0-story

18禁 BL小説です。主に拷問・凌辱等ハード系。 こういう小説に興味の無い方、嫌悪感がある方はご遠慮ください。サイトマップより一気読み出来ます
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刻印 -56

浅葱は 口で注射器のキャップを外すと
匠が動きを止めた一瞬を狙って 左手で匠の太ももに注射器を突き刺した



「・・・ンッ・!!・・・・ ぁぁああああっ・・・!!!!!」
声にならない叫びをあげながら
匠は 足をバタつかせて、針から逃れようと身をよじる

深月はその匠の脚を 必死に体で押さえ込みながら
思わず目を逸らしていた
もう直視できなかった・・・・



浅葱は打ち終えると 注射器を床に放り投げ
匠の頭をしっかりと抱きかかえた

「我慢しろ!!・・・・・匠っ・・!!」



ハァ・・・

ハァ・・・


ハァ・・・



ハァ・・・




浅葱は胸にしっかりと匠を抱いたまま動かない



静まり返った室内に 匠の呼吸音だけが響く

深月も そっと顔を上げ
匠の脚を押さえた手を離す事さえ忘れて 祈る様に二人を見つめていた




そして・・・
浅葱の腕の中で ほんの少しずつ、匠は落ち着きを取り戻していった


暴れていた体から徐々に力が抜け
ぐったりと浅葱に体を預けてくる


オヤジの鎮静剤の効果だった

呼吸もわずかだが ゆっくりと落ち着いていく・・・・



「・・・匠・・・・
 ・・・・わかるか・・・?  俺だ・・・ 浅葱だ・・・・」
刺激しない様に、浅葱が静かに声を掛ける




ピクンと匠の体が震えた
一瞬 何かを考える様に間があくと

「・・・・・・・
 ・・あ・・・・あさ・・・・・ぎさん・・・・・・・・・・?」

やっと浅葱の声に反応し 匠が目を開ける



「・・・遅くなった・・・ すまない・・・・」
浅葱はもう一度 匠の頭と肩を抱きしめた




その浅葱の声に 匠の表情が少し和らぎ 微笑んだ様にも見える


言葉を返そうと匠の口は動くが、上手く声が出ない
「・・ほんとに・・・・・・・
 あさぎ・・・さ・・・・・・・こえ・・・・・・・・」


「ああ・・ 俺だ・・・・・」
浅葱が匠の顔を見つめながら頷く



が、これだけ間近で しっかり視線は合っているはずなのに
匠の目はどこか遠くを見ていた


「・・どうした?? 
 ・・匠・・・?  俺はここにいるぞ・・・・・」
浅葱の手が匠の頬に触れる



その手に安心した様に 匠がゆっくり頷き目を閉じた



「・・・・・・・・お前、まさか・・ 目が・・・・・・・」
匠は苦笑する様な・・・・  そして悲しそうな表情で
コクンと一つ頷いた



「クソッ・・・・!!!!」
浅葱は悔しさに拳を握り締めた




刻印 -57へ続く
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刻印 -55

「おい・・・!! ・・・匠!! ・・・・匠っ・・・!!」
浅葱が匠の首に指を当て、脈を診た時だった・・・


浅葱の触れた手に、匠の体が ビクン・・と反応する


「や・・・・・やめろ・・・・さわ・・・るな・・・・」
腕に顔を埋めたまま 絞り出す様な匠の声がした



「生きてる・・・・」
深月がホッとした様に呟く



「おい・・・わかるか・・・・匠・・・・!
 俺だ・・浅葱だ・・・・わかるか・・・!?」
思わず匠を抱き起こす




「・・・・ !!!! ・・・ンッッ・・・ぁああああ・・っっっ!!!!」

悲鳴に近い叫び声が響いた




「・・・!?」

その匠の声に驚くと同時に 浅葱は抱き起こした自分の右手に
奇妙な違和感を感じていた・・・

ハッとして自分の手を見る・・・・・血だった



浅葱は思わず匠の体を覆う布をはぐ

そこには
痛々しく焼けただれた背中に 蛇と龍がいた
まるで2匹が流血しているような生々しい傷だった



「・・これは・・・・  ・・・・!!!」
あまりの酷さに浅葱が言葉を失う



「どうしたんです・・・・・・」
浅葱の動揺に気付いた深月も 
抱き起こされている匠を覗き込もうとした


「・・・見るなっっ!!!!!」
浅葱の激しい怒りの声がして 深月は一瞬身を引いた


「・・・・・お前は・・・・・・・・・見ない方がいい・・・・・」
少しトーンを落とした声でもう一度浅葱が言う


「は・・・・・・・・・・はい・・・」
只事ならぬ状況を理解し、深月は無意識に後ずさりしていた






「やめ・・・ろ・・・さわるな・・・・・近づくな・・・・」
匠は発作を起こしながら 浅葱の手から逃れようと暴れた


「おいっ! 匠っっ!」
浅葱がいくら声を掛けても 匠は暴れ、聞こうとしない

「動くんじゃない! 匠っ!!」



すでに正常な意識ではなかった
酷く何かに怯え、暴れる度に傷口が開いて出血している
それでも匠は抵抗し続ける

呼吸は益々酷くなり、痙攣が襲う



その様子は 背中の傷だけでは到底説明が付かなかった

いったい何がこんなにも匠を怯えさせる・・・・・・・
ヤツ等 何をした・・・・・


激しい怒りが湧き上がり
浅葱自身、怒りで叫びそうだった
が、唇を噛み 拳を握り締めて その怒りをかろうじて押さえ込んだ






「深月! オヤジのケースを!」
「は・・・・はい!」

慌てて深月が 抱えていたケースを開ける


中には オヤジが匠の為に作った特別な経口補水が数本と
薬が数種類・・・
色違いのタグが付けられた注射器に詰められ整然と並んでいた 




浅葱はその中からブルータグの注射器を取り出す 


匠はそのケースの音にもひどく反応した
「やめろ・・・・・!! やめろっ・・・・・!!!」


叫んで暴れる匠を 浅葱が右腕で必死に抱きかかえ押さえる
だが片手では匠の動きは止まらなかった

「深月! 脚だ! 匠の脚を押さえてろ!!」


「は・・・はいっ!!」
深月が体で匠の脚を覆うように 必死で押さえ付ける


「や・・・・やめろっっっーー!!」
匠の叫び声が響く




刻印 -56へ続く
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刻印 -54

血痕を追いながら二人は廊下を進んだ


「次の角を右に・・・」
浅葱の後ろから 深月が小声で誘導する


が、その角の手前で ふいに浅葱が立ち止まった
そして無言のまま 左手で後続の深月を静止する


息を止め、深月が浅葱の後ろにピタリと付くのを待つと
振り向きもせず浅葱は指で合図した

” ここに居ろ  ”


深月も無言で頷き、壁に張り付くように身を隠す







浅葱が壁に沿って そっと一人で出て行き姿が見えなくなると
一人になった深月の不安は急速に大きくなる・・


敵が・・・敵が居る・・

深月は緊張で心臓が張り裂けそうだった・・



ただただじっと グレーの天井を見つめ 浅葱が戻るのを待っていた

はやく・・・はやく・・・・浅葱さん・・・





「・・・・ウッ・・・・」

遠くで呻く様な小さな声がした




その声に深月はビクッと震える


浅葱はすぐに戻って来た
深月の不安など気にも留めず
「・・行くぞ」 とだけ声を掛け、また進み出す



深月は置いて行かれまいと 慌てて浅葱の後を追う
廊下の脇には 数人の男がゴロゴロと倒れていた

銃で撃たれた形跡はなく、全員が絞め技で堕ちていた






それからも何度となく浅葱は一人で出て行き
静かに敵を制圧して戻ってきた




どれくらい進んだだろうか・・
廊下の景色が一変し 両側にズラリと扉が並ぶ一角に出た



「・・・あの扉です。 反応があります・・」
両開きの扉を指差し、深月が言う


先程と同じ様に浅葱は扉の前で銃を構え直す





そして そっと扉を開く・・・・




そこも薄暗く広い部屋だった
床はタイル張りで、敵の気配はない
前の倉庫にはあった防犯カメラらしき類も ここには見当たらなかった
どこかで何かがピーピーと鳴る音だけがしていた



部屋の中央には 大きな台があり
その周囲には 作業台らしき物
棚には薬品・器具などが整然と並んでいる

台を直接照らす照明もあり、そこは古い・・昔の手術室の様な印象だった





その台の上に白い布を掛けられた 何かがある



2人は周囲を警戒しながら ゆっくりと台へと近付いていく



その白い布の上部から 人間の髪の毛らしき物が見えていた




浅葱が思わず走り寄る

「・・・・匠・・・・?」




布を少しずらすと ・・・匠の顔が見えた


こちら側・・・扉の方を向いて横向きになり
腕を曲げ その腕の中に顔を隠すようにして小さくうずくまる匠がいた



「・・・匠・・・・・匠っ! ・・・・・・おい・・・・!」









部屋の外で人の気配がした

老人ではない人の気配・・
またあの男なのか・・・
そして扉が開かれ、何者かが入ってくる・・・
それだけで 闇の中にいる匠が発作を起こすには十分だった
呼吸が荒くなり、発作が起きる





匠の指先に付けられたセンサーが
小さくピーピーと鳴っていた






「匠・・・・・匠っ・・・!!!」

呼びかける浅葱の声に反応は無い




刻印 -55へ続く
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刻印 -53

「深月、ここからは要注意だ。 たぶん、地下には敵がいる」

浅葱の声に 深月は緊張し 「はい」 とだけ答える



浅葱を先頭に二人は階段を駆け降りた




地下6階の踊り場で 深月がエレベーターホールの方向へ
そっとタブレットだけを向ける


「ここからは二方向に血液反応がでます・・」

「・・・・・・とりあえず手前からだ・・」



薄暗い狭い廊下だった

浅葱は銃を構え 壁伝いに素早く移動する

深月はその動きに遅れまいと必死で付いて行く



緑に光る血液反応は 所々で血溜まりになり、そしてまたポツポツと続く・・

深月はその画面を見ながら
匠がこの廊下をどうやって歩いたのか・・・・
どんな状況だったのかを考えていた

一歩一歩、血を流しながら歩いては立ち止まり、そしてまた歩き出す・・

これが浅葱さんへの道標・・・・


確かにこの血液反応がなければ、この迷路の様な廊下を
今程 順調に、進む事は出来なかっただろう と思う





遠くで人の声がして深月はハッと現実に返る
「ぼっーとするな、ちゃんとついて来い・・」
浅葱が小声で言う
「は・・はい・・」


敵はまだこちらには気が付いていないらしい



「そこです・・3つ目の扉、反応あり」
深月の指示で浅葱はその扉の脇に滑り込む 




そこで一度 銃を構え直しそっと扉を開ける・・・






そこは、かなり広い 薄暗い倉庫の様な場所だった



中には誰も居ない



「ここは・・・・・あの映像の場所・・・
 すぐに防犯カメラをハッキングします」
深月がタブレットを操作しようとする

「そこに居ろ、時間がない」 

広い空間で 物陰が少ない
そこを浅葱は器用に身を隠しながら移動していく



あの画像を撮った防犯カメラの下まで行くと
手早くレンズに特殊なシートを貼る
古いカメラはそれだけでピントが合わなくなり、
ジージーとオートフォーカスを繰り返すだけの ただの置物になった




それを確認すると浅葱は1つずつ、人が隠れられそうな場所をチェックしていく

あのオヤジが見つけたマークが付いていたのは
無造作に放り投げられた 古びたジュラルミンのケースだった




「よし、動いていいぞ」
誰も居ないのを確認すると浅葱は深月に声をかけた

その声で深月もタブレットを掲げ内部を見渡す





倉庫の中ほど・・・その床に 緑に光る場所がある


近づくと それはかなり大きな血溜まりだった

上を見上げると 鎖がかかっていただろう金属の金具が見える
「ここに・・・・」
深月は匠が繋がれていたあの画像を思い出していた




血は既に黒く変色し、時間の経過を物語っている

「すごい出血量だ・・・・・・」
思わず深月が言う



「・・・匠・・・・」







その時だった

インカムに囁くような声が入る


「・・・こちら5階・・・・・・・・ヤツがいる・・・・・・」

「わかった。 今2人が上がっている。 合流しろ
 匠は・・・地下6階。 救出でき次第 こちらも上がる」
浅葱が答える

「了解・・・」




「行くぞ 深月、もう一つの方だ」
「はい」




二人は廊下に出て 来た通路を戻り、
エレベーターホールから更に進んでいく・・




刻印 -54へ続く
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刻印 -52

その夜、6人は昼間と同じく3台に分れ部屋を出発した


「必ず坊ヤを連れて帰って来い・・」
オヤジはそう言って送り出した


雨が降り始めていた



打ち合わせ通り 途中で1台が脇道に逸れる
別隊で5階から侵入する為だ


他の2台は表の死角に車を止め その2人からの連絡を待っていた

雨は次第に強くなり、
ワイパーを止めたフロントガラスは すぐに雫で覆われた



「深月・・・これを持って入れ」
浅葱が深月に銀のBOXケースを渡す


「これは・・?」 深月が聞く
「オヤジから預かった・・・  匠の命綱だ・・」
「匠さんの・・・・・・はい・・」

深月はそのBOXを受け取ると膝の上に抱えた

それだけ言うと浅葱はまた前を向いて何も言わなくなった




暫くしてインカムから連絡が入る
「こちらC班・・只今屋上到着・・いつでもOKだ」



「・・・よし、行くぞ」
浅葱の言葉に4人が車を降り、正面から男達が入って行く


雨はまた一段と強くなっていた



姿も音も消し去ってくれる雨煙は 侵入には好都合だった

入り口の鍵を開けるのは、容易 (たや) すかった
5階の窓も破られた頃だったが、浅葱の言った通り警報が鳴る気配もない



”まさか本当の廃墟・・・? ハズレた・・?”

