匂いがした





刻印 -149へ続く
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刻印 -147

オヤジのPCにメールの到着を知らせるランプが点灯したのは
翌日の午後だった
その内容は  ”明日 審議会を開く・・・・”  



「いきなり明日だと!?」
声を上げるオヤジに 銃の手入れをしていた三人が顔を上げる


「どうした? オヤジ・・」
浅葱が立ち上がり オヤジの側まで行くと
そこにはメール画面が映し出されている


「明日・・・・・」  その画面を見る浅葱も言葉を失う

「奴等、どれだけ焦ってやがんだ!
 そんなに匠を連れて行きてぇのか!!!
 こっちは 準備が出来次第と返事をしたってーのに・・・!!」

苛立つ様にオヤジが机を殴った



「もう一度、延期を要請する!」 そう言うオヤジに
「いえ・・・・もう そのまま受けてください」  匠の静かな声がした





「時間をかければ それだけ相手に準備期間を与えるだけです
 5日後でも、明日でも・・・構いません」


「だが・・・・」
言いかけるオヤジの肩に、浅葱は手を置くと そのまま首を振った・・

「・・クソッ・・・   わかった・・・・匠がいいなら、もう何も言わねぇ・・」
オヤジは渋々ながら、机を殴った拳を握り締める


「明日・・・そんな急に・・」
深月も 怒りとも、動揺ともわからない何かで
自分の心臓がドキドキと激しく脈打つのを感じていた









その夜、オヤジはいつも通り リビングのPC前で作業をしていた



深月は自分の部屋で ずっとソワソワと動き回っている
雑誌を見たかと思えば、音楽を聴き・・
急に何かに追われる様に筋トレを始めたりもした
だがそれも長くは続かない

壁に掛かっている漆黒の軍服・・・
審議会での着用が義務付けられているそれが視界に入る度に
ザワザワと気持ちが落ちつかなくなる

「今日は早く寝ろ」 部屋に戻る前におやっさんにそう言われたが
居ても立ってもいられず、眠る事など 到底出来そうになかった



浅葱はベッドに腰をかけ、じっと何かを考えていた
サイドテーブルの引き出しを開けると、そこに・・ ジンのタグがある

手を伸ばしかけ・・・
一瞬躊躇したが、そのまま タグを握り取る


「ジン・・・・・ 明日、あいつと・・・決着が着くかもしれない・・・
 ・・・・・・それで・・・・いいな・・・」 
そう呟き、立ち上がった





匠は一人、目の前の・・・机の上を見ていた
そこには タグと銃と・・オヤジに渡された注射器の入ったケースがあった

ケースに収納できるカートリッジは2回分
予備として数本を持って行くことになる・・


・・目を閉じ、銃を握った


銃の扱いなら、視界が無くても完璧に出来る
が、以前、浅葱に時間を試された時は 1時間で力尽きた・・

明日、そうなったら・・
緊迫した状況で自分はどれくらい耐えられるのだろう・・
まだ1mほどしか見えないこの視界は・・
外の明るさで、この目はどうなるのだろうか・・
この腕は・・・この体はどこまで・・・





その時、部屋の扉が小さくノックされる
「匠・・・・起きてるか? ・・俺だ・・・・・」


扉を開けると、廊下に浅葱が立っていた


「ちょっと、いいか・・?」
その声に匠が無言で頷く



部屋に入ると、浅葱は机の上に並べられた物に目を止めた・・・

「・・怖いか?」
「・・いいえ・・・・・」




「・・・心配なだけです
 自分の意思とは別に・・・・この体が動くかどうか・・・
 あの腕の痛みや・・・・発作を・・起こすんじゃないかと思うと・・
 自分がどこまでできるのか・・
 それが心配なだけです・・」


浅葱の、まだハッキリ見えない後ろ姿を見つめながら 匠は答えた




刻印 -148へ続く
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刻印 -146

「匠、もう平気か?」
オヤジは匠が座るのを待ち
「はい」  と返事をするのを見てから、単刀直入に切り出した


「まずは・・・ 審議会だ、 来週には行われると思う
 あのビルは公官庁の施設も備えてるからな
 たぶん・・予想では5日後ぐらいだ」

「5日後・・・」 深月が呟いた



匠は何も言わず ギュッと右手で左腕を押さえる
5日後・・・ またあの男と対峙 (たいじ) しなければならない



「いいか? ・・・匠」
「・・はい。 大丈夫です」
「ん・・・じゃあ・・・・次はこいつだ」


オヤジは 深月がテーブルに運んだケースから
1つの小さな箱を取り出した

それはプラスチックの白い箱で タバコより一回り程大きい




「それは?」 深月が尋ねる

「これは 注射器だ」

「注射器? そんなに小さいのが・・・・ですか?」

「ああ、自分で打つ注射だ
 これに匠の鎮痛剤を入れる
 流もインスリンを自分で打つのは 聞いた事があるだろう
 あれと似たような物だが、容量も針もこちらの方が大きい
 インスリンは無痛針があるが・・・」



オヤジがプラスチックのケースをカチリと開けると
中から 1本の筒状の物を取り出す


太いマジック程の その先のキャップを外すと
そこには普通の注射器を変わらない程の・・・いや、それ以上に太い針があった




それを持って オヤジは匠の視界に入る様に 身を乗り出す


「見えるか? 匠・・・
 これはまだ 見本用の空のカートリッジだが・・
 使い方は・・」


オヤジはテーブルの上にその注射器を垂直に立てると、
まるでボールペンの様な 上部のボタンをカチリと押す

ズンッ・・鈍い音がし、ガラスのテーブルが ビリッと震えた  




「これで 中の薬が一気に体内へ打ち込まれる」

「一気って・・・痛くないんですか・・・・?」
その振動の大きさに深月が驚く



「痛てぇさ・・・
 普通以上の針を刺して、薬液も普通のほぼ倍を 体へ打ち込むんだ
 その衝撃と痛みは覚悟してもらわんとな・・ 匠・・・」

「・・はい」

「・・・・・ これからは匠も外へ出る
 が、今朝みたいに いつ痛みが襲うか・・ それは全く予期できん
 この部屋の中だけなら 処置は出来るが・・・
 そうで無い時の方が多くなるはずだ

 その為の薬をここに入れておく
 普通の鎮痛剤よりかなり強力なやつだ

 打ってすぐには ショック症状も出るかもしれん・・・
 それでも・・・ もし、交戦中に 今朝みてぇに痛み始めたら
 そんな事は言ってられねぇからな・・・・

 外で使う事を前提に、鎮静剤は無しだ
 意識が飛んだら意味がねぇしな・・

 ただ痛みを一時的に押さえ込む、それだけのモノだ」




オヤジはテーブル越しに手を伸ばし、匠の手にその箱を乗せる


「打ち方は今と同じ、キャップを外して、太ももか腕に垂直に奥まで刺し
 このボタンを押すだけだ
 打ち出す為の本体は繰り返し使える
 が、針と薬液がセットになったカートリッジは使い捨てだ
 1回分は セットしておくが、2度目からは自分で入れろ

 これの管理は匠に任せる
 お前の命綱だ・・・・・外に出る時は必ず持って出るんだ・・ いいな?
 そのタグとセットだと思え」


「わかりました・・」

匠は 手の中に置かれたその箱を握り締めた
それは 軽い小さな、ただのオモチャの箱にしか見えなかった
・・・これが、俺の命綱・・・・・



「ただ・・・言っておくが乱用だけはするなよ
 通常なら使わない程の強い鎮痛剤だ
 非常時のみ、使用を許す・・

 それから・・  これを持ってなら・・外へ出る事を許可する
 審議会までに 外の気温、自分の体温の調節の仕方、明るさ、視界・・
 慣れておかなきゃならん事は山ほどあるからな・・」


そう言ってその箱ごと匠の手を握った

「・・・ はい」 
匠は真っ直ぐに顔を上げたまま、オヤジを見た
やっと外に出られる・・・その目には強い意志があった






が・・・


オヤジの思惑と計画は翌日には打ち砕かれる事になる




刻印 -147へ続く
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刻印 -145

「おやっさん、あの人は?」

「ん? 見ての通り、この病院の副院長だよ」

「こんな大きな病院の方と知り合いなら、匠さんをここへ運んでも・・」

「あいつは 俺達の仕事を知らねぇんだ
 俺はただ、昔の関係者で・・ 今はどこかで開業医でもしてると、、そう思ってる
 だから、お前もそのつもりでな
 匠の事は、考えはしたが・・・さすがにあの傷は、常識じゃあ考えられねぇしな・・」

「それでさっき 名刺も要らないって・・・?」

「ああ、俺達の部屋にあいつの名刺なんぞあってみろ
 何か事が起きた時に、この病院まで危険にさらす事になる・・
 ・・・・・・ 行くぞ、流」





そう言って またエレベーターに乗り込む




次に入ったのは病院の医薬品庫だった


1つ手前の入り口に
かなりベテランな域に入ったと思われる年齢の女性が一人座って居たが
オヤジの顔を見ると丁寧に会釈をした


その前を通り 頑丈な鍵が付いている扉を開ける
副院長が 鍵を開けておくと言ったのはここだったらしい



廊下にあった 2段式のキャスター付きワゴンを押して オヤジは中に入ると
ずらりと並んだ医薬品を次々とそのワゴンへ乗せていく


「ここで薬を・・・・」 
巨大な部屋の膨大な医薬品や備品に驚きながら
深月はただオヤジの後ろを付いて歩いた


オヤジが乗せる薬や備品は
今朝、深月が部屋で取り出した鎮痛剤や鎮静剤など、見慣れた物もあったが
中には初めて見るようなケースもいくつかある



「これでOKだ、 流、 帰るぞ」
そう言ってオヤジが振り向いた時には、ワゴンは ほぼ一杯になっていた



またあの中年・・・・  ベテラン女性の前を 今度はワゴンを押して出る
女性は今度も何も言わずに、静かに頭を下げた




地下の駐車場へ戻ると オヤジは車にあったケースにその薬を積み替え
「さあ・・帰ろう、 匠が待ってる」
そう言って また車を走らせた





マンションに戻ったのは もう午後になっていた

部屋に戻ると浅葱が玄関まで出迎え
駐車場からケースに分けられた薬を 部屋へ運び入れるのを手伝った




「匠は?」
オヤジが薬を運びながら浅葱に聞く

「1時間ほど前に起きた、まだ横になってるが 落ち着いてる様だ」
「そうか・・
 おい、流、  ・・そのケースだけ リビングへ置いてくれ」


深月が抱えて入ってきたケースを見てオヤジが言う

「これですか? はい」
深月はそのケースをリビングまで運び、テーブルの上に下ろした




オヤジと浅葱は 温度管理が必要な物だけ手早く棚へ片付けていく
空きが目立つようになっていた棚が
またビッシリと一杯になった




「それから、 匠が起きられる様なら、リビングへ連れてきてくれ」
深月にオヤジが声をかける



深月は 匠の部屋の前まで行き、ノックしかけるが・・ 手を止めた
そのまま通り過ぎて 浅葱の部屋の前で  「匠さん・・?」  声を掛ける
中から  「はい」  と匠の声がして
深月の胸がチクリと痛む




扉を開けると、匠が起き上がろうとしていた
目を覚ました時に浅葱が着替えさせたのか、 匠はもう服を着ている


「起きられますか? おやっさんがリビングへ・・って」
「ああ・・ うん、大丈夫・・  ありがとう」
そう言って深月に笑顔を見せる

その笑顔に深月は癒されながら・・・喜びながら・・・
・・・・そして 苦しかった・・




二人がリビングへ戻ると
オヤジは今 運び込んだばかりのケースを開けようとしている所だった


深月が匠をいつものソファへ座らせる
左隣に深月が座り、 匠の右横へ浅葱が立つ

これがいつもの位置だった

オヤジが三人の正面に座った




刻印 -146へ続く
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刻印 -144

薬が効き始めると 匠は目を閉じた
深い静かな森へ引きこまれる様なその感覚に 抵抗出来ず
みんなの声が フェードアウトしていく・・・



「鎮静剤が効いたようだな・・・ これで数時間は起きないだろう・・
 おい、流・・
 午前中に仕入れに行くから、一緒に来いや」
「仕入れ・・ですか?」
「ああ・・そろそろ少なくなってるモノもあるから、薬をな」
「薬の仕入れ・・・・あ・・はい、わかりました」



深月はトレイを片付けながら、オヤジに返事をし
ベッドの側に立つ浅葱の姿を見ていた





暫くしてオヤジと深月は二人で出かけた

オヤジは珍しく自分で車を運転し、郊外の病院へと乗り入れる

そこは個人病院だったが、かなり大きな規模である事は
その建物の大きさ、敷地の広さから容易に推測できた


オヤジは来慣れた様子で 病院地下の駐車場に車を止めると
受付に寄る事もなく さっさとエレベーターで昇っていく


病院内には特有の匂いと ひんやりとした空気感があったが
それを補う様に 柔らかな薄梅を思わせる壁に 品の良い絵画が掛けてある

新しい建物では無いが、ぐるりと建物で囲った中庭には 芝生があり
入院患者や その見舞い客が
涼しげな木陰のベンチに座り談笑しているのが見えた




かなり長い廊下を歩きながら 深月が中庭に面したその窓から下を見ていると
オヤジはある一室の前でノックをした

扉の横には 【 副院長室 】 と書かれている





「どうぞー」 と、中年男性の声がして オヤジは深月を連れて中に入る

中には白衣を着た男性が 嬉しそうに立っていた
「いらっしゃい」
その部屋の主、副院長と思われる男性が 深月に声をかけた


「あ・・  はじめまして・・・」
深月は戸惑い、オヤジの方を見る
オヤジはそんな深月を見ると  「緊張せんでいい」  と笑った



「まだ副院長なのか? いい加減に 院長の名札を付けたらどうだ」
オヤジが 中央の白いレースカバーの掛かったソファへ腰を下ろしながら言う


「工藤院長がいらっしゃるのに、私は副で十分ですよ」

副院長は 深月にもソファへ座るように手で促すと
自分も反対側のソファに腰を下ろした



「あ・・・どうも・・・」
おずおずと深月がオヤジの隣に座る


こんな大病院の副院長なんて偉い人に会うんだったら 
もう少しちゃんとした格好で来たのにーーーー
深月はジーンズにスニーカーという
まるで普段着の 自分の足元に視線を落とす