ここが正解の建物だと主張したのは自分だ
深月は内心焦っていた・・





内部は異様な感じだった

ホールから放射線状に濃いグレーの絨毯が敷かれた廊下が延びる
もちろん窓も無く間接照明だけで薄暗い


「当たり・・だな」
浅葱が言うと他の2人も頷いた


”当たり・・・・・・・”
その言葉に深月は内心ホッとしながら皆の後を追う



この建物に関する図面は全て処分されている為に
1つずつ場所を探しながら進まなければならない

階段を探して暫く進むと、浅葱が急に立ち止まった


「な・・・何ですか・・?」
浅葱のすぐ後ろについていた深月が聞く


「深月・・・ 鑑識出来るな?」
「あ・・はい。  出来ます・・・」
「この廊下を調べてくれ」
「・・・・・・ この廊下を・・・・ですか?」
「ああ・・・これだ・・・」


浅葱が指差した先・・・・
かなり暗く 余程の注意をしなければ見落としそうな絨毯の廊下・・・・
その中に  ポツ・・ と、わずかに黒い点があった


「これ・・・ですか? ・・・ わ・・・わかりました」
「照合するのは・・・・匠の血液だ」
「血液・・・・ あ・・・・・はい・・・・」


深月は指示されるままに 細心の注意でわずかな血痕を採取し
簡易機材で調べ始めた

しばらくすると繋いだ機械の画面に青い文字が点滅する


「・・・・一致しました・・・ 匠さんの血液に間違いありません・・・」
「やはりそうか・・・この血痕の続きを追えるか?」
「続き・・・・」

よくよく見ると、廊下の先にも ポツと同じ様な点がある
「あ・・・はい・・・やってみます」



深月がタブレットを取り出し操作する

それを廊下に向けると 画面の中に
ポツ・・・・・ポツ・・・・・・と緑の蛍光色に光る点が見えた

「先程の血液反応あります・・・ こっちです」



深月の先導で迷路の廊下を進む
それはかなり長く続いていた


暫くすると階段脇のエレベーターホールへ出た


階段には血液反応はない
エレベーターのボタンにタブレットを向けると
【B 6F】 のボタンが緑に光る



「地下6階・・・・」



「俺と深月が地下へ行く。 B班は地上階へ」
「了解」

そう言うと 二人は浅葱達と離れ、階段を駆け上がって行く




「この血痕は・・・・・・」
深月が呟く・・・・


「これは・・・・ 匠が命がけで付けた俺達への合図・・・道標だ」




刻印 -53へ続く
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刻印 -51

オヤジ達が見つめるPC画面には 新しく数個のポイントが点滅していた

今までの様に相手が残した・・
いや・・ 相手にフェイクで掴まされた手がかりではない

ここのどこかに匠は居る・・
全員がそう確信できる場所だった


その中から可能性の低い場所を順に潰していく

最も匠に近い場所・・・
もしあの医者まで絡んでいるとすれば、もう一刻の猶予もなかった






数時間後、PC画面の点滅は2つになっていた


大学関係者が個人所有していた倉庫 と 医療研究施設
どちらも今は閉鎖され 使用されていない


「ここから先は 戦力を分散させる訳にはいかねぇ・・・
どっちが当たりだと思う・・・・?」  そう尋ねるオヤジに

「たぶん・・・ここが一番条件に合います」
深月が1つを指して言う


それは医療研究施設の方だった




「根拠は?」

「はい、 ここの建物は鉄筋コンクリート、
 半世紀以上前の物ですが 地下もあります
 例の新薬で儲けた時代に大掛かりな改築が行われていて
 内部は不明ですが・・・・」

「不明って・・だったら、 こっちの倉庫もコンクリートだぞ
 広さからいけば、こっちの方が近い気がする」

深月の意見を遮る様に声がした



それに動じる様子も無く深月は言葉を続ける

「ですが・・このカメラの画像・・・
 今では珍しいかなり古いタイプの防犯カメラだと思いますが
 その時代に普及した物とも合っていますし、

 この場所・・・
 映像全体のサイズと 人物との対比、位置関係・角度から計算すると・・・」


深月がPCを操作すると 次々と図面や解析表が映し出される
 
 
「これが、入手した倉庫の図面ですが・・・
 床面積、天井高からいうと この映像を残すには無理があります

 施設の方は改築後の詳しい図面が無くなっているので
 内部構造やハッキリとした広さはわかりませんが
 この映像を残せるのは こちら

 ヤツ等が今まで逃走にヘリを使用した事もあるという事実からも
 ヘリポートが併設されているこの医療施設の方が 可能性は高いと思います」





オヤジは黙って深月の意見を聞いていた
「・・ん・・いいだろう
 俺も流の意見に賛成だ・・・みんなはどうだ??」 


その声に一同が頷く
深月は安堵の表情を浮かべた


「よし、まずはここ1つに絞って行く。 指揮は恭介・・いいな?」

誰も異論を唱える者は居なかった


「決行は今夜、それまでに下見と準備だ」
浅葱が全員を見ながら言う








その数分後には オヤジを除いた6人は 3台の車に分乗し
目的の施設へと走り出していた


浅葱の車の助手席には深月が居た
目的地に到着するまで二人は何も話さなかった



目的の建物・・・
そこは周囲とは不釣合いな程の 高い塀に囲まれていた
まるで城を堅固に守る城壁だった
その奇妙な壁の奥に 古びた建物が見えた

正門には 半ば壊れた様な 『私有地に付き立入禁止』 の札が下がり
カラカラと風にあおられていた
横に守衛所はあるが人影は無い


建物を壁沿いに一度走り
ターゲットが見下ろせる近隣ビルの屋上に上がった


上から見ると 関東圏とは思えない程の広大な敷地だった
高い塀の中には鬱蒼と木が茂っている


建物自体は5階建てと低く
現在の高層建築に囲まれたそこは、ぽっかりと窪んだ穴の様に見えた



「関東にまだこんな場所が残ってるんだな・・」
「ああ・・これだけの土地、売ったら数億・・いや数十億だぞ・・」

誰かが驚きの声をあげた



しかし異様なのは その土地ではなく建物の方だった
1階から4階まで、全てが壁のみで 窓1つ無い

5階には所々 窓が見えていたが、その外見は医療施設と言うより
まるで刑務所か隔離施設だった


「いったい・・ここで何をしてたんだろうな・・・・・・・」
「ああ・・・どう見てもロクなトコじゃねぇ・・・」




「入り口は1階だけか・・・?」
深月がタブレットで中継する画像を PCで見ていたオヤジが聞く


「ああ、だが5階の窓は格子も何もない・・あれなら屋上からも侵入できるはずだ
 一班は壁を登り屋上から5階へ、残り二班は1階から入り
 地下階と地上階へ分かれるのが最良だろう」


浅葱の言葉に


「外見は廃墟でも、中は最新の警報システムが組まれているかもしれません
 一班は 先に電気制御室を制圧した方が・・・」
深月が言いかける


「その必要はないと思う」
浅葱はきっぱりと言い切った


「大事な人質を監禁している部屋でさえ あんな年代物の防犯カメラだ
 最新の設備が欲しければ最初からそちらへ連れて行く
 ここに居るとすれば システムよりも別の目的があっての事だ」


「何か別の・・・?」
深月が呟く


もう一人が言う
「わからないか・・?  最新のシステムより、欲しい機能がここにはある
 ・・・医療機器だよ・・・ イカれた医者に医療機器・・・・
 おやっさんの言葉じゃないが、もう猶予はないぞ」





中継される画面を見ながら オヤジも嫌な予感がしていた
隣のモニターには あの縛られた匠の映像が映っている

「どぉも・・・・・ 気に食わねぇ・・・」


オヤジが苛々した様にモニターを指でトントン叩く
画像が荒すぎて、ハッキリしないが 匠の腕に何か巻かれている様に見える

「いったい これは何なんだ・・・・」




刻印 -52へ続く
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刻印 -50

「やりにくいな・・・・おい 横向きに寝かせろ・・」
暗闇の中で 老人の声がした


老人の作業は 着々と進んでいた
それは匠の背中から 脇腹辺りにまで及ぼうとしていた




助手の男2人が ゴロッと匠を横向きに転がす

「・・・!!!!・・・・っっ!!」

引き攣った背中の皮膚が強引に引き伸ばされ 
体が裂ける痛みに襲われる

無意識に眼球が動き、激痛が走る

「・・ンッッ・・・・・・・!!」 


「ん・・それで押さえとけ」
そう言ってまた老人の手が動き始める




灼かれた背中と違い、生きた痛点を持つ脇腹は
また異種の痛みを引き起こした

その痛みが 匠の体と、離れかけた精神とを1つ1つ縫い合わせ
現実へと引き戻しているかの様だった


「ンンンンッッ!!・・・・・・・ぁああッ・・!!」

「ほら、動くな・・ 腕をよけろ・・・・ しっかり押さえてろ
 ・・・まったく・・・
 もう少し 呆けていてくれたら、私の作業も楽だったのに・・」 


ブツブツと不満そうな老人の指示に
助手が 匠の両腕を顔の前まで移動させ 横向きのまま押さえつける


無防備にさらけ出された脇腹にまた老人のメスが入る・・
「・・ンァッ・・・・・・・・・!!!・・・」
痛みに声が出る



だが横向きのこの姿勢は、折れている肋骨への圧迫を軽くした
ほんの少しだけ 呼吸は楽に思えた


足も今の方が自由だった
膝を曲げると 丸まった姿勢になれた


何よりも腕に顔を埋める事ができた・・・


外からの刺激を少しでも感じなくて済むように
匠は胎児の様に身を小さくした

力の入らない両手を握り締め ただじっと耐えた





何があっても・・ここから出る・・


もし、浅葱さんやおやっさんが間に合わなくても・・
その時、自分がどんな姿になっていたとしても・・
自ら終わりにはしない・・

それが匠の出した答えだった





だがそれは、今の匠にとって一番辛い選択だった




現実・・ それは 苦痛と恐怖しかなかった


強烈に植え付けられた恐怖心は 拭う事が出来ないまま・・
いや・・それはどんどん強大に成長しながら 匠の中に巣くっていた



失った視界を補う様に、残された感覚が研ぎ澄まされ
匠の発作は益々酷くなった



扉が開閉する音・・
金属や器具の音・・・
そして、人・・・
触れられる事はもちろん 足音や話し声、
気配でさえも・・・・

周囲のわずかな変化にも拒絶反応を起こし
匠の体は簡単に発作を起こした

それはもう自分の意思では制御できなかった









不意に老人の手が止まり部屋を出て行く音がした
その後に続く二人の足音・・・




誰も居ない静まり返った空間
やっと一人になれる時間
このわずかな時間は匠にとって 唯一の安息の時だった


それでも目を閉じると迫って来る針の残像に体が震え
一人で何度も発作を起こした











シンとしていた部屋の外で人の気配がした


もう・・・戻って・・・来たのか・・・・


だが、その気配は 老人と助手では無かった
中に一人・・訓練された足音と気配がある

あの男か・・・

また何か新しい薬を・・違う遊びを考えたのかもしれない・・・
そして、また・・・
あの苦痛と恐怖・・・・






ハァ・・・

ハァ・・・


呼吸が荒くなり、発作が起きる





・・まただ・・・・また息が出来なくなる・・・・・苦しくなる・・・・




刻印 -51へ続く
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刻印 -49

終らないなら・・・・


自分で終らせる・・・・


もう・・・・・・




それで、終わりに出来るなら・・・




老人と助手は匠の体を洗い終え、
また 刻印 の修復をすべく準備に取り掛かっていた



体に掛けられた布の下で 匠の指がわずかに動く
闇の中、無意識に ”その行為” に使えそうな物を探していた

宙を見つめた瞳に また痛みが戻る



匠の指に 冷たいモノが触れた

ツッ・・と痛みが走り、指先が切れる・・






ゆっくりとそれを指で取り


布の下に忍ばせた・・・



そして・・・たぶんメスの様な物・・・ の刃を手首に向ける・・・





宙を見つめながら




・・・・そのまま刺した・・・





「・・・ンッ・・・」 痛みが走り
指先がトクトクと脈打つのがわかる・・





だが・・・・それだけだった・・





力の入らない指先では、十分に切り裂く事は出来ず
刺した傷から 血を流すだけで精一杯だった


布が血に染まるのに気付いた老人が慌てて布をはらう
「おいおい・・・何をバカな事を・・・」

そう言ってメスは簡単に取り上げられた



ハァ・・・

ハァ・・・




手首に何かが巻かれる


今の自分には それ さえも許されない・・
自分の体で満足に動かせそうな場所が あまりにも少なかった




舌を・・・噛み切る・・・・か・・・・





それが非現実的な事はわかっていた
が、もうそれぐらいしか 手は無い様に思えた

それだけの力が残っていれば・・ だが・・・・









・・・目を閉じた








今まで暗闇に浮かぶのは、あの 迫る鋭い針だけだった

が、突然 匠の脳裏に浅葱やおやっさんの顔が浮かんできた




浅葱・・ ・・さん・・・・・・・


妙に遠い記憶の様な気がした






・・・出来るなら、もう一度逢いたかった・・・
もっと一緒に居て、仕事がしたかった・・・




一度そう思い始めると
頭の中には何故か もっと・・もっと・・・という言葉ばかり浮かんできた

もう終らせると 決めたはずなのに・・・




その時、浅葱の声を思い出した

それはあの日・・・・一緒に任務に出た日
ビルで匠一人が飛び出した時に最後に聞いた浅葱の声・・・


・・・・・バカ! 行くな!! 匠!!!!・・・


その声にハッとして我に返る



そうだ・・ おやっさんにも言われた
初めてあのマンションに行った日に・・

・・・とりあえず・・生きてここに戻って来い


と・・・

それがお前の仕事だと・・・







不覚にも涙がこぼれた




ここへ監禁されてから 初めて流した涙だった
そしてそれは激しい痛みを伴っていた


「・・・ ッ・・!!! ・・・」
その激痛は匠を現実へと引き戻して行く・・



そう・・もっと・・・もっと・・・




・・・またあそこへ戻りたい


浅葱さんは・・・
浅葱さんは・・・必ず来てくれる・・必ず・・
それまでは・・・・






きつく目を閉じていた匠の瞼に 突然、指が触れた


ビクッ・・・ 体が震える



それはあの男の指だった

「どうした・・? タクミ・・・泣いているのか・・・・?」
そう言いながら 匠の睫毛に溜まった涙を 指で拭う



匠は必死で目を開け、声がした方向を見つめた


男は涙を拭った指で クッと匠の顎を持ち上げ
匠の唇を覆うように 自分の唇と合わせる

「・・・ンッ・・・・」


男はそのまま まだ何も見えない匠の目を見つめる
匠も目を閉じようとはしない
激痛が走る



みんなの元へ戻りたい・・ただそう思っていた




刻印 -50へ続く
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刻印 -48

「体を洗ってやれ・・・ それが終ったら、印 の修復を・・」
そう老人に言い残して、男は部屋を出て行った


「はい・・・」
老人と2人の助手は 傷の洗浄に使う液体を、匠の体に容赦なく浴びせ掛けた



それでも匠は反応しない・・・・ただじっと宙を見ていた



「とうとう呆けたか・・・・・」
そう言いながら老人は匠の体を洗い始める


「あの方のモノは どうだったんだ・・?
 ここは感じたのか・・? 
 気持ちよかったのか・・・?」 

老人は独り言のように呟きながら
匠の穴の中にまで 掻き出す様に指を入れた

匠の体の余韻を味わっていた 

助手の男も 洗う。と称し匠の体中を撫で回した



「口もだ・・」
そう言ってもう一人が 匠の口に乱暴に水を流し込む・・



ンッ・・・・!!! 

ゴホッ・・・!

ゴホッ・・・!