「こいつは 今、俺と一緒にいる深月ってぇんだ
 これからも用事を頼むかも知れねぇから、よろしく頼むよ」

急に自分を紹介され、深月は慌てて顔を上げてから ペコリと頭を下げた



その様子を 副院長はニッコリと優しそうな顔で見る

「わかりました、何でも言ってください」
「流もだ、 この人には世話になってる
 これから、俺の使いで来ることもあるだろうから、覚えとけよ」
「あ・・はい」
「名刺、渡しましょうか?」


副院長が立ち上がりかける


「いいや・・・そういうのは必要ねぇよ
 今日のリストだ、これだけ貰っていくよ」

「ああ・・そうでしたね・・すみません
 鍵は開けておきますから」


リスト といわれる 封筒を開け中を確認すると 副院長は
「これは・・・また何か重篤な患者を診て・・・・・」  と言いかけたが 
「すみません、患者の事は守秘義務ですね」  とすぐに自分の発言を取り消した



「じゃあ・・・急ぐんで、またな」
「もうですか? 相変わらず、いつも忙しい人ですねー 今度ゆっくり酒でも」

そう言いながら扉の前まで見送ってくれる


「おう、またいつかな」

そう言ってオヤジと深月は部屋を後にした




刻印 -145へ続く
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刻印 -143

オヤジはすぐに匠を診始めた


後ろに入ってきた深月に気が付く

「流! 鎮静剤と鎮痛剤! 注射だ、この前教えたヤツ一式持って来い!」
「は・・・・はい!」



以前、あの地下室で見た浅葱さんの様に 匠さんを助けたい・・・
最近の深月は 時間があればずっとオヤジの側に付き
簡単な医療知識、蘇生術から注射の取り扱いを 自分から頼み込んで
教えてもらっていた





医務室に飛び込むと 壁際の一番大きな棚を開ける
中の扉は二重になっていて温度調節された中に 整然と薬が並んでいた
その中から 必要なものを選んでいく

鎮静剤のアンプル・・・・鎮痛剤は・・・・・・
注射器・・・・えっと・・・あとは・・・あと・・・・・・・・・・・・・


匠さんが苦しんでる・・そう思うと気持ちばかりが焦る
頭が真っ白になり、イライラと足だけが動く


あ”----!! 落ち着け・・・・落ち着け!
自分にそう言い聞かせる


”お前は落ち着けば出来る”  以前、浅葱にそう言われた事を思い出す


落ち着けっっ 自分!!!


順番にオヤジに教わったことを思い出す
注射器・・アンプル・・・あと・・消毒と・・・・・・・


次々と棚から出しトレイに一式並べると 深呼吸をしてから一つずつ確認する
「・・・・・・・・・よし!」






戻る途中にほんの少しだけ扉が開いている部屋がある

・・匠さんの部屋・・

一瞬足が止まる・・

無意識に、その扉を押し開けていた・・
そこには乱れたままのベッドがわずかに見え・・
深月は慌てて扉を閉めた





浅葱の部屋に戻り 深月はトレイをオヤジに差し出すと
「・・ん、ヨシ」 中を一瞥し確認しオヤジが頷く


「匠、 右腕を出せ・・ 鎮痛剤だ」
オヤジがそう言っても
匠は 痛みで左腕を押さえたまま 手を離す事ができない
体を捩り呻くばかりだった


「・・・・匠っ!」
一喝する様な浅葱の声がした

匠の体がピクリと反応する・・・

「あ・・・・・・あさ・・ぎさ・・・」
「腕を出せ・・・すぐ楽になる・・」

そういうと匠は唇を噛んで 右腕を差し出す



注射器に薬液を詰めながら 深月はその光景を驚きで見ていた


シーツ1枚に包まっている匠は全裸のようだった・・
しかも ここは浅葱さんの部屋だ・・
さっき見た匠さんの部屋も・・
 


匠は 注射自体は、以前ほど怖がらなくなっていた
痛みさえ我慢できれば じっと腕を差し出す事が出来た

腕の痛みに わずかに体を捩りながらも、
じっと薬剤が体の中に注ぎ込まれるのに耐えていた

液体を全て体に入れ終わると、匠はまた目を閉じて
苦しそうに左腕を押さえ、背を向けて小さくなる


「すぐに効くはずだ・・・しばらくの辛抱だ・・」

オヤジが言うと匠は頷いた
こちらに向けたその背中の傷も、血が滲んでいた




「背中も診るぞ・・」

薬が効き始めるのを待って
包まっていたシーツ1枚を引き下げると 背中が露出する

まだ皮膚の薄い場所が 大きく擦れ血を滲ませてはいたが
処置をしながら オヤジは
「これぐらい 全然ヘーキだぞ、匠ーー 大丈夫だ!」 

まるで 自転車で転んだ子供を元気付ける様に、匠に話しかけた



「・・ありがとう・・ございます・・」
匠はフッと笑み、左腕を押さえたまま目を閉じ、返事をした




刻印 -144へ続く
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刻印 -142

「来週か・・・・・思ったより早いな・・」

「ああ・・・向こうも一刻も早く、そう思ってんだろ
 匠が少しでも弱ってるうちに・・・ってな
 1週間で どんな罠を張るのかは知らねぇが・・・・
 いつになるにしても、匠と流には話さねぇとな」

「・・わかった・・」

「じゃあ、もう戻ってやれ
 匠が目を覚ました時に お前が側に居ないと不安になる」

「匠は今、俺の部屋だ・・・・・」

「ん、了解した
 後で様子を見に行くよ」










匠が目を覚ました時には もう夜が明けようとしていた
12時間近く眠っていた事になる


目の前には浅葱の姿があった
まだ腕枕をしたままで
浅葱の右腕はしっかりと匠を守る様に抱いている

匠は身動きせず、じっと浅葱の顔を見つめていた・・



「何か、付いてるか?」

いきなり浅葱の声がして 匠はクスリと笑う

「やっぱり、起きてたんですね・・
 腕枕・・・ありがとうございます・・・痛くないですか・・・?」

「俺を誰だと思ってる・・」



その言葉に匠は何故か嬉しくなる
「・・はい・・・」 
抱き付いていた左腕に精一杯の力を入れた


「ん? 何だ・・?・・おかしなヤツだな・・・」
その浅葱の声も優しかった



まだ目を閉じたまま話す浅葱のその唇を 自分から奪ってみたい衝動に駆られ
そっと匠が体を伸ばそうとした時だった



左腕に激痛が襲った・・



「・・・・・んっっ!!」

甘い時間は一気に現実へと戻される



「ぁっ・・・んんんっ・・・・・・・・!!」
思わず声をあげ、腕を押さえ
痛みが引くのを待つが、それは一向に治まらない・・
その痛みは 体中に広がり、背中がズキズキと痛み始める



「んんぁあああっ!! ・・・・くっ・・・・・・・・」


いきなり苦しみ始めた匠に浅葱は驚き
・・・また・・・   思わずその肩を抱き締めていた


「匠っ!・・・・・匠・・・・・・・・・・・!!」
「あ・・・あさぎ・・・・・・・・さ・・・」


しかしその痛みは治まる事なく匠を襲い続ける




「オヤジを呼んで来る、待ってろ・・」
そう言って浅葱は 匠を腕から下ろしリビングへと向った







深月は 珍しく朝早くから目が覚めていた
昨日 あのまま会えなかった匠の事も気になり
ゆっくり眠れたとは言い難い 体の重さがある

ベッドでゴロゴロしていても、気持ちが落ち着かず
一人 起き出して来て、リビングの端のキッチンで水を飲もうとしていた時だった


浅葱が入って来たのを見て 「おはようございます」 と声を掛けた

が、その挨拶に返す事無く 浅葱は 「オヤジは?」 と尋ねる
その声が急を要している


「おやっさんは まだここには・・・・
 匠さん?!  ・・・どうかしたんですか?!」


深月の問いに答えもせず 浅葱はオヤジの部屋へ向う
その後を深月も追いかけていた
乱暴に置いたコップが シンクでカラカラと音を立てる




オヤジの部屋の前で ノックをし、
「オヤジ、起きてるか?  匠を診てやってくれ」
そう声を掛けると すぐに扉が開いた

「朝早くからすまない・・・匠が・・」
オヤジは浅葱の肩をポンと叩く




深月の前を行く二人は 匠の部屋を通り過ぎて、浅葱の部屋へと入って行った
浅葱さんの・・・・部屋・・・・?

なんで・・?・・・ 深月も二人に続いて浅葱の部屋に入る


そこには浅葱のベッドで苦しむ匠の姿があった




刻印 -143へ続く
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刻印 -141

自室に入ると、浅葱は壁際の大きなベッドに匠を下ろした


「浅葱さんの・・・匂いがする・・・」
目を閉じたまま、匠が安心した様に呟いた



浅葱も匠の隣に体を置く

「・・ほら・・・匠、こっちへ・・・」
いつもの様に、匠を膝へ上げようとすると
「腕枕・・・・が・・・・ いい・・・・」  匠が小さな声で言った



「・・ったく・・・・・
 わかった・・・・腕枕してやるから、少し寝ろ・・・」
笑う様な浅葱の声がして 匠の頭の下へ 浅葱の腕が差し込まれる



匠は 浅葱の腕に体を任せると ゆっくりと左腕を浅葱の体に抱き付けた



「体・・痛くないか・・?」
「少し・・・」

「匠・・・・・・」



名前だけを呼ばれ、先が続かない声に 匠がふと顔を上げる
目の前に 自分を見つめる浅葱の顔があった

それは・・体を合わせている時とは違う いつもの真剣な浅葱の表情に戻っていて
匠の言葉も自然に敬語になる・・


「・・・何・・・・ですか・・?」


「匠・・・この先、何があっても お前は俺と一緒だ・・・・
 絶対に離さない・・・・ 俺が守る・・」




この先・・何があっても・・・
それは あの男への ・・・・「必ず奪い返す」 への返事だった




「・・・俺は・・ ずっと浅葱さんだけのものです・・・
 ・・・・”この先、何があっても・・・・” 」


真っ直ぐに浅葱の目を見つめる

浅葱が匠の唇に軽く触れた・・


匠は安心した様に目を閉じ、ゆっくりとした呼吸を繰り返す
「おやすみ・・」 浅葱の声が遠くなっていった・・



穏やかな落ち着いた匠の寝息が聞こえ始めると
匠のその熱い体を抱き締めて 浅葱も目を閉じた






どれほどの時間が経ったのか・・
ふと人の気配で浅葱が目を覚ます


自分達の家とはいえ、
こんなにも無防備で深く眠った事はなかったかもしれない・・
匠はまだ浅葱の体に寄り添ったまま眠っている


自分を抱くようにして眠っている匠の腕をそっと下ろし
頭の下から自分の腕を抜くと、浅葱はリビングへと向った





そこにはいつもの様にPCに向うオヤジの姿があった
リビングへ入ってきた浅葱に気が付き、オヤジが振り向いた



「どうだ・・?  匠の様子は・・・」
「ああ・・・・ 今は落ち着いて眠ってる・・」
「そうか・・・ 」

「深月は・・・・?」
「さっきまで、匠とアイスを食べると言ってたが・・・・
 今日はもう いくら待っても、匠は部屋から出て来ねぇぞって言ったら
 諦めて部屋へ引き上げたみてぇだ」





浅葱と匠の間に何があったのか、
そんな事は何も聞かずに オヤジは世間話でもするように答えた




「・・・なぁ・・・オヤジ・・・・・・」
自分のやり方が はたして正しかったのかどうか・・・・そう思っていた・・・

浅葱がソファに腰を下ろし、そう言い掛けると


「恭介・・・お前が迷ってどうするよ・・
 お前が迷えば、匠も迷う・・
 お前達二人が良いと思えば、それでいいんだ・・・・
 世の中には これが正解なんてものは無ぇんだから・・・
 匠は今、安心して眠ってる・・・それで良いんじゃねーか? 恭介・・」



浅葱は黙ってその言葉を聞いていたが
フゥッ・・・・・と一つ息を吐いた


・・・いつもこのオヤジには助けられてばかりだ・・・・・




「後で・・・匠が起きたら、傷を診てやってくれないか・・」
「ん? ああ、わかった・・・・お前も疲れてんだろ・・・少し寝ろ・・・」

「俺は、大丈夫だ・・・
 こんなにゆっくりと眠ったのは久しぶりだ・・・・」

「匠も・・・きっとそうだろうよ・・」
オヤジの優しい顔があった



「大丈夫なら・・・・」
優しい顔とは反対に その声は緊張したものに変わる

その声に 浅葱もいつもの表情へと戻っていた

「審議会、来週辺りになりそうだ」




刻印 -142へ続く
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刻印 -140

浅葱の胸の上に倒れこむ様に体を預けたまま
匠はずっとその心臓の音を聞いていた


最初は早かった浅葱の鼓動が 徐々に落ち着き
いつもの速さへと戻っていく・・


まだ繋がったままの 匠の部位は熱を持ち
しっかりと浅葱を感じ取ることが出来ていたが
それは痛みではなく、心地良い痺れと、飽和感だった



その浅葱の強い腕にしっかりと抱き締められ、小気味良い鼓動を聞いていると
気持ちが落ち着き、匠は自然に目を閉じた・・





匠の呼吸が治まり、体の余韻が静まると
浅葱は抱いていた匠の体から手を緩める



「・・・匠・・・・  匠・・・・・」

優しく呼ばれ、頭を撫でられて 匠は少しだけ顔を浅葱の方へと向けた



「・・抜くぞ・・?」
そう言われ、少し寂しそうに目を伏せた匠から
浅葱は そっと自分のモノを引き抜く



「・・・んっ・・」
小さな声を上げた匠の体を抱える様にして、ベッドへと横たえた


「よく・・頑張ったな・・・」
体の負担にならない様に、右側を下にして・・横向きに寝かせると
匠はすぐに少し足を曲げ、胎児の様に体を小さくする



浅葱は そんな匠を見つめながら、ベッドの端に座り 匠の前髪に触れる・・
髪をかき上げるようにすると
「くすぐったい・・・・」
匠は目を閉じたまま 小さな声で少しだけクスリと微笑んだ


その額に顔を寄せると、浅葱は軽く唇で触れる
その額は 燃える様に熱い・・




「ちょっと待ってろ・・」
浅葱は簡単に身を整え、洗面所と医務室から
冷たいタオルと、新しいシーツを持って戻って来た



「匠・・・・ほら・・・体を拭いてやる・・」
「・・ん・・」

まだ体の熱さと 全身のダルさから抜け切れない匠が わずかに頷いた





浅葱は冷たいタオルで 熱を逃せない匠の体を拭う・・
匠は目を閉じ、されるがままに 浅葱にその身を預けた


首筋も胸も・・傷が痛まない様に、そっと全身にタオルをあてると
「・・・気持ち・・・・いい・・・」 
そう言って匠は安心した表情を見せる



「背中・・・・また傷んだな・・・・・・」
擦れ破れ、血を滲ませる匠の背中の傷の端を
指先で軽く触れながら 浅葱が呟く


「・・ん・・・・・平気・・・」
倦怠感から言葉少ない匠だったが、その顔はとても穏やかだった




「でも・・・おやっさんには・・ ・・怒られるかもしれない・・・」
匠がフッと笑う

「大丈夫だ、オヤジは・・・ちゃんと、理解してくれる人だ・・・・」



オヤジが深月を連れて外に出てくれたのは 匠も気が付いていた
目を閉じたまま 「・・ん・・」 と頷いた





血が滲む傷をタオルで押さえると
浅葱は新しいシーツで匠を包み、そのまま抱き上げた


「・・・・?・・・ 何・・・?」
匠が目を開ける



匠のベッドはその血で汚れていた・・

「俺の部屋で寝ろ・・・・匠・・」
そう言って匠を抱いたまま 浅葱は匠の部屋から自室へと移動する





途中の廊下も、奥に見えるリビングにも人影はなく、シンと静まり返り
オヤジ達は まだ戻って来ていない様子だった




刻印 -141へ続く
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刻印 -139

繋がった体を浅葱の方から動かし始めると
匠は浅葱にしがみ付いたまま 目を閉じた

意識が勝手に その場所へと集中していく


「んっ!! ・・・ん・・・・ぁぁあ・・・・・・・ぁ・・・っ・・」
浅葱の動きに身を任せ 匠が小さな喘ぎ声を上げる



「浅葱・・  さん・・・・・・・ん・・っ・・・ああっ・・・・」


匠の声は昂ぶってはいたが、
その気持ちは・・心は 自分でも驚くほど落ち着いていた
恐怖や嫌悪は薄れ、浅葱だけを感じ・・
そこには 他者の影がつけ入る隙など、どこにも無かった




「・・匠・・・自分でも動いてみろ・・・」
そう言われて 肩にしがみ付いていた手を離される

浅葱は自分の上体を 少しだけ後ろに倒すと
匠を自分の上に しっかりと据えた


「・・んっ・・!」
お互いが座って居た時よりも 中を深く突かれた気がして
匠が思わず声を上げる


匠は、浅葱の引き締まった腹筋に右手を付き体を支える
力の入らない左手は 浅葱がしっかりと指を絡め 握っていてくれた・・



「ぁああっ・・んっくっ・・・んっっ!!!!」
浅葱の突き上げる様な動きで匠の体が上下する



「・・ぁっっ!! 
 ・・ぁあっっっ・・・ぃぃ・・・ 浅葱・・・さん・・・・んっんっ!!」

「・・匠・・・・・動け・・」

匠が頷き、恥ずかしそうにしながらも
浅葱の動きに合わせて 少しずつ体を動かし始める

浅葱の突く動き、抜く動きに合わせ 自ら足に力を入れる




「んんぁあああっ・・・  ・・・ああああっ・・・・!!」

二人の動きが同調すると、その刺激は何倍にもなって匠の体を襲う



浅葱の手が・・ 匠の左手には繊細に指を絡めながらも
もう片方は、二人の体の間で猛っている匠のモノに触れ・・
そして・・動かし始めた

その大きな手で 包み込む様に・・



「んんっぁ!!! ぁあっっ・・・!」
触れるとすぐに 匠は短い声を上げた

その先から零れ出るもので 辺りには湿った小さな音が響く



「・・・・ぁ・・・・ぃや・・・・音・・・恥ずかしい・・・」
首を振り 反射的に自分のモノを握った浅葱の手を解こうと
手を重ねる


「感じてるのか・・? 
 ・・・・匠・・  ・・・こんなに溢れてる・・」
少し意地の悪い浅葱の声がする


下を向くと、そこには大きく猛りながら
浅葱の手の中で弄ばれる自分のモノがあった


「・・ん・・・んっ!!  ・・・・見・・・ないで・・・聞かないで・・・
 ・・・・恥ずか・・・しい・・・」




自分自身を見せられて、匠の体は更に深く熱を帯びる

そのまま浅葱に擦り上げられながら 匠は確実に昇り詰めようとしていた




「ぁあっっっ・・!  
 ・・浅葱・・さん・・・・・・そこ・・  ・・だめ・・  ヘンに・・なる・・」


全身が熱く 息が上がる・・
今なら ほんの少し、唇が触れただけでも、頭を撫でられただけでも
声をあげ、涙が溢れそうだった





「・・・!!・・  ぁぁ・・ も・・・だめっ・・ ・・・イキ・・そう・・」
「・・・イケばいい・・・匠・・・」


一向に動きを緩めようとしてくれない その体と手に
「・・・一緒に・・・イって・・・・中に・・・・・」  そう訴える




浅葱の指に力が入り、匠の左手を強く握った・・
・・動きが激しくなる・・


「っんっぁっ!!!  ・・ぁぁあああっっ! ・・・・ぁ・・あさ・・・ぎ・・・さ・・・
 ・・・・も・・・だめ・・・・・い・・・く・・・   ・・も・・・う・・・」

「ああ・・・匠・・・・一緒に・・・・」



目を開けると浅葱が見つめていた
揺さぶられる体の動きなのか、それとも返事だったのか・・
匠の頭が小さく動く



「ぁっんぅ・・!! 

 ・・ぁ・・・くっ・・・んっ・・ぁ・・・んっ・・んっ・・・!!
 
 ぁ・・ぁ・・・・・ああああああっっ・・・・  ・・・・・んっっっぁあ・・・・!!」




「・・・・・んっ・・・・!・・」



声と同時に匠のモノが 浅葱の手の中で震える
そして浅葱も・・・匠の中に全てを吐出させていた


自分の一番奥深い場所で 浅葱が小さく痙攣するように動くのがわかる


その動きを感じ取ると、匠は ホッとした様に
体を繋いだまま、浅葱の上にぐったりと体を預け、倒れこんだ



ハァ・・ハァ・・

ハァ・・ハァ・・・・・・

息が苦しい・・・
まだ満足に吸気出来ない胸で 必死に呼吸をする・・




目を閉じると トクトクといつもより早い浅葱の心臓の音がした


その匠の熱い体を 浅葱もしっかりと抱き止める・・




刻印 -140へ続く
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刻印 -138

”どんなお前でも・・・”


その声に顔を上げると
目の前に、真っ直ぐに自分を見つめる浅葱の顔があった


この人なら・・・
どんな自分でも受け入れてくれる・・


あの忌まわしい地下室の ”記憶”
記憶は 一生消える事はない・・・何一つとして。

この体の刻印も、あの屈辱も、あの痛みも・・


でも この人なら・・・この人の前でなら・・
それを取り繕う必要はない・・

どんな体の自分でも、
どんなに惨めな自分でも・・・
どんなに汚された自分でも・・・

この人の前では・・ どんなに乱れようとも・・・・    


・・・浅葱さん・・・・・・





匠は浅葱の肩に手を置いたまま、足に力を入れて
自分の体を動かし始めた・・

膝にも力が入らず、その動きはぎこちなかったが
それでもわずかに上下に動かすと 自分の中で浅葱のモノも動く


「ぁ・・・んっ・・!! ぁあああ・・・・!!」


狭い場所を窮屈そうに擦り動く浅葱が
体に巣食う屈辱という痛みを 一枚ずつ剥がしてくれる様な気がした

それはまるで、汚された自分を 浅葱の与えてくれる痛みで浄化させる・・
そんな儀式の様に思えた



もっと・・・

もっと・・・




「ぁ・・ぁっっんっっ・・  ・・・浅葱さ・・ん・・・・・」

閉じてしまいそうになる瞳を薄く開け
浅葱にしがみ付くようにして、匠が甘い声で呟く



「お前の好きな様に動いてみろ・・・自分の感じるところで・・」
「・・・・ん・・・・」

体から少しだけ腕を外し、わずかに体を反らせると
その刺激は違う部位へと移った


「ぁ・・ぁあっ!!!  ・・・んっぁ・・・・・・ぃぃ・・・・・・」
それはまた新たな熱で匠を襲う



「ん・・・上手だ・・・・・・・匠・・・ ・・ん・・ん・・っ・・!・・」
匠の耳元でずっと聞えている浅葱の押し殺した小さな声も 匠を昂ぶらせた



浅葱さんが・・・感じてくれている・・
そう思うだけで嬉しかった


これが・・体を繋ぐと言うこと・・ 1つになると言うこと・・
犯されるのではなく・・・・快感と幸福と・・・・




「ぁっ・・!  ん・・・ん・・・ぁぁっ!! ・・・・そこ・・っ・・・!!」

体を仰け反らせ、身悶えながら
匠の恥ずかしそうなその声は、浅葱を求め続けた



「ここが、イイのか・・・匠・・・・・」
浅葱は思わず匠の体を強く抱き締める


「・・ん・・・そこ・・・ ・・ぁぁっ・・!
 ・・・・・・・・浅葱さ・・・そんな 強く抱いたら・・・動けない・・」
匠がそう言って視線を合わせてくる


「・・ああ・・そうだな・・」
匠の瞳を見つめながら フッと笑む様な浅葱の優しい声




もっと中で動かして欲しい・・・
浅葱さんと・・・  イキたい・・
が、匠の動きはまだ拙 (つたな) い・・




「・・・イカせて・・・ このまま・・・・
 俺の中・・・・浅葱さんだけを・・・・感じたい・・・・・」


そう言って匠は浅葱を抱き締めた


「・・・わかった」





浅葱は匠の体を抱き締めたまま 体を動かし始める


「ぁぁあああああっ・・・ん・・んっ・・・!!!・・・・いい・・・・」



恐怖ではない匠の声が耳元で聞えた


「浅葱・・・・さん・・・・・・・もっと名前・・呼んで・・・」
その声に浅葱は 匠の顔の目の前へ顔を近付ける




匠の瞳が真っ直ぐに浅葱を見つめていた



「・・・匠・・・・・・  ・・・・愛してる・・・」
「・・・・ん・・・・」

浅葱の声に匠が微笑んだ




刻印 -139へ続く
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刻印 -137

匠は一度 大きく深呼吸をする様に息を吸い込んだ
折れた肋骨と 浅葱に責められた胸の先がキリキリと痛む・・


目を閉じ 息を止め、
浅葱の手に支えられたまま その体を少しずつ下げていく



「・・んんんんんっ・・・・くっっっ・・・・・!!」

狭い場所を押し広げながら浅葱が入ってくる痛み、、と・・・・・




「匠、息を詰めるな・・」

呼吸を止めて その痛みを我慢する様に体を下げる匠に、浅葱の声がする



「んっ・・ぁ・・・でも・・・・・・・でも・・・・・・・・」

唇を嚙み締めて 浅葱のモノを吞み込んでいく感覚を
匠は全身で感じていた

手指の先も、足の先も、そして既に壊され通常の感覚を持たない背中の傷までもが
それを感じ、震えているようだっだ




途中で苦しくなり、息が続かなくなると 思わず声を上げた


「ぁぁああああんっっ・・・・・!!
 ・・・・・浅葱・・・・・・さん・・・・・・・・!!・・・・」










ハァ・・ハァ・・

ハァ・・ハァ・・


一度息を吐くと、今度は大きく吸う事が出来なくなった
激しく肩を上下させながら 小さく短い、荒い息で匠が喘ぐ



「んんんぁっあ・・・・・ダメ・・・・むり・・・・んんっっ!!」

「力を抜け、匠・・・ もっと、声を出せ・・」

「そん・・・・・な・・・・
 んっ・・・・・・・・んぁっ・・・・・・・・・・・んっっっくっ・・!」 



浅葱が支える匠の体が小刻みに震える
侵入を制御する足に、もう力が入らなくなっていた





「・・・んんっぁ・・・・・・・・・んぁあああぁぁぁあああっーー!」


大きく体を仰け反らせ、天井に顔を向けた匠の体が
ペタンと座り込み、浅葱の上に密着した 



「んっ・・・・・っ・・」
浅葱もまた その呑まれる感覚に声を漏らす






「いい子だ・・・・匠・・・  奥まで・・・・全部・・・・入った・・・・」
「ぁぁっ・・ぁ・・んっ・・・・・・・・」
「ゆっくりでいい・・・そのまま体を動かしてみろ・・・・・」