いきなり大量の水を口に注がれ、息が出来なくなりむせる



ゴホッ・・・




その時、無理矢理 指を突っ込まれ掻き回されていた穴に
わずかに痛みが走った・・・

「・・・・・・・・・・・んっ・・・・!」
思わず足に力が入り、体を仰け反らせる





それは 一度水中に沈んだ者が、
引き上げられ 水を吐き出し 意識を取り戻す作業に似ていた



ゴホッ・・・

ゴホッ・・・・・・・

苦しさにむせる度に 体の感覚・・・ 痛みが少しずつ戻ってきていた
頭も目も、背中も胸も・・・犯された場所も・・

その痛みは体の奥深くから湧き上がるように
ゆっくりと確実に匠の体を覆い尽くしていく・・







・・・この体は・・・ まだ痛みを感じるのか・・・・

・・・もういいのに・・・・

・・・もう何も感じなくて・・・ いいのに・・・

・・・・もう・・・・・

・・・・・・

・・・

・・








「・・・・・・・・・・・・・・・・・ろせ・・・」
匠が声を絞り出す

「何だ? 気が付いたのか?」 老人が聞き返す








「・・・・・・もう・・・    ・・・・  ・・・・殺せ・・」







その声を聞き取ると 老人は一笑に付した

「はは・・ 何かと思えば・・・ 勿体無い事を言うな・・
 お前さんは 私の最高傑作だ・・・  もうすぐ仕上がる・・
 あの方もお待ちなんだ・・・

 ・・・それに私も・・・
 もう少し楽しませてもらうよ・・・ この体でな・・・」

そう言いながら老人は匠の体を撫でた



「試したい薬も まだまだたくさんある・・・
 お前はその大事な実験台だ・・・」
老人は男の真似をして注射器の入った箱を鳴らして笑った





その言葉は、匠にとって絶望の宣告だった




そうだ・・
あの男は 
” タクミはこれから一生、自分のモノ・・
  ずっとこの蛇と一緒だ・・・・ ” そう言った
  
このままずっと この状態が続く・・・・
この痛みも苦しみも・・・

いくら耐えてもまたすぐに次の痛みと恐怖が待っている


もう・・・終る事はない・・・
終らせても もらえない・・・




それならもう・・・ いっその事・・・ 自分で・・・




刻印 -49へ続く
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刻印 -47

男の手が匠のモノを握り、動かし始める
「・・・ぁ・・・・っ・・」

最初はゆっくりと・・  そしてそれは徐々に早くなる・・・・
「ァッ・・んっ・・・んっ・・・」


擦りあげられる振動で 匠が小さな声を上げる
細い指が体に掛けられていた布を握り締める





男は匠のいる台に上がり 持ち上げさせた両足の間に体を置くと
すでにそそり勃っている自分のモノを 匠の穴に押し付けた


その様子を 老人と2人の助手がじっと見つめ
目の前で行われる行為に 顔を紅潮させていた




男のモノは匠のヒダを掻き分け 挿し込まれていく
 
「・・ァァッ・・! んッ・・・・!・・・・」 
呻きながら 穴はゆっくり広がり 男のモノを徐々に深く飲み込む


それはもう何度も強要され、痛みと屈辱と共に受け入れた行為だった・・・


男のモノが 体の最深部まで入ろうとしていた



ハァ・・・

ハァ・・・




匠はゆっくりと目を開けた・・・
その目は何も見えてはいない・・・




ハァ・・・

ハァ・・・





自分の呼吸する音だけが聞こえていた
漆黒の闇には、他に音も光も 何も無かった




浅い呼吸を繰り返すだけの匠
ただじっと目を開け 宙の一点をだけを見つめていた

・・・もう声は無かった





「心に蓋をしたか・・・・・・」 男が呟く
動きが激しくなる




匠が持ち上げている膝を 抱えるようにして
何度も何度も自分のモノで匠を突き上げた

振動で折れた肋骨がギシギシと鳴る
背中の傷が開き 台に血と体液が滲んでも 男の動きは止まらない
それでも不思議と痛みも無かった


興奮した老人が 
「あの・・・・」 と自分のモノを引っ張り出しながら男に言う
「私も・・・・・・・」 と・・。


男は 「ああ」 とだけ頷いた


老人は 「あ・・・ありがとうございます・・」 そう言うと
台へ上り、匠の顔の近くへ行く


「ほら・・・私も・・・・」
そう言って 小さく開いていた匠の口に 老人は自分の舌を差し込んだ

長い舌で匠の口の中を探りまわっている


舌で匠の柔らかい口中を味わうと
老人は自分のモノをその口に咥えさせた

「ンッ・・・」
老人のモノが 喉の奥にあたる・・


自分の口と肛門に 男達のモノが入っているのはわかっていた
が、まるで体から 自分自身が抜け落ちていた



ただ 自分の体をした人形が 2人の男に犯されているのを
宙からぼんやりと見ている・・そんな感じだった



先に声をあげたのは老人だった
「ああああ・・・・・イイぞ・・・   イクぞ・・・・あああああああ・・」

ピクピクと震えながら 喉に何かが流れ込んでくる


それはグッタリと萎えるまで 匠の口に差し込まれたままだった



やがて老人のモノが引き抜かれると 側にいた助手も我慢出来なくなったのか
匠の口の中に自身のモノを放り込んだ

老人は名残惜しそうに 匠の体を手で撫で続けていた



男はそれを見ながら 「ふん・・」 と笑う



男は匠の片足を上に持ち上げ、自分の肩に掛けると
腰を打ち付けながら、匠のモノを 手で激しく擦り上げた


匠のそれも意思とは関係なく徐々に猛っていく 

穴の先から汁を流し始めると 男はそれをもう一人の助手に差し出した

横でただ見ていた助手は 飛びつくように匠のモノを咥え、しゃぶり始める
流れ出ていた汁も先の穴も 口に入れて上下する



「4人で犯すか・・・・・それもいい・・・・」
男は匠の腰を掴み 激しく突き動かす




いつ果てるともない陵辱が続いた後
匠の性がビクンと震え 助手の男の口の中に粘液を吐き出した

それと同時に男も 匠の穴の中で脈打つ・・

匠の喉にもまた ヌルリとした液体が流し込まれる





匠はそれを 声も出さずに全て受け入れていた

ライトに照らされた台の上・・
そこには 弄ばれるだけの体があった



匠は何も映らない目で ただ宙を見つめていた




刻印 -48へ続く
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刻印 -46

部屋にはもうずっと 匠の叫び声が響いていた
枯れた喉から絞り出す悲痛な叫びだった



すでに意識はハッキリしていない

痛みがどこから来るのかも、何の痛みなのかも理解できていなかった

が、叫ぶ事で なんとか精神を正常に保っていた




視界は全く無く 闇そのものだった

ささくれた金属の上に剥き出しの眼球が置かれている様な痛み
少しでも眼球を動かすと目の奥から頭の中の神経まで激痛が走る

その痛みも激しかったが、それ以上に匠を襲ったのは恐怖だった



今まではどんな激痛でも状況が見えていた
うつ伏せで 視界がほんのわずかだったとしても
まだ目で見る事ができた



だが今は闇しかなかった・・・

上も下も左右もなく
誰がいるのか、これから何をされるのか
何もわからなくなっていた
力の無い指で必死に台を握り締め 落ちて行きそうになる体を支えていた



乾いた喉から咳が出て止まらなくなる
呼吸は苦しくなるばかりだった
気持ちが恐怖に支配されると発作が起きた

呼吸できない・・それもまた恐怖だった・・・







「どうだ・・・? タクミ・・・ 恐怖というものは・・・」
そう言いながら男が叫び続ける匠の頭を撫でる


「針はまだたくさん残っている・・  次はどこがいい・・・・?」
そう言って トレイの注射針をカラカラと鳴らしてみせる








その音で匠の脳裏に あの銀に鈍く光る尖った針が蘇る・・・


それは 何本も何本も目の前に浮かび、
そしてそのまま 真っ直ぐに匠の目を貫いた

目から鮮血を流し、絶叫する自分の姿があった





「もう・・・・やめ・・・て・・・・・・くれ・・・・・」



匠は震える様に反応した


男は匠の顔を見つめる
「・・・やっと私の言う事を聞く気になったのか・・・?」



その問いに匠は震えながら わずかに頷いた

それは意思というよりも 恐怖と痛みに支配された本能だった



「そうか・・いい子だ・・・」
そう言って 男は匠の唇を指でなぞる・・


唇端からそっと指を口へ差し込むと、
痛みと恐怖で叫ぶ匠に自分の指を噛ませた


「・・んァッ・・・・・・・・・ン・・・・ッ・・・・・・」
声が出せなくなり叫びが小さくなる


苦し紛れに噛む匠の力で 男の指から一筋の血が流れ
匠の唇を染めた





「ほら・・タクミ・・・舌を出すんだ・・・・」


何も見えない世界で 男の声だけが、まるで暗示の様に頭に入ってくる

匠は震えながら小さく口を開け舌を差し出す



「そうだ・・・・それでいい・・・」
男は差し出された匠の舌に そっと自分の舌で触れる



「やっと私のモノになったな・・・タクミ・・・
 最初からこうしていれば、こんな思いはしないで済んだのに・・・」

出させた舌を 触れるか触れないか程度で絡めながら
男は満足そうに言う
欲しかった玩具をやっと手に入れた子供の様に・・・



頭を撫で、舌を触れ合わせながら
男の手は匠の下腹部へと伸びて行く

顔を見つめながら 手は足を割って入り
匠のモノをゆっくり大きく手で包み込む




匠が反射的に体をよじる・・・
背中の傷が擦られ、また痛み 両目は激痛をもたらす

「・・んっ!!・・ぁッ・・・・・んんアッ・・・・・・・・・んんんんん・・・・」
「ほら・・・じっとしているんだ・・・  動くと痛むぞ・・・・」


闇の中、静かに響くその声に 匠の体は抵抗できなくなる


じっとしていれば・・・抵抗しなければ・・・・苦しくない・・・





「足を上げるんだ・・・足は動くだろう・・」

そう言われて匠はわずかに両足を上げる
男は膝裏に匠自身の手を入れて 匠が自分で足を持ち上げた格好にする


嫌だと言う意識は無かった・・・
ただ闇に置かれた人形の様に言われるがままだった



何も考えられない・・・いや、自ら考え、感じる事を拒否していた





・・・本当の闇に堕ちようとしていた




刻印 -47へ続く
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刻印 -45

それは例えようの無い恐怖と 壮絶な痛みだった


針が刺さった瞬間 全身の神経が逆立った
視界は真っ赤になった後、すぐに闇に包まれた


「ゥううううわあああああーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
匠はただ叫び 頭を振って足をバタつかせ暴れた



背中を灼かれた時は うつ伏せで何が起こるのか わからなかった
わからないまま激痛に襲われた


だが今回は違った・・
迫って来るものを認識し、凝視し、それでも抗えない恐怖・・・



器具が外されてからも右目は激痛に襲われ続けていた
痛みで目が開かない・・・
手で目を覆いたくても、手も動かない

「ぁぁああああああ・・・・・・・んんんんんんっっっ!!」
ただ叫ぶしかなかった





「タクミ・・・絶望という物が何かわかるか・・・
 それから逃れる為に人は 誰かに懇願し、祈るんだ・・・
 タクミは私に祈れ・・・助けてくださいと・・・
 ・・・服従しろ・・・」


男の声がしていた



だが匠に冷静な思考力は残っていなかった・・・
ただただ 動く部分だけの体で暴れるしかなかった



「・・もう片方もだ・・・」
冷たい男の声が聞こえた



「あの・・・・続けてやるのは・・・・
 精神の方が・・・壊れてしまう恐れが・・・・・・」
老人が言い難くそうに答える



「先生・・・おかしな事をおっしゃる・・・
 今まで何人もの人間を壊してきたアナタが・・・・」
そう言って笑う


「それに・・・ 私のモノにならないのなら・・・
 手放してしまうぐらいなら・・・・この手で壊してしまった方がいい」
その声はあまりにも冷酷だった


「しょ・・・承知しました・・・・・・・」






右目と同じ様に左の瞼も開かれる
全てを理解しているだけに、その恐怖は2度目の方が強かった

「も・・・・・・・もう・・やめろ・・・・・やめて・・・・・・・」

恐怖で絞り出すほどの声しかでなかった



暴れていた匠の体が硬直し始め、徐々に動かなくなる
そしてその体は 小刻みに震え始めていた



「まるで仔犬だな・・・」
嘲笑する男の声・・・・



しかしそれは震えているのではなかった
匠は発作で痙攣を起こしはじめていた・・・

苦しさで声が出なくなった・・・
体も動かない・・・


ただじっと目の前に迫ってくる針の鋭い一点を見つめるしかなかった

「・・・ぃや・・・・・・・・・・」




精神が壊れそうな恐怖だった・・・・




針が刺さった瞬間 ビクンと体が跳ねた

声は無かった

声を出そうにも呼吸が追い付いていなかった



ハァ・・・

ハァ・・・



両目の焼け付くような激痛
真っ赤な視界・・

器具が外されてもなお消えない恐怖


ハァ・・・

ハァ・・・







一瞬 室内がシンと静まり返った






そして・・・





匠の絶叫が響いた・・・・・・・




刻印 -46へ続く
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刻印 -44

今の匠に 二人の話は何も聞こえてはいなかった
息苦しさに喘いでいた



ただ、男に頭を撫でられる・・・・ 触れられる事が苦痛だった

「・・・・・・・・・・」
男の質問に 匠はクッと唇を噛み、無言のまま男を睨み返した



「・・・・その目だ・・・・
 その反抗的な目が 私を苛つかせる・・・・・・」


男は匠をじっと見下ろしながら呟くと そのまま老人に何かを囁いた


「だ・・ 大丈夫かと・・
 承知しました・・ すぐに準備を・・・・」

そう言うと老人は パタパタと足音を立て部屋を出て行った






「タクミ・・・ これから楽しい事をして遊ぼう・・・
 後ろの穴に直接入れても楽しそうだが・・・
 それは次のお楽しみだ・・・・」


嫌がる匠の頭を撫でながら男は嬉しそうにそう言った






暫くすると老人は 金属のトレイを持って戻って来る
「持って参りました・・・」


トレイの中を見て 男は満足そうな表情を浮かべた
「ありがとう、先生・・・
 ・・・薬の効果はどれくらいだ・・?」
 

「それが・・・・ データがありませんので何とも・・
 少なくても 1週間から・・・ 1、2ヶ月・・・ ぐらいが限界かと・・・
 その間は 頭に近い分、激しい痛みが襲うでしょうが・・・・」


「ああ・・ それでいい・・
 それだけあれば、タクミも自分の立場を思い知るだろう」






男は台に腰掛けると、助手の男に 「おい・・」 と 手のひらを返す仕草をした
その指示で助手の男達は 乱暴に匠を仰向けにひっくり返す


「・・・・・・・・・!!・・・ンッ!!!」

うつ伏せだった体を急に動かされ 匠は声をあげる
動かない腕が人形の様に パタンと台に落ち
背中の傷に体重がのしかかる・・・

「・・・グッ・・・・・・・ンァッ・・・・・・・・・!!!」


背中を離そうにも 体は持ち上がらない
膝を曲げて体を浮かそうと 動けば動くほど、傷は擦られ痛みが増した

「・・っ・・・ぁあ・・・・クッ・・・・・・」


「印が傷んだら・・・また直せばいい・・・」
男はそう言い捨てた




助手が、匠の手と頭を押さえ付けた




”・・な・・・何・・・・・・・・・・何が始まるんだ・・・・・”

いつもと違う男達の行動に匠は戸惑っていた




匠の顔に強烈なライトが向けられる

「・・ンッ・・・・・・」

薄暗い部屋に長く居たせいで 明るさに目が慣れていない
眩しさに目を閉じ、顔を背けようとするが、強く押さえつけられていて
頭は全く動かない


「ほら・・ タクミ・・・
 今度は目隠しをして遊ぼう・・・・・・・
 もう私を睨んだり出来ないようにしてあげよう・・・」



・・・目隠し・・・・・・・?

その言葉にハッとする
男達の行動の意味・・・ これから何が行われるのか・・・・
匠は直感した



「や・・ やめろっ・・・・・・・・・・・!!!!」




閉じていた匠の右の瞳を 誰かの指が強引に開けようとしてした

「やめろっ!!!!・・・・離せっ・・・・・・・・!!!」

叫びはやっと言葉になったが 瞳はこじ開けられていく
どんなに強く目を閉じても、指の力には敵わなかった




再び眩しいライトが見え始めた時・・
器具で瞳を無理矢理 開らかされた

頭に刺さる様な強烈な光が 一気に目に飛び込んでくる


「ンッ・・・・・・・・・」

思わず目を閉じようとするが
瞼はしっかり固定され 閉じる事が出来ない



「さあ、タクミ・・・・・
 しっかり恐怖を味わうんだ・・・・・
 そして、私にすがりつけ・・・」

男は匠の手に触れると 指を絡ませながらそう言った







眩しいライトの中に何か黒い点が見え始める


・・・・な・・・・に・・・・・・・・・・・


それは徐々に近付き、だんだんハッキリと輪郭を成してくる



最初はとても小さな黒い点でしかなかったそれは
鋭く銀に輝く注射針だった


その瞬間からは、もう恐怖しかなかった・・・
針が目の前に迫っていた
反射的に動かない顔を振る・・・

男に絡められた指に力が入る

「や・・・ やめろっ!・・・・ やめてくれ・・・・・・!!」


「動くなよ・・・・ 暴れると本当に見えなくなるぞ・・・」
老人の声がした



「いや・・・・いやだ・・・・・・やめろっっ・・・・・!」


足で周囲の物を蹴りまくった
最後の抵抗だった


「やめろぉっーーーーーーー!!!!」





・・・次の瞬間、 プツリ。 針が刺さる








「んっぁ!!!! ぁぁああああああああああああああーー!!!!!!!」



頭の中に冷たい水が入って来る感覚・・・
まるで水中に落ちた様に視界は揺らめき、鮮やかな赤へと変わった




刻印 -45へ続く
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刻印 -43

ゴホッ・・・

ゴホッ・・・・

誰も居ない部屋で匠は激しく咳き込んでいた
ずっと口から水分を摂っていなかった


点滴がつけられているので生命維持には何の問題もないのだろうが
喉は乾燥し、今にもその蓋を閉じてしまいそうな感覚だった


ゴホッ・・・

ゴホッ・・・・


咳き込む度に うつ伏せ、折れた肋骨が悲鳴を上げる
腕に力が入らず、寝返りさえうてない・・

足に力を入れ、わずかに上体を捻り、
肋骨が圧迫されるのを防ぐのが精一杯だったが
その姿勢もまた、胸の痛みを増すには十分だった





扉の開く音がし、ペタペタと足音が聞こえてくる
もう何度も聞いた音だった


匠は窓の無い部屋で、時間の感覚というものを 全くといっていいほど失っていた
が、あの老人の足音は こらからまた壮絶な痛みとの戦いを告げる合図だった




老人の作業・・・匠の背中に刻印を彫る作業・・・は途中で何度か中断される

中断の時間が短い時は昼・・
かなり長く途切れる時は たぶん夜・・
それぐらいの感覚しか残っていなかった


そしてそのわずかな合間に何度となく陵辱された・・・・・
いつもはあの男に・・・
時には・・この老人に・・・・

途中で意識を失うと、傷を掴まれ、液体をかけられた






苦しげな匠の側で 器具を準備しながら老人は
「・・・・・辛そうだな・・・・」 そう言い、逆に満悦の表情さえ浮かべた


そしてまた作業が始まる

咳き込み震える匠の背中にメスが入れられ、針を刺され、縫合され
そうして龍と結合した蛇が 徐々にハッキリと美しく形作られていく・・


「・・・んっっっ・・・・・・・・・」

声も出なくなっていた




「随分と出来上がったな・・・」
嬉しそうなあの男の声がした


「はい・・これは最高傑作かと・・・・
 いま少し修正が必要ですが、その後 全ての抜糸が終わって腫れが引けば
 それはそれは美しくなるでしょう・・・」
老人が両手を擦り合わせながら言う




「もう タクミは私のモノ・・・・・」
男は満足そうに匠の体を撫でた


体に触れられるのが嫌だった
体が震え また息苦しくなった


ハァ・・・

ハァ・・・



「はなせ・・・・・さわるな・・・・・・」



やっとの思いで絞り出した声に
男が目を細め、その表情は イラついたものに変る

「タクミ・・・まだわからないのか・・・・」


暫く何か考えていた男は 
「・・・先生・・・ 今 作ってらっしゃる薬を何か持って来てください・・・」
そう言った



「アレを・・・・ですか・・・?」
老人は驚いた様に聞き返した


「ええ・・・
 どうも最近・・・先生の薬の効果が弱くなった気がしてね・・・・
 どう思います?・・・先生・・・」



「あ・・・そ・・・それは・・・・・
 背中の痛みの方が・・・ 勝ってるせいではないかと・・・・・
 それで・・・ その・・・・ 催淫剤の方の効き目が・・・
 もう長いですし・・・・ その・・・・ 慣れと・・耐性も・・・・その・・・」

老人はしどろもどろで必死に言い訳をした




「弁解はしなくていい・・・ 先生・・・・
 責めてる訳ではない・・・
 先生は 面白そうなモノをいくつか作っていたでしょう・・・?

 それを持って来てくれればいい・・・

 どうせ 今のタクミは満足に動けないのだし
 体を弄ぶ (もてあそぶ) のは私の自由・・・

 でもね・・
 タクミの・・・ 心が欲しいのですよ・・・
 私に許しを乞いたくなる様な・・・
 絶対に反抗はしない、服従すると ・・・そう言わせる薬がね・・・・・」



「服従・・・ですか・・・・・」

老人は黙って考えていたが

「では、あの・・・・・まだ完成ではありませんが・・・・
 1つだけ・・ 使えそうな物がございます・・・・
 快楽の催淫剤とは違い、痛みだけのものです・・・
 
 血管に刺す今の点滴と違って
 これは 吸収の良い粘膜に直接注入するのです
 持続力より即効性で・・・ 効果はかなりあるかと思いますが・・・」



「粘膜か・・・・ それはおもしろそうだな・・・・・」



「そ・・・・そうですか・・!
 粘膜であればどこでも大丈夫です
 鼻孔、口、耳、生殖器、肛門・・・ どこでもよろしいかと・・・

 ・・・・もし使って頂けるなら、貴重なサンプルになります」


老人は 男が好反応を見せた事に喜び、窮地を脱したように嬉しそうに答えた




「そうだな・・・・どこがいい・・? タクミ・・・」
男は匠の顔を覗き込むと 頭を撫でながら呟いた




刻印 -44へ続く
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刻印 -42

オヤジの言葉に 室内が静まり返った
「おいおいっ! お前等! 何 沈んでやがんだっ!」


重い空気を払拭するようにオヤジが叫ぶ

「今の話は参考程度で聞いとけ!
 確証は何も無ぇんだ!

 それに もしコイツがヤツ等の仲間に入っていたとしても
 坊ヤを助けるって目的は何も変っちゃぁいねえ・・!

 だろうが・・!??

 この画像をよこした理由は知らねぇ
 だが、このマークはでっけえヒントだ

 これで俺達はヤツ等より一歩前に出た
 何があっても、それだけは紛れもねぇ事実だ! 
 
 ここからが勝負だ! 一気に行くぞ! 


 ・・流!

 
 当時のこの医療機関、大学・・・・なんでもいい
 関係ありそうな場所をピックアップしろ!

 中でも地下室、倉庫・・この画像に合致しそうな場所は要チェックだ
 
 他の者も手伝ってくれ!
 かなり大掛かりな機関だったはず・・
 ポイントはいくらでも出て来るはずだ!」



自らの・・いや、全員の不安を消し去るように 大声で一気に指示を与える



「・・だな
 ゴチャゴチャ考えてたって仕方ねえ。 おやっさんの言う通りだ
 みんな手分けしろー!」

「・・・・・ よっしゃー! やるかーー!!」


その声に全員が気持ちを立て直す


バタバタとそれぞれに場所を陣取り、PCを立ち上げ、地図をテーブルに広げる
慌しく動く事で 自らを奮い立たせていた





浅葱は一人少し離れた場所から 黙ってその様子を見ていた



オヤジと目が合う・・・・・


オヤジの話に一番ショックを受けていたのは 浅葱だった
   
目の前の 縛られている匠の画像・・・・
多分、これだけでは済まない・・・いや・・もうすでに・・・・
ここに居る誰よりも危機感を感じていた

   
そしてこの画像の理由・・それは・・・自分への宣戦布告

   
そう思っていたのはオヤジも同じだった
浅葱の怒りや動揺が手に取る様にわかっていた

   
”・・・落ち着け・・・恭介・・・
 お前が焦ると全員が不安になる・・・
 ・・・坊ヤを助け出せるのは お前だろ・・・”




オヤジ・・・・
浅葱は無言のままオヤジに頭を下げた

それに答えるようにオヤジも頷く・・





そんな2人の無言のやり取りを深月はじっと見ていた 
最強と言われる二人を・・・







一歩前へ進んだ・・・
ここからが本当の戦いだ・・・





当時の古い資料を参考に
関連の病院、医療施設、薬品会社、倉庫・・・
関係者の住宅や寮まで あらゆる情報が集められていく


何十年も前の話しで、現存するものは少なかったが
それでもPC画面に点滅するポイントは 1つ・2つと増えていった




刻印 -43へ続く
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刻印 -41

「な・・・何なんだよ・・・・こいつがどうかしたのか?」
尋ねる声に答えもせず、オヤジはしばらく黙っていた



そして・・
「こいつは・・・厄介かもしれねぇぞ・・・・・」 と呟いた


「この男・・が、ですか?」
深月が 中央の小柄な男を指差して聞く



「ああ・・・・こいつだ・・・・
 若いお前等は知らないだろうが・・・・」


オヤジは深月が淹れたコーヒーを一口飲んで 話し始めた




「俺がまだ医学生だった頃・・もう数十年も前の話しになる
 
 こいつはその頃 ” 神 ”と、もてはやされた医者だ
 ・・・まぁ医者ってのも 今となっては謎・・・・自称だがな・・・」


「自称・・?・・・・神???」


「・・こいつはある医療機関と手を組んで新薬を開発していた
 その薬の効果が絶大だと評価され、一気に名医と称された


 その名声はすごかったさ・・
 夢の薬、神の医者・・そう呼ばれ こいつは一躍時の人となり
 どの病院も・・いや、国もだ。 その薬を絶賛した


 だが・・・・

 しばらくすると 新薬を投与された患者の異常死が多発し始めた」



「異常死・・・・」
 深月が呟く・・


「ああ、その夢の新薬ってのは 嘘っぱち・・実は大失敗だったのさ・・
 ・・・こいつはそれを知っていた

 わかっていて、金と名誉欲しさに、こんな薬を作ったんだ
 一つ誤算だったのは、 ・・・思ったより早く死人が出たことだ・・・」



「そんな・・・酷すぎる・・・・」



「そうだな・・マジでひでぇ話だ
 
 国は推奨していた手前、事を荒立てたくなかった様だが
 そのうちマスコミによって事実が明らかにされ、弾劾され始めると
 こいつは裏社会へと逃げた

 裏では未認可だろうが、相手が死のうが、そんな事はお構いなしだ・・
 ・・・逆に・・・殺せる薬の方が重宝される
 
 その頃になると、こいつの名声は地に落ちた


 ウソかホントかは知らねぇが・・  人身売買に臓器売買・・・
 果てには生きたまま人間の 人体実験までやってるってぇ噂になった


 そして こいつは表社会から消えた・・」




「・・・・・それで・・・この男はどうなったんですか・・?」
深月が身を乗り出す




「数年後に ある山奥で白骨死体が見つかってな・・・・
 周囲に散乱していた遺留品や 年格好から
 その遺体はこいつだと断定された」


「断定? そんなに簡単に!?」



オヤジがファイルの続きを捲ると

【 人体実験医師 ・ 山中で自殺遺体発見!!】

そう大見出しでショッキングにあおる新聞記事があった





「国もその薬を推奨してたからな・・・嫌なモンには早く蓋をして
 無かった事にしたかったんだろ・・

 汚名に耐え切れなくなっての自殺・・・
 もしくは、裏社会でヘマをやっての抹殺・・・そう処理された

 どっちにしても、遺体があるなら もう終わりにしてしまえ・・・ってことだ」


「そんなの無茶苦茶だ・・!
 DNAは? 一致したんですか!?」


「当時はまだそんなモン、今ほど進んでなかったさ
 まぁ、もし替え玉だったとしても・・・・
 コイツなら 当時の捜査を上回るぐらいのDNA操作は
 遊び程度で出来たろうがなぁ・・・」




「オヤジはまだコイツが生きていると・・・?」
浅葱が尋ねる



オヤジはもう一度モニターに目を移す・・・・

「ああ・・・この場所に このマークがあるのはたまたまかもしれねぇ・・・・
 こいつはもう、公には死んでるんだからな・・

 だが・・・もし・・・・

 もしもだ・・・
 こいつが裏で生き延び、今回の一件に絡んでるとしたら・・・


 冗談ヌキで 坊ヤが危ねぇ・・・・・」




刻印 -42へ続く
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刻印 -40

「おい・・流・・・坊ヤの後ろに、何か物が置いてあるだろう・・?
そこ、目一杯ズームしてくれ」


深月が 縛られている匠の横をズームで引き伸ばす


「もっと・・もっと大きくならねぇか・・?」



最大限に画像をクリアにしても
雑多に置かれた物の中に・・ダンボール・・・それとも何かの容器だろうか・・
うっすらと箱状の四角いモノが見えるだけだった



「これが何か・・?」 
深月が尋ねるが オヤジは答えず、じっと画面を見つめている





「おい・・・・もうちょいこっち・・・・ここだ・・・・・ここ・・・」

オヤジが指差す画面の先、斜めに置かれた箱状の物の横に
何かのマークらしき形があった


「なんだ・・? これは・・・・」

マークが逆さまなのか、特殊なのか よく読み取れない




オヤジが自分の顔を傾けて画面を睨む・・・


「んんーーーーーーーーー
 ずっと昔・・・・どこかで・・・・似たようなものを・・・・・・・・・」











「・・・・・・・・・おおおおっっっ!!!!」

じっと画面を睨み続けていたオヤジが急に立ち上がり叫ぶ




そして慌てて自分の部屋へ走ると 何かを探しているらしかった
そんなオヤジの行動を一同は呆気にとられて見ていた





しばらくしてオヤジは部屋から 自前の古いノートPCを持って戻ってくると
大急ぎで立ち上げ、ファイルを次々と開き始めた



中には膨大な量の医学関係のファイルがあった


「・・・・こいつはすげぇな・・・さすが 元軍医」
誰かが驚いた様に言う




その声も無視し、オヤジはその中から、1つのファイルを取り出す




それは数十年も前、
医療機関と大学が共同開発したある新薬のレポートと
その付属記事のファイルだった



手早くページを捲っていく・・

「どこだ、どこだぁーーーーーーーーーーー!!!


 出て来い、出て来いーーーーーー!!