奥まで飲み込んだだけで おかしくなりそうなのに、浅葱は動けという・・・



「無理・・・・ダメ・・・・動いたら・・・・ヘンになる・・」
「構わない・・・どんなお前でも 俺が受け止めてやる」



浅葱は促す様に わずかに下から腰を突き上げる



「・・・ぁあああんっっ!!!・・・・だめっ・・動かないでっ!」





その感覚は、もうあの 犯される という嫌悪ではなかった

自らの手で その体内に入れた浅葱のモノが
自分の中で息衝いている・・・

熱い程の体温と 存在感を持って・・自分の中で繋がっている・・・




裂けそうな痛みと、全身の震え・・
それが快楽なのか、、ただの痛みなのか・・


ただ・・ このまま止めたくないと思った


この痛みが欲しい・・


もっと・・・もっと感じたい・・・・・
もっと浅葱さんを・・・

純粋に ただそう思わせた




刻印 -138へ続く
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刻印 -136

浅葱が 匠の手をとり、自分の手と重ねて 起っているモノを包み込ませる

「できるか・・?」






浅葱の手に引かれ 戸惑う様にそっと触れた匠だったが
恐る恐る浅葱のソレを握った・・


「・・・ん・・っ・・・」

自ら体をずらし、膝立ちになると 浅葱のモノを自分の穴へとあてがう




「そうだ、匠・・・・そのまま腰を落とせ・・・」


浅葱の声が聞えるが、 匠はそれ以上 進むことが出来なかった

お互いの体が 触れるか触れないかの所で
匠は目を閉じたまま 動けず、じっとしている



これから、どうすればいいのかは理解できていた・・

ただ・・体が動かない

恥ずかしさと、、、恐怖もあった・・




浅葱はそんな匠の手を握ると
仰向けの体を起こし、自分もベッドの上に座る

匠は 座った浅葱の上で、膝立ち状態のまま動けなかった




浅葱は匠の頬に手を当てると そっと唇を合わせる


「・・ぁんっ・・・っ・・・」   

匠は浅葱の両肩に手を置き、 跨ったままの体制で
小さく声をあげながら口を開ける・・

浅葱の舌を自分の中に招き入れると 自ら舌を絡ませた・・


「ぁっ・・ん・・・・・ん・・・もっと・・・」

それは最初の頃の・・
触れ合うだけの・・・  小鳥がついばむ様なものではなかった
素直な気持ちのまま、お互いが求め・・何度も絡ませ合う・・



追いかける匠の舌を離れ、浅葱が匠の耳元にその唇を這わせる

浅葱の息使いが、すぐ側で聞えた
体中が熱くなり、力が抜けそうになる

腰が砕ける様な甘い感覚で
少しでも気を許すと、自分の後ろに浅葱のモノが触れる

「ぁっ・・ん・・・・」
思わず妖艶な声を出していた


「・・来い・・・匠・・・」
耳のすぐ横で 浅葱の声が囁き、匠は閉じていた目を開ける



匠は一度、恥ずかしそうに目を伏せたが
コクンと頷くと 真っ直ぐにその顔を上げ、浅葱を見つめた


片手で浅葱のモノを握り、再びあてがうと
ゆっくりと・・・ほんの少しずつ腰を沈めていく・・・・




自分の穴がこじ開けられ、浅葱のモノが入ってくる

「ぁぁあああっっ・・・・・!!」

匠は思わず仰け反り声をあげた


浅葱は匠が後ろへ倒れないように匠の右腕と腰を掴んで支える



わずかに自分の中に入れたところで匠の動きが止まる

「浅葱・・・・・さん・・・・ダメ・・・・・これ以上 ・・動けない・・・・・」



ほんの少し入れただけなのに
体はもう限界に近いほど、敏感に反応していた

入り口近くを わずかに擦られるだけでも
全身が震えそうになる

浅葱のモノがあと、どれだけ自分の中に入るのか
これ以上入れたら・・・・その時自分はどうなるのか・・・




「大丈夫だ・・・匠・・・そのままゆっくり座るだけでいい・・」

浅葱の手が匠の額にかかる髪をかきあげる・・



「側にいる・・・怖がるな・・・」
額にも頬にも口にも 浅葱は唇を落とし
そのまま匠の首筋から胸へと舌を這わす






「・ぁっ・・っ・・・     ・・うん・・・・・・・」
浅葱が胸の先を軽く噛むと、匠は甘い声で返事を返した




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刻印 -135

やっと繋がっていた体を外され、匠は ぐったりとベッドに横たわり
荒い息を繰り返していた

両手は苦しそうに胸のタグを握り締めている


「・・痛むか・・?」
そう聞く浅葱に 匠は、ただ首を振っただけだったが、背中に振動が伝わるのか
・・んっ・・と小さく呻いた


「・・・匠・・・こっちへ・・・」
浅葱は 慣れた手付きで匠を抱き起こすと、
いつも匠を寝かせていた様に 自分の膝に乗せ 抱き締めた



その体は かなり体温が上がり熱い

「大丈夫か・・・・・? ・・・匠・・・」





匠は目を閉じて 必死に呼吸を整えようとしていた
熱くて苦しくて、そして痛かった・・

背中も腕も目も・・今までと同じ様に痛んでいたが
挿入され突き上げられていた体の奥は それとは違う鈍い痛みがずっと続いていた


浅葱にいつもの様に抱き上げられると
背中の痛みだけは 軽くなる・・



だが 下腹部の痛みは・・・ これは・・・・この痛みは・・・・・


目を開けると心配そうに自分を見つめる浅葱の顔が見えた



そう・・・  この痛みは・・・・・浅葱さんがくれた・・・




腕を伸ばし浅葱にしがみ付く・・

「浅葱さん・・・浅葱さん・・・・」
呪文の様に・・・・自分に言い聞かせる様に
繰り返し名前を呼びながら浅葱を抱き締めた

「・・・ 匠・・・・・」
浅葱の腕も 匠をしっかり抱き締め、頭を撫でる・・


「少し休め・・・」  ・・軽く唇を合わせた


「・・・・・・」
が・・ 黙ったまま匠は返事をしなかった


「どうした・・・匠・・・」

「・・・・・もう一回・・・・・まだ・・・・・もう一回・・・・」
その言葉に浅葱が匠の顔を見る


「お願い・・・もう一回・・・
 今度は最初から・・・全部 浅葱さんだと・・・そう思いたい・・」

匠は顔を伏せるが、 しがみ付く腕に力が入る



匠の背中の傷はまだ出血していた
体温調節が出来ない体も熱い

「無理するな・・・少し休んでから・・・」

「嫌・・だ・・・このまま・・・・・」





浅葱は暫く目を閉じていた

そして再び匠を見つめると
「わかった・・・・匠・・・・今度は自分でやってみろ・・」

「自分・・・で・・・?」

「ああ・・無理矢理 犯されるのではなく、自分の意志でするんだ
 ・・・本当に そうしたいと思うなら・・・」

そう言って 匠を抱き起こす



匠を一旦、ベッドに座らせると、今度は反対に浅葱が仰向けになり
側に座っている匠を自分の足の上に跨らせた


これなら、背中に負担をかけない・・





匠は浅葱の太ももの上に座らされたまま
どうしていいか判らずにじっとして うつむいていた

そんな匠の手を取ると、浅葱は自分のモノに触れさせる
たった今、匠の中でイったはずのそれは まだ雄々しく起っている


「ここへ跨って、自分で入れてみろ」

「・・・そ・・んな・・・」
小さな声で匠が驚いた




刻印 -136へ続く
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刻印 -134

「匠っ・・・・!!」

浅葱は 動きを弱めると
匠を抱き締める様にその体を伏せ、 目の前で 名前を呼んだ



「目を開けろ! 俺を見るんだ・・ 俺はここに居る!」
「い・・・いや・・・  ・・いやだっ・・・抜いて・・・」



匠はまだ抵抗の声を上げ、縛られた両腕で顔を隠したまま
首を振りながら拒み続ける
現実と悪夢の狭間を 精神が行き来しているようだった



「いやだっ・・・・もう・・  ・・やめて・・・・・・・・」
「匠・・・!  俺だ・・お前を抱いているのは この俺だ・・・!」



浅葱は 匠の顔を隠している手をとると 自分の頬に触れさせる

匠の・・ あの深く澄んだ瞳はまだ焦点が合わず
浅葱を探し続け、宙をさまよっていた



「・・・・匠・・・・匠・・・わからないのか・・・匠・・・」




何度も目の前で名前を呼びながら 
その匠の手を、頬から自分の心臓へと持っていくと
首からさげた自分のタグと一緒に 匠の手に握らせた・・



「これがわかるか・・? ・・・匠・・・・」
胸に手を当てさせたまま 匠の頭を抱き締め、耳元で名前を呼ぶ



トクトクと手から伝わる鼓動と 熱い程の体温・・・
それは何度も助けられてきた・・・ 自分を救ってきてくれた浅葱の音・・

その規則正しい音と、そして冷たいタグの感触・・


ほんのわずかに・・ そしてゆっくりと、氷が解ける様に恐怖が薄れていく
遠くで浅葱の声が聞える・・



・・・ハァ・・・・ハァ・・・

・・・ハァ・・・・ハァ・・・ 



浅葱は 匠の涙の溜まった瞳を指で拭い、縛っていた手を解くと
苦しそうに息をするその匠の唇に 自分の唇を重ねた・・


「・・・・んっ・・」
叫び続けていた匠の声が止まる





「あ・・・・さぎ・・・さん・・・・」
「ああ・・そうだ、俺だ・・」


揺れていた匠の瞳が ゆっくりと焦点を合わせはじめていた



「浅・・葱さん・・・・・」
浅葱が頷くと、体がわずかに動き、繋がった部分が匠を刺激する・・


「・・・・んっ・・!!」  ・・・苦しそうに匠が首を振った
「・・・・辛いか・・? だが、お前の体の痛みは この俺の痛みだ・・・」



そう言って心臓に当てていた手を、繋がっている場所へと持って行き
そっと触れさせると・・  少しだけ 動かしてみせる



「・・・ぁっ・・・!・・・」  匠が小さく呻く


浅葱さんの・・・・・・・・




「わかるか・・? 俺が・・・お前の中に入っている・・」

その言葉に匠は小さく頷いた




「いいか・・・このまま動くぞ・・・お前の体を 俺で満たしてやる」

匠の瞳に また涙が溢れて来ていた




匠が腕を伸ばし、まだ上手く上がらない両腕で、浅葱の背中を抱き締める
浅葱もしっかりと匠を抱き寄せると、その動きが激しくなる


「ぁあっっ・・・んっつ!!!! ぁぁぁああああっ・・!」
匠の喘ぎ声が耳元で聞えた


それでもまだ匠の意識は完全ではないのか
時折 「やめて・・」 と訴える




浅葱は匠の唇を塞ぎながら・・・・
首筋に舌を這わせながら・・・・
自分を認識させようと 何度も名前を呼んだ



「・・・目を開けていろ・・・ 匠・・・・俺を感じろ・・・・匠・・・匠・・」
「浅葱・・・さ・・・・・ん・・」
「ああ・・俺だ・・お前の痛みは 全て俺が与えた・・・」