 ・・っと・・・・・・・こいつだ!」



レポートの中ほどに 新薬開発の医師チームと題されて集合写真が載っていた

その写真の中央で満面の笑みを浮かべる小柄な一人の男・・・・
白衣の胸には 箱と似たマークが付いていた




「すっげー! よくこんなの覚えてたな、おやっさん!」
誰かが喜びの声を上げた





「おだてんな! こいつは・・・・・・・」


オヤジは愕然としていた・・・・・・




刻印 -41へ続く
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刻印 -39

携帯発見の一報に 他のメンバーも呼び戻された
浅葱以下全員がマンションに集まっていた


 
別荘のテーブルに 見つけてくれと言わんばかりに置かれていた携帯


「ヒント・・  にしちゃあ、判り易過ぎる置き方だよなぁ・・・・」
機材を繋ぎながら オヤジが呟く


「じゃあ何の為に・・・・・」

全員が同じ気持ちだった





「考えていても仕方ねぇ・・・」

そう言うと オヤジが外装を調べていく
が、これと言って次に繋がりそうなモノは出てこない



同時に内部を調べていた深月も結果は同じだった

「内部情報も ほとんどが消去されていますね・・・・・
 手がかりになりそうな物は・・・・・・・」



「まぁ、それが当たり前だろうなぁ・・」
・・・・と、オヤジが言いかけた時だった



「あれ・・・!?」
深月が呟く
 
「ん? どうした?? 流・・・・」
「おやっさん!・・ 1つだけ・・ 中に1つだけ何か残ってます」



2~3秒の短い動画が入ったファイルが残されていた



「画像こっちへまわせ!」

オヤジの声で画像が部屋のモニターに映し出される




そこには、両手を頭の上で交差し 鎖で手首を縛られ
膝立ちで上半身裸にされた匠の姿・・・・



それは連れ去られたあの日
男が ” 浅葱に見せてやろう・・ ”
そう言った時のモノだった




誰もがその画面を息を呑んで見つめていた


拉致されたという事実から、もしかすると・・・と頭では理解していたが
実際の映像を見せられると 一同が声を失っていた




ひどく古い防犯カメラの画像を3秒程切り取っただけのものらしく
薄暗い部屋のせいもあるが、画像はかなり悪い

それが匠だと やっと認識できる程度だった



「・・・・なんでもいい、ここから手がかりを探してくれ」

絞り出すように浅葱が言う
その拳は怒りで震えていた







画像を取り込んだPCの前で
オヤジのうるさい指示を深月は手早くこなしていく


だが、音声も無く わずか3秒ほどの画像からは
ここがコンクリートの壁に囲まれた地下室か、倉庫の様な場所・・・・
・・だとしか判らない


「何か手がかりは無いのかー!手がかりは!」
苛立った一人が言う

しかし、その問いに答えられる者は誰も居なかった





そのままどのくらい時間が経ったのか・・
絶望感が漂い始めた部屋で 憮然と画面を睨んでいたオヤジが
「・・・ん?」 と呟いた




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刻印 -38

浅葱の車は高速を降り、一般道へ入る


暫く進むと 徐々に緑が増え始め、ポツポツと別荘が点在し始める
バブル時代には注目された土地だった


今はもう別荘を持つ者も減ったのか、空き家・売り家 の貼り紙が目立つ
シーズンオフというのもあって、人影は無い



白みかけた空に 目的の別荘のくすんだ屋根が見えてくる



古く錆びた門扉を抜け 敷地内へ入ると、新しい轍 (わだち) があった
最近、誰かがここまで入って来た様だ

罠としてここに連れ出すのが目的なら それも不自然ではい・・





かなり立派な建物だった


そこはもう長い間使われていない様だったが
景気が良い時代には、どこかの会社の保養施設だったのかもしれない




車を降りて、周囲を見渡す

わずかな風が吹き抜けるだけで、敷地も建物内にも人の気配はない



アプローチを横切り ドアの前でもう一度立ち止まる

ずっと使用された形跡のない建物・・・
だが、ドアノブには砂埃一つ 付いていなかった




中にまで侵入したか・・・・



今までのポイントは 建物内にまで侵入の形跡はなかった
初めての事だった



夜明けとはいえ、まだ薄暗い屋内で小型の懐中電灯を構える


廊下にも侵入の形跡がわずかだが見て取れた
つい最近ドアが開かれ風が吹き抜けた跡、不自然な埃溜り・・

その痕跡を追うと、リビングらしき広間に出た




内装は嫌味なほど豪華だった
ヨーロッパあたりの煌びやかなテーブルにソファー、飾り棚・・・


だがどれもが埃を被り、そこは時間が止まったようだった




その豪華なテーブルの上 
何十年も時が止まった室内とは 明らかに異質な物があった





現代の携帯・・・・・







「オヤジ、携帯だ・・」

インカムに向かって言うとオヤジの反応は早かった

「携帯? 認証NO.は!!!?」


浅葱は手袋をはめると、内ポケットから小さい機械を取り出し
それを携帯に接続する


機械の画面に小さな文字が次々映し出される


「ナンバーは・・KYRNDHYST5937・・・・・・・・」



オヤジは浅葱が読み上げるNO.を 登録されている匠の携帯認証と照合していく


「ビンゴだ! それは確かに坊ヤのだ!
 携帯だけか?! 他には!? 何でもいい、すぐに持って帰って来い!!」




刻印 -39へ続く
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刻印 -37

マンションの部屋は 重苦しい空気が漂っていた

PC画面で、点滅するポイントは激減していた
×ばかりの画面を睨む様に見つめ オヤジはずっと黙り込んでいる


ここ数日で一気にポイントが減った・・

以前は追いかけても追いかけても増えるポイントに キレかけていたオヤジだったが
今は少しでも点滅が増えてくれ・・・・と願っていた




全てのポイントが無くなれば ・・・それは匠を失うという事だった






「少し、空気入れ替えましょう」
深月がオヤジの横にコーヒーカップを置き、窓を開けながら言う

「んん? ・・ああ・・そうだな・・・・」
「匠さんの部屋も風を通しておきました」
「んん? ・・ああ・・サンキュ・・・」
「浅葱さんは・・?」
「んん? ・・ああ・・出かけた・・・・」

・・・心ここに在らず ・・・だった







浅葱は一人車を走らせていた

車内には音もなく
ただタイヤが拾う高速道路の規則正しい路面音だけが聞こえている



インカムは付けているが、今 オヤジが呼びかけて来ることは無い

それは浅葱もオヤジも同じ・・
お互いという存在を 良く理解していたからだ





深夜の高速は車も少ない

・・・運転しながら浅葱は昔の事を思い出していた




組織に入ってからの事・・
仲間の事・・


以前の浅葱は一匹狼だった
口下手で 他人と上手くやっていく、折り合いを付ける・・
そういうコニュミケーションという物が苦手で群れるのを嫌がった


組織にいれば多少のお世辞や、愛想笑い・・
時には媚びる事も必要かもしれないが
自分には到底出来ない

それでもいいと思っていた


解ってくれるヤツだけ・・ 解ればいい



それでも仕事を完璧にこなす浅葱は 一目置かれる存在になっていく




だが そんな態度が災いし
当時、唯一の理解者だった仲間を失った事がある・・・・


浅葱とオヤジが出合ったのはその直後だった




仲間を失うのは もう嫌だ・・・


浅葱は一度 軽く目を閉じ胸に手をあてる
何かを振り払う様に思い切りアクセルを踏み込んだ

加速でシートに体が押し付けられる
走馬灯の様に流れる景色

オレンジの街路灯に映し出されるその顔は曇っていた






匠、オヤジ・・そして深月・・


あれから深月は 一度も浅葱と行動を共にしていない
一緒に来ない理由もわかっていた



オヤジと知り合い、柔らかく物腰のいいオヤジに 浅葱は随分と助けられてきた
浅葱が話さない部分をキチンと汲み取ってくれる
豪快なキャラは周囲をも和ませる

浅葱にとって仕事でもプライベートでも
オヤジは、良き理解者であり大事な存在になった



信頼だの絆だのという甘い言葉は苦手だが
オヤジが居なければ、自分もここまで来られなかったと思う
いや、生きてさえいなかったかもしれない・・・


そんなオヤジが連れてきた深月・・・
一番弟子だという深月は、きっと匠の良いパートナーになる
浅葱とオヤジがそうであった様に・・


あの2人は自分達の後ろをちゃんと歩いて来る
そしていつか、追い抜いて欲しいとさえ思う



だからこそ、深月にも匠にも自分達の全てを伝えたかった



が・・ あの日・・・・
匠が連れ去られた日・・・・
オヤジに 「冷静になれ」 と怒鳴られてから、自分が掴めずにいた












・・浅葱さんっっ・・・・!


急に匠の苦しげな声が聞こえた気がして ふと我に返りアクセルを緩める・・・・



高速の出口が近づいていた




刻印 -38へ続く
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刻印 -36

「・・・ぁ・・・・んっ・・・ぁ・・・・・ぁっ・・・」


発作を起こしながらも 匠の小さな喘ぎ声がしていた


挿入された男のモノから逃げようとしているのか
それとも薬のせいなのか・・・・腰がわずかに動いていた




男はそんな匠の背中の 印 に手をつき、激しく中のモノを突き動かす

「・・・ぁっ・・んっ・・・・    ・・・んっ・・・んっ・・・」
途切れ途切れに喘ぐ匠の声の中で
「ンッ・・・!」
男が小さく呻いた・・・

印 についた手に力が入り、グッと傷を掴む・・・




「・・・っ・・!!・・・・ァっあああぁぁぁ!!」


痛みで叫ぶ匠の声と同時に 男は匠の中で果て
トクトクと脈打ちながら 匠に自身を注ぎ込む・・






そしてそのまま 匠のモノを握っていた手も離された・・・


「・・んっ・・!」




それは匠も登り詰める寸前だった




寸前で手を離され、匠の体は行き場を失う



「・・・ぁ・・・・・・・っ・・・・・・ハァ・・ハァ・・」

「どうした・・? 苦しいのか?」





男は、匠の動かない腕を掴んだ

「腕は動かなくても、、指は動く・・よね・・・」

そう言って強引に腕を動かし 匠自身の下半身へと持って行く


「ゥンッ・・・・!!」

肩から背中の皮膚が引き攣っていた
腕を強引に伸ばされ、乾き始めたばかりの皮膚がビリビリと裂ける



「ぁあっああああっっっ・・・・・!!」

痛みに声を上げた



「・・ん? イキたいのだろう・・?」


そう言うと、伸ばした匠の手を 匠自身のモノにあてがった

「ほら・・ 自分でイッてごらん・・・ 見ててあげるから・・」

「や・・・・・ やめろ・・・・・・」



首を振って抵抗する・・
が、手を離そうとしても、腕は動かない

自分の手の中に 自分自身のモノがあり・・・
それは確かに何かを求めていた



「いや・・・ いやだ・・・・・・」

最後の抵抗だった
こんな見世物の様な事は 絶対に嫌だ・・


「ほう・・・ 先生の薬に抵抗できるとは・・・・・」



男はうつ伏せの匠の体の横に腕をつき、覆いかぶさる
そしてもう片方の自分の手を 匠の体の下に滑り込ませた

匠の手を男の手が包み込み 指を重ねる


「少しだけ・・・ 手伝ってあげよう・・・」

耳元で囁くと匠の長い指が、無理矢理 男の手の中で動かされていく
 



「ンッ・・・・ん・・・・ ぁ・・・・ や・・めろ・・・・・」




男の指に操られる様に、匠は自身のモノを刺激していた




「ぁ・・ぁ・・・・んんっ・・ぁ・・ぁ・・っん・・」





ゆっくりだが確実に快感は増していく





男は匠のその顔を見つめていた

「先生の作る催淫剤は最高だ・・・・
 これほどの状況でも、こんな行為をさせ、高みに昇る・・・
 ほら・・・ 自分でイクんだ・・・・」


指を大きく誘導される・・


「ンッ・・・っ・・・・ ・・・・ぁっ・・・・・
 ・・・ンッ・・ん・・・  ・・ぁ・・・もう・・・やめ・・・・・・


 ・・・・  ・・・・・ンッ!!・・」

小さく呻き 匠が自身の手の中でイクのがわかった





手の中に 自分の射出したものがあった
それは匠の指から男の指をつたい 台へと滴る・・・



ずっと横で見ていた老人も褒められ、興奮し、上機嫌だった
「はい・・! 私もこんなショーを見る事が出来て幸せです・・・!」




匠は屈辱に体を震わせていた・・・・




刻印 -37へ続く
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刻印 -35

どれほど時間が経ったのか・・・・ 匠はわからなくなっていた


朦朧とする意識の中
老人が 「少し休憩だ・・・・」  そう言った声だけが聞こえ
また背中に液体がかけられた


「・・ゥンッッ・・・・!!!」







過呼吸と痙攣の発作で全身の震えが止まらなかった



そんな匠の様子を男は冷ややかに見ていた

「・・・・やはり、上半身は上手く動かない様だな・・・・
 手と指はいける様だが・・・」



そう言って 匠が必死で握り締めていた台から 易々と指を外す
そして 赤ん坊にするように、自分の人差し指を握らせた



「ほら・・・ 私の指を折ってごらん・・ たった1本だ・・ 容易いだろう・・・
 この指が タクミを陵辱したんだよ・・・・」


クスッ・・ と笑う様に挑発され、匠は思わず指に力を込める・・・・

だが震える指は 相手の指を折るどころか、強くも握れなかった



「力もあまり入らないか・・・・」
男はクスリと また笑う・・・・

 