そう言うと匠を抱き締めていた片手を離し
その手で匠のモノを握る・・


後ろを繋げ、激しく突き上げながら
猛っている匠のモノを手で刺激してやると 匠の喘ぎは 一際大きくなった

まだ力の入りきらない指が 浅葱の背中に爪を立てる




「んっぁあっ・・・・・・んっ・・・!! ・・・あああっっ・・・
 あさぎ・・・さん・・・・・・やめ・・・もう・・・・だめ・・・・・・」


「匠・・・・俺でイクんだ・・ ちゃんと目を開けて・・・」




匠が 浅葱の首に腕を回し その瞳で浅葱を見る
視線を合わせたまま、浅葱が動く




「・・っんん・・・ぁんんっっ!!!!
 ぁああ・・・だ・・め・・・・・いく・・・・・・・んっ!!! ぁあああっ・・・・」





・・・匠は浅葱の手の中にその激情を吐き出していた
そして それを受けた浅葱も匠の中に・・・・・・・・





激しい息使いで 苦しそうに喘ぐ匠を浅葱が抱き締める


「匠・・・・・匠・・・・・・」
耳元で何度も名前を呼び続ける浅葱に
「あさぎ・・さん・・」

小さな匠の声がした




刻印 -135へ続く
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刻印 -133

うつ伏せのまま、縛られた両腕で上半身を支え
腰だけを高く突き上げた匠・・


その背中にはハッキリと 刻印が見える
浅葱はその姿を見下ろしながら、自らも服を脱ぐ・・



匠の腰を掴むと 今まで自分の指が入っていた場所に
すでに起ち上がっている自分のモノをあてがい
そのまま手に力を入れて、匠の体を引き寄せる


まだ硬かったはずの匠の穴にそれが押し付けられると
ググッ・・・・・・・・・・と先が飲み込まれた・・


「・・・!!・・  ・・んっぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」


匠の叫び声が響く・・・



「いやあぁあああああ・・やめ・・やめ・・・イヤぁああ!!!!」

泣き叫ぶ様なその声は 浅葱の顔を曇らせた






「痛いっっ!!! ・・・いやっ!!  ・・・やめてっ!! ・・痛いっ・・・!!!」

腰を掴まれ、腕に顔を埋めたまま 匠は手元のシーツを握り締める


必死に逃れようとする匠の体を押さえ付け
繋がったモノを奥へと挿し込んでいく・・



・・・・匠・・・・・
こんな辛い痛みを・・・
無理矢理に犯す様な事を・・・

浅葱は悔しさに唇を噛んだ







「ぁ・・ぁっっ・・・・・ああああああっっ・・・んっっっぁあ・・・・!!」


痛みと 挿入の感覚で 匠の背中が大きく仰け反る




匠が肩で激しく息をし、体を震わせると
その背中の刻印は まるで生きているかの様にうごめき
蛇と龍はその首を持ち上げて、艶かしく淫靡な姿へと変わっていく・・


この刻印は まさに、こういう行為のために創られたのだと
浅葱は匠を組み伏せて 改めて強くその意図を思い知らされる


この体には、既に所有者が居るのだと
この体に手を触れるなと・・・・そう背中の蛇が睨みつけていた






その背中の蛇を 浅葱は片手で押さえ付けると
自分のモノを根元まで飲み込ませる

腰を掴んで匠の体を何度も突き上げた
睨む蛇を屈服させるために・・



「ぁああっ・・ぁあっっ!! ・・あ・・・抜いてっっ! いや いや い・・や!!!!!」





だが・・・

背中に刻印を押され
男達のモノを無理矢理にでも受け入れ続けてきたその体の中は
嫌がり泣き叫ぶ匠の声とは 全く別の生き物の様だった

浅葱のモノを 貪欲に深く深く飲み込んでいく・・

まるで 本物の蛇にでも飲まれる様に
浅葱のモノを強く包み、絡めとるように淫猥に締め付けてくる

そして匠自身のモノも 大きく昂ぶっていた



これが・・匠の体・・・・・・・

匠の体はすばらしい・・・そう言ったハルの言葉を思い出していた






それでも嫌がる匠の叫びは止まらなかった
ただひたすらに 痛い、嫌だと、やめろと泣き叫んでいる

きっとあの地下室でも、こうやって一人で泣き叫び 耐えていたのだ・・
そう思うと浅葱の胸は苦しく締め付けられる





「あ・・あさぎ・・・・・さん・・あさぎ・・・・・」

ふいに名前を呼ばれ我に返ると 自分に組み伏せられた匠が
必死に前方へと手を伸ばそうとしていた


「あ・・さぎさ・・・・・・・・・たすけ・・・て・・」




まだよく見えない目で 自分を探し求めている・・
それは、 今 自分と繋がっているのが、浅葱だと認識できずにいる証拠・・・



「匠っ! 俺は後ろだ!!」
そう言って 体を繋いだまま、浅葱は叫んだ


それでも匠は 前方に助けを求める様に腕を伸ばす

「あさぎ・・・・・・さ・・・・・どこ・・・・」




やはり、見えていないのだ・・
理解できていない・・・
自分がここに居ると・・・
中に入っているのは この俺だと・・・




うつ伏せの方が背中に負担をかけないのはわかっていた
だが、この痛みは俺が与えた物だと認識させなければ 意味がない・・



浅葱は体を繋いだまま匠の体をもう一度仰向けに返した

それは前後に出し入れされる感覚とはまた違った刺激だった


「ぁあああぁっーーー! やめろっ・・痛っ!!! ・・・・いや・・っっ!!!」




刻印 -134へ続く
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刻印 -132

浅葱は匠のモノを その口から解放すると、
匠の膝を持ち上げる様にし 足を上げさせた・・


「・・・・・・・っっんん!!!」

背中の一部にだけ 体重がかかり
傷はその痛みを増し、 匠は思わず声を上げた


浅葱はそんな匠の 露わになった穴の周囲へと 自分の指を這わす




その行為に匠の体が震える・・



「・・・んっ!!・・・・ いや・・・だ・・・・!!」

縛られた腕で顔を隠す様にし、首を振った



浅葱の指が穴に触れ  匠が 「んっ・・」  と声を上げた時には
既に柔らかな舌さえもが その場所を這っていた



指は 何かを促そうと周囲を刺激し
小さく動く舌は ここだと教える様にその場所を動き回る

だが、感度を増し猛っている自分のモノとは反対に
そこは 頑な (かたくなに) 閉じ、侵入を拒もうとしていた・・



無理矢理 縛られ犯された記憶・・
毎日の様に続いた陵辱と痛み・・・


「いやだっ・・・そこは・・・そこは・・・・・やめてっ・・・・お願い・・・・」

両腕で顔を隠したまま 匠が訴える



それでも浅葱の舌は止まる事がない
舌先を細め、匠の穴を刺激し続ける・・




周囲が濡れてくると、指が動き・・・

そして、閉じられた粘膜を掻き分けるようにして
ズズツッ・・ と指先が挿入された・・・


「・・・ぁあああああっっ!!! や・・っ・・やめろっ・・・・!!!」



逃げようとしても 押さえ込まれた体が言う事を聞かず
持ち上げられた足の間から、その指は 益々奥へ入って行こうとする



その異物が入ってくる感覚は・・ 忘れもしない あの陵辱の始まり・・・



「いやだっっ!!! ・・いやっ!!! ・・・やめろっっ!!・・・はなせっ!・・」


指を排除しようと、腰が動くが
それは 余計に浅葱の指を飲み込むだけだった

背中の傷が擦れ痛む・・
匠は首を振り、暴れ、叫び続けた



聞き届けられるはずの無い叫び・・
指は容赦なく 奥まで分け入ってくる




匠の中で浅葱の指が動き始める・・

「ああっっ!! ・・・ぁつ・・・・んっ・・・・・・・・・!」


押さえ込まれた足が震える
中を掻き回されるような指の動き・・
縛られた両手で 浅葱を押し退けようとしたが
痛む腕では力が入らない・・

「ンッ・・ン・・ん・・・・・・・っ・・・・!  やめろ・・・やめ・・」






浅葱の指を飲み込み、喘ぎ暴れる匠の体の下のシーツに
わずかに血が見えた・・・・





浅葱は非情に徹しようと、そう決めていた・・
このまま・・・そう思うが、背中の傷が出血し始めると
その思いが貫き通せなくなる・・・・


匠のため・・・そう思いながらも 愛する者が血を流し、嫌がり叫ぶ姿は
正視するに耐えなかった




「匠・・・うつ伏せになれ」



その方がまだ背中の負担にならない・・

その声に匠は 「・・・いや・・っ・・・」 大きくかぶりを振り
拒否の意思を見せる



「いやだっ・・・・もうやめて・・・・ お願い・・・・そこは・・・イヤだっ・・・・・・・・」



浅葱は黙って 匠の脇腹に手を入れると、そのまま強引にうつ伏せに返す

「ンッ・・・・・・・!!」
まだ治りきっていない肋骨が悲鳴をあげる





そのまま匠の腰を掴むと 自分の方へ引き寄せた

縛られた両手に顔を埋め、腰だけを高く掴み上げられたその体に・・
匠の刻印があった・・・




刻印 -133へ続く
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刻印 -131

自分の傷を這う浅葱の唇が、ふいに止まった


その間に少しでも呼吸をしようと
両手首を縛られたまま 匠は必死に空気を吸い込む・・

キリキリと肋骨を痛ませながら、息音が荒く響く


ハァ・・ハァ・・

ハァ・・ハァ・・


息を整えながら、手を下ろそうとすると

「まだだ・・」
そう言って縛られた両手は また頭の上まで戻され、押さえ付けられる


「痛っ・・・!」
すぐ目の前に 浅葱の顔があった



思わず訴える様に浅葱を見るが、
それが聞き入れられない事は わかっている・・




浅葱は片手で 匠の縛った両手首を押さえ込み
足は 匠の右足を跨ぐ様に押さえたまま、再び匠の唇を奪う

「・・ぁっ・・ん・・・・」   匠の声が漏れたと同時だった




空いていた浅葱の片方の手が 匠のモノを包み込む様に触れた

「・・!! ぁぁっ・・・・・・!!」


思わず顔を振り、塞がれていた唇を振りほどくと
「・・・いやっっ・・・・!!」    咄嗟にそう叫んでいた


浅葱の動きの1つ1つが、悪夢を呼び起こす・・
初めて男の手で触れられた時の感覚・・
そして、その後に続く行為も・・・

・・・また・・・・犯される・・





「いやだ! ・・・・はなせっ! ・・・・・・・いやっ・・・!」


体をよじり、その手から逃れようとするが
両手と片足を押さえ付けられた体は まるで身動きが出来ない



浅葱はじっと黙り 叫ぶ匠の顔を見つめ続けた
そしてその手は・・・容赦なく匠のモノを包んだまま ゆっくりと動き始める・・




「っぁああっ!!!  ・・・んっ・・・ん!!」

キツク目を閉じ、唇を噛んで顔を振る


「や・・・・めろ・・  やめ・・っ!・・・ 離せっ・・!! 俺に触るなっ・・・・!」
その匠の言動は、あの地下室の時へと戻っていた




「匠、目を開けろ!」


浅葱の声で ビクンと体が震える
反射的に閉じてしまった目を開き、目の前の浅葱の顔を 見つめようとする

ハァ・・・ハァ・・・

・・・ハァ・・・ハァ・・・


が、 下半身を覆う浅葱の手の動きに じっとしていられない・・

「あ・・・浅葱・・さ・・・
 い・・・・いや・・  やめ・・・・・・ぁっ・・・・・っ・・・んっ!!」

自由になる唯一の左膝を立て、体を仰け反らせて声をあげる







その匠の声に・・そして、その敏感な反応に煽 (あお) られる様に
浅葱の手は匠のモノを握ったまま 大きく動き始める



「ぁっ!!・・・・んっあっ・・!!」



強弱をつけながら擦られると、嫌だと思いながらも 
匠の若いそれは刺激を受け素直な反応をみせた

抵抗しながら その体は感度を加速させていく・・



浅葱が人差し指で その先の穴をじらすように弄ると
匠は思わず声をあげた


「ぁああ・・っっ・・・んぁっ・・・・・・・!!」

その先からわずかに粘液がこぼれ出る・・




浅葱は 立てていた匠の膝を外へと開く様に倒し、足を広げさせると
自分の体を 匠の両足の間に置く

匠のモノを・・・敏感に反応しているモノを手に取り その口へと運んだ・・



「ぁ・・! ・・・ぁ・・・くっ・・・んっ・・・!!!」


柔らかな口の粘膜が匠を包む・・


「や・・だめ・・・・・・ぁっ・・・・ん・・」
しなやかに体を震わせながら 苦しい息で匠は宙を見つめていた



手を縛られ、自分のモノが刺激され その感覚に抵抗できずにいる


まだ見えない自分の部屋の風景・・

ここは自分達の家だと、そう強く思っていなければ
ふとあの地下室なのかと錯覚しそうになる



「・・・・浅葱・・さん・・・・・・浅葱・・・さん・・・ 浅葱・・さん・・」

これはあの男でも 老人でもない・・
まるで自分に言い聞かせるように 匠は何度も何度も名前を呼んだ

その叫びは 泣き声に近くなっていた



浅葱の動きが大きくなると 思わず足に力が入る
腰を浮かすと、 背中の傷が擦られ痛む


それでも浅葱の舌と口の動きに促される様に
匠の腰もわずかに動き始めていた・・

「・・んっ・・・ん・・・・・っ・・・・・・んっ・・・!」

手首を縛るタオルの端を握り締め
痛みと・・・ すでに快感に変わっている刺激に耐える


「ぁ・・・浅葱・・さん・・・・ ・・・・っっんああ・・!・・・・」



その声に浅葱がやっと顔を上げた




刻印 -132へ続く
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刻印 -130

喉元から真っ直ぐに伸びる匠の胸の傷を 浅葱の指がなぞり
その後を追う様に舌が這う

「ん・・っ・・・・・・・・・・」


上体を支えていた腕が震え、力が入らなくなっていた



ベッドの端に腰を掛けた状態のまま
浅葱の圧に負け、押し倒される様にして体を横たえた


背中の傷の痛みに思わず  ンッ・・ と呻いたが
浅葱は少しも動じる様子もなく・・

隣に座り 匠の体の横に手を付くと
腰下に腕を入れ 匠をベッドの中央へと移動させる



そのまま覆いかぶさる様に 匠の胸で唇を動かしていく・・



匠の体を包んでいたタオルを大きくはだけさせると
しなやかな肉体がそこにあった・・


まだ消えない無残な傷痕さえ、その体を引き立たせる飾りの様に見える

その1つ1つの傷を確認するように 浅葱の舌が動く



「ぁっ ・・・・ん・・っっっ・・・・・・・」

胸の先に舌が触れ、そこを噛まれると 傷の痛みなのか、唇の感覚なのか・・・
匠は思わず声を漏らしていた

 


浅葱は匠の体をわずかに横にし、脇腹にまで伸びた龍の刻印に
唇をつける


「・・んっ!  ぁぁっ・・・  や・・・・っ・・!」



その刻印は 滑らかな匠の胸と、同じ肌とは思えない感覚だった
これが・・  匠の龍・・・


浅葱の指が その傷にそっと触れる・・
いたわる様に、愛しむ様に・・そして悔やむ様に触れた後
その龍さえも凌駕しようと 浅葱は手の掌で・・そして舌で覆っていく・・


それは浅葱自身の戦いでもあるかのようだった
これが匠の・・・・ 愛する者の体なら・・  俺は、全てを受け入れる・・






「・・っ・・・や・・・・いやだ・・・・・・・・」
匠は 自分の刻印を・・あのおぞましい傷の上を 浅葱の舌が這っている・・・
そう思うだけで体が震えた



「いや・・・・や・・・めて・・・」
思わず腕を自分の腰に回し 脇腹の傷を隠す


「手を退けろ・・・」 浅葱の声がする

「いや・・・・・だ・・・・」

首を振ると、浅葱は腰にあった匠の両腕を無理矢理に掴むと
グッ・・と持ち上げる


「んっ!!痛っ・・・・!!・・・・」
匠が呻いても浅葱は止めなかった




そのまま匠の腕を 頭の上まで持ち上げると 側にあったたタオルで
両手首を一つに縛る



「・・・な・・に・・?!  ・・・ いやっ ・・・・やめっ!!・・・」

「じっとしてろ!」



手首を頭の上で縛られ、 無防備に体を曝け出す姿は
鎖で両手を縛られていた時を思い出させた・・


ドンと頭の上に腕を組み伏され
思わず腕の痛みと、蘇る恐怖とで顔を逸らす


「・・・ やめ・・・・・解いてっ・・・!!!」




だがその願いは聞き入れられず
手首を縛られたまま 体をわずかに傾けられ 再び龍に唇を落とされた

「ぁあ・・・・んぁっ・・・・・!」

片膝を立て、体を仰け反らせる
背中の傷が擦られ、疼く・・



腰にかかっていたタオルが落ち、浅葱の目の前に匠の肢体が曝け出された



幾筋もの傷痕をまとったしなやかな体が
両手を縛られたまま、体をよじる・・
その度に、 脇腹から見え隠れする龍と蛇・・・・
そして、匠の甘く切ない声・・・・



それは見る者を昂ぶらせた・・




あの男が・・・ハルが・・この体を抱き、ボロボロにした・・・・
こんなになるまで・・・匠の体を・・ もてあそんだ・・・

そう思うだけで、言い様の無い悔しさと苛立ちが込み上げ
浅葱は 唇を噛み、その動きを止めた・・




刻印 -131へ続く
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刻印 -129

玄関の扉がパタン・・・ と静かに閉まる音がした






浅葱は匠の隣に座り
匠は浅葱の隣で、うつむいたままだったが・・
二人が出て行く音にわずかに顔を上げた



浅葱の指が 匠の顎にかかると
目を閉じたままの匠が もう一度、自分のタグを握り締めた・・


浅葱はそのまま 顎をクッと持ち上げ、自分の方へ向けさせる

「・・・匠・・・」

その声に匠が瞳を開く

「少々、乱暴に抱くぞ・・
 あの地下室で・・  お前が受けた痛みと同じ様に・・
 お前が何を言っても止めはしない・・・
 傷が痛んでも・・・・だ・・・・・  ・・・それでいいんだな?」