「震えてるのか? 可愛そうに・・・
 よく頑張ったから、ご褒美を上げないといけないね・・・」

嬉しそうにそう言うと まだ濡れている台の上に腰掛け
匠の震える体を撫で始めた


そしてそのまま・・・・・ グッと足を左右に開かせた




「タクミの鳴く声は私を興奮させる・・・」

匠の濡れた腰を片手で持ち上げる




上半身を台に付けたまま、腰だけを高く上げた匠
掛けられた液体が 背中へ・・ ツッ・・と流れる


腰を持ち上げられ露になった匠の穴に顔を近づけると
男は舌を這わせ始めた



「・・・ぁ・・・ぅんっ・・・・・・・・」
体の痛みと息苦しさ、震えで抵抗する力もない


男はそのまま舐め続ける・・・
指で穴を広げ舌先を細くして、中まで挿入していく


「ぁっァ・・ッ・・・ン! ・・・・・・ンッ・・・・・!!」




匠は無意識に 唯一、満足に動く足で腰を捩った

「どうした・・? よがってるのか・・・・?
 可愛いな・・・タクミは・・・」
 
そんな匠に 男は我慢できなくなったのか、自分のモノを取り出す




台に上がり、匠の開かせた足の間に割って入り
膝を付いて匠の足を抱えると、自分のモノをその穴へ押し付けていく


「ぁっ・・・・くっ・・・・・・」

小さく呻き 力の入らない指で台を握りしめる





男の目の前には 匠の背中・・ 刻印 があった


「タクミ・・・・ こうやって支配しながら眺める 印 は最高に美しいよ・・」

そう言って まだ出血の止まらない傷に手を乗せた




「んっぁああああ・・・・・!!」




ズッ・・・

匠の叫びと同時に 男のモノが入ってくる


「んっ・・・・・ん・・・・・・ぁっ・・・ああああああ!!」



少しでも前へ逃げようとする匠・・・
だが男は その背中の傷を押さえて離さない


「や・・ やめろ・・・・・・・・んっ!!・・・・・」
男のモノが奥へ奥へと入っていく





男はもう片方の手で匠のモノを握ると動かし始めた


「んっ!! ・・・ぁ・・・ぁ・・・・・ん・・・・っ・・・・・」


手で匠を擦り上げながら腰を激しく打つ


振動で傷が痛む・・
呼吸が苦しくて息ができない・・・


が、匠自身も確実に登り詰めようとしていた・・・




刻印 -36へ続く
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刻印 -34

老人が 助手に目配せをすると
匠の側に液体の入った容器が大量に並べられた


「では始めますかな・・・・」

老人はそう言うと 手術用のゴム手袋をはめ
何のためらいも無く、匠の背中の傷にメスを入れた




「・・ンッ・・・・・!!!」




匠の体がビクンと反応する
一瞬、何が起こったのか理解できなかった・・




創られたばかりの無防備な柔らかい傷口から 血液と一緒に体液が流れ出す


「ほれ、かけろ・・」
その老人の声に 助手の男達は容器の液体を
匠の背中にドボドボと掛け始める


「ングうっっ・・・・・・・んっ・・・・!!!・・・ああああああああああ!!!」


傷口に流れ込んでくる液体・・・・
激しい痛みが襲う






「・・・んっあああああああっ・・・!!!!」


叫び声を気にも留めず、匠の体が動かないのを幸いに
老人は背中の破壊された組織を次々と切り取っていく





「ぁああああ・・・・ や・・ やめろ・・・・・・・・・・・・」



足だけは動かせるものの
肝心の上半身はいうことをきかず、抵抗する事ができない




体温調節が出来ず 高温だった匠の体が液体をかけられ、一気に冷えていく

急激に体温が下がり 活動を抑制しようとする神経と
激しい痛みを感じ昂ぶる神経がせめぎあっていた


寒さとも、痙攣ともわからない震えが全身を襲う



「・・・・や・・ めろ・・・・・もう・・・・・」



あまりの激痛に意識を失う事さえ許されなかった




流された水が胸の傷からの出血と混ざり、床の排水溝へ飲み込まれていく







老人は黙々と匠の壊れた皮膚組織を取り除き、メスで傷を修正していく
それはまるで彫刻でも楽しむかの様だった



「美しい最高傑作を・・・・」
老人は笑みさえ浮かべる


「・・・・・・・ぁぁぁぁ・・・・・・んっっ・・・・・・・・・・・・・!!」

叫んでいた匠の喉は枯れ、声さえも満足に出なくなっていく




力の入らない手で台を握り締める匠を 男はただ黙ってじっと見つめていた




刻印 -35へ続く
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刻印 -33

扉が開き、センサーの音が響く室内に ペタペタとスリッパの音がした

「目が覚めたか・・・・ 」

老人は一緒に入ってきた助手らしき白衣の男2人に センサーを止める様に指示をし
心拍数や脈拍を細かくチェックしていく






その後ろから あの男も部屋に入ってくる

「どうだ? ・・タクミは・・」

「はい、先ほど目覚めた様です
 ショック症状による痙攣と過呼吸、細胞、汗腺破壊による脱水症状と異常体温・・
 いろいろ出てますが、全ては想定内でして・・問題は無いと思います・・
 既に手も打っていますので大丈夫かと・・」

匠に捕らわれた汚名を返上しようとしているのか
かなり早口で饒舌 (じょうぜつ) に語った




「・・・・・傷は・・・・?」


そう言って男は 匠の体に掛けられていた白い布を取ると
背中を覆っていたシートを躊躇無く剥がしていく


ベリベリと皮膚を剥がされるような痛みが襲う



「んっ・・うっ・・!・・ぁぁあああああああ・・・・!!!」



叫ぶ匠の声も無視し 男は背中の傷を眺める
「ふぅん・・・・ まだ修正も要るようだな・・」





灼けた背中の傷の何箇所かを 指で確認する様に触っていく


「や・・・・・・やめろぉおおおおおおおお・・・・・・・・さわ・・るな・・・・・」

「じっとしていれば美しく出来たものを・・・
 タクミが暴れるからだ・・・・」



そう言って傷・・・ 印 を押さえつける


「・・グッ・・・ン・・・・・っ!!」
痛みで声が出ない






「ここからは先生の専門だ・・ お願いしますよ・・・」

「お任せください・・
 今はまだ ただの傷ですが、必ず美しい作品に仕上げてみせます」







匠の背中・・・・
肩下から腰にかけて、付けられたばかりの 印 があった

まだそれは 印 というより赤黒く無残な傷だったが・・・





中央の一本の剣に 蛇と龍が絡み付いている
蛇と龍は互いに牙を剥き、舌を出し、威嚇し合い、睨み合っているが
その2つの体は徐々に近付き重なり合い・・ 
・・下半身は1つに結合していた




男は匠の背中を指で撫でながら言う

「タクミ・・・ この 刻印 をキミに見せてあげられないのが残念だ・・・・

 ここには、蛇と龍がいる

 蛇は私のシンボル
 龍はタクミ・・・・ 
 
 こうして剣を交え戦っていても、体はお互いを求め、欲し合い・・・
 そして最後には、1つになる・・・・
 
 タクミはこれから一生、私のモノ・・ ずっとこの蛇と一緒だ
 そして、この 刻印 を見る度、痛む度に、私を思い出すんだ・・・」



そういって匠の唇に自分の唇を重ねた


「んっ・・・・」

震える体で男の唇から逃れようとするが
やはり体は動かなかった




蛇の舌が、龍の舌をまさぐり求めていた・・




匠の唇の感触を十分に味わってから男は老人に言った

「・・・始めましょうか・・」




刻印 -34へ続く
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刻印 -32

・・・・・・・匠は激しい痛みに呻いていた


背中に焼けるような痛みがあった
いや、その感覚が ”痛み” と言えるものなのかどうかさえも
すでに判らなくなっていた



体中が燃える様に熱く
時折 痙攣の様に体が震え、呼吸が出来なくなる




何度目かの痙攣が来て、意識を取り戻し 苦しさに目を開けた・・

そこに人影は無かった






金属の台が見える

うつ伏せている自分の左腕も見える
左腕にはまだ点滴パックが付けられたままだ
指先には 血圧や脈拍を測る物らしき、小さな機械も付けられていたが
手を縛っていた鎖はもう無かった



”ここは・・・ 連れて来られた部屋・・・
 まだ・・・ あの現実が続いている・・・・・・・”




そう認識したとたんに また呼吸が苦しくなった
うつ伏せで痛む胸が 過呼吸と痙攣で更に苦しくなる

指先に付けられた心拍のセンサーから ピーピーと小さな音がし始めた






震える手を押さえようとした・・・・
が、何故か 指がわずかに動いただけで、体も腕も思い通りには動かなかった




・・もう縛られてはいないのに・・・・・ どうなってる・・・・



うつ伏せた体を起こそうと、手を付く・・
正確には・・・ 付こうとした 

しかし自分の体を 自分の意志で動かす事は出来なかった




上半身はまるで台に貼り付いた様に動かない







激しい体の痛みと熱もある・・
肋骨も数本は折れたままだ・・

それは判っている・・
だがそれだけで起き上がれない という事は有り得なかった





・・・・・・・・





足は・・・


ゆっくり動かしてみる・・

ズズ・・

少しだけ膝が曲がった・・・ 足は動く・・・


手は・・・

十分な力は入らないものの 指は動いた・・
肘から先・・・ 手首も大丈夫だった・・・



が、上腕から肩は動かそうとすると背中に鋭い痛みが走った




「痛ぅっ・・・・・・・・・!!」






何故・・・ 何なんだ・・・・

痛みに耐えながら何度も体を動かそうとした
だが何度やってみても その度に背中の痛みが酷くなるだけだった

嚙み締めた唇端が切れ、血が滲む







・・・上半身と 肩から腕までが動かない・・・・・





また痙攣が襲う
センサーの警告音が大きくなっていく






・・・印・・・




あの時・・・ 何をされたのか・・・・・


そう・・ 背中を・・・ 何かで灼かれた・・・


狂いそうな程の衝撃と痛み・・・・





思い出すだけでまた呼吸が苦しくなり 全身が震え始める








センサーの電子音が 鳴りっ放しになった・・




刻印 -33へ続く
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刻印 -31

一人で出て行った浅葱を 深月は静かに見ていた



「ん? 流よ、どうした? もう恭介と一緒に行かねーのか?
 一緒に行きたいんじゃなかったのか?」


尋ねるオヤジに 「ええ・・」 とだけ答え
深月は ソファに座り視線を落とす





オヤジはそんな深月を見ながら 「そうか・・・」 とだけ答えた




深月は 内心、ホッとしていた

おやっさんに ” 何故一緒に行かないのか? ” と
その理由を聞かれたら・・・ 何と答えれば良いのかと思っていたからだった



”あの人は・・・ よくわからない・・” 
そんな小さな不信感の様な物が 芽生え始めていたのは確かだった



オヤジもひとしきり吠えて疲れたのか そのまま黙って仕事を始める







部屋が無音になった




深月は この静寂が、自分のせいだとわかっていた

空気が重かった・・・







「・・・・・・・ あの・・」 意を決して 深月は、オヤジの方へ向き直り
「聞いてもいいですか・・・?」 と尋ねた


「ああ・・ 構わんぜ」

オヤジは深月がこう切り出すのが判っていたかの様に平然と答える





「あの・・ おやっさん・・・・・・
 あの浅葱って人、どういう人なんですか?」

「どうって・・ 何が?」

オヤジはPC画面から視線を逸らしもせず言う




「噂では・・ うちの組織の3本の指に入る程の人だって聞いてました
 噂だけでしたけど、憧れてました

 今回、おやっさんにここへ呼んで貰えて嬉しかった
 こんな状況下では・・ 不謹慎かもしれませんが・・

 ・・・ でもここ数日 一緒に居ましたが・・・・・
 行動を見ていても 無茶苦茶だし、無鉄砲だし・・ 雑だし・・
 
 あ・・ 僕は現場経験はあまりありませんが・・・・
 それでも、あれはちょっと理解できません

 もちろん、仕事は出来るんだとは思いますが・・・


 それに・・・ あの人は冷たい・・
 何も話さないし、感情が全く読み取れない・・


 本当に仲間を心配しているかさえ、わからない・・

 正直、どうして みんなにあれだけ信用されるのか、慕われるのか
 ・・理解できないです」




オヤジは黙って深月の話を聞いていたが
「・・・・それはな、流・・・・・・ 口で説明してもわからんさ・・・・」
そう言って深月の方を見た



「ただ・・・・
 恭介は冷たいヤツじゃぁねぇし、雑でもねぇ

 それは、アイツ自身の経験と実績に裏付けされた勘・・ みてぇなものかなぁ・・
 それが雑に見えるのは、お前がまだその域に達してねぇって事だ

 まぁ・・ それをお前が理解するには 100年早ぇーがな


 それに・・・・
 3本の指じゃなくて 確実にNO.1だ
 仕事も人間もな
 そのうちわかる時がくる」



深月は納得できないでいたが、それでももう反論はしなかった


そのまま また静寂が訪れ、キーを叩く音だけがする部屋になった




刻印 -32へ続く
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刻印 -30

「くそったれがーーーーー!」
マンションの一室で、オヤジは一人 キレ始めていた





PCの地図画面に記された ×印は 確実に増えていた
×印しか無い。 という表現の方が正しいかもしれない


何箇所踏み込んでも、まさに ”何も無い” 状態が続いていた




組織の大型コンピューターを使えれば
こんな地道な作業はせずに済んだかもしれない・・とオヤジは思う


組織の名を出せば
世界中のあらゆる情報を優先的に引き出す権限が与えられている



だが、今回はある意味 裏切りの捜査だった

少なくとも匠を取り戻すまでは、上にバレる訳にいかなかった







そこへ浅葱と深月が帰ってくる


「外まで声が聞こえてますよ
 深夜に迷惑ですって・・ おやっさん・・・・」
深月が呆れた様に言う



「これが大人しくしてられっかーー!!」

ドンッ! とテーブルの脚を蹴り  一人で 「イテテ・・・」 と呻いてるオヤジは
まるで動物園の暴れ熊だった



「くっそーーーー!! ヤツ等、完全に遊んでやがる!
 どこまで喰い下がってくるか、いつ辿り着くか・・ それを楽しんでんだ!
 まるで 隠れんぼ か 鬼ごっこ・・ ガキの遊びだぜ!!」

足を押さえながら まだオヤジは叫ぶ

深月は そんなオヤジを苦笑いで見ていた







浅葱は一人 窓際で、外を眺めていた・・
声を荒げるオヤジとは対照的に 浅葱は驚くほど静かだった


遠くに流れる車のライトをずっと黙って見ているだけ・・・・


”浅葱さんは、仲間が心配じゃないのか・・・?”
浅葱の後姿を見ながら、深月は思っていた







「・・・時間稼ぎも・・  ・・あるのかもしれない」
浅葱が振り向きもせず、独り言の様にポツリと言う


「時間稼ぎー? 何の為にだよ・・・
 目的がお前なら、遊んでるとしか思えんだろ!」


オヤジが驚いた様に 足を押さえたまま聞き返す
深月も驚いて 浅葱を見た







そのはずだった
今回の一件は、それが目的で始まったのは間違いない


だが・・・
目的が・・ 俺だけじゃなくなった・・・ としたら・・・・



いや・・



ターゲットがもう自分ではなく、匠だけになっているとしたら・・






嫌な予感がしていた







ヤツが欲しいモノ、
それを既に手に入れているとしたら・・・


匠はもう・・


・・戻って来ないかもしれない・・・・




そんな気がし始めていた





が、それを口に出して言いたくはなかった





黙ったまま何も言わない浅葱を オヤジはじっと見つめていた









「オヤジ、次のポイントはどこだ・・  行って来る」

それだけ言ってまた浅葱は部屋を出て行った




刻印 -31へ続く
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刻印 -29

男達に連れて行かれた場所は、広い部屋だった

最初に居た地下と同じく 窓も無く薄暗い
出入り用に大きな両開きの扉が1つある


違うのは 床一面にタイルが敷かれている事と
そして・・・
部屋の中央に 大きな金属のベッドの様な台がある事だった






匠はローブを脱がされ、全裸のままうつ伏せで、その台に縛られた







「もう一度だけ聞くよ、 タクミ・・・ 
 本当に 私のモノになる気はないか・・?」

男が うつ伏せた匠を覗き込み、真っ直ぐに顔を見ながら聞く



「・・・何度聞かれても・・・・ない・・!」
そう言って男を睨み返した


「そうか・・・・・   残念だ・・・・・」

そう言うと男は立ち上がり
匠から その表情は見えなくなった








扉が開き、一人の男が 何か大きなモノを押してくるのが視界の端に入ったが
うつ伏せで動けない匠にはそれが何か わからなかった





「おとなしくも出来ない・・・・ 私のモノにもならない
 ・・・・ならば、仕方がない・・・・・・」
冷たい男の声がした




両手両足の鎖がギリギリと一層強く締められ
その上から更に あの4人の男達が、匠の手足を押さえ込んでくる


「・・んっ・・」
うつ伏せだけでも折れている肋骨が痛む
その体を思い切り押さえ付けられ 息が出来なくなる



”・・つっ・・・いったい・・・何を・・・・・・”









・・・ガタン!

大きな音がすると 自分の周りの空気温度が、わずかに上がった気がした





男が匠の頭を愛おしそうに撫でながら
その指に柔らかい髪の毛を絡ませる・・・・・


「タクミ・・・・・」

そう呟くのと同時だった



押さえ付けられた背中に、何か異常な熱気を感じた・・


・・・・・・・・!!??!!

振り返ろうとした瞬間だった・・





大きな重たい物が、 ドンッ!! と背中に下ろされた



それは大きいだけではなかった・・・






とてつもなく熱い・・・ 灼熱の金属・・・・





シュゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!




皮膚が焼ける匂いがした





「んッグッ・・・・・・!!!!」

一瞬 息が止まり、声さえも出ない・・・



神経に直接電流を流されたような激しい熱さと痛み・・・・
いや、それはもう痛みという感覚でさえなかったかもしれない






「う・・・ぅわぁぁあああああああああああああああああああああああーーー!!」

数秒の静寂の後、匠は叫んでいた




暴れて体をよじるタクミを4人の男が押さえつけている


「やめろおおおおおおおお・・・  ・・・ぁぁぁあああああああああ」




金属の台の端を握り締めて暴れる匠の頭を撫でながら 
男は平然とその背中を見つめていた・・・・・




「じっとしてろ・・ というのも無理だろうが・・ もう少しそのままでいなさい」
男が言い放つ



「やめろ・・ やめろおおお・・・・ あああああああああっっ!!」







暗い部屋に 匠の叫び声と、独特の臭気だけが漂っていた




刻印 -30へ続く
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刻印 -28

「・・・・・・・・・」

匠は溜息の様に1つ大きな息を吐くと、ゆっくりと振り返った


匠の背後に 鋭く光るナイフが突き付けられていた






「なんだ・・・もう帰ってきたのか・・・・・ 思ったより早かったな・・・・・」

匠が苦笑いを浮かべ
ハサミを指に掛けたまま ホールドアップをするように腕を解くと
老人は腰からヘナヘナと座り込んだ





その時やっと、通路の奥から数人の男達が走って来る


「何をしている・・ これだけ人間が居て このザマはなんだ・・・」

一喝され、男達は皆、無言でうつむいた





「先生も・・ 少し気を抜き過ぎですよ」

匠の指からハサミを取り上げながら、男が冷たい声で言う



「も・・・ 申し訳ありません・・!
 薬は打ったんだ・・・・眠っているとばかり・・・・
 でも・・・・・薬が・・・・思った程効かなくて・・」

老人がおどおどと言い訳をする



「先生が薬のせいにするとは・・・・
 ご専門でしょう・・?

 タクミを甘く見るからですよ・・
 彼は若いが、階級は確か・・・・ Lieutenant ・・中佐だったよねぇ・・
 ・・・油断しない事だ・・」






「・・おい・・」 
男の指示で、周囲の男達は慌てて匠を両側から押さえ込み 男の前に立たせた



男は正面に立つ匠の姿を 上から下までゆっくりと眺める・・

ローブの胸元は赤く染まっていた
男はその胸元を指でチラリと開く
胸の傷はすでに開き かなりの出血があった

匠が自ら付けた左掌の傷にも目を止め、 フッ・・と笑う





男は匠の顔を指でクッと持ち上げ、視線を合わせると

「タクミ・・・ その体でよくここまで来た・・・・
 流石だ、褒めてあげるよ・・・
 
 でも・・ 勝手に、体に傷を付けてもらっては困る
 タクミの全ては私のモノなのだから・・・・・

 それに・・・
 
 私は  ” いい子で待ってろ ”  と・・言ったはずだ・・・」





「・・・・・・・」

視線を逸らし、無視する様に何も答えずにいる匠を
男はじっと見つめていた







次の瞬間・・




パァァン!!!



匠の頬に男の平手が飛んだ








「・・っぅ・・」 

キッと男を睨みながら 匠が顔を上げる



「・・連れて行け、2度とこんな失態はするな」
そう言われて男達は匠の両脇を抱える



「さっさと歩け!」
男に叱咤された事への八つ当たりの様に、乱暴に匠を小突いて歩き出させる

匠の後には傷からの血がポツポツと落ちていた・・・・




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刻印 -27

老人を前にしたままエレベーターを降りる



意外にも人影はない



そこは複雑な空間だった

濃いグレーの 毛足の短い絨毯が敷かれた廊下が幾筋も伸び
ポツポツと間接照明があるだけで そのどれもが薄暗い


玄関ホールにでも出られれば・・ そう思っていたが
窓も扉も無い 想像とは全く違う・・・・まるで迷路の様な景色だった


しかも、地下にはあれだけの人数が居るにもかかわらず
地上はまるで廃墟の様な静けさ


ここが普通の建物でない事は明らかだった





「出口はどっちだ・・・」
「真っ直ぐ行って・・・・ 左・・・」



絨毯の廊下は 足音を消すには都合が良かった
姿さえ現認されなければ、後から追ってくるだろう男達にも見つかり難い



が、老人は恐怖の為か 全く自分で歩こうとはしなかった
匠が引き摺る様にして連れて行くが、抵抗し暴れる体が 胸を圧迫する

普段なら易々と抱えられそうな小さな老人が 今の匠にはとても重く感じた






正面の角を左に折れ、踊り場の様な一角に出る
そこからまた四方に通路がある
本当に迷路の様だった・・


「クソッ・・」

匠の腕にも足にも限界が来ていた

暫く壁に寄り掛かり呼吸を整える・・ 


急がなくては・・・

頭では判っているが一歩が出ない





左腕には 替えられたばかりのパックから、未だに薬が滴下されていた
ここで針を抜かなければ、出口まではもう無理だ・・・ そう思った


そして何よりも 全身を襲う苦しさを止めたかった



「とりあえず・・ 腕の針を抜け・・・・
 それから・・・このまま出口まで案内しろ・・・・」

そう言って、老人の首に回した右腕に力を入れる

「ゥグッ・・・・」
老人が呻く



「はやく・・・しろ・・」
ハサミを握った左腕のローブの袖を捲り上げ 老人の前に突き出す




「ぅぅ・・乱暴はするな・・・・・やめてくれぇ!!」
匠の腕から逃げようと、老人は抵抗し声を上げた




「うるさい! ・・黙れ! ・・腕の針を抜けと言っている・・・・!!」



その迫力に老人はビクンと跳ねた



「む・・ 無理だ・・・ ここでは・・・ 抜くには、ちゃんとした道具が・・・・」

「じゃあ・・・ 薬だけでもいい・・   ・・止めろ・・」

「わ・・・わかった・・わかったから手荒な事は・・・・・・」




老人が恐る恐る匠の腕に手をかける






その時だった・・





「そこまでだ、先生を放してもらおうか・・・・・」

あの男の声がした




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刻印 -26

男達は老人の声に 為す術もなく少しずつ下がっていく






呼吸はどんどん苦しくなった
ずっと縛られていた腕も、膝立ちだった足も 感覚が無くなりかけていた
胸の傷も開いたのか ローブがうっすらと赤く滲んでいる


自分で思っている以上に体力は残っていないかもしれない・・

このまま ここから出る事が出来るだろうか・・・






そのまま老人を引き摺る様にゆっくり後ずさり、廊下まで出る


誰かが知らせたのか、遠くの方で大勢の足音や声がしていた



「・・・出口は・・・どっちだ・・・・」
「み・・・右ぃ・・・・・・・・」

老人の声は泣き声に近かった





周囲を確認しながらゆっくりと右に出ると エレベーターが見えた

ホールでボタンを押す




廊下には大勢の男達が集まって来ていたが
真っ直ぐな狭い廊下では身動きがとれず 距離を縮められずにいる




じっと立っているのが苦しい・・


ハァ・・・・ハァ・・・

ハァ・・・・ハァ・・・




壁のランプが点滅し、エレベーターの到着を知らせ 扉が開く



扉が閉まりかけると、廊下の男達が焦った様に一斉に走り寄って来るのが見えたが
しかし 到底、追い付ける距離ではなかった






老人にハサミを突きつけたまま エレベーターに乗り込むと
ボタン表示があるドア横の壁に体を隠し
右腕で捕らえている老人を扉の正面に立たせ 男達を牽制する




表示は現在階の 【B 6F】 が点滅している
ボタンは地上5階までしかない



地上5階・・地下6階・・・・?
いったいこの建物は・・・ ここはどこなんだ・・・・・・





扉が閉まりエレベーターが動き始めると 匠は崩れる様に壁に寄り掛かった

天を仰ぎ目を閉じる
体が悲鳴を上げていた
立っているのがやっとだった


ハァ・・・・

ハァ・・・・


ハァ・・・・

ハァ・・・・



匠は老人に悟られない様、左手で握っていたハサミの持ち手を 刃の部分と持ち替えた
医療用のハサミは刃は短いが 先は鋭くメスの様な切れ味がある
左手に 刃を握り締め力を入れる

「っ・・・」

掌が切れ、血が落ちる
その新たな痛みで少しだけ意識がハッキリした


ハァ・・・・

ハァ・・・・




呼吸の荒い匠の方を 老人がチラリと見たのが右腕の感覚で伝わる



「こっちを見るな・・ 前を向いてろ・・」



目を閉じたまま、グッと首に回す腕に力を入れる

「は・・・はぃぃ・・・・・・」 老人は直立で前を向いた






ガタン・・

エレベーターに小さい衝撃がきて到着したことがわかる



匠は一度唇を嚙み締めてから、目を開け、体を壁から引き剥がした




刻印 -27へ続く
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プロフィール

凛

Author:凛
BL・MLを日々妄想してる腐女子

しかもかなりハード目が好きな壊れかけ

SM・拷問等の酷い描写が苦手な方は、ご遠慮ください

1作目 『刻印』
2作目 『華燭(かしょく)の城』 
完結しました。
ブログタイトル下のマップより全話読んで頂けます。
『刻印』の簡単な解説はこちら から


まだまだ初心者故、描写の至らない点
設定の矛盾は笑って見てください 

読みやすく・・と思っているので、長編小説ですが、各回短く、短文、1日1回UP予定です


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ツイッター @0storyRin
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