「はい・・・
 そうでないと・・・ 痛みを伴わないと・・・・ 意味がない・・・・・・」


「わかった・・・・
 目を閉じるなよ・・・
 ちゃんと目を開けて、側にいるのはこの俺だと、認識し続けるんだ・・  いいな」




それだけ言うと 匠の顎を持つ手に力がはいる
グッと顔を上げさせると その唇で匠の口を塞いだ

「・・・んっ・・!」


唇を覆われるその感覚は以前と同じだった
が、あの甘い感情は  ・・そこには無かった・・


顎を下へ引かれ、わずかに開いた口を割り込んで 浅葱の舌が入ってくる


「・・っ・・・んっ・・ん・・・・・・っ・・」

顎を掴まれたまま、口を閉じる事が出来ず
匠は小さな息を漏らす・・



浅葱の舌が その柔らかな口内を確かめる様にゆっくり動き回ると
そのまま匠の舌を強く絡み取っていく

いつもとは違う浅葱に戸惑いながらも、匠はそれを受け入れていた




顎を押さえられたままで 息苦しく、目を閉じそうになるのを必死で耐え
正面の浅葱の顔を見つめる


・・・・・浅葱さ・・・ん・・・・



わずかに喘ぐ匠から、浅葱の唇が フッと離される

「・・ぁっ・・・・ん・・・・」
ふいに離された浅葱の唇の続きを求める様に 匠の追従の声が漏れた




その小さく開いたままの口に 浅葱の指が挿し込まれ
匠の舌を誘い出すかの様に動き始める・・


その指の動きで、匠の脳裏に シャワールームで見たあの男の影が浮ぶ・・
そして、またあの声が響いた


・・・・タクミ・・・・舌を出せ・・・



「・・・ !! ・・・  ・・や・・・やめっ・・・・!」

男の声に 思わずベッドの端を握り締め、首を振って、目を閉じた




・・だめだ・・・・・
・・・・・・目を・・ ・・目を閉じ・・・るな・・・・・・
・・あの男じゃ・・・・ない・・・・・・・・・・・・




幻像を自ら打ち消す様に 無理矢理に瞳を開く

目の前には浅葱の顔があった・・
確認するように浅葱の頬に手で触れ、その体温を感じると少しだけ安堵した

そして、その指の求めるまま 口を開け、震える舌を差し出した


「そうだ・・  それでいい・・・・」
浅葱の声がし、そこに唇が触れる



浅葱もまた、匠の 深く吸い込むような瞳を見つめていた






浅葱の唇が匠の舌を誘い、自分の口中へと招き入れる・・

「ぁ・・・・ぁっ・・・・んっっ・・・」


解放してもらえないその行為に 息が出来なくなっていく・・



ハァ・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・



何度も舌を絡ませ、唇を合わせた後
匠の息が上がり始めるのを見ると、浅葱の唇は匠の顎から首へと降りていった


「ん・・・・・ぁ・・」
背中の傷に ゾクゾクと何かが這う感覚がする


ベッドの端に座ったまま 両腕を後ろについて体を支え
顔を上に向けて天を仰いだ


匠のその首筋に、浅葱は唇を這わせ始める




刻印 -130へ続く
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刻印 -128

「出来る事なら、アイツの死の真相を明らかにしたいとは思う・・・
 だが、今思うのはそれだけだ

 そういう意味では アイツはもう 俺の中にはいない
 きっとアイツも・・笑って許してくれるはずだ・・」


「どうして・・・・俺・・・・を・・?」


「どうして・・・・ か・・・
 そうだな・・
 それは俺にも判らなかった・・
 居なくなったお前を探している間中、ずっと考えていた
 オヤジに怒鳴られながら・・ な・・
 
 会ったばかりのお前が 何故、これほど気になるのか・・
 どうしてこんな気持ちにさせるのか・・・・
 
 だが・・お前の目が見え始めた頃・・・・判ったんだ
 それが 何故なのか・・」



遠くを見るようにしていた視線を外し、浅葱は隣の匠を見つめる
匠もその視線に魅かれる様に浅葱の顔を見た


「匠の・・・お前のその目だ・・」
浅葱の指が匠の頬に触れる


「目・・?」

「ああ、その瞳の色だ・・・・ 
 お前のその瞳は ハーフだったジンと同じ色をしている・・・・」
 

「・・瞳・・・」
匠は少し首を傾げ、遠い記憶を辿る様に目を伏せた


「・・・・・確か・・・・小さい頃に・・
 1/4だか・・1/8だか・・・・って聞いた事はありますが・・
 でも、 あまりにも 薄すぎて・・気にも留めてなかったし・・
 今まで そんな事を、言われた事も無かった・・・・」


「初めてお前を見た時・・ きっと俺の中では それを・・・
 ジンと同じだと・・  感じていたんだろう・・
 自分でも気が付かなかったが・・  きっと・・
 それで無意識に求めたんだと思う・・

 だが、最初のキッカケがそうであっても、今は・・
 お前がアイツの代わりだなんて思ってはいない

 お前はお前だ・・

 お前の存在は それだけ俺の中で大きくなった・・」  






「でも・・・・・・・・
 俺には・・・・・・・・印が・・・・  こんな体の俺を・・・・」

「その傷も含めて、全てが今のお前だ・・
 お前を抱く、 俺が忘れさせてやる・・・そう約束したはずだ」

「・・・・・・」

「嫌か? 俺では不満か?」

「違う・・・・・・・・嫌なんかじゃない・・・・・・」




そこまで言うと匠も言葉に詰まった

嫌な訳がない・・
こんなにも・・・・ こんなにも浅葱さんに・・・  魅かれているのに・・



その浅葱が 自分を愛していると、言ってくれているのに・・






ゆっくり目を閉じると
「俺も・・・浅葱さんでなければ・・・・・・嫌だ・・」
ポツリと呟いた

その声で浅葱は匠の頭をグッと引き寄せると 両腕で自分の胸に抱き締めた





「・・・俺を・・・俺を抱いて・・・・・下さい・・ 

 忘れさせて・・下さい・・ あの男を・・・

 この体の痛みは・・・・ あの男じゃないって・・・・そう思わせて・・・・」



浅葱の胸に抱き締められたまま
匠が まだ冷たい右腕を、 浅葱の腰に回す


その匠の顔を下から覗き込むように 浅葱はその顔を傾けた

「本当に・・・・・・いいんだな?」



その声に匠が目を開ける

正面に浅葱の顔があった・・
ん・・と、匠が頷く




そのまま匠も暫くの間、浅葱の顔をじっと見つめていた



「お願いが・・あります・・・」

「なんだ・・?」

「途中・・・・・俺が・・・・・何を言っても・・・何をしても・・・
 絶対に止めないで・・・

 俺がいいと言うまで・・・
 俺の中の記憶が 浅葱さんだけに・・・・
 この痛みが・・・全て浅葱さんの記憶だと思えるまで・・・絶対に・・・・
 ・・止めないで・・・ 」



「ああ・・わかった
 お前の痛みを・・・記憶を・・ 全部俺のモノにしてやる
 忘れさせてやる・・・・・」



そう言うと 浅葱は立ち上がり 
少し開いたままにしておいた部屋の扉を パタンと閉め
中から鍵をかけた



扉が閉められ、鍵が掛かる音に 匠の体がわずかに震えた
強くタグを握り締める・・









リビングに居たオヤジは その扉が閉まる音に顔を上げた



「・・・おい・・・流・・・・・」
ソファに座って 匠のボールを握って遊んでいた深月に声をかける

「ちょっと散歩に行かねぇか?」

「はぁ?? おやっさんとですか??  嫌ですよおー・・この暑いのに・・」

「そんな事言うなー・・・ あ! ・・タバコだ・・タバコ・・・じゃない・・
 アイスだ! アイス買ってやる!」


嫌がる深月を 「まぁまぁ たまには・・!」 そう言いながら
オヤジが無理矢理 部屋から引っ張り出して行く




刻印 -129へ続く
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刻印 -127

「・・・・・・・   でも・・・・・ 
 浅葱さんには・・・・・・」


浅葱の言葉に 顔を上げた匠だったが
すぐにまた そのまま視線を床に戻した



「俺には・・・? 何だ・・?」

「大事な人が・・ 居るんじゃ・・・」
匠が 自分の胸のタグを握り締める・・



浅葱さんの胸に掛かっていた 2つのタグ
あれがもし形見であったとしても・・  浅葱さんは忘れられない人が居るのだ・・
・・そう思っていた


あの うるさい場所で感じた 浅葱さんの涙も
時折見せる悲しそうな表情も・・・
すべてその人の為なのだと・・





「ああ・・・そうだな・・・」
下を向き、タグを握り締めたままの匠の横で 
何一つとして動揺した素振りもない浅葱の声がした



「・・・・・」

やはり・・・そうなんだ・・・ 

出かけた声を飲み込んだ



否定して貰えない事が辛かった
浅葱が掛けてくれた自分のタグを握る左手に力が入る・・






「だが、もうアイツは・・・・ ジン は居ない」


「やはり・・ 形見・・・ もう亡くなって・・・・
 ・・ジンさんて・・・言うんですね・・・
 浅葱さんのチーム・パートナーだった人・・」


「ああ・・・
 だが、一緒にチームを組んでいた訳じゃない
 俺達はそれぞれが一匹狼、一人で仕事をしていた
 
 お互い、自分の事を話すのが苦手で・・
 似た者同士だった・・
 だから惹かれ合った・・

 アイツの事は・・
 いつかは・・・お前には・・ 話をしようと思っていた・・」



匠は黙って小さく頷く・・
浅葱は匠の肩を抱いたまま、顔を正面に向けた



「俺達はいつも一緒に居た訳じゃない・・
 仕事もお互いバラバラだった

 あの日は・・・
 珍しく、アイツの方から仕事を手伝って欲しいと連絡があって
 俺達は一緒に出かけた

 だがその日も、いつもと同じ様に 詳しい事は何も話さず、聞かず・・
 それがいつもだった・・
 それでいいと、思っていた・・・


 ・・そしてアイツは死んだ

 その時、俺も重傷を負い 意識を取り戻した時には
 アイツは もう、灰になっていた・・

 俺の手元に残ったのは、爆発の現場にあったというあのタグ1つだ・・・

 もっと、話をしていれば・・・・ 死なさずに済んだかもしれないのにと
 ・・今でも思う・・・・」


「爆発って・・・あの・・・」

「ああ・・ 俺が昔、審議会にかけられたのはそれだ
 だが 俺は・・・ アイツが何故 死んだのかも詳しくは知らない
 それは今でもわからないままだ」




以前 唇を合わせた時に、浅葱が 「何もわからないままでは・・・・」
そう言って 酷く悲しそうな表情を見せた事を思い出していた




だから・・俺にももっと自分の事を話せと・・・・


浅葱さんはそんなにも・・その人の事を・・・・
「愛して・・・・たんですか・・・?」 最後の思いが言葉になってこぼれた

「ああ・・」


その一言で匠は浅葱の顔を見た
じっと前を向いたままの浅葱の横顔を・・





話し終わり、浅葱が視線を匠に戻すと
匠は 反射的に目を逸らしていた・・




そんな匠を見ながら 浅葱は自分のシャツのボタンを外していく

「浅葱・・・さん・・・?」
匠の声にも手を止めず、ボタンを全て外すと、浅葱は自分のシャツを脱いだ


「だが・・・アイツはもういない」

そう言って 匠の右手・・・・匠が自分のタグを握る手とは反対の手をとると
自分のタグに触れさせる・・


「・・・・1つ・・・・?」

「ああ・・
 あの日・・・お前をあの うるさい場所へ連れて行った日・・
 忘れさせてやると、約束した日だ・・・・

 あの時、俺は アイツに別れを言ってきた・・・もう忘れると・・・
 これからは・・・匠だけを・・・お前だけを愛していくと・・

 あれ以来 あのタグは付けてはいない・・」



そう言うとまた浅葱は視線を遠くへ向けた





浅葱の言葉に 匠の胸が熱くなる・・・

片手に1つずつ・・・浅葱と自分のタグを握り締めた
手が震える・・



あの時の浅葱さんの涙は・・  決別の涙・・
愛した人を 忘れられない苦しみの涙じゃなかったんだ・・・・




刻印 -128へ続く
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刻印 -126

匠がシャワールームへ入ってから かなりの時間が経とうとしていた

浅葱は 脱衣室の扉を正面に見る廊下の壁に 体を預ける様にもたれ掛かり
じっと腕を組んで目を閉じていた


中からは水の流れる音だけが聞こえている



「・・・匠・・・?」

ふと胸騒ぎを覚え目を開けると、扉の向こうへ声を掛けた

が、返事はない・・




脱衣室の扉を開けると 摺りガラスのシャワールームがある

その複雑に光を屈折させる摺りガラスの中に
万華鏡の様な匠が座っている姿が見える


「匠・・? どうした? 大丈夫か?」

もう一度外から声を掛けるが
中の人影は動きもせず、返事も返って来ない


「・・・匠・・・開けるぞ・・・!」




ザーザーと勢いよく流れ出るシャワーの水幕の中で 床に座り込み、
ただ茫然と頭から水を浴び続ける匠の姿があった

浅葱が入っても 顔を上げようともしない



「匠っ!!」
思わず中に走りこみ、シャワーを止めようと手を伸ばす



「止めないでっ!」
匠の声が シャワールームに響く


「・・・・まだ・・・・・・・・」

それだけ言うと また人形の様に正体無く黙り込んだ




「ダメだ、 もう終りにしろ!」
浅葱は匠の声を無視し シャワーを止めると匠の両肩に手を掛ける
その肩は冷たくなり、水幕の消えた顔は青ざめていた



慌てて 脱衣所からバスタオルを数枚掴むと
匠の冷たい体を包み込む

それでも匠は 身動き一つしない・・
ただ一点を見つめ、茫然と座り込んでいる



「しっかりしろ・・・・・・・匠・・・」
その声に 髪からポタポタと雫を落としながら やっと匠が顔を上げた



「・・もういいだろ・・・部屋へ行こう・・」
そう言うと 浅葱はバスタオルに包んだまま匠を立ち上がらせる

匠の膝がガクンと震え 浅葱のシャツを握る
冷え切ったその体には まるで力が無い



浅葱はそんな匠を 軽々と抱き上げると、匠の自室へと連れて戻った








匠をそっとベッドの端に座らせ 頭にタオルを被せた
濡れた髪を拭き、体を拭く・・

匠は ベッドの端を握って体を支え、目を閉じたまま じっと動かなかった




「傷は痛んでないか・・・? 寒くないか・・・?」

そう聞く浅葱に 匠はただ黙って頷いた




手の甲で 匠に触れてみる・・

寒くないと言いながら、いつもは熱を帯びている匠の頬も体も
氷の様に冷たかった










暫くして ずっと黙っていた匠が 下を向いたままポツリと口を開いた・・


「浅葱さん・・・・・・俺・・・・・」

「どうした・・・・?」



匠の隣に座り、浅葱が体を温める様に 肩を抱き寄せる



「俺の体の中に・・・ あの男がいる・・・」


・・・匠・・・
その声に 匠の肩を抱く浅葱の腕に力が入る



「わかるんです・・・
 一度・・・・・いや・・・・何度も何度も・・・
 あの男達を受け入れた この体だから・・・・・わかるんです・・・・


 俺の・・・・
 俺の体の中に、あの男がいる・・・・・・
 それが・・
 どんなに流しても・・・・・消えない・・・忘れられない・・・・・」



ベッドの端に座り シーツを握り締めた匠の足元の床に
ポツポツと雫が落ちた



「匠・・・」


浅葱も黙ったまま目を閉じていた
そしてふいに口を開いた・・


「匠・・・・・覚えてるか?  あの約束を・・・・」

「約・・・束・・?」
いきなりの浅葱の言葉に 匠が聞き返した



「そうだ あの時の 約束・・・・
 必ず 忘れさせてやると・・・そう言った・・・・あの約束・・・・」



それはあの騒がしい場所へ行く途中
車の中で浅葱が言った言葉だった


”今日は2つ、約束しましたよ”  匠もそう言ったのを思い出す・・

「・・はい・・・・」








「・・・・お前を・・・・ 抱く・・・・・」

浅葱の言葉に 驚いた様に匠は顔を上げた





刻印 -127へ続く
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刻印 -125

いつもは ここまでだった・・

いつもはここで 無意識に目を逸らした・・





だが今日は・・
その背中に ゆっくりと・・・ 朝のあの映像が重なり始めていた
ユラユラと揺れながら 蜃気楼の様に・・



それは徐々にハッキリと浮かび上がってくる

視界に入るシャワールームの壁や床は まだモノクロだったが
その体だけは 恐ろしく鮮明な色を持ち、匠の目の痛みを増長させていく



・・・目を逸らすな・・・
そう自分に言い聞かせ 痛みを振り払う様に、頭を振って目を細めた



「・・・んっ・・」
重なりダブって見えていたモノが 焦点を合わせ
揺らめきが止まると そこには自分の龍が居た



肩から腰付近にまであるそれは 蛇と絡み合い
お互いを喰い尽す様に交わっていた
その姿は 血を流しながらあの男を受け入れた自分・・


自分と、あの男との行為そのままだ・・・・




これを・・・
今まで俺は みんなに平然と見せていた・・・


初めて 医務室で見られた時、皆が絶句した事を思い出す
あれからは皆の優しさで リビングでも シャツを着ないでいる事も多くなった


そんな姿でも・・・  あの流さんでさえ、今では何も言わず
普通に明るく接してくれる・・



これを目の前に ・・・話したり・・・笑ったり・・・・







クスクスと笑っていたあの男の顔が・・そしてその体が目の前に浮かぶ


ほら・・タクミ・・・・もっと・・もっとだ・・・・
・・・声をだせ・・・・タクミ・・
ここに私のモノを 受け入れろ・・・
自分でイけ・・・
タクミ・・・・・よがってるのか・・・
舌を出すんだ・・タクミ・・
足を開け・・・・・



タクミ・・・・タクミ・・・・

・・・タクミ・・・・タクミ・・・・・・・・

頭の中で あの男の声が幾重にも響き始めていた
最初はまだ小さかったその声は じわじわと頭一杯に広がり
耳鳴りの様な不快感を伴って 匠の神経を覆っていく




・・・ハァ・・・・・ハァ・・・・・


・・・ハァ・・・・・ハァ・・・・・



苦しくなり シャワーに片手を掛け 体を支える



そのままズキズキと痛む腹部を押さえた
この痛みは・・  あの男・・・・・
俺の中に・・ ここに・・・  ずっとあの男が居る・・・・






シャワーのレバーを引いて 思い切り頭から水を掛けた


ずぶ濡れになりながら、このまま全ての記憶や・・あの男の穢れ (けがれ) が 
流れてしまえば良いのに、と思う・・・・


背中も胸も 体中の傷がビリビリと痛み
息が続かなくなり、余計に苦しさに喘いだ



立って居られなくなり、床に座り込む・・
それでも 頭から水を流し続けた



悔しかった・・
自分自身にも・・・あの男にも・・

全て・・消えろ・・




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刻印 -124

その日の午後、リハビリのメニューを終えると
匠はオヤジに 「シャワー、行ってもいいですか?」 と切り出した


出血や痛みが少なく、オヤジの許可が下りれば シャワーは許されていた
が、万が一の事も考え オヤジはいつも 自分の時間が空いている時という条件で
OKを出していた


「ん? ああ、そうだな、 行っていいぞ」



午前中は 例の審議会の話で落ち着かない部屋だったが
今は、匠も含め 全員が平静に戻っているように見えていた




「だが、出血が酷かったり、痛む・・・」

「痛む様なら、すぐに出て来い・・・・・・ ・・・ですよね
 それ、もう何度も聞きました」
匠がクスリと笑う様に オヤジの口調を真似をしてみせる


「それに・・ あの地下室では・・すぐに水を掛けられました
 痛むのは慣れてます」


その声に ソファに座っていた浅葱が 怪訝そうに顔を上げた

今まで、匠の方から進んで あの地下室で・・・と
当時の出来事を話した事は 一度もなかった





「じゃあ・・・・」

そう言って匠がシャワールームへ歩いていく




その後を浅葱が追った


匠は浅葱の気配に 「いつもすみません・・」 と言う

腕がまだ自由に動かせない匠は
シャツの脱ぎ着には苦慮していた

匠が自分でボタンを外すと、後ろから浅葱がシャツを脱がせる
この一連の行動も 最近ではよくある事だった



「匠・・・・」
浅葱が後ろから声をかける
目の前には、あの匠の背中があった・・

返事をしない匠に浅葱が続ける

「無理を・・・するなよ・・・」

「・・・・・・」






長い沈黙の後、 匠が一言 「・・・はい」 とだけ答えた





浅葱が脱衣室から出ると
中でガチャと シャワールームの扉が閉まる音がする




浅葱はその場を動けなかった
匠は自分の傷と・・・そしてあの男を ”消化” しようとしているのでは・・・
そんな気がしていた

じっと閉じられた扉を見つめる

中で今、匠が何を思っているのか・・・・








匠は一人、シャワールームの中にある大きな鏡の前に背を向けて立っていた

一度目を閉じてから・・
振り返り、その鏡を見つめる



・・・ンッ・・・!
ズキッ・・と頭を刺す様な目の痛みに襲われながら
それでも目を細め、鏡を睨みつけた





・・・そこにはいつもと同じ モノクロで霞んだ自分の体が映っていた




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刻印 -123

「・・・じゃあ、 そこへ座れ」


オヤジに促されて 浅葱が匠をソファへと座らせる
息巻いていた深月も匠の隣に 大人しく座った




「審議会の呼び出しが来たのは、お前が帰った次の日だ
 すぐにでも連れて来いというのを 今まで先延ばしにしてきた
 この件、最初から罠だった・・・というのは判ってるな?」


「はい・・
 あの男が・・・・・浅葱さんを呼ぶ為だと・・・そう言ってました・・」

ソファに座り、膝の上で組んだ両手を見つめながら匠が答える





「ああ・・
 俺と恭介は・・
 あの男の組織と、もう何年もダラダラとやり合っていてな・・
 今回も、 俺の中に またここかと・・惰性もあったのかもしれねぇ・・
 
 上層部との噂は全く無い訳ではなかったが・・
 まさか本当だとは思っていなかった・・
 
 だが・・  透・・・さっきのヤツだが・・ アイツの言った事に間違いはねぇ・・
 組織の中に裏切ったヤツがいた
 そいつと手を組んで、今回の件は始まっていた・・

 
 これは当初、恭介を呼び出す罠だった

 奴等は お前をエサに恭介をおびき出し・・ そう思ってたんだろうが
 いつの間にか ターゲットがお前に・・・匠に変っていた・・
 
 今は、恭介を殺って、匠を連れ去る・・ それが最終目的・・・ だろうな」





深月が匠の隣で 小さく 「 ・・クソッ・・・」 と呟くのが聞えた




 
「だが、それが簡単にいかないと判ると・・
 救け出された匠・・・ 
 お前がそのまま 表に出てこなくなる事を危惧した奴等は・・
 最後に 大掛かりな爆破騒ぎを仕立て上げた
 
 
 出てこなければ・・ 権力で無理矢理にでも外に引き摺り出せばいい・・・
 それがこの 審議会ってわけだ・・」



「お前を必ず奪い返す・・・ヤツは俺に そう言った・・」
浅葱が悔しそうに言う



「奪い・・・返す・・・・・
 じゃあ・・・・またあの男が・・・・
 現れるかもしれない・・・って事・・ ・・・・ですよね・・・」


「ああ・・そういう事だ」





オヤジはそこで一度息をつく・・・・・


「匠・・今のお前にはまだ酷かもしれんが・・・」
「構いません・・・・・・続けてください・・」



「ん・・・・
 今回・・  いやもう既に・・・だ、 この写真はバラ撒かれた
 
 聴聞・審議会は言葉通り 事情聴取の場だ
 この写真について何を聞かれ、何を言われるかはわからんが・・・・・
 
 だがそれが判っていても、そこに今回の黒幕がいる以上
 お前も俺達も カタをつける為に行かなきゃならん・・・」


「・・・・大丈夫です・・
 逃げていても・・・何も終らない・・・・
 この罠からも・・・あの男からも・・・」

匠は両手を握り締めたまま、オヤジの声の方へ顔を上げた





「わかった・・・ 
 では、準備が出来次第 出向くと・・そう返事をするぞ
 奴等もそれなりに何かの手を打つ時間が必要だろうから・・
 また向こうから何か言ってくるだろう・・」
フンッ・・と皮肉の様にオヤジが言う

「はい・・」


匠はそのまま何かを考え込む様に黙った




「じゃあ・・これで一応 この話は終りだ!  
 
 匠は落ち着くまで少し休んでろ・・
 ・・落ち着いたらまた リハビりだ」

オヤジが匠の肩にポンと手を置いた




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刻印 -122

目の前に突きつけられた自分の映像・・
逃れられない・・・


匠は再び目を開けると、無意識にタブレットに手を乗せ
自分の指で そこに映された背中の刻印に触れていた




呼吸が上がると全身が痛んだ・・

男の陵辱を受けた体が、 あの地下室で行われた様々な記憶を・・
あの男との行為を・・・・
呼び戻す様にズキズキと疼き始める

腰に腕を回し、痛む下腹部を押さえ込む

 

浅葱は そんな今にも倒れそうな匠の姿を 辛そうな表情で見つめると
そっと肩を抱いて支えた







「これは・・・ うちの組織の中に 奴等と繋がっている者がいると・・
 そういう事になりませんか?」


男の声は話し続ける・・


「なので今回も組織内の通信ではなく、
 私個人が知っていた先生の昔のIDで連絡を取らせて頂きました

 ・・このID・・・
 勝手に詮索され、嗅ぎ回られるのを好む人間はいない
 出来ればこれは使わずに、 自力で先生を探したかったのですが
 今回は急を要しましたので・・・」



「そうか・・・」

オヤジは少し考えたあと、顔を上げた



「だからと言って、こちら側からは 何の返答も出来ない
 そして何一つ、こちらの情報をお前に渡す気もない

 もし、お前の言う通りだったとしても・・
 その裏切り者が 透・・ お前で無いという保証はないからな・・

 自作自演って事もある

 お前には悪いが・・ 
 今のこのチームとお前・・
 どちらを選ぶかと聞かれれば、 俺は今の・・こいつらだと 即答する
 こいつらを これ以上、危険な目に 遭わせる訳にはいかねぇんだ」



澱んだ重い部屋の空気を 一変させるかの様な、強い気の声だった




その拒絶の答えに 男は何故か満足そうな笑みを浮かべる

「羨ましいですよ
 それほど先生に大事にしてもらえるなんて・・
 
 ・・・わかりました、実は 私も・・
 最初から、先生の  ”解答”  はそうだと思っていました
 
 なので、こちらも・・・ 私も今回の審議会の出席、既に辞退させて頂きました
 この私の答えは合格点でしょうか? 先生」


そう言って男は オヤジを見た



「勝手にしろ・・」
オヤジがそう言うと 通信は切れた








通信が切れると 真っ先に声を上げたのは深月だった


「な・・・・何なんですか!  あの人!!
 おやっさんを 先生とか言いながら・・・・
 しかも 組織のお偉いさんみたいな事を言うくせに
 結局、何も手伝ってくれないって!!!」


深月は 隣で苦しそうに立つ匠をかばう様に
わざと大きな声を出した


「そうだな、流・・・・
 だが もし 透が連絡して来なかったら、 今回の審議会・・
 こちらは何も知らないまま のこのこと出向いて行っただろうよ・・
 少しでも情報が手に入っただけでも 善しと・・・・・・」



「おやっさん・・・・・・その審議会・・・
 俺はまだ・・・・何も聞いていない・・・・・」
苦しそうに息をしながら 匠が二人の話を遮った


「匠・・・・今は・・・」  浅葱が匠を支えたまま言いかける



「ああ・・・そうだったな・・・
 だが・・・この話はまた後だ  ・・・少し休め、匠・・・」

オヤジが側へ来て 匠の首筋と額に手を当てる

「苦しいだろ・・・熱もある・・・」
脈を診ながら言う



「大丈夫ですから・・・・・ 今 ここで  ・・聞かせてください
 ・・・・俺の事です、話して下さい」


今まで逃げて来た事、
今まで避けてきた現実と向き合う時が来ていた・・・・




刻印 -123へ続く
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刻印 -121

画面に大きく映し出された匠の写真・・・

しかもそれは あの地下室での写真だった

薄暗い部屋の金属の台の上、ライトを浴びる様に照らされているのは
全裸でうつ伏せに横たわる匠の姿・・・・
そして背中の蛇と龍・・


 

思わず4人が息を呑んだ




匠は声も出せず、ただ それ を映し出す画面を見つめていた
心臓がドキドキと脈打ち、体が震える・・・・


客観的に自分の姿を見たのは初めてだった
思い出したくも無い・・  あの地下での自分の姿・・・・


そして何よりも 背中の刻印・・

視力が回復しきっていない今、
匠はまだ 自分の背中の傷をハッキリと見た事がなかった
シャワー室でも、その鏡に映る自分の姿は いつもモノクロで
ぼんやりと霞んでいた




それが今、鮮明な画像となって目の前に突きつけられていた

これが俺の体・・・・・・




目を伏せ、その画面・・ 一点を見つめ微動だにしない匠に気が付くと
浅葱は初めて動いた

スッと匠の後ろへ回り テーブルの下で 何も言わず匠の手を握り締めた
その匠の手は 動揺し震え・・呼吸もわずかに乱れている


浅葱が 匠を部屋の外へ出そうと手を引くが
匠は ゆっくりと首を振るだけで動こうとはしなかった



今まで、一番肝心な部分から逃げていたのだと 思い知らされる
正直、見たくも聞きたくもない・・ 

でも もう逃げてはいられないのだと・・・・







「どうして・・・・・・・・」  
やっと一言、 部屋の静寂を破ってオヤジが呟く



「ですよね・・・こんなショッキングな写真が ここにある事自体が不自然だ・・
 これを入手できるのは  こんな物を作った・・・・

 ・・・・失礼・・・・
 こんな物と言うのは・・・ 一ノ瀬君に失礼な発言だったね

 そこに居るんだろ? 
 今回の件の当事者なんだから・・
 ついでに・・  ここに名前が連なっている深月君・・
 この4人が今の先生のチーム・・・」




「話を続けろ・・ 透・・・」
余計な事だ、と言わんばかりのオヤジの低い声がした



「そうですね・・・
 こんな写真を撮れるのは、当事者のみ
 
 これがどこで撮られたのか、私にはわかりませんが
 先生は再三の出頭要請に  一ノ瀬君の体調が回復してから・・と回答しておられる
 と、言う事は、一ノ瀬君が勝手に外でこんな物を見せて歩く訳もない・・
 
 そのあるはずの無い写真がこうして添付され・・
 今回の出席予定者全員に配られた・・・」



「配られた・・・?
 20人以上がこの写真を既に手にしたと言うのか?!」



「確実ではありませんが・・・たぶん・・・
 私と同じ物を受け取っているなら・・・」






・・20人以上・・・
それだけの人間が、既に自分のこの姿を・・この体を見ている・・・・


浅葱に握られた手に力が入る
思わず目を閉じたが、その瞳の裏には あの映像が・・
自分の背中を這う淫猥な映像が 残像の様に付き纏う

苦しかった・・
息が出来なくなっていく・・




刻印 -122へ続く
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刻印 -120

部屋でずっとオヤジが誰かと通信をしている
何故か浅葱は その側を離れようせず 立ったままだ


ソファで深月と左手のリハビリをしていた匠には その姿は見えず
小さくやりとりされる声も こちらまでは聞えない

だが 時折 それを気にし、チラチラと伺う深月の動きは見えていた




二人は顔を見合わせ ソファから立ち上がった




それを浅葱が  近付くな・・ と無言で静止する

画面に映らない様、 二人に反対側へ行け  と合図すると
浅葱はそのまま オヤジの横に 付き添う様に立っていた




深月は 浅葱の合図がまだ見えない匠を促す様にして
指示通りに反対側へ回る

おやっさんは普通に話しているように見える
が、浅葱さんは近付くなと言う・・・



深月は自分のタブレットをチラ・・とオヤジと浅葱に見える様にかざし
目配せをした

オヤジは その深月の動きに気が付くと
通信相手・・ 透 に悟られない様に目で頷く




深月のタブレットにオヤジと相手との通信が中継され始めると
匠と深月はそれを無言のまま 食い入る様に見つめた


4人の周囲に・・・
穏やかだったマンションの部屋に 妙な緊張感が漂い始めていた・・





そこには 黒いシャツに黒ネクタイの知らない男が映り
後ろに見える壁は かなり重厚で広い部屋を思わせる



この服・・・ 自分達も同じ物を持っている・・・・
という事は組織内の人間・・・
誰なんだ・・この男・・・


深月と匠、同じ疑問を持っていた





そんな二人の疑問をよそに オヤジとのやりとりは続く


画面の男が話し始めた

「私が最初に違和感を感じたのは・・ この審議会の出席人数
 今までにも何度か出席しましたが、普通ならば せいぜい5・6人
 多くても10人程・・

 それが今回は20人以上の名前が連なっている
 
 しかも 有識者と称し、民間人まで・・
 まぁ・・民間人とはいえ、政界・財界、その関係者・医者・学者等なんですが
 それでも多すぎる・・」



「20人だと・・?」
黙っているはずのオヤジが、思わず声を上げた
オヤジの元にそんな情報は 1つも入っていなかった



「やはり・・・・ サプライズ・・・だった様ですね・・」





・・・・・審議会??
匠には そんな話さえ初耳だった

今回の件で・・ 自分のせいで・・ みんなが審議会にかけられるのか・・・?
思わず隣の深月の方を見るが、その言葉に何ら驚いた様子はない

みんな知っていたのか・・・
思わず唇を噛んだ・・







そのまま男は話し続ける



「今回の事件・・・
 組織を無視し無断で人員を動かし・・・ しかもこの破壊規模の大きさ・・
 我々でも、これを揉み消すのには苦労しました

 お陰で 報道・警察関係各署に かなりの手間と経費がかかった訳ですから
 その点では 審議会が開かれるのも不思議ではありません

 だが・・ この件、あまりにも派手で雑だ
 
 建物の大掛かりな爆破など、 先生がいるチームが起こしたとは・・・
 少なくとも、先生を知っている者には 到底、考えられない
 

 いくら、そこに浅葱君が居たとしても・・・です
 浅葱君は 前にも一度、 爆破絡みの件で
 審議会にかけられていますよね?」



オヤジが画面を睨む
「透、お前どこまで調べ・・・・」


「その通りだ  ・・だからどうした」
オヤジの声を遮って 浅葱が平然と答えた




「いや・・・別に
 まぁ それは過去の事・・
 先生と知り合う前ですから・・・・今は大丈夫でしょう・・

 そして次の疑問はこの添付写真・・・
 もちろんこれも 先生の所には届いていないでしょうが・・・・」


そう言って男は一枚の写真を画面に映す



そこには 匠が写っていた




刻印 -121へ続く
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刻印 -119

「まさか 本当に透 (トオル) か!?」

「ええ!」

「何年ぶりだ・・・・お前が高校生の時だから・・・・まぁ何でもいい!
 元気そうで良かった!」


側で見ていた浅葱も 相手が怪しい者では無さそうな事にホッとする




「やっと先生を見つけましたよ!」

「もう先生って言うな」  オヤジが照れくさそうに笑う

「先生は先生です
 家庭教師をして頂いたのは・・ 
 あれは先生が医大生で・・私が大学受験の時ですよね・・
 本当に懐かしい・・・
 
 ・・・・・・で・・側にいるのは・・・・君が浅葱君・・・・・・・・だね」

そう言われて浅葱に緊張の色が走る





どこで誰と一緒にチームを組んで居るか
それは誰にも知られているはずが無い事だった
まして 医者になったはずの かつての教え子が・・



「・・・どういう事だ・・?」  ・・オヤジの声も低くなる

「驚かせてしまいましたね・・・これです」
そう言って男が一枚の紙を画面に映す

「これは・・・」

それは あの聴聞・審議会の呼び出し用紙だった




「お前、本当にこの組織に・・こっちへ入ったのか・・」  

「ええ・・・先生を追いかけて来たんです
 なのに どこまで上がっても先生は見つからなかった」

「だろうな・・・
 ここでは組織内とはいえ、個人の情報は易々とは漏れない」

「おかげで気が付いたらこれです」



男が側にあった漆黒の上着の肩に付けられた 階級章を見せる
そこには5つの星が連なっていた


「それは・・・・五人いる NO.2の階級章・・・」

「はい、今ではこの中の一人ですよ・・」

画面の男は照れくさそうな、そして少し面倒臭そうな顔をして見せた





「この上は組織 NO.1ただ一人・・・
 ここまで上がっても先生が居ないから
 もしかしたら先生がNO.1なんじゃないかとさえ思ってました・・
 まさか、まだ少将だなんて・・」



「俺は旧式の軍隊みてぇな階級なんかに興味は無ぇんだ
 気の合う仲間と楽しくやれりゃあいい」
オヤジが皮肉っぽく笑う



「言われる通りです・・・
 この組織はまるで 遠い昔の帝国遺産
 この恥ずかしげもない軍服といい階級といい・・・
 まぁ、それだけの歴史があるんでしょうが・・
 
 それでも先生らしいですね
 一生懸命 先生を追いかけて上がってきた私が馬鹿らしい」
そう言って男も笑った







「・・・・・で?
 まさか 昔話をしに探した訳じゃないだろう?
 その呼び出し用紙・・」

オヤジの顔から笑みが消え、険しささえ漂わせる顔つきに変る





「ええ・・・今回の審議会、私にも出席要請がありまして・・
 それで先生の名前を見つけたんです
 これが無ければ、永久に見つけられなかった」


「だが・・個人的に関わりがある者が選ばれる事はないはずだろ?」
オヤジが不振そうに画面を見る


「確かに・・  でも私と先生の繋がりは 30年近い昔・・
 まだ私が高校生の頃ですからね・・・
 さすがにそこまでは 調べがつかなかったのでしょう・・」


「ふん・・・それも落ち度だな・・・・・それで・・?」


「正直、驚きました
 まさが先生程の人が 審議会にかけられるなんて・・・
 それで、気になって 少々調べた訳です」




男の表情が変わる


「単刀直入に申し上げて・・ この一件
 ・・おかしいと・・・・そう思うのは
 私の間違いではありませんよね? ・・・先生・・」




オヤジはまだこの男の真偽が図れずに黙っていた

いくら昔馴染みの人間とは言え、組織の内部・・
しかもかなり上に 今回の敵がいるのは間違いない

この 透 が違うとは言い切れない

うかつな事を言えば、恭介や流・・そしてまた匠にまで危険が及ぶ





そんなオヤジの表情を見ながら男が続ける

「お返事は頂けない様ですね・・・ 
 それが賢明です、先生

 ここからは私一人が勝手に話します
 先生は聞いていてください」




刻印 -120へ続く
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刻印 -118

ピシリと身なりを整えたスーツ姿の男が
エレベーターの行き先ボタンを押す
表示されている行き先は 最上で30階


男は30階で降りると 
廊下を歩き そのまま次のエレベーターへと乗り込んだ
それはいかにも重役専用・・・・
凝った装飾が施され、 明らかに30階までの
どこにでもある普通のエレベーターとは差がつけられていた


そしてもう1つ、大きく違うのは 壁に階数表示のボタンが無い


「76階」

その一言でエレべーターは上昇を開始した




76階で 扉が音も無く開くと 長い廊下を歩き
そこに並んだ部屋の一室をノックし、中へ入っていく


「戻りました
 聴聞・審議会の出席依頼が一件 来ております」
そう言って 正面の執務机で仕事をしている男に分厚い封筒を渡した


「審議会? 珍しいな・・」
そういって封筒を受け取ると 男は、ざっと中の書類に目を通す




「・・ふん・・・・・・・」
一言だけ言うと男は 書類を机の上に放った
重厚な執務机の前で、男は腕を組み 目の前に広がった書類を見ていた


「お前、どう思う?」
机の正面に立っていたスーツの男に書類を指差して見せる

「失礼します」
そう言って男が書類を受け取る





「・・・・少々 おかしな点もありますが・・・・」

「やはり そう思うか・・・」



書類を机に置き、またパラパラと捲り始める
そして何枚目かで 手が止まる

「これは・・・・・・」



そこには4人の名前が並んでいた

「どうかされましたか?」 スーツの男が聞く
「この2番目の名前の男・・・・詳しい情報は・・・わかるか?」


「詳しい・・ですか?
 いえ・・・いくら NO.2 の内のお一人とはいえ・・・
 組織内の個人情報を詳細に手に入れる事は無理かと・・」


「だろうな・・
 ・・・・・ならば、仕方ない・・ 個人的にコンタクトをとってみるか・・・・」

「お知り合い・・ですか?」

その問いに  「ずっと探していた人だ」  男はそう答えた










「んんー? なんだぁ???」
  
オヤジが驚いた様に声をあげた
オヤジ専用PCのランプが点滅していた


「どうした? オヤジ」
浅葱が声を掛け、ソファにいた匠と深月も顔を上げる



「あ・・・いや・・・通信が来てるんだが・・・・・」


そのオヤジの戸惑った様な言い方に浅葱が側へ来る
「何かあるのか?」

通信など珍しくもない事だ


「それが・・・俺個人のID宛なんだ・・・しかも・・・
 このIDは、 今は・・というかもう何十年も使ってねぇ・・
 初期のIDに しかも映像通信希望で・・・・
 相手のIDにも心当たりは無ぇし・・
 こんな古い俺のIDを まだ覚えてるヤツって誰だ??」


不振に思いながら 要請許可を出す


一瞬の間があいて 画面に一人の男の姿が映った




その男の顔を見るなりオヤジが叫んだ

「お・・・・お前・・・・・!!! もしかして!」

画面の向こうで嬉しそうに笑う男は
40代半ばで黒のシャツに黒のネクタイを締めている

「お久しぶりです・・・先生」
男はそう言った




刻印 -119へ続く
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プロフィール

凛

Author:凛
BL・MLを日々妄想してる腐女子

しかもかなりハード目が好きな壊れかけ

SM・拷問等の酷い描写が苦手な方は、ご遠慮ください

1作目 『刻印』
2作目 『華燭(かしょく)の城』 
完結しました。
ブログタイトル下のマップより全話読んで頂けます。
『刻印』の簡単な解説はこちら から


まだまだ初心者故、描写の至らない点
設定の矛盾は笑って見てください 

読みやすく・・と思っているので、長編小説ですが、各回短く、短文、1日1回UP予定です


